生体CPU生存if   作:時竺

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(終)第三十話 エピローグ

 

「もしもし。ボクです。あぁ、どうも、サザーランド大佐。今日は“家庭訪問”へのご協力ありがとう。……うん……うん。お陰様で、今日の目的は無事達成できたヨ。引き続き、よろしく頼みますネ。あーそれと、一つお願いがあるんだけど、今日例の三人を率いてた部隊長がいただろう? ……そうそう、あの、ユーラシアから来たとかいう男。名前、ネオ・ロアノークでしたっけ? 彼が何者なのか気になってサ。調べておいてくれないか。……助かるよ。それじゃ、失礼」

 

 

 

 やっと終わった。

 

 

 時刻はあと数分で日付が変わるといったところ。

 自らが構えるビルの一室で、アズラエルはオフィスチェアに深く座り背中を預けた。

 ビジネスの仕事以外でこんなに方々に根回しして走り回ったのは久しぶりだ。

 

 もう帰ろう。

 今一度チェアに座り直し、スリープ状態で画面が落ちていた自身のパソコンをシャットダウンしようとマウスを動かす。

 すぐに画面が点く。そこに映ったのは、とある監視カメラの記録映像。そういえば、ずっと再生しっぱなしだった。

 

 

 〈なぁにが『今すぐ救出すれば間に合うかも』だ! 絶対安全なの分かってて煽りやがって! 〉

 〈くく……でも、ナイスアイディ──〉

 〈うるせぇ、歯食い縛れ! 〉

 

 

 画面の中で、クロト・ブエルの左ストレートがシャニの顔面に飛んでいく。うーん、何度見てもいいパンチだ。アズラエルは他人事ながらに頭の中で手をたたく。

 今日の記録の中でも、この場面はあまりにもおかしくて、何度も見返してしまう。

 

 あぁ、そうだ。

 

 アズラエルはパソコンでメッセージソフトを開き、ある人物にデータを転送した。そして、デスクの上の端末を取って操作し、左の耳に当てる。

 コール音がかかるまでの間、机の上にあったボールペンをおもむろに手に取り、カチカチとペン先をノックしながら待つ。

 

 プルルルル

 

 ワンコール目。

 

 〈はい。バジルールです〉

 

 ツーコール目がかかる前に、彼女は出た。

 こんな時間でも出てくれるなんて、ボクの周りには仕事熱心が多いネ。

 

「どうも。艦長サン。今日はご苦労様でした。今、貴女の端末にデータを一つ送ったところだ。ちゃんと届いているかな」

 〈確認します〉

 

 返事があってすぐに、ナタルのため息が聞こえてきた。

 

 〈理事、これは……彼らの監視映像ではないですか〉

「うん。今日一日のアンドラスさん家の映像、ね。あぁ……正確に言うと、彼の奥さんが帰ってくるまでの映像かな」

 〈映像の現物を外部に持ち出すことは禁止されているはずでは〉

「おっしゃる通り。だから、誰にも言わないでネ」

 

 納得がいってなさそうなナタルの表情が目に浮かぶ。〈何か、企んでますか〉なんて聞かれる。毎度毎度、こちらの贈り物をそんなに警戒しないで欲しい。

 

「シンプルに、貴女の仕事に対する報酬ですよ。暇な時にでも、再生バーの半分辺りの時間帯を見てみるといい」

 

 それから一言二言会話を交わした後、通話終了のボタンを押す。

 パソコンの画面では、さっきナタルに送ったものと同じ映像データがずっと流れている。

 

 

 〈せっかくだから乾杯しよう〉

 〈乾杯だ? 何か掛け声でも用意してるのかよ〉

 〈そりゃあ、僕らが乾杯するなら一つしかないでしょ〉

 

 

 〈青き清浄なる世界の為にっ! 〉

 

 

 意気揚々と、画面の中でクロト・ブエルがアンプルを持った腕を振り上げる。

 ボクたちブルーコスモスのスローガンをこんな茶番に使わないで欲しいのだけど。

 そう思いながらも、思わず笑いが漏れる。

 

 〈青き清浄なる世界の為に! 〉

 〈青き清浄なる世界の為に~〉

 

 映像の中の彼らは、それがまるで盛大なパーティーであるかのように高らかに唱和し、小さな容器で乾杯する。

 それからはひたすら、ダムが決壊したかのような笑い声。

 馬鹿馬鹿しい。

 こんなんで笑えるなんて幸せもいいところだと思う。

 でも、彼らのこういうところは正直見ていて飽きない。

 それに──あんな笑い方するようになっちゃって。あれじゃ、まるで“人”じゃないか。

 

 そう思った時、パソコン上の時計がちょうど午前零時を示す。

 昨日が終わり、新しい今日が始まった。

 

「まぁ、いいでしょう……」

 

 アズラエルは今度こそパソコンの電源を落とすと立ち上がり、窓の外に広がる無数の星を見渡した。

 

 

 彼らが選ぶのは“兵器”か、“人”か。

 縋るのは過去か、今か、未来か。

 

 

「どうなるか、楽しみですネェ」

 

 

 それぞれが選ぶ道の先に何があるのか、これから起こることを心待ちにしながら、アズラエルは手の中のボールペンをノックしてペン先を引っ込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 後書きにして初めましてです。
 元々pixivの方で上げてた連載小説だったのですが、連載物を書くのにハーメルンの機能がとても便利でしたのでこちらにも掲載させていただきました。
 ブーステッドマンの生存ifを書きたいけど、生存しても普通の生活は送れないだろうな……と思って、薬は飲み続けなければならない、身の回りを監視されている等、設定は一生懸命考えました。あとは、戦争をしていなかったら他のキャラたちとどういう関係を築けたかな、とか。
 とんでも設定だらけのif話ですが、楽しんでいただけたのなら幸いです。

 「長い一日」で一区切りとしましたが、オルガの仕事の話とからフレイとクロトのこととか、シャニまだ書ききれてない関係が多々あるのが心残りなので、同じ設定で何か書くつもりではいます。
 その際はまたお付き合いいただけると嬉しいです。

 ここまで読んでくださりありがとうございました!
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