ARMORED CORE Ⅵ FIRES OF KIVOTOS   作:かきフライ

8 / 8
 傭兵としての性。
 先生としての理。


8話

 学校のチャイムが鳴り響く。

「あ、定時だ」

「今日の日当だとここまでね。あとは自分たちで何とかして」

「は、はあ!?ちょ、ちょっと待ってよ──」

「終わったってさ」

「帰りにそば屋でも寄ってく?」

「こらー!!ちょっ、どういうことよ!?ちょっと、帰っちゃダメ!!」

 なるほど。

 どうやら勝ったようだ。

「こりゃヤバいね。この時間まで決着がつかないなんて……」

 室長こと銀髪の少女が引き攣った顔で笑う。

「アルちゃん?どうする?逃げる?」

「あ……うう……こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!!」

「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」

「うるさい!逃げ……退却するわよ!」

 便利屋社長と紫髪の少女が走り去り、その後を室長が歩いて追う。

「じゃ」

 最後に課長と呼ばれた白黒の髪の少女がそう言って立ち去る。

 その場に残されたアビドス生たちは呆然と立ち尽くす。

「……傭兵は、報酬分しか働きませんから」

 ミチヨのその言葉に、皆が我に返る。

「……ミッション終了。戻って休め」

 振り返れば、校門の前は酷い有様だった。

 いくつもの爆弾で完全に崩壊した家や車が屍を晒し、看板や標識は穴だらけになり捩じ切れている。

 幸い、この周辺に住民はいない。

 もし人が住んでいれば、悲惨だっただろう。

 日はもう傾いている。

 戦闘を始めたのは一時頃だったはずだ。

 一度部室に戻り、先程の便利屋について話し合う方が良いだろうか。

「先生ー、お腹すいたー!」シナオが言う。

「確かに。ずっと戦いっぱなしでしたからねー」

「私も。もう一度紫関に行く?」

「賛成ー!」

 ノノミとシロコ、セリカもそうらしい。

 恐らく、他も。

「じゃあ先生の奢りってことで~」ホシノが言う。

 財布を確認するが、あまり手持ちがない。

 昼の分で少し消費しすぎたようだ。

「……先に行け。俺は金を下ろして来る」

「大丈夫なんですか……?」

「問題ない」

 そう告げて、俺は近場のコンビニへと向かう。

『またラーメンですか。飽きないものですね』エアが語りかける。

「ああ」

『……どうせなら、ククリやテツも呼んだらどうですか』

 そう言えば、二人はまだ連れて行っていなかった。

『今から呼べば間に合いますよ』

「そうだな」

 俺は立ち止まってククリに電話を掛ける。

《もしもしー、こちら留守番隊。できる仕事は粗方終わらせたぜ》

「ご苦労だった」

《帰ったらテツにも言ってやりなよ。んで、どうしたんだ?》

「これから皆で柴関ラーメンに行く。それで、お前たちも誘おうかと……」

《マジで?行く行く、テツにも伝えとくよ!》

 即答だった。

 どうやら思いの他喜んでいるらしい。

「分かった。では、後ほど店で」

《おう!》

 電話を終える。

 恐らく、昼の時よりも多く下ろしておいた方が良いだろう。

 幸いポケットマネーにはまだまだ余裕がある。

『レイヴン。あまり使い過ぎては連邦生徒会に目を付けられてしまうかもしれません』

「……気を付けよう」

 そんなやり取りをしつつ、俺は再び歩き始めた。

 

  ◯

「いやー。明日にでもと思ってたけど、今日の内に食いに行けるとはなぁ」

 隣に座るテツに言葉を投げかける。

 が、反応はない。

「おいおい。折角食いに行けるんだもっと嬉しそうにしろよ。しかも奢りだぜ、奢り」

 私にとってはそこが一番重要だった。

 自分の財布を薄くせずに美味いものが食えるとなると、逃す手はない。

 テツは相変わらず無表情だが、実のところ内心では喜んでいるのではないかと思う。置いていかれて拗ねていたヤツがその日の内に誘われて機嫌が良くならないことは、まぁないだろう。

「ほら、そろそろ着くぞ」

 店の近くに車を止める。

 テツは車を降りるなりすぐ店に入っていった。

 相当楽しみにしてたんだな、アイツ。

 私も続いて入店する。

 アビドスの連中、それにミチヨとシナオもいた。

 楽しそうに話してはいるが、手元にあるのはお冷やだけだ。

「お、ククリとテツじゃん!」シナオが手を振る。「どったの?」

「先生に誘われてさー。二人揃って楽しみにして来たんだが……」

 テツが一瞬こちらを睨んだが無視する。

「……お前ら、ラーメンは?」

「先生がお金下ろしに行ってるからさ、みんな来るまで待ってるんだよー」小鳥遊ホシノが言う。

 確かに先生の姿は店にはなかった。

「お優しいこって。テツ、私らも待つか?」

「当たり前」

 あぁ、当たり前なんだ。

 私、結構腹減ってたんだけど。

 と言っても、こうも皆が先生を待ってる中一人だけ食べるのも気が引けるか。

「そう言えば」砂狼シロコが口を開く。「ククリたちってシャーレの部員なんだよね」

「まぁそうだけど……」

 別に嘘はついていない。

「でも、最初からそうだった訳じゃないよね?」

「あー。定期的にシャーレ側で募集ってのをして、それに自発的に応募した生徒が当番制で先生の仕事を手伝うって感じのシステムなんだが……」

「……今はシャーレの知名度が低いから、当番に応募してくれる生徒は少ない」テツが付け加える。

「じゃあみんなは応募したの?」

「んー……」

 唸りながらシナオの方を見る。

 シナオは一瞬首を傾げたが、すぐにこっちの意図に気がついて大きく丸サインを出した。

「私らさ、元々不良だったんだよ。一回シャーレに喧嘩売って、コテンパンにやられてよ」

「……それで、先生に拾われたんだね」小鳥遊ホシノが口を開く。「まぁ、色々あるよね〜」

 私は頭をかいてバツの悪さを誤魔化す。

「でも、連邦生徒会や公安局がよく許可を出したね」

「連中も今は私らなんかに構ってられないんだよ」

 もっとも、先生の言い訳あってこそでもあるが。

 ──シャーレとしての事業、「不良更生プログラム」の一環として保護したまでだ

 あんな言い訳、こんな時世じゃなきゃ通じなかっただろう。

「連邦生徒会長が消えて業務の殆どが滞って、シャーレもその割を食わされてる」テツが目を細めて言う。「あれだけの仕事を一人の人間に依存していたなんて」

 そりゃ連邦生徒会長も嫌になるだろうな。

 ま、私は失踪の原因を知ってるわけではないが。

「それに公安局も連邦矯正局も牢屋はパンパンらしくてな。シャーレや連邦生徒会に負けず劣らずのてんてこ舞いらしい」

 かくして世界はままならない……なんて、格好をつけた言い方をしてみたり。

「……先生、遅いね」砂狼シロコがポツリと言う。

「だな……ま、仕事の愚痴はこれくらいにしてさ。もっと楽しい話題で盛り上がらね?」私はテツの肩に腕を回す。

「雑に絡まないで」

 すぐに振り解かれてしまう。

「ちぇ」

「そうそう。折角みんなでご飯食べるんだし、もっと盛り上がってこーよ!」

 こういう時、シナオがいるととても助かる。

 騒いでる間は、不思議と腹の虫も少し大人しかった。

 

  ◯

 柴関ラーメンの前に到着する。

 予定より少し遅くなってしまった。皆はもう食い終わっているだろうか。

 そう考えながら戸を開ける。

「あ、先生ー!」

「やっと来た、さっさと注文しようぜ」

「ん、私は……」

 そんな事を言いながら皆が注文を始める。

「まだ食っていなかったのか」

「はい。皆、お腹を空かせてたんですよ」ミチヨが言う。

 テツが立ち上がり、こちらへやって来る。

「遅い」

 俺の顔を見ながら、そう言った。

「……遅い」

「すまない」

 テツは自身が座っていた椅子を引く。

「座って」

「む……」

 俺は「別の席に座る」と言おうともしたが、テツに有無を言わせない圧のようなものを感じ、大人しくその席に座ることにした。

 テツは改めて、俺の正面の席に座る。

「あらら。とられちゃったね、シロコちゃん」

「ん……」

 ホシノとシロコがそんなやり取りをする。

「あんまり待たせんなよな」ククリが言う。

「善処する」

「そうして」テツがメニューを見ながら言う。「私、塩ラーメン」

「私は醤油ラーメン、チャーシューと卵追加で。先生は?」

「俺は……柴関ラーメン、トッピングはチャーシューで頼む」

「あいよ。ちょいと待っててくれ」柴大将がメモを持って厨房へ入っていく。

「そういや、先生って普段何食べてるの?」ホシノがそんな事を言う。

「それがさー。先生毎朝サンドイッチしか食べないんだよねー」シナオが答える。

「えぇー。先生、もっといろんなご飯食べないとー」

「……善処する」

 とは言え、何を食えばいいのだろうか。

 俺はあまりにも食に関しては無知である。

「おまちどう」

 しばらくすると注文したラーメンが運ばれてくる。

 エア曰く、朝からラーメンを食うのはあまり一般的ではないらしい。

 朝食としては不向きか。

「こりゃ美味ぇな!」

「うん。美味しい」

 目を輝かせるククリの言葉にテツも同意する。

「あぁ……美味い」俺もそう言った。

「これでみんなも柴関ラーメンの虜だね〜」

「今後ともご贔屓にー☆」

「なんで先輩たちが宣伝してるのよ……」

 食事が終わる頃には、辺りはもう暗くなっていた。

「食った食った〜。明日も来たいな」

「毎日食べていたら体に毒よ」

「そーそ。たまに食べるから良いんじゃん!」

「そんなもんかぁ?」

 帰りの車はやけに騒がしかった。

 ……いや、「賑やか」と表現するべきか。

「先生、また連れてってよ!」

「ああ。約束しよう」

 エアが何やら声を漏らした。

 笑っていたのかもしれない。

 時折、この賑やかな雰囲気に引っ張られるような感覚を覚える事がある。

「先生?」テツがこちらを見上げていた。

「……いや。何でもない」

「そう」

 俺とテツは、それ以上言葉を発さなかった。

 賑やかな後部座席とは対照的に。




 アンケートの「持たせていい」と「オリキャラにも持たせていい」は実質同じでしたね。
 すみません。

 あと、7話の最後にちょこっとだけ付け足しました。

 本編がいつもより短くなってしまった分……というと変ですが、この場を借りて更生プログラム組の装備についてお話します。
 ベストやリグに関しては細かく説明しても仕方がないので、銃の話をば。
 ククリのメインアームはAKS-74Uです。状況によってはサプレッサーを付けたりサイトを乗せたりとカスタムすることがあります。
 テツはレミントンM700を使っています。こちらは常にサプレッサーとバイポッドが付けられています。作中での描写通り、ちょっとお高いAP弾を持っていたりもします。
 ミチヨはAK-74M。本人はこれとAR-15系列の銃との二択だったのですが、ククリがAKS-74Uなので共通のマガジン・弾薬を使用する物を選びました。フォアグリップとサプレッサー、更に最近出た給料で買ったトップマウント・ドットサイトを付けています。近〜中距離専門。
 シナオはUziを使っています。この中じゃ一番安いかも?カスタムは全くされておらず、撃つ時は照準なんて見ていません。なのに命中率はそこそこ。こちらはレミントンM870との二択でした。もしM870になっていたらソードオフな上ストック無しピストルグリップにするつもりでした。シナオってそんなに殺意高くないよなってことで没に。
 サイドアームは全員共通でH&K USP.45です。何故45口径かと言うと作者の趣味です。こちらも状況によってはサプレッサーを装着して使用されます。潜入や隠密となると、45口径の方が消音効果を期待できる……なんて、言い訳をしてみたり。
 一応、前衛(ククリ・シナオ)、中衛(ミチヨ)、後衛(テツ)という編成になります。
 あくまでもオリジナルキャラクターなので活躍は程々に……と行きたいのですが、原作キャラを食わない程度には活躍させていこうかなと考えています。
 もしこの子たちが皆さんに気に入ってもらえたなら、私は嬉しいです。
 それでは、また次回。
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