世界の敵として、勇者一行と対決し、正面から叩き潰された。
「だけど、掴んだ。魔法の核心を!」
私は死に際で、私は自らの魔法の核心を掴むことに成功。
服従させる魔法を拡張。更に効力が逆になる術式反転を会得。自らを回復させる反転術式とそのアウトプットも可能になった。
だが、それでも勇者一行には勝てない。
正攻法では勝てない。なら天敵が寿命で死ぬまで逃げる。ついでに『服従させる魔法』で数と質を揃えて、次世代の脅威に備えることが方針として決定する。
「手駒の七割を喪失。強力な個体も少ない。辛い状況が続くわね」
試行錯誤の末、服従させるのは魔族や魔物が効率的だった。魔族は身体能力が高く、生まれつき魔法を持っている。故にバランスの良い個体を集めるなら魔族を従えたほうがお得だったのだ。
人類種は人類種で使い道はあるから集める必要があるが、今ではない。
これにより『十種影法術』『赤血操術』『模倣』『誅伏賜死』『無為転変』『御厨子』という烏合の手札を揃える過程で、決戦級の魔法を持つ個体を獲得するに至った。
◆
数百年後、目の前に勇者一行の魔法使いにして、私に敗北を刻んだ葬送の忌み名を持つエルフ、フリーレンが立っていた。
魔族の強みは魔法、魔力、肉体、そして言葉。
「人間と魔族の混成部隊で攻めてみたけど、やっぱり駄目ね。けど魔力は削れた。前みたいに纏めて吹き飛ばせば良いのに、チマチマと破壊するなんて、何を考えているの?」
「それをやったらヒンメル達に怒られたからね」
「ヒンメルはもういないじゃない」
「…………やっぱり魔族は駄目だ」
感情が乱れているわ。よほどヒンメルが大切みたいね。でも、今は私と殺し合いをしているのよ?
作戦に夢と希望を詰め込まないで欲しいわ。反応に困る。
「アウラ。お前は今、ここで始末する」
「あまり強い言葉を使わないほうがいいわ。弱く見えるもの」
「なら服従させたら?」
やるわけない。ガス欠寸前の癖に、そんな堂々としているなら、何かひっくり返す一撃が在ることなど予想できる。だからこそ、私は魔法を使おうとしていると誤解させる為に魔力を放出する。
それに対してフリーレンは動じない。むしろ余裕さえあるようだ。
服従させる魔法は割れている。魔力の総量が多い方が主となる。それに対して何の手を打たず、むしろ発動することを待つ動作。
「魔力を用意して、隠している?」
フリーレンの表情が変化した。魔力制御ではできても肉体反応は隠せない。
確定した。
ああ、なるほどコレが奥の手ね。確かに魔力と魔法を誇示する魔族に対して、有効な戦術だ。
自らの魔法と魔力を隠して弱体化して、油断した相手に不意打ちする、など魔力と魔法が全ての魔族には考えすら及ばない。
でも、言葉を操り欺くのは魔族の専売特許。
「見えたわ。何なのその魔力は……一体何なの!? 500年生きた私よりも、多い!? ありえない! そんな事が!!」
「アウラ、お前の目の前にいるのは1000年生きた魔法使いだ」
生きた、ね。でもその質は? 長く生きていても、質が悪ければ何の意味もない。
貴方ちゃんと、今を大切にして全力で駆け抜けているのかしら、フリーレン?
「フリーレン。私は貴方と違い、この500年生きてきた」
「……? 言った筈だよ、私は1000年間生きたと」
「竜戦虎争! 合縦連衡の!! 魔法の世界を!!」
魔力で強化した肉体で、地面を蹴る。フリーレンの懐に入る。防御魔法が展開されるが、そんなもの貫けない私の拳ではない。
「妥協した時間を送るお前より、楽しく生きた私が一歩先をいく!!」
敗北から研鑽を欠かしたことがない我が魔拳。
黒い火花が散る。
「黒閃ッ!!」
私は、魔族のアウラ。
言葉で騙り、力で捩じ伏せ、魔法で支配する最強無敵の負け犬だ。
歩みを止めた老兵はこの世界に必要ない。さっさと鬼籍に入れてやる。
◆少し前◆
ゼーリエ。
凄い昔から生きているエルフ。
この世に存在する全ての魔法が貯蔵されているらしい。
欲しい……やつの全てが。
長命長寿を振りかざして、上から目線で私達を見下ろされるのは気分が悪い。せっかくの苛烈かつ好戦的な性格に見合った驚異的な能力も『引きこもり』になってしまえば意味はない。
ゼーリエが持つ魔法を知ることができれば、面白いが難しかったアイディアを現実に持ってくることをできるかもしれない。
「油断はしない。慢心もしない。計画を練って、やってみましょう。楽しく、生きて、北へ進むために」
その手段に選んだのは『魔法使い一級認定試験』。一級になった特典にゼーリエから魔法を教えてもらえるというものがある。
「直接会う事ができれば、支配できる。伏魔御厨子の領域で削り、魔虚羅で致命打を叩き込み、特級魔族達で逆転を封じた上で、服従させる魔法で、やつを手に入れる」
私は今白い画用紙の前で クレヨンを握りしめた幼子のような心持ちだ