生体CPU生存if   作:時竺

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生体CPUの長い一日
第一話 プロローグ


 

 うぅ……キツイ……

 

 

 閑散とした住宅街にある、小さな公園。

 子供が隠れて遊ぶようなドーム型の遊具の中で、男が一人、膝を抱えて座り込んでいた。

 その身体はひどく震えている。特に、手足の震えが異常だ。

 彼は力の入らない指先で、閉まり方を忘れてしまった口元から垂れる唾液を拭った。

 

 頭、痛ぇ……。

 

 でも、まだだ。

 

 痛みに耐える為、強く自分の膝を抱く。

 この状態になってから、どれくらい経ったのだろう。

 いつもなら、そろそろ“あいつら”が来る頃だ。

 “あいつら”が来れば、助かる。

 しかし、今回男が望んだのはその逆だった。

 

 彼は―助(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)”(・)こ(・)と(・)を(・)望(・)ん(・)で(・)い(・)た(・)。(・)

 

 

「ふは……ひひひひ……」

 

 

 苦しいのに、面白いことなんて何も無いのに、笑い声が漏れる。

 そろそろヤバい。

 早く帰りたい、やめたい。

 けど、ちょっと癖になる。

 嘘。やっぱやめたい。

 でも……まだ、もう少し……もう少しだけ。

 

 カチカチカチカチ。奇妙な音がした。

 何の音だ?まさか、“あいつら”が来たのか?じゃあ、“ここ”もダメ?

 カチカチカチカチ。音はずっと鳴っている。

 あぁ、違う。鳴ってるのオレの歯か。

 全身の震えも更に強くなる。

 

 寒い……嫌だ……痛い……苦しい。

 もう、何やってんだよ……。

 早く……誰か来いよ。

 いいの?来ないとオレ、壊れちゃうよ?

 

 早く―

 

 

 早く――

 

 

 早く―――

 

 

「あぁぁぁあぁぁあ!ギブ!」

 

 

 我慢の限界。

 男は遊具から飛び出した。

 犬の散歩に来ていた近隣の住民らしき人が、何事かと振り向き、連れていた犬も驚いてけたたましく吠える。うぜぇよ雑魚。頭に響くだろうが。

 まだ動けるうちにと、男は残っている力を振り絞って全速力で住宅街を駆け抜けた。

 チャリで来れば良かった。何で今日に限って人に貸してしまったんだ。

 

 後悔先に立たず。

 それでも男は命からがら自宅にたどり着いた。

 もはや真っ直ぐ歩くことすらかなわない。

 よろけながら玄関をくぐる。

 

「……!?」

 

 服の裾を何かに引っ掛けた。

 バランスを崩して倒れる。

 ガシャンガシャン。耳障りな音が頭痛をより悪化させる。

 

「くぅっ……!」

 

 もう一度立ち上がろうと試みるが、力が入らない。

 倒れたまま、廊下を這いずるように進む。

 突き当たりのドア。その先に行けば“薬”がある。

 

「もう、少し……で」

 

 容赦なく襲いかかる激痛で意識が飛びそうになる。屈するものかと、自身の手に思いきり噛みつく。痛覚が一時的に脳を刺激し、何とか意識を現実世界に留める。おかげで目的の部屋まではたどり着くことができた。が。

 

 これ、もう無理だな……。

 

 遂に力尽き、男はそこで諦めた。

 けれど、一度部屋に入ってしまえば大丈夫だ。

 ここなら助かる—いや、“(・)助(・)か(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)”(・)。(・)

 

 

「あと……よろしく」

 

 

 誰もいないはずの部屋で、男はポツリと呟いた。

 

 

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