あーあ、つまんねぇ……。
とあるゲームセンターに設置された、対戦型ゲームの筐体の前で、赤髪の青年―クロト・ブエルは画面に写る「You're Winner!」の称賛の文字を見つめる。
どれだけ勝っても、自身のゲーム内ユーザーネーム『レイダー』のランキングは上がらない。
今シーズンのタイマンランクはとっくに一位になってしまっているからだ。
後は二対二のプレイヤーで行われるチーム戦のランキングを上げるくらいしかやることがないのだが……
シャニの奴、バッくれやがって。
今回の検査はシャニと日が被った。
前もってそれを知ったクロトは予め、終わった後にゲーセンに付き合えと言っていたのだ。「いいよ……」なんて言ったくせに、どうせあいつ忘れてるんだろうな、バカだから。
そもそも検査すら真面目に行かない奴だから、期待する方が無理な話かもしれない。
まぁ、いいや。
今日は野良とやろ。
チーム戦は普通、顔見知りの相方と組んだ方が意思の疎通が出来る為やり易いが仕方ない。
とはいえ、いつも付き合わせているシャニはモチベーションが非常に気紛れな奴なので、味方として組み易いかどうかは微妙なところではある。そういうところは、MSに乗ってた時と変わらない。
真面目にやりゃ強ぇのになぁ、あいつ。
ならオルガはどうか。
あいつはもっとダメ。論外。そもそも付き合ってすらくれない。
最初に三人で住んでた時は何だかんだやっていたような気がするが、去年くらいにまともな職に就いてから「仕事が忙しい」とか言っていつも断られる。
仕事に、結婚。どっちも自分の自由を削るだけなのに、何でそんなことしたがるんだろう。“お仲間”の選択が、クロトは未だに理解できない。
「ふあ~あ」
オンラインのフリーマッチングに興じていたクロトは堪えきれずに欠伸を漏らした。今日はチーム戦の方も、歯応えのある奴はいない。
チーム戦とはいうが、実際は野良とのチームワークなどあって無いようなもので、とにかくクロトが突っ込んでは一対ずつ倒していくという疑似タイマン方式で勝利をかっさらっていた。
これ以上やっても得るものが無さそうだ。次の試合でやめようかなと思った矢先、
「お?」
表示された対戦相手の名前を見て、クロトはイスに座り直した。
「キタキタキタ!!」
周りの目も気にせず、歓喜の叫びを上げる。
素早く携帯端末を取り出し、相手と思われる人物に〈対戦よろしく〉という挨拶を限りなく省略して〈対よろ〉とメッセージを送る。
その時、端末の通知音が鳴った。
新着メッセージが画面に通知される。送り主は、オルガだった。
〈シャニがぶっ倒れた。何か食うもん買って来い〉
はい、無視。
クロトは返事もせずに端末をしまった。
シャニがぶっ倒れるなんて、よくある話だ。
何で僕がそんなボランティアみたいなことをしなきゃならない?
それに、今はそれどころじゃない。滅多に戦えない、因縁の相手とマッチング出来たのだから。
くふふ……久々に本気出しちゃうぜ?
試合開始のカウントダウンを眺めながら前のめりになる。
〈3―2―1―〉
「瞬殺!!」
画面に〈Go!〉の文字が出ると同時に、クロトは勢いよくレバーを弾いた。