―8月某日
ジリジリと肌を焼く太陽と蒸し暑い空気が外には広がっていた
こんな日は部屋の中でゆっくりしよう。そう思うのかま普通だろう。だが、世間の目は部屋の中ではなく、むしろ外の方へと向いていた
ホロと呼ばれている大企業が主催しているレース会場の中には、数十台の車が100を超える速度で走っていた
公道でレースをするこの競技Holo Grand Stage、通称【HGS】は今や誰もが憧れるレースになっている
「先頭下克上をかけた8号車が最終ラップに突入!遅れて女王15号車が続けて突入!ここから巻き返せるのでしょうか!?」
アナウンサーが勢いよく実況をする。8号車の後方40mほどに女王と呼ばれた15号車が追っていた。誰もがこの女王を倒そうと下克上を仕掛けるも、今まで破られたことはない
不敗の女王。レースクィーンとも呼ばれた彼女が乗る蒼いR34スカイラインは、ジリジリと8号車の後ろへと張り付いていく
15号車の選手の耳に、ビットからの司令が届いた
『落ち着いて、相手のフロントタイヤは厳しいと思う。だから、少しオーバー気味なスビードで確実にインに向かわせて。必ずアンダーになる。その後は立ち上がり重視でインから抜く事』
その言葉を頭に入れて最終コーナーまで立ち向かう
8号車ドライバーは抜かされまいと必死に逃げようとするも、追い抜きをされそうになり思わずアクセルを踏みすぎてしまった
最終コーナーに入ったその直後、8号車のフロントタイヤがグリップ力を失い外に膨らんで行く。その瞬間を15号車ドライバーは逃さなかった
「15号車が抜いたぁぁぁ!!!そしてチェッカーが振られました!!レースクイーン"ときのそら"!王座を守り抜きました!!!」
期待と歓声。レース会場に響き渡るのはそれだけではなかった
またしても倒せなかった。やはりあいつでは無理だ。俺が倒さなくては
レーサーたちの熱意は未だ消えていなかった
レースクィーン【ときのそら】はピットに戻り友人Aと喜びを分かち合う。だが、彼女にとってこれはただの暇つぶしのようなもの
彼女を心から震わせる相手は未だ現れてはいない。
―――ジリジリと鳴り響く時計を右手で探し、勢いよく叩く
ぐちゃぐちゃになった布団に包まれている半袖短パンで寝る少女は、眠たげな顔をしながら現在時刻を確認した。
AM7:30。学校に行くにはまだ早いが、今日は珍しく一回目のアラームで起きれた。なにかいいことがあるかもしれない
眠い頭を起こしながらと服を着替えて階段を降りる。朝らしい美味しそうな匂いが漂ってくる。今日は目玉焼きと味噌汁かな?
「…おはよ。かぁちゃん」
少女が母親に挨拶をすると、母親は驚いた顔で少女を見つめた
「なんだよ…そんなアヒルみたいな顔して」
「いや、スバルがこんな朝早くから起きてくるなんて珍しいなーと思って」
「失敬な、スバルだって早起きするわ」
「いつも登校ギリギリで起きてくるのはどこの人だっけ?」
ああー聞こえなーいといいながら少女ことスバルは顔を洗いに行く
戻ってくると嬉しそうな顔をしながらスバルが座ってご飯を食べるのを待っている母親がいた。彼女の名前はしぐれうい。スバルの母であり、育ての親だ
スバルが座ってご飯を食べ始めると、ニコニコしながらこちらを見ていた。スバルが珍しくゆっくりご飯を食べられるので、嬉しくてたまらないんだとか
「スバルよ。あんまり夜遅くまで起きてたら体壊すぞ」
「大丈夫。スバル最強だから」
「んなこと言って、この間だって癒月先生に迷惑かけたでしょ」
「ウッ…それを言われると…」
あせあせとスバルの額から汗が滴るような気がする
癒月先生とはスバルが1番話しやすいと思ってる保健室の先生だ
とてもフレンドリーでどこか先生らしくない先生だから、みんなに好かれている
この間は…ちょーっと寝不足で保健室借りただけだからね
―――――
―――
―
「それじゃ、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
スバルは余裕のある時間で登校するのは実に1年ぶり…くらいだ。学校まではだいたい10分ほど。今日ならばゆっくり行ってもお釣りが来るほどに時間がある。楽しくなってきたスバルはウキウキでスキップしながら学校へと足を向かわせていると、辺りをキョロキョロしたり、通行人に話しかけようとして諦めたりと、なんだか困っているつば付き帽子を被ってマスクの女性がいた
ういからは「怪しい人には近づくな」と口酸っぱく言われているが、スバルは今日はウキウキだから助けてあげよう!とその人に声をかけたのだった
「すみません、なにかお困りっすか?」
「あ、あの…道に迷ってて…」
「なるほど。ならスバルが案内するっすよ。この辺詳しいんで」
「あ、ありがとう…でも大丈夫ですか…学校とか…」
「ここから10分くらいで着くんで大丈夫っすよ!さ、どこに行きたいんですか?」
女性は少し神妙な顔をしたが、ここに行きたいと話した
その場所はスバルの通う学校までの道のりとほぼ変わらないため、一緒に歩いて行くことにした
その道中、スバルが大好きな牛丼屋があってカレーが食べたくなったり、友達のばあちゃんがやってるおむすび屋でばあちゃんと挨拶したり…そんな中、女性はスバルに対して問いを投げた
「ね、ねぇ…ときのそらって名前…聞いたことある?」
少し恐怖で震えているような声で聞いてきたスバルは少し違和感を感じたものの、その人を全く知らない。有名な人なのかとこちらから聞くと、「まぁそんな感じ」と回答があった
「レーサーなんだけどね…?」
「レーサー…あぁ、友達がなんか言ってたような…」
「知らないならいいの!ごめんなさい、変な事聞いて…」
「…なんかすみません。スバル、テレビとか見ないんで情報のアップデートが遅いんですよ。そのせいでお前は2世代前を生きているとか言われてて―――ん?」
その時、スマホのバイブが鳴った。
同級生のトワからの連絡だった。
――スバルちゃん今日も遅刻???
何を言ってるんだ。今日はちゃんと早起きして――――と時間を見れば8:25分を回っていた。ホームルームまであと5分。このままでは遅れてしまう
「やべぇッ!すみません!スバルこれで失礼します!」
「あ、ちょっと待って!お礼だけさせて!」
そう言って女性は2枚のなんか神々しいチケットを渡してくれた
引き止めてごめんなさいとのことで、まぁご利益ありそうだし貰っておこうとカバンにしまい込んで、スバルは猛ダッシュで学校に向かった
…その背を見る女性はふと呟く
「…私のことを全く知らないなんて…いつぶりだろう…」
少しだけ女性の胸が高なった気がする。かつて無名であったとしても、今は違う。女性の背後からお待たせーとネガネをかけた運転手が車を止める。その車に女性は乗り込むと、マスクを外してふぅと息を吐いた
その顔は今は大人気のレースクィーン、ときのそらであった
(もし…あの何も知らない子がレースに興味を持ってくれたら…楽しいバトルが出来そう…そんな気がする)
そう思うそらは今もダッシュで走るスバルを思いながら街を抜けていった
この物語は、かつて私が執筆していたホロレーサーという作品(現在は非公開)のリメイク作品です。
未完成で終わりましたが、ご存知の方は改めてよろしくお願いします。未完成で終わって申し訳ない…