アビスアーカイブ   作:レイサン

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「なりたい自分」を探して

ある日の百鬼夜行連合学院での出来事。

今年から高校1年生に進級し、同時に百鬼夜行連合学院へ転校してきた生徒がいた。

 

「さて、今日はどこの部活動にお邪魔させてもらおうかな。」

 

彼女の名前は御手洗イヴ。

中学時代は別の地域に住んでいたが、本人が百鬼夜行のお祭り文化に興味を持った事をきっかけに百鬼夜行への進学を決めた。

 

「先週は修行部にお邪魔したんだったよね。先々週は確かお祭り運営委員会だったかな。今週は百花繚乱…紛争調停委員会だっけ?そんな感じの場所だったはず。」

 

現在彼女はどの部活にも所属していない。

どこにも興味が湧かないのではなく、どこも魅力的に感じつつ決めきれていないような状態だ。

 

「うーん、何だか名前的にヒリついてそうな印象だし、やっぱり今週は忍術研究部にしようかなぁ?」

 

直前になって悩む彼女の耳に、誰が語ったのか、何やら噂話が聞こえてきた。

 

「ねぇ聞いた?立ち入り禁止の倉庫の噂。」

 

「あぁ知ってる知ってる、アビス・アーカイブの話でしょ?」

 

「この前ホントに倉庫の中から人出てきたんだって!しかもあの倉庫、陰陽部の管理のはずなのに、出てきたのはミレニアムの生徒なんだってさ!」

 

「何それ怪しすぎない?やっぱり7人の階層守護者も実在してるのかな?」

 

「……見に行く?」

 

「無理無理!流石に怖いよ!」

 

アビス・アーカイブ。

ここ最近キヴォトス中で都市伝説的に語られる秘密の地下研究施設。

ミレニアムを退学させたれたマッドサイエンティストの秘密基地だとか、アリウスのテロリストの残党の隠れ家とか、カイザーグループのヤバい研究施設だとか、とにかく黒い噂が絶えない。

 

「アビス・アーカイブ…?初めて聞く名前だけど……うん。凄く、面白そうかも!」

 

御手洗イヴ、彼女は危険というものを知らない女である。

 

「陰陽部管理の立ち入り禁止の倉庫…あそこしか無いよね?」

 

過去に道に迷って訪れたことがあるため、場所の見当はついている。

勝手に入ったことがバレればそこはかとなく怒られそうな場所だが、一度進みだした彼女を止めるには立ち入り禁止の立て看板はあまりにも無力だった。

 

中に入ると、そこには取るに足らないガラクタや、年季の入った火縄銃などがあるばかり、地下施設の入口なんて見当たらない。

アビス・アーカイブなど所詮は噂話だったかに思われたが、よく見れば不自然にホコリを被っていない箇所を見つけた。

 

「怪しい場所は他に無さそう。この辺りを見てみよう。」

 

とりあえず近くに行ってみると、床に隠し扉がある事に気がついた。

早速開けて中に入ってみると、そこには人一人が通るには広すぎる通路が広がっていた。

 

「うそ、もしかしてホントに地下施設に繋がってるの?ちょっと面白そうかも。進んでみよう。」

 

欲望のままに先へ進めば、程なくして次の扉を見つけた。

しかし、その扉は引けば開く最初の扉とは違い、指紋認証機能でしか開かない扉だった。

 

「これじゃ中には入れないかな……インターホンとかないかな。」

 

辺りを見回していると、突然扉が開いた。

その先にいた生徒は、噂通りミレニアムサイエンススクールの制服…ではなくアリウス分校の制服を着ていた。

 

「ええっと、お邪魔してもよろしいですか?」

 

質問を終えると同時に、イヴは拘束されていた。

 

「こちら"掃除当番"のルナ、不審な侵入者を発見したため拘束した。直ちにそちらへ連行する。」

 

(そ、掃除当番!?もしかして私"掃除"されちゃうのかな?部活動見学に来ただけなのに〜。)

 

そこからエレベーター等を乗り継いで、かなりの距離を移動した。

 

「代表、侵入者を連行した。」

 

「あのさぁ、不審人物をいきなり代表の前に連れてくるのは問題あるよね?それは一旦良いとして、とりあえず"お客様"だね。ルナは"アレ"用意しといて。」

 

「あぁ、任せてくれ。」

 

「さぁてと、私はこの地下研究施設『アビス・アーカイブ』の代表にして、ミレニアムサイエンススクール所属の七知レイカという者だ。今から君と少し"お話"しようと思っているが、お時間は大丈夫かな?」

 

「はい、もちろん!全然大丈夫、です!」

 

「ふむふむ、それなら良かった。話が長くなりそうだったからねぇ。」

 

(な、何だろう。何を話すつもりなのか、準備中のアレって何だろう。と言うかこれ帰れるのかな。)

 

「待たせてすまない代表、準備ができたぞ。あまり美味く作れなかったが、形だけはよくできているはすだだ。」

 

「ありがとねぇ。それと拘束解いてあげて?」

 

「ああ、すまない。」

 

イヴの拘束は解かれ、目の前のテーブルには素人でも分かる良い香りの紅茶と、美味しそうな焼き菓子が用意されていた。

 

「これがアビス・アーカイブでのおもてなしだ。是非くつろいでくれたまえ、御手洗イヴ。」

 

ふかふかのソファーで唐突に始まるティータイムへの困惑か、初対面なのに名前を知られている事への困惑か、紅茶の上品な香りでは抑えきれない程の緊張感が場を支配しているように感じた。

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