ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF KIVOTOS   作:かきフライ

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 夢から覚める。
 ──現を、見る。


4話

《強化人間C4-621、覚醒しました》

 無機質なCOM(コンピューター)の音声と同時に、俺は目を覚ます。

 時計を確認すれば、二時丁度を示している。

 何故こんな時間に。

 少し、嫌な予感を覚える。

『おはようございます。レイヴン』エアが俺に語りかける。

《おはようございます、先生!》アロナも元気にそう言い、言葉を続ける。《アビドスの生徒さんから着信が入っています》

「繋げてくれ」

《あっ……繋がりました!》

 聞こえてきたのはアヤネの声だった。

「何があった?」俺は努めて冷静に訊いた。

《それが……セリカちゃんが、行方不明なんです》

 泣きそうな声で言うアヤネ。

《チャイムを押しても出てこなくて、部屋に入っても靴が無くて……》

「電話はしたのか?」

《はい。でも繋がらないんです!》

 胸の奥が嫌な形で冷えた。

 嫌な予感が、現実味を帯びる。

 セリカが行方不明。

 一番可能性が高いのは、誘拐か。

《代わって》ホシノが電話を代わる。《今みんな部室に集まってる》

「了解した。すぐに行く」

《うん》

 通信が切れる。

 俺はすぐに立ち上がり、仮眠室を出る。

「エア。今起きている者は?」

『……ククリとテツが射撃場に』

 いつもなら注意して部屋に戻るよう言っているところだが、今回は見逃すことにする。

 代わりに、手伝ってもらおう。

「武装してガレージで待機するよう通達してくれ」

『分かりました』

「アロナ」

《はい、先生!》

「セリカの位置を特定できるか」

《もちろんです!》腰に手を当てて言う。《スーパーアロナちゃんにお任せください!》

 俺は()()の調子を確認し、防弾チョッキを着込む。

『戦うのですか?』エアが訊いた。

「やむを得ん時はな」

 生徒は、敵じゃない。

 俺が武器を向けることは、許されない。

『……無理はしないでください。レイヴン』

「分かっているさ」

 俺はエレベーターで一階に降り、ガレージに向かうと、既にククリとテツが待機していた。

「おはよ、先生」

「これから仕事ってことは、今日の夜更かしはチャラってことでいいんだよな?」

「早く乗れ」俺は運転席に乗り込みながら言った。

 ただならぬ事態であることを察したのか、二人もすぐに車両に乗り込んだ。

「何があったの?」テツが説明を求める。

「アビドスの生徒が行方不明だ」

「夜逃げ?」

「いや、昨日の様子から見てその前兆は無かった。誘拐だろう」

 それは、願望なのかもしれない。

 あの元気な娘が、逃げることなどすまいという。

 俺の自分勝手な、期待。

「ふぁ……」ククリが欠伸をする。

「今の内に寝ておけ。着いたら起こす」

「オーケー。そうする……」

「テツ。お前も眠たいなら寝ていい」

「大丈夫。私、ショートスリーパーだから」テツが窓の外に目を向ける。

 そこからアビドスに到着するまで、車内に響く音はエンジン音と、ククリの寝息のみだった。

 

  ◯

 校門前に駐車し、二人を連れて部室に向かう。

「待ってたよ。先生」ホシノが真剣な表情で言う。「……そっちの子たちは?」

「シャーレ部員の九野ククリだ」

「酒井テツ」

 ククリとテツは打ち合わせ通りの肩書を語る。

 シャーレで俺を手伝う生徒は、学園・部活に関わらずシャーレの部員とみなされるシステムなので、嘘をついている訳では無い。

「セリカの位置情報を特定した」

「ど、どうやって……」ノノミが驚く。

「連邦生徒会のセントラルネットワークにアクセスした」

「そんな権限まで……」

「ま、バレたら始末書モンだけどな……」ククリが注釈を入れる。

「えぇ!?だ、大丈夫なんですか、先生?」

「バレなければ問題は無い」

 俺はシッテムの箱を取り出し、画面を見せる。

「セリカの位置情報だ。未だに移動している」

 全員が画面を覗き込む。

「郊外の砂漠地帯……」

「ここは……!」アヤネが口を開く。「以前、カタカタヘルメット団の主力が確認された地域です!」

 アヤネの言葉が確かなら、ここが本拠地と見て良いだろう。

「人質を取って脅迫しようってことかな」ホシノの声が低くなる。

「考えていても仕方ありません。急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」

 ノノミの言葉に全員が頷く。

「だけどどうすんだ。先生の車じゃ全員は乗れねぇぞ」

「大丈夫。この前倉庫からバギーを発見しました」

「ならお前たちはそっちに」俺はククリとテツに向き直った。「車両に戻るぞ」

 車内に戻った俺たちは地図を頼りにセリカの元へと向かう。

「先生。カタカタヘルメット団ってあの銃を持ってた連中だろ?」

 ククリがAKS-74Uの弾倉をチェックしながら言う。

「そうだ」

「……知ってるとは思うけど、ヘルメット団はキヴォトス中に派閥がある集団だ。多分どの派閥のリーダーも、全部は把握してない」

 ククリは、俺の顔を真っ直ぐ見ている。

「……私らも、元はヘルメット団だった」

 そう。シャーレで厚生プログラムを受けている生徒。ククリとテツ、他二人も全員元不良で、シャーレを強襲したヘルメット団の一員だった。

「連中は……カタカタヘルメット団はな、先生」

 相変わらず視線を逸らさず、ククリは続ける。

()()()()()()()()()()()()()だ」

「……」テツは来たときと変わらず外を見ている。

 何を考えているかは、読み取れない。

「だからさ、先生──」

「分かっている」俺はククリの言葉を遮るように言う。「そのために、俺は在る」

 ハンドルを握る手に、僅かに力が入った。

 

  ◯

 砂漠。

 私やテツにとっては初めての戦場(フィールド)

《狙撃ポイントに着いた》

 インカムからテツの声がした。

「了解した」先生が返事をする。「ククリ。準備をしておけ」

「あいよ」私は車から降りて配置に着く。

 砂煙の向こうから、エンジン音が近づいてくる。

 そろそろ目標地点に、人質を連れた一団が差し掛かる頃合いだ。

 黒見セリカって言ったっけ。黒髪猫耳の生徒らしい。

《アヤネ。首尾はどうだ》

《こちらも皆さん配置に着きました》

《了解した。全員、カタカタヘルメット団が目標地点に到達するまで待機しろ》

 真面目だな、と思う。

 先生は絶対に生徒に対して敵という言葉は使わない。

 いや、本気で敵と思っていないんだ。

 それが危なくて、気が気じゃない。

《……みんな。あれ見える?》テツが言う。

 砂煙の向こうに、鈍く光る砲身が見えた。

 ……戦車だ。

 正確には八輪重装甲偵察車「Sd Kfz 234」、通称「プーマ」。

 それが四両。

 黒見セリカを乗せているであろうトラックを真ん中に据えて、菱形陣形(ダイヤモンド)で守っている。

 流石にそれは、聞いてない。

「おい、おいおいおい。これヤバいんじゃねぇか!?」私は思わず叫ぶ。

 そりゃ叫びたくもなる。こっちは対戦車兵器なんて持っちゃいない。

《大丈夫》砂狼シロコが言う。

 瞬間。先頭車両の側面が爆ぜて横転する。

《ナイスだよ~、シロコちゃん!》

《敵の視線はこちらで引きつけます!》

 見れば他のアビドス生を降ろしたバギーが爆走している。

「……先生ー」

《左翼から側背に回り込め》

「了解……」私は軽くため息をついた。「テツ。援護よろしく」

《了解》テツが短く返す。

 それを聞いて、私は走り出した。

 相手はまだ私の存在に気付いていない。

 大きなアドバンテージだ。

《ノノミ、ホシノ。アヤネと連携して相手の気を引け。視線を分散しろ》

《了解ー。行くよノノミちゃん》

《分かりましたー!》

《シロコ。右翼側から回れ》

《ん、分かった》

 淡々と指揮を執っているように聞こえるが、いつもより口数が多い。

 焦ってるんだな、先生。

「おい、向こうにも一人いるぞ!」ヘルメット団の一人が叫ぶ。

「やべ、バレた」

 三人こっちに銃を向ける。

 近い……!

 が、すぐに一人のヘルメットが砕ける。

《今、危なかった》

「助かった」

 言いながら横転している車両の陰に転がり込む。

《次はこうはいかない》

 テツの呆れ顔が目に浮かぶ。

 ()()()のスナイパーは必要最低限のことしか言わないから冷たい印象を持たれることもあるが、そんなことはない。逆に、かなり情に厚いし一番の心配性だ。

 障害物から少し体を傾けて覗く。

 さっきの二人が怒鳴りながら撃ってくる。だが、狙いは甘い。おかげで私は余裕を持ってしっかり狙いをつけることができた。

 胴に二発、頭に一発。

 肩に一発、頭に一発。

 ヘルメット団というのはその名の通りヘルメットをトレードマークにしている。それを破壊すると、何故か戦闘不能になる。そういう習性らしい。

 私たちはそんな事なかったけど。

《シロコ。ククリと合流してセリカを救出しろ》

 先生の通信から二秒後。隣に砂狼シロコが飛んでくる。

「援護する。手早く頼むぜ?」

「ん。行こう」

 頷きあって、同時に物陰から飛び出す。

 十六夜ノノミの弾幕とテツの狙撃で、立っているヘルメット団は随分減っていた。

 私たちはトラックの運転席をクリアリングした後、後ろに回り込む。

「見張ってる」

「よろしく」砂狼シロコがコンテナを開ける。

 プーマはまだこちらに気付いていない。

「半泣きのセリカ発見!」

《なにぃー!?うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと!》小鳥遊ホシノが反応する。《そんなに寂しかったの?ママがわるかったわ、ごめんねー!!》

「う、うわああ!う、うるさいっ!!泣いてなんか!!」

「嘘!この目で見た!」

《泣かないでください、セリカちゃん!私たちが、その涙を拭いて差し上げますから!》

「あーもう、うるさいってば!」

「早くしてくんねぇかな!?」私は思わずツッコミを入れてしまう。

 その時。不穏な音がした。機械の駆動音だ。

 ああ、不味い。

 振り返る。

 プーマの砲口が、こちらを向いていた。

 私は舌打ちをしながらコンテナの中に飛び込み、砂狼シロコと黒見セリカを最奥に押し込む。

 刹那。私の背後、コンテナの後部が凄まじい音と共にぐにゃりと変形し、捩じ切れる。

 爆発はない。

「徹甲弾か……」

 一先ず助かったが、危機が去った訳じゃない。

「次弾が来る前に離れっぞ!」

「分かってる」砂狼シロコが黒見セリカに銃を渡しながら言う。

 私たちはすぐに走り出す。

 プーマの砲弾は50mm。再装填は手動だが、かなり早く終わるはず。

「クソッ!」

 予想通り、五秒後に頭上を衝撃波が通り抜けていく。私たちが無事なのは砲手がヘタクソだからだ。

 次は、外れない。

《伏せろ》先生が言った。

 前方に砂煙が立つ。

 先生の車が、全速力で向かってくる。

「ちょっ──」

 車は私たちの側を通過して後方のプーマに突撃する。

「先生!!」

 主砲の向きが車に修整される。

 だが、間に合わない。

 車はそのままプーマの側面に突っ込んだ。

「先生!何やってんだ!?」私はその場に立ち尽くした。

「今の……先生!?」黒見セリカが声を上げる。

 その声には、いろんな感情が渦巻いていた。

「待って、あれは……」砂狼シロコが指をさす。

 砂煙の向こうに、何かが見えた。

 光だ。

 水色の、光の筋。

 私の目には、それは剣のように見えた。




 今の今までARMORED COREの綴りを間違えていたマヌケが私です。

生徒にレイヴンに対する恋情を持たせるか否か

  • 持たせても良い
  • オリキャラには持たせるな
  • オリキャラにも持たせて良い
  • 持たせるべきじゃないと思う
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