ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF KIVOTOS   作:かきフライ

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アビドス廃校対策委員会編1章
1話


 学園都市キヴォトス。数千の学園が集まり、幾多の学生たちが生活する学舎の都。中心部には、都市の中枢たる「連邦生徒会」の建物が集中した「D.U.」なる区画がある。

 そしてその郊外に立つ高層ビルに俺はいた。

 連邦捜査部「S.C.H.A.L.E(シャーレ)」の先生。それが、コーラルリリースを成し、この世界へ流れ着いた俺に与えられた新たな()()()()()だった。

 俺の名はレイヴン。この街に必要な仕事をしている。

 

  ◯

 アビドスと言う学区がある。キヴォトスで最も長い歴史を誇り、かつては多数の生徒が通うキヴォトス最大の学園として名を馳せていたらしい。

 しかし数十年前に起きた大規模な砂嵐により大部分が砂漠化。現在は五人の生徒を抱えるのみとなっている。

『……レイヴン。私の記憶が確かなら、この道は先程も通りました』

 ルビコンから連れ添う友人、エアが脳内から語り掛けてくる。

「ああ。俺もそんな気がしていた」

 昨日の夜頃にこの学区に入り、そこから地図を頼りに車両を走らせ続けた。しかし進めど進めど一向に目的地に着けず、遂に一晩費やしても状況は好転しなかった。

『やはり、連邦生徒会から案内をつけてもらうべきだったのでは?』

「……グリッド086では迷わなかった」

『レイヴン。ルビコンのグリッドと通常の街では設計が異なります。引き合いに出すには不適切かと』

「むぅ……」

 破綻した行動計画の、妥当な末路か。

『ヘリを出すべきでしたね。上空からならばまだ迷うことも無かったでしょう。それに、弾薬などの物資も多く積み込めました』

 返す言葉もない。

 ああ、『AC』があれば……。

 車を路肩に停めてそのような事を考えていると、不意に車窓をノックされる。

 そこにいたのは、頭に獣の耳を生やした銀髪の少女だった。

「……何かトラブル?」

「すまない。道に迷って途方に暮れていたところだ」

「あぁ…初めての人は迷いやすいよね、ここ」車両内を見回す。「その荷物は?」

 少女が指さすのは車両後部に積んである荷物だった。

「支援物資だ。アビドス高等学校へ持っていく」

 その言葉を聞いて、少女が驚いたような顔をした。

「あなた、誰?」

「名乗り遅れた。連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)顧問、レイヴンだ」

 今度は何か合点のいったような顔をする。

「そっか……あなたが。ん、分かった。アビドス高まで案内する」

「む、それは難い話だが……いや、待て」

 いきなり言われてやや困惑したが、すぐ乗っていた自転車を走らせようとするところを引き止める。

「何?」彼女はこちらを振り返り、小首を傾げる。

「自動車で自転車を追うのは少々具合が悪い」親指で助手席を示す。「乗ってくれ。自転車は後ろへ」

「分かった」

 物資を満載した車両後部の隙間に自転車を納め、助手席に乗り込む。

「ベルトはしたな?」

「ん」

「よし、なら頼んだぞ……」そこで俺は、この少女の名前を聞いていないことに気が付いた。「名を聞いても?」

 少女がこちらを見上げ、視線を合わせる。

「アビドス高校二年、砂狼シロコ」

 

  ◯

 シロコの案内のおかげで学校まではすぐだった。迷いに迷った昨夜は何だったのだと考えてしまうが、良い教訓を得たので無駄ではなかったと思うことで後悔を掻き消した。

「助かった」

「どういたしまして」

 校舎を見上げる。キヴォトス最大と謳われたにしては、小さい。あり合わせの備品で作られたバリケードがグラウンドに乱立されているのも、より悲壮感を助長する。

「ちょっと!何よアンタ!」

 玄関の方から怒鳴り声がした。見ればアビドス生が三人、こちらに駆け寄ってくるのが見えた。

「今月の分は昨日支払ったでしょ。一体何の用……ってシロコ先輩?」

「おはよう」困惑気味に互いの顔を見合わせる彼女らを無視し、シロコがこちらに振り返る。「部室に案内する」

「ちょっと!?」

「シロコちゃん!?」

 彼女らが声を上げる中、手を引かれてそのまま校内へと半ば引きずり込まれる形である部屋の前まで連れて来られる。プレートには「アビドス廃校対策委員会」と書かれた紙が貼ってある。

「ここが部室か?」

「うん」

 ドアを開けて部屋に踏み入れる。部屋の中央に置かれた大机には文房具や弾倉が散乱しており、ホワイトボードには地図といくつかの付箋が貼られている。部屋の隅に備えられたガンラックには先ほどシロコが置いた「SG550」の他にスコープが装着された「AR70」と「ベレッタ1301」が、窓際の机には「M134ミニガン」が置かれている。

 キヴォトスの生徒はミニガンのような高重量な武器でさえ軽々と持ち上げてしまう。一体どこにそのような力があるのか甚だ疑問ではあるが。

「ちょっと、シロコ先輩強引すぎ!」

「そうですよ。ちゃんと私たちにも分かるように説明してください!」

 先程の三人が急いでやって来る。

「ん。これからするつもりだった」シロコの目がこちらに向けられる。

 自己紹介をしろ、ということか。

「連邦捜査部顧問、レイヴンだ」胸ポケットにしまっていた職員証を見せる。「物品譲渡証明書と、シャーレで揃えられるだけの物資を持参した」

「えっ。ってことは連邦生徒会関係の!?」

「わあ☆支援要請がようやく受理されたんですね!」ロングヘアの生徒が眼鏡をかけた生徒の手を握る。「良かったですね、アヤネちゃん!」

「はい。要請を送り続けた甲斐がありました!」その手を握り返す。「ホシノ先輩にも伝えないとですね」

「多分、先輩ならいつものところで寝てると思う」猫のような耳を生やした生徒が教室のドアを開ける。「私、呼んで来るー!」そう言って教室を出てドアを閉めた。

 活発で、若い力に溢れた者達。ルビコンではあまり見られなかった。子供がそのような力に満ちているというのは、きっと良いことで、俺は大人(先生)として喜ぶべきなのだろう。

「そうだ、先生。みんなの紹介がまだだった」再びシロコがこちらへ振り返る。「あの子は一年の黒見セリカ」

「私は2年の十六夜ノノミと申します」

「改めまして。一年の奥空アヤネです」

「私は2年の砂狼シロコ。って、一番最初に会ったから分かってると思うけど……あ、別にマウントを取ってる訳じゃない」

 わざわざ言わなくても分かっているのだが。シロコは表情の変化に乏しく、感情が読み取り辛いところがある。

「それと、もう一人。対策委員会の委員長、小鳥遊ホシノ先輩」シロコがノノミとアヤネの横に並ぶ。「以上五人がアビドス高等学校廃校対策委員会。よろしくね、先生」

 五人。たったの五人で今日に至るまでアビドスを支えて来た少女たち。それにしては、その表情に絶望の色は無かった。

「よろしく頼む」

「も~セリカちゃん~。おじさんにはもっと優しくしてくれないと~」

 どこからか気の抜けた声が響く。

「何言ってんのよ」ドアが開き、セリカが小柄な少女を引っ張って現れる。「委員長なんだからちゃんと挨拶しないと!」

「やぁやぁ、小鳥遊ホシノだよ。よろしく~」

 その態度と表情は一見気が抜けた柔らかな物に見える。しかし、一瞬こちらを覗いたオレンジと青のオッドアイは、強い警戒の色を帯びていた。

「連邦捜査部顧問、レイヴンだ」

「レイヴン……珍しい名前だね。ワタリガラスかぁ」シロコの隣、ガンラックの前に歩を進めながら続ける。「確かにカラスみたいに服まで真っ黒だぁ」

「黒は嫌いか?」

 わざわざ服の事を言及するところが引っかかり、訊き返した。

「服が黒いってだけじゃ嫌いにならないけどねー」ホシノはおどけながら答える。「腹まで真っ黒なのは嫌いかな」

 これ以上踏み込むのは良くないだろうと判断し、頷くことで話を切る。

「セリカから聞いたかもしれないが、いくらか物資を持って来た。これから搬入する」

「はいは~い。じゃ、先に行ってて。おじさんたちもすぐに行くからさ」

「分かった」俺は一つ頷き、部室を後にした。

 歩きながら窓の外を眺める。グラウンド以外の場所に積もった砂が、砂漠化の深刻さを物語る。

 校内の廊下にも砂は入ってきている。もしかすると、他の教室は既にダメになっているのかもしれない。

『レイヴン。アビドスについて調べていたのですが』

「何か気になる点が?」

『はい。どうやらこの学校は多額の借金を抱えているようです』

「借金……待て、話は後だ」

 エアの話を詳しく聞こうとした時、俺は校門の方に多数の武装集団を捉えた。全員ヘルメットで顔を覆い隠している。彼女らの銃口はどうやら俺に向いているらしい。

《危ない!》

 ()()()()である「シッテムの箱」から声が発せられると同時に目の前で小さな鉛の塊がひしゃげる。ほぼ同時に、銃声。

 俺は二発目が来る前に玄関から一番近い場所にあるバリケードへと隠れる。

「助かった、アロナ」

《どういたしまして。先生!》

 画面内で、生徒たちよりも幼い外見の少女──シッテムの箱のメインOS・アロナが笑顔で答える。

 数はざっと二十人前後。武器は全員アサルトライフル、先程アロナが防いでくれた銃弾を見るに5.56x45mm NATO弾だろう。

「ひゃーっはははは!」

「攻撃、攻撃だ!!奴らは既に弾薬の補給を断たれている!襲撃せよ!!学校を占領するのだ!!」

 学校を占領だと。

 何のために?

「先生!」

「無事ですか!?」

 シロコたちが玄関から飛び出てくる。

「無事だ。相手に心当たりは?」

「カタカタヘルメット団です」

 ヘルメット団という組織が存在していることは知っていた。

 武装組織にしてはかわいらしい名前だなという印象を受ける。

「前から何度もウチに襲撃を掛けてくる、三流のチンピラ集団」

 三流のチンピラ。確かに統率は余り取れていないらしい。大声で叫び、銃を乱射し、手当たり次第に手榴弾を投げる。練度はこれまでに相手をしてきた不良たちと大して変わらない。しかし厄介なことに数はこちらの四、五倍。しかも物資を満載した車両はヘルメット団を挟んで校門の向こうにある。

 あれを取られるのは出来れば避けたい。

「先生はここに隠れていてください」

「いや、お前たちをサポートする。戦術指揮は経験がある」

 全員の視線が一瞬俺に集まる。彼女らは互いに顔を見合わせ、頷いた。

 それを確認した俺は、かつて幾度となく掛けられてきた言葉を口にする。

「……仕事の時間だ」

 

  ◯

「ヘルメット団の戦闘領域離脱を確認。ミッション完了だ」

 捨て台詞を吐いて離脱していくヘルメット団を尻目に、シロコたちが集まって来る。

「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」

「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」

 そんな会話を聞き流しながら、俺はグラウンドに捨て置かれたアサルトライフルを拾った。先程逃げ帰ったカタカタヘルメット団の物だ。所々に傷があるが、どれも新しく使い古されたといった感じではない。グリップも奇麗だ。

「どーしたの、先生。もしかして銃に興味がある感じ~?」ホシノが背後から訊いて来る。

「いや。少し気になっただけだ」

 弾倉を抜き、コッキングレバーを引いて薬室に残った弾を抜く。

「それより、物資を運ぶのを手伝ってくれないか?」奇跡的に無傷だった車両を指さす。

「りょーかい。みんなも手伝って~」

 支援物資を荷下ろしする傍らで、俺は助手席に先ほど回収した銃を放り込んだ。

「力仕事はお任せください☆」

 凄まじいことに、俺が積み込むのに少々苦労した荷物を、ノノミは軽々と三つ一気に抱えて校内へと搬入していく。

「……キヴォトスの住民は皆ああなのか」

「いや。あれはノノミが……力持ちなだけ」

 俺はシロコが言葉を選んだことに気が付いたが、敢えて何も言及しなかった。

「今日は先生の指揮に助けられた。私たちだけじゃ、ああはいかなかった」シロコの目が輝く。「これが大人の力……すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい」

 改めて、彼女らがまだ庇護されるべき子供であることを認識する。

 ただ戦いに明け暮れ、人を殺し、奪った。そんな俺が、子供を導けるのだろうか。

 ……そんな風に考えることさえ、俺は今までしてこなかった。

「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん」ホシノが薄目を開けてこちらを見やる。「パパが帰って来てくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」

 そう言って茶化すホシノに対して、どう返せばいいか分からなくなる。

「いやいや、変な冗談はやめて!先生困ってるじゃん!それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」セリカが怒鳴るように言う。

「そうそう、可哀想ですよ」続いてノノミが笑顔で言う。

 場の雰囲気が険悪にならないところを見るに、セリカが少し棘のあるような言い方をするのはいつもの事なのだろう。

「……ところで、だ」俺は少し無理矢理気味に話を変える。

 というよりは元々話すつもりだったことへと会話の路線を戻す。

「俺はこの後シャーレに戻る」

「もう帰るの~?」ホシノが言う。

「気になることができたから調べに戻るだけだ。明日、また来る」

「道案内が必要なら言って」

「……助かる」

 道は覚えたから必要は無いのだがな。

 俺は手を振るシロコたちを背に、車両に乗り込んだ。

『……明日も来るつもりなんですね』エアが意外そうに言う。

「ああ。捨て置く訳にはいかないからな」

 エンジンを始動し、走行を始める。

「それに、気になる事もある」

『その銃の事ですか』

「そうだ。()()()()に訊いてみようと思う」

『分かりました。では、私の方から伝えておきます』

 帰り道。

 アビドスに吹く砂混じりの風が、車窓を叩く音が響いていた。




 初めまして。
 元々pixivの方で書いていたブルアカ×ACのクロスオーバー物があったのですが、わけあって削除し、ハーメルンで構想を一新して書いて行こうと思います。
 文章が見ずらい、誤字脱字を発見した等ございましたらコメントにて優しく指摘していただければ幸いです。

生徒にレイヴンに対する恋情を持たせるか否か

  • 持たせても良い
  • オリキャラには持たせるな
  • オリキャラにも持たせて良い
  • 持たせるべきじゃないと思う
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