戦犯にはなりたくない! 作:蒼天
木馬がS3ポイントに侵入したとの報告が届くやいなや、すぐに僕たちも出動の命令が下った。
シアトルへ向かう途中の中継地点。僕たちはキャリフォルニアベースから派遣されてきた2つの援軍部隊──闇夜のフェンリル隊、そしてマッチモニードとの合流を果たした。
「久しぶりだな、ギャレット少佐。キャリフォルニアベースの防衛隊長を辞したと聞いた時は驚いたが、まさか特殊部隊の指揮を執っていたとはな……」
真っ先に声をかけてきたのは、フェンリル隊を率いるゲラート・シュマイザー少佐だった。幾多の死線をくぐり抜けてきた熟練の将ならではの静かな圧力をその身に纏っている。
「お久しぶりですね、ゲラート少佐。特殊部隊隊長の先達として、ご指導いただければ幸いです」
ギャレット少佐が恭しく応えると、ゲラート少佐はその背後に控える僕たちの存在に気づき、厳格な表情をわずかに緩めて口元をほころばせた。
「ライゼン中尉とブラウン曹長も久しぶりだな。オルガ少尉が宇宙攻撃軍に転属になったと聞いたが──」
ゲラート少佐がブラウンの隣に立つギャリー少尉に視線を向けた。
「はい、こちらが新しく海兵隊に入ったギャリー・ロッジ少尉です。実戦経験豊富な頼もしいパイロットですよ」
「ギャリー・ロッジ少尉です。フェンリル隊の噂は聞いております。よろしくお願いいたします」
ギャリー少尉が背筋を伸ばし、一糸乱れぬ綺麗な敬礼を捧げると、ゲラート少佐も力強い手つきで敬礼を返した。
「うむ、よろしく頼む。最近まで
「はい、フェンリル隊の皆さんもお元気そうでなによりです」
ゲラート少佐の後ろに控えるニッキ・ロベルト少尉たちの姿を見て、僕も自然と笑みがこぼれた。
「──ほう? ヒヨッコどもも少しはマシな顔つきになったみたいだな」
重厚な足音とともに、ソンネン少佐が姿を現した。その厳めしい面構えと独特の威圧感に、ゲラート少佐が苦笑を交えて答える。
「貴官との模擬戦が大分堪えたようでな。性根を叩きなおしてくれて感謝しているよ、ソンネン少佐」
その言葉で、かつて完膚なきまでに打ちのめされた苦杯の記憶が蘇ったのだろう。シャルロッテ・ヘープナー少尉が待ってましたと言わんばかりに目をギラつかせ、一歩前に出た。
「ソンネン少佐! この任務が終わったら、再戦を希望します!」
「ちょっ……シャルロッテ! 今はそんな事を言ってる状況じゃ──!」
「何よ、ニッキ! アンタは負けたままでいいの!?」
「いや、良くはないけど……今言うことじゃないだろ!?」
相変わらずの痴話喧嘩を始めた2人を見て、マット・オースティン軍曹が呆れ顔でル・ローア少尉の肩をつついた。
「……ヒヨッコどもを止めなくていいんですかい? ル・ローア少尉」
「止めたければお前が止めろ、マット。……俺もソンネン少佐にリベンジしたいという気持ちはあるからな」
「へぇ……? 少尉にそんな負けず嫌いな一面があるとは知りませんでしたぜ。俺が相手の時もそれくらい闘争心を剥き出しにしてくれりゃあ、少しは楽しめるんですがね」
「お前に勝ったところで何の自慢にもならんだろう。悔しければソンネン少佐を見習って、もっと精進するんだな」
「何で俺が説教されてるんですかねぇ……?」
眼前に広がるフェンリル隊の賑やかな光景に、ソンネン少佐が豪快に肩を揺らして笑う。
「ハハハ! 相変わらずだなぁ、お前らは。再戦を望むなら、いつでも相手になってやるぜ。俺の部下たちもあれからかなり成長してるからな。そう簡単に勝てると思うなよ?」
「望むところです! 私たちも
「おい! 約1名って誰だよ!?」
そんなやり取りをギャレット少佐の後ろで見守っていたアルマたちが、肩の力を抜くようにぽつりと呟いた。
「ライゼンから北米最高のチームって聞いてたけど……私たちと似たような雰囲気だね」
「そ、そうですね……。もしかして、他所の部隊もノイジー・フェアリー隊と同じような感じなんでしょうか……」
「いやいや、あっちが緩すぎるだけだろ……」
北米戦線をともに駆け抜けてきた面々が勢揃いし、作戦直前の殺伐とした緊張感が幾分か和らいでいく。過酷な戦場にあっても変わらない彼らの頼もしさに、僕の心にもわずかな余裕が生まれかけた──その時だった。
「──あら、随分と楽しそうね。アタシも混ぜてもらっていいかしら?」
僕たちの背後から、冷や水を浴びせるような硬質な声が響いた。
マッチモニードの指揮官であるニアーライト少佐。味方であるはずなのに、纏う雰囲気はどこか周囲を切り裂くようなトゲトゲしさを帯びており、周囲の空気が一瞬にして凍りつく。
「……もちろんよ、ニアーライト少佐。初めまして、ノイジー・フェアリー隊のキリー・ギャレット少佐です」
「かのキラー・ハーピーとお会いできて光栄だわ、ギャレット少佐。乙女だけの部隊だなんて、羨ましいわねぇ……。ウチはむさ苦しい男ばかりで本当に嫌になっちゃうの。アタシもそっちに混ぜてくれないかしら?」
「「「ぃ──っ!?」」」
ニアーライト少佐の妖艶な言葉に、ギャレット少佐の後ろにいたアルマたちが一斉に引きつった顔を見せた。
それも仕方がないだろう。何故なら、ニアーライト少佐は言葉遣いや立ち振る舞いは女性的であるものの、その骨格はれっきとした
冗談なのか本音なのか、いまいちよくわからないが、油断ならなそうな人物であることは、その佇まいから理解できた。
「それにしても、今回の任務では宇宙攻撃軍からソロモンの白狼が参加するそうね。北米はキシリア様の管轄だというのに、ドズル中将の身勝手にも困ったものだわ。そうは思わない?」
ニアーライト少佐は気怠げに長い指先を顎に添えると、あからさまな不快感を隠そうともせず、艶っぽい声の裏に冷ややかな棘を混ぜ込んでそう吐き捨てた。
ジオン公国を牛耳るザビ家の根深い派閥争いが、この決戦の場にまで濃い影を落としていることを、その一言が雄弁に物語っていた。
「……木馬は強敵よ。ドズル閣下もガルマ大佐の身を案じてのことでしょう」
「ガルマ様の身を案じるなら、なおのこと配慮が必要よ。聞いた話によれば、白狼は木馬の指揮官と幼馴染という話じゃない。後ろから撃たれでもしたら、溜まったものじゃないわ。──そうでしょう? ライゼン中尉」
(──!? この人、どこまで知って……!?)
心臓が跳ね上がった。マツナガ大尉とトウヤ少佐が幼馴染ということを知っているのはジオンでもごく限られている。
しかも、僕に問いかけたということは、グラナダでトウヤ少佐を捕虜にした一件も把握しているということだ。
「あなたも知っての通り、白狼は捕虜になったトウヤ・シロナギを救い出すために、実家のコネを使ってまでなりふり構わず奔走していたのよ。今回の地球降下だって、裏で何か良からぬ企みを抱いているとしか思えないわね」
「そ、それは……」
「……待ちたまえ、ニアーライト少佐。確たる証拠も無しに友軍を疑うのはどうかと思うが?」
言葉に詰まった僕に代わり、ゲラート少佐が制止に入る。だが、ニアーライト少佐の薄笑いは消えない。
「白狼が裏切っていないという証拠もないでしょう? そもそもあの男はルウムで捕虜になったレビル将軍を逃がしてしまった兇状持ちなのよ? マツナガ家だって建国以来の名家とはいえ、ザビ家に歯向かった結果、今では要職を干されているわ。彼が叛意を抱いていないと、何故断言できるのかしら?」
……確かに、ニアーライト少佐の言うことはもっともではある。
ソロモンでの一件以来、僕自身もマツナガ大尉が何らかの目的のために独自に動いているのではないかという疑念を拭いきれずにいるのだ。
オルガ少尉が協力すると決めた以上、ジオンに対して不利益なことはしていないとは思うが、マツナガ大尉の人柄を知らない人からしてみれば、疑うなと言う方が土台無理な話だった。
「……ニアーライト少佐、貴官の懸念はわかった。しかし、今回の任務の指揮官はガルマ・ザビ大佐だ。ガルマ大佐が信に足ると判断した以上、我々もそれに従うべきではないのか?」
「ガルマ様の立場上、お兄さんであるドズル中将の気遣いを無碍にはできないでしょう。だからこそ、アタシたちで不安要素を排除するべきではなくて?」
「排除、だと……?」
ニアーライト少佐の言葉に潜む危険な響きに、ゲラート少佐の目を細め、周囲の人間も息を呑む。味方同士の牽制などという生ぬるいレベルではなく、戦局に乗じた友軍の抹殺すら匂わせる過激な発言だった。
「そこで提案なのだけど──」
ニアーライト少佐は指先で自身のあごをゆっくりとなぞると、獲物を前にした蛇のように楽しげに人差し指をすっと立てた。
「白狼には先陣を切ってもらうよう、アタシたちからガルマ様に進言しましょう。そうでなければ信用できないと言えば、お優しいガルマ様もNOとは言えないはずよ。……そして、少しでも木馬を討つことを躊躇う動きを見せたら、アタシたちで後ろから木馬ともども綺麗に処理する。どうかしら?」
まるで名案だとでも言うように、ニアーライト少佐は淡々と言い放った。その内容に、場の空気が凍りつく。
味方を盾にして前線に放り出し、疑わしければ背中から撃ち殺す──文字通りの粛清提案だった。
「ふ……ふざけないでください!! マツナガ大尉は僕たちを裏切るような人じゃありません! そんな卑怯な真似──!」
「よせっ! ブラウン!」
感情を爆発させて思わず前へ飛び出そうとしたブラウンの身体を、すぐ隣にいたギャリー少尉が間一髪で力任せに抱き留めた。
「あら? あなたたちは不満なのかしら? このくらいの汚れ仕事、悪名高き海兵隊なら日常茶飯事だと思ったのだけどね」
「こ、コイツ──!」
ニアーライト少佐は、軽蔑と嘲弄を含んだ艶っぽい笑みを一切崩さず、怒りに顔を真っ赤にするブラウンを小馬鹿にするように見下ろした。
「ニアーライト少佐。申し訳ないけれど、私たちもその提案には賛同できないわ。あなたがマツナガ大尉を信じられないという気持ちはわからないでもないけれど、疑心暗鬼で友軍の背中に銃口を向けるような行為は、作戦の成功率を著しく下げる愚行よ」
「あら、そう。残念ね。いい考えだと思ったのだけれど……」
ギャレット少佐の毅然とした一言に、ニアーライト少佐もこれ以上は無駄だと悟ったのか、あっさりと引き下がった。
その薄笑いの奥には、相変わらず何を考えているのか読めない冷酷な光が残されたままであったが──。
「フフフ……そう睨まないでちょうだい。同じキシリア様に忠誠を誓う者同士、仲良くしましょう?」
(自分から不和の種を持ち込んでおいて何を言ってるんだ、この人は……?)
木馬との決戦を控えているというのに、どうして味方同士でこんな不毛な腹の探り合いをさせられなければならないのか。
艶めかしい言葉遣いの裏に隠された、どこまでも冷酷で掴みどころのない怪しい佇まいに、僕の胸の奥では嫌な胸騒ぎのざわめきがいつまでも消えずにいた。
「まあ、アタシの提案が受け入れられないというのなら、マッチモニードは好きに動かさせてもらうわ。白狼に背中を預けるなんてまっぴらゴメンですからね」
ふっと細められた瞳に底意地の悪い光を宿し、ニアーライト少佐は気怠げに肩をすくめてみせた。
協調する気など最初から毛頭ないと言わんばかりの態度。自由に動かせてもらうという露骨な単独行動の宣言だった。
「ニアーライト少佐、我々の指揮官はガルマ大佐だぞ。統制を乱すような行動は慎んでもらいたい」
「ゲラート少佐、
白々しく言いのけ、ニアーライト少佐は人差し指を唇に当ててクスクスと喉を鳴らした。軍の指揮系統を形骸化させる特殊部隊の弊害が、この現場を確実に侵食していた。
「随分と不満そうね。まあ、同じ特殊部隊とはいえ──ザクやグフで戦ってるあなたたちが、新型のドムを受領しているアタシたちに対して、面白くない感情を抱いてしまうのはしょうがないのでしょうけどねぇ……」
ニアーライト少佐は指先を口元に添えて艶やかな笑みを浮かべながら、どこか見下すような挑発を孕んだ眼差しで僕たちを見渡した。
背後に佇む重MS──ドム。その圧倒的な重量感と凄まじい威圧感は、確かに旧来のザクやグフとは一線を画す異彩を放っている。
ニアーライト少佐の優越感を隠そうともしない態度に、とうとうソンネン少佐の堪忍袋の緒が切れた。
「おい、オカマ野郎。MSの性能だけで勝てるなら、今頃ジオンは連邦なんざ叩き潰して戦争は終わってんだよ。たまたま上から新しい玩具を回してもらったくらいで、調子こいてんじゃねえぞ」
叩き上げるように放たれたその重い声には、数々の修羅場を機体の性能ではなく己の腕と血反吐で生き抜いてきた、熟練兵ならではの凄絶なプライドが宿っていた。
「あら、誰かと思えば時代遅れの戦車兵じゃないの。MSに乗れないからって、アタシたちに僻みや嫉妬をぶつけないでもらいたいわね」
「貴様っ……!!」
ソンネン少佐の眉が釣り上がり、殺気すら孕んだ怒号が飛び出す。しかし、ニアーライト少佐は気怠げに髪をかき上げると、露骨な蔑視を隠そうともせず、ソンネン少佐をあざ笑うように吐き捨てた。
「負け犬は負け犬らしく、後ろに引っ込んでなさい。ここはキシリア様に選ばれた者にのみ、発言が許されている場よ」
「なっ──!」
「あなたは──!!」
数々の戦場を生き抜いてきた熟練兵に対して、これ以上の侮辱はなかった。その言葉に、ブラウンのみならず、ニッキ少尉やヘープナー少尉、さらにはアルマたちまでもが、怒りに表情を歪めて一歩前に出かける。
しかし──。
「──先ほどから黙って聞いていれば、随分な物言いですね。最新鋭の機体を与えられたというだけで、自分がエリートだと錯覚なさらないことです。お里が知れますよ?」
これまで静観していたモニク・キャディラック特務大尉が、氷のように冷徹な眼差しでゆっくりと歩み出た。
一見するといつもの凛とした佇まいだが、その瞳の奥には隠しきれない激しい怒りの火が燃え盛っていた。
「あら……技術試験隊の特務大尉様かしら。ガラクタ同然のポンコツを押し付けられているだけの分際で、よくもまあ上官であるアタシに向かって偉そうに吠えたものね」
「ご存じないようですので、教えて差し上げましょう。総帥府の将校には
そのあからさまに馬鹿にしたような物言いに、ニアーライト少佐の薄笑いが引きつった。
総帥府──ジオン公国最高指導者、ギレン・ザビ総帥直轄の特務機関。
そこに所属する特務大尉という階級は、実質的に二階級上の
マッチモニードがどれほどキシリア閣下の名前を使おうと、ジオンの頂点であるギレン総帥の威光の前では、完全に意味を為さない。
エリートを自称しているだけのニアーライト少佐と違い、キャディラック大尉はギレン総帥から認められた、正真正銘のエリートなのだから。
「私たち総帥府は軍を統制するために存在します。つまり、私にはあなたの行動を監視し、掣肘する義務があるのです。おわかりいただけましたか? 少佐殿?」
総帥府直属のキャディラック大尉はいわゆる政治将校。ジオン公国の理念から逸脱した軍人を、取り締まる役目を担っている。
キシリア閣下の特殊部隊……特に、マッチモニードのような、ならず者に近い集団にとっては、天敵ともいえる存在だった。
「チッ……! ギレン総帥の威光を笠に着るだけの女狐が……」
「その言葉、そっくりそのまま返させていただきましょう」
ピシャリと言い捨てたモニク大尉の眼光に、ニアーライト少佐は悔しそうに歯噛みしながらも、これ以上は分が悪いと悟ったのか、不機嫌そうに鼻を鳴らして視線を逸らすと、踵を返して歩き出した。
「ニアーライト少佐、どこへ行くの?」
すれ違いざま、ギャレット少佐が呼び止める。しかし、ニアーライト少佐は足を止めることすらせず、肩越しに冷ややかな視線を越すだけだった。
「キラー・ハーピー。申し訳ないけれど、アタシたちは独自の判断で動かさせてもらうわ。理由はさっき言った通りよ。いけ好かない総帥府や宇宙攻撃軍の連中とつるむなんて冗談じゃないわ」
去っていくニアーライト少佐の背中を見送りながら、場の空気は最悪と言っていいほどの重苦しさに包まれていた。
「何なんですか、アイツは……! マツナガ大尉だけじゃなく、ソンネン少佐まで馬鹿にして……!」
「落ち着けよ、ブラウン。……まあ、暴れたくなる気持ちもわかるけどな。俺もあんなに胸糞悪い奴は初めて見たぜ」
ブラウンが怒りで顔を真っ赤にし、破裂しそうなほど強く拳を握りしめている。横に立つギャリー少尉も、心底吐き気を催したように忌々しげに息を吐き捨てた。
「……ふん、口だけのオカマ野郎が」
キャディラック大尉に庇われる形となったソンネン少佐が、不機嫌そうに鼻からフッと息を吐き出した。
「ソンネン少佐、あんな奴の言うことなんて気にする必要無いですよ! 少佐の実力は俺たちフェンリル隊が一番よくわかってますから!」
「ロベルト少尉の言う通りですぜ、少佐。あんなオカマ野郎の手なんざ借りずとも、俺たちだけで木馬を討ち取ってやりましょうや」
「フッ……いつになくやる気だな、マット」
「あそこまで見下されて黙っていられるほど、俺はできた人間じゃねえんですよ、ル・ローア少尉」
「そうだな……今回ばかりは、俺も同意見だ」
ニッキ少尉が力強く自分の胸を叩いて叫び、その傍らに立つオースティン軍曹やル・ローア少尉も、怒りと闘志を漲らせて深く深く頷いて同調した。
「カッコ良かったですよ、キャディラック大尉! さすがは総帥府のエリートですね! 同じ女性士官として憧れます!」
「私も! 総帥府ってバルバラ中尉みたいに怖いイメージがあったんですけど、すっごくスカッとしました!」
「もう、アルマさん……バルバラ中尉に聞かれたら、また怒られちゃいますよ? でも、私も同じ気持ちです。ありがとうございました」
「私も、大尉殿がいなかったら、気色悪すぎてあのオネエ野郎をぶん殴ってたかもしれないですね……」
ヘープナー少尉とアルマたちが目を輝かせながら駆け寄り、声を弾ませた。年下の少女たちから純粋に慕われるという経験があまりないであろうキャディラック大尉は、どこか面食らったようにわずかに頬を赤らめ、咳払いを一つ挟んでいつもの冷徹な表情を作り直そうと必死になっていた。
「やれやれ……。不本意な形ではあるが、これで我々の腹は決まったな」
「ええ、マッチモニードのおかげ……とは絶対に言いたくはありませんが」
ゲラート少佐とキリー少佐は深々と溜息をつき、呆れ混じりの苦笑を浮かべながら肩をすくめた。
不快な輩たちの横暴な乱入と不躾な煽り。だが、皮肉にもその胸糞悪い言動は、派閥や部隊の垣根を越えて、ここに集った精鋭たちの志と結束を固く1つに束ね上げる、起爆剤となってしまったのだった。
「皆、ニアーライト少佐の言葉に惑わされるなよ。我々の目的は1つ……ガルマ大佐の指揮の下、木馬を討ち取ることだ」
ゲラート少佐が落ち着いた、重みのある声で周囲を静まり返らせた。その場にいる全員が姿勢を正し、静かに頷く。
「行くぞ──シアトルへ!」
「「「はっ!」」」
次話からようやく戦闘シーンに入れると思いますが、本腰を入れて書きたいので、少し時間がかかるかもしれません。