ドタドタと廊下に日々響き渡る忙しない足音は、扉の前手間ブレーキをかけて止まりばっ!と勢いよく扉が開かれる
「セーーーーーーーーフ!!!!!!」
息の切れた大空スバルは手を広げて言い放った。
しかしそれと同時にホームルームのチャイムが鳴り響き、担任の「残念だがアウトだ」と悲しい判定がスバルに突き刺さる
ショボンとしながら自席に向かい座り込むと、隣の席の常闇トワがニヤニヤと笑ってこちらを見てきていた
「まぁ〜たスバルちゃん遅刻じゃん。せっかく連絡入れたのに」
「ばっ―連絡入れてくれたのは嬉しありがとうだけどさ!10分前で良くない?!?!」
「スバルちゃんならもうつく!って送ってくれると思ったんだもん。それよりまた深夜までゲームしてたんでしょ?」
常闇トワ。スバルと中学生の頃から同級生で、スバルをよくいじっている。成績はスバルよりも上だ
「今日はちゃんと早く起きたの!でも道で困ってる人いて――」
「―そこで夢が覚めた…と」
「だからちげぇって!!!!」
『はいそこ!静かになさい!』
先生から注意され、ショボーンとなる2人
これが2人の関係性だ。いじりいじられのちょうどいい関係性。どちらも嫌がることのラインをわかっているため、そこまで踏み込むことはない。2人にインタビューしたとしたら、腐れ縁だとふたりして言えるほどに仲が良い
担任は進路希望調査を配るから、この日まで出せとみんなに進路希望調査票を渡して始める
スバルは進路希望かぁ…と途方にくれていた。別にやりたいことも無いし、目指したい道もない。この高校は普通科だから専門的な方向にも行けない。どうしたものかねぇ
「スバルちゃんはどこに行くか決めた?」
「絶賛迷子中。トワは?」
「トワはねぇ〜レースに関わる仕事がしたいんだ!」
目を輝かせてトワはそのように話す
昔からトワはレースのことが大好きだった。幼い頃に見たアニメが影響しているらしい。
「レースに関わる仕事?レーサーになりたいとかじゃないの?」
「レーサーになることも夢ではあるけど…あれは多大なる才能と努力によって成れるものだから…ラリーでいうコ・ドライバーみたいな存在を目指そうかな!」
ものすごく目が輝いている。もう少ししたらビームが出せるかもね
ただ、レース好きはこの教室にも沢山いる。耳に入ってくるのは、ときのそらのレースとれなかった〜とか第3コーナー付近当たったーとか…それは全て今、世間は絶賛レースブームだからだ。だがスバルにはなにかハマらなかった
―車を動かすなんて日常生活かゲーム程度でいいんよ…そう思いながらスバルは自らの腕の中に眠る
なにかトワに言いたかったことがあるような…と思うものの走ってきた疲れがスバルを睡眠へと誘った
…そして気づけばもう放課後。帰らなければならない時間帯。
ずっと寝ていた訳では無いが、記憶が欠落している。今だってトワから帰るぞーと言われて記憶が再構築されたみたいなところあるし
スバルはカバンを持ってトワと帰り道を共にする
―そういえば今日の朝この道で…とあの女性から貰ったものがあることを思い出し、トワに聞いてみることにした
「トワ、今日の朝さ…迷子の人を導いた時に貰ったものあるんだけど―」
「なに?クエスト完了でロットの杖とか貰った?」
「いやそんなドラクエ的なものじゃないから」
そう言ってスバルはチケットをトワに見せる
「これ貰ったんだよね。なんかのチケット」
「神々しく金ピカじゃん…どれどれ…って!!!!」
トワは目と口を大きく開きながらパクパク口を動かし、スバルに何かを伝えようとする。落ち着いてきた時に話を聞くと、これは今週行われるHGSというレースの特別席のチケットらしい。金を積んでも手に入らない言わばこれこそが金みたいなものなのだとか。
まぁスバルは興味無いし、トワにあげると言ったら、トワはスバルのその手を掴み、絶対にお前も行くんだよとものすごい眼力で睨んできた
「わかったわかった…ったく…なにがいいんだか…」
「やっほぅ!!!ときのそら選手に会えるかなぁ♪」
(まぁ…トワが楽しそうだからいいか)
そしてレース当日。大規模なサーキット場にスバルとトワは来た。ものすごい熱気が入口からでも伝わってくる…今か今かと始まる瞬間を待ち望んでいる人々が集まっているのだ
受付まで進み、チケットを出すと受付担当者は少し奥へと促され、お待ちしておりました。スバル様とものすごいタキシードを来た紳士から挨拶をされた。そしてさらに奥へと促され、エレベーターを使い上に行く。そしてたどり着いたのが一室の部屋だった。そこはゴールラインが正面にある場所で、ラスト直線が左右から一望できる個室客席だった。
フカフカそうな椅子と、多数のモニター。これは何かと聞くと、紳士は答えた
「それは各地点に配置されたカメラや、ドローンカメラなど全ての地点がわかるモニターとなっております」
…なんかものすごいところに来てしまった気がする。
ビシッと決まったタキシードを着る案内人…それに対して2人の服装はラフな一般人デースみたいな格好だ。多分来る場所を間違えたのだろう
だが、逃げようにももう時期レースは始まる。と促されるまま高級そうな椅子に座った。ふわふわな椅子はそれはもう…と心が蕩けそうな時、オープニングセレモニーが始まった
よくある高級そうな車たちが並んで走ったり警察車両が全開で駆け抜けて行ったり…
数分それが続いたあと、女性のキャスターがお待たせしました!と言っていよいよレース本番が始まろうとしている
―今回出場するのは全部で20台。それぞれが開始位置に停車してレースが始まるのを待っている途中だった
トワはスバルの隣でウキウキな顔でそれぞれの車を舐めるかのように見つめる。スバルはどこがいいのかねぇと思いつつ並ぶ車を見ていた時―スバルは雷に打たれたかのような衝撃を心に受けた
(なんだろ…あの15って書いてある蒼い車…なんか…不思議な感じだ。まるで…真っ白の空間にあの車とスバルだけがいるみたいな…)
「……ちゃん…スバルちゃん!?」
「―へぁ?あ、悪い聞いてなかった」
トワの掛け声で戻ってこれた。だが、スバルにとって感じたことの無い感覚は、その後のレースが始まっても消えることはなかった
レースが終わり、楽しかった―!と椅子に背をつけて伸びるトワ。スバルは未だあの感覚がなんなのかわかっていない。そんなふたりに誰かが入室してきた
失礼します。と凛々しい声で挨拶してくるレーシングスーツを来た女性。トワはそれを見てまた金魚みたいに口をパカパカしていた。どうしたのかと聞くと、彼女はレースクィーンのときのそら選手だという
「レ、レースお疲れ様です!今回もものすごい展開でした!」
「ありがとう。 」
「キャア!そら選手と会話しちゃった!」
キャッキャと騒ぐトワとそれをホワァーと呆けた顔でスバルは見る
そらは、スバルに向かってこの間はありがとう。お陰様で遅れずに済んだよとお礼をいう
―なんの事だ…?と頭の中で色々考えるも一向に出てこない。それを見てそらは帽子とマスクを身につけた。その素顔を見たスバルはあ!!!と霧の中から宝石を見つけるかのように思い出したのだった
「あの時の迷子の人!」
「貴女にとってはこっちの姿の方が印象深いかぁ。今日のレースは楽しんでくれた?」
「はい。スバル、レースは全くわかんないけど、今までに感じたことの無い感覚でした」
それを聞いたそらは少し嬉しくなる
レースが好きな人がレースを見て感動するのは当たり前だ。だがその逆、レースに興味無い人がレースをみて面白いと感じることはとてつもなく難しい。久しぶりのこの感覚…嬉しくならないわけがない
だが、スバルはあの感覚がなんなのか聞こうかなと一瞬思いはしたが、彼女に聞くことでもないなと胸の中に秘めておく
レースの帰り道
トワはスバルに対してときのそら選手との関係性を激しく問いただされた。どういうか関係なのか!どこで知り合ったのか!などなど…
だから前に話した通り迷ってたところを助けたとスバルは言うと、トワはあれホントの話だったんだ…と驚いていた
スバルはレースに夢中になっているトワにならこの感情が分かるかもしれない。と思い、レース中に感じた感覚のことを聞く
「…ねぇトワ。今日不思議な感覚だったんだけど知らない?」
「え、何?何が言いたいの?」
「なんかビビビーみたいな?それで目が奪われるみたいな?」
「…なんそれ」