全てを持って生まれた少年の話 作:共依存からしか摂取できない栄養がある
私がチャレンジします!!
ということで書きました!! 渾身の出来(自画自賛)です!! 読んで!!
Sっ気のある上に頭も良く発育もいいモノクル属性もある1つ歳上の白髪お嬢様系美少女の上田麗奈ボイスとか最高すぎるでしょ。
上田麗奈さんなら絶対やばい女なので、こうなった。上田麗奈さん、昔はちゃんとしたヒロイン結構してたんだけどな……。新条アカネやってから増えたよね。
あれ? (現実の新条アカネの元のモデルが)六花だし瞳が青いんだから実質新条アカネでは?(錯乱)
全てを持って生まれた少年
人は生まれながらに平等ではない。
始まりは何から生まれただろうか。
人間というのは最初から存在していたわけではない。
神が生み出した存在。
猿が人間に進化した存在。
チンパンジーに共通する祖先から生まれた存在。
20万年以上も前にアフリカ大陸で初めてホモ・サピエンスが誕生したとされるが、正確にそれらを知る術はない。
とにかくも人が生まれ、文明が築かれた。
今となってはそれが普通となり、この世界においては“個性”というのが誕生した。
中国の軽慶市での『発光する赤子』の報道以来世界各地で超常現象が報告され、次々と各地で報道されるようになっていった。
そうして超常能力“個性”を持つに至った超人社会。“個性”を悪用する
だが個性というのは親から遺伝するものであり、
個性というのは身体能力の1部であり、親から子へと受け継がれる度により強く、より強固なものへと進化する。
だが逆に個性というものを受け継がずに“無個性”としてなんの力も持たない人類もまた存在するものだった。
無個性というのは息苦しいものであり、この世界における障害者とも言えるだろう。
大人気となり、子供が将来なりたい職業No.1といえば十中八九プロヒーローと答える。
しかし無個性にはそんな権利すらない。そもそもプロヒーローの資格とは“個性”を使って人助けをするための免許証。
何の個性も持たない無個性には資格すらない。
第1、無個性でヒーローが成り立つというのであれば今頃世界はプロヒーローだけで溢れている。
そして個性が大きく見られがちだが、個性だけが全てではないのだ。
裕福な家。
貧しい家。
親。
環境。
容姿。
遺伝。
体質。
学力。
才能。
ありとあらゆるものは全て生まれた時から、先天性・遺伝的な背景が存在するものだ。
分かりやすくいえば勝ち組と負け組。
親が富を築き上げた家へと生まれれれば、将来は約束されたと言えるだろう。
ならば逆に貧しければ?
反対に将来は真っ暗で暗闇の中。
全てが劣っていて、明日すら見えない生まれ。
全てが優れていて、明日どころか未来すら見える生まれ。
どちらがいいかと言われれば大半の人間は後者だと答えるだろう。
そして当然、全てを持つ人間というのは存在するものであり。
この話は全てを持って生まれ、全てを与えられた男が自ら手にした大切なモノを
――平安時代から今に至るまで多くの権力者を排出してきた名家。
だが個性というものが、ヒーローという存在が大きくなっていった時に次第に縮小されていき、金はあれど後継者は既におらず、現当主の代で終わりだと囁かれ続け、存続が危うくなった名家。前の代がやらかしたのを、何とか戻した手腕はかなりのものだが、昔ほどの権力を戻す力はまではなかった。
そんな家に一人の男の子が誕生した。
唯一の後継者にして当主として約束された人物。
黒い髪に宝石のようなエメラルド色の瞳を持つ少年。
その子供は“天才”だった。
生まれて数ヶ月後には声を発し、動けるようになり、幼少期から様々な勉学を叩き込まれ、作法を叩き込まれ、それら全てを吸収するほどに恵まれた才。
故にその子供は、再び名家へ返り咲く――否、それ以上に大きくすることが出来る可能性の秘めた、奇跡の子供と揶揄されてきた。
個性が芽生えるのは4歳から5歳まで。
その有り余る才能はたとえ個性を持っていなくても社会を牛耳ることは可能。
当然周りからは期待され、早くもその子供の顔色を窺う大人は多かった。
神童とも呼べる少年。
だからか、その子供は既に将来が決まっていた。正確には家と家の約束故に婚約相手が決められていた、というべきか。
遥か昔から共に苦楽を共にしてきた名家がある。
そこの名家には少年より1つ歳上のご令嬢が居り、親と親が結婚を定めた、いわゆる幼馴染であり、“許嫁”と呼ぶ少女が1人。
才照家のご令嬢、少年と同じく“天才”として生まれた少女の名前は印照才子。
互いに何度も顔を合わせることは多く、共に過ごす時間は誰よりも多い。
事となったのは少年が4歳になった頃だった。
芽生えた個性はあまりに強力な個性。人を、人間という枠に収まることのない“理外の理”にある力。
それを垣間見た時、“神の生まれ変わり”として富裕層に大きな反響を与えた。
あまりに強力すぎるその個性は世界すら支配する可能性の秘めた能力。
もし将来、いつかの未来で成長すれば、思うがままにすることが可能かもしれないと示唆されるほどに強力なものだった。
だからこそ、まだまだ何も知らずとも多くの家が彼を手に入れようと縁談を申し込み、娘を会わせては気に入れられようとしていた。
毎日毎日、見知らぬ異性と会わされ、もうすぐ小学生。
さすがにうんざりとしていた頃。
当然婚約者の少女、才子もイラつきを覚えていた。
「まったく、貴方はわたくしの婚約者だというのにどうして誰も彼も送り続けるのでしょうね。ええ、まったくいかんですわ」
「……個性というのは才能です。俺の才能が欲しいのでしょう。言ってしまえば目的は俺の遺伝子ですね。名家といえど昔の話。両親も挨拶を断れません。あと3年もすれば計画していた事業が全て上手くいって安定し、返り咲くでしょうが……それまで、我慢してくださいませんか」
「あら……未来すら見抜く瞳。ふふ、さすがですわね。ええ、分かりましたわ。ですが……」
四阿でいつものように、お茶会をする才子と少年。
見惚れてしまうほどに綺麗な、金色の瞳に輝くのを見て、才子は嬉しそうに笑い、すぐに真剣な顔を作る。
そしてカップを握る少年の手に触れると、少年はカップから手を離して意図を察したように握り返していた。
「あなたはわたくしのものです。そしてわたくしはあなたのものです。それは――お忘れなくてよ?」
「……はい、才子様。あなたなら俺を“使える”でしょうから」
「やめてくださいまし。あなたは道具ではありません。わたくしの婚約者なのです」
才子は指と指を絡めるように握る。
そう、親が決めた婚約者同士。
全てを決められた少年は、自分で選んだことはなかった。
選んだことはなかった……が。
「……怖いだけです。俺は全てを与えられた。恵まれて生まれただけの存在。社交場も服も家も食事も世話人も、これから入学するところも親が決めた。自分の意思で動いたわけではありません。与えられたから、親が取り決めた婚約者のあなたもそうなのでは、と。ならば感情など殺して機械でいた方がいい」
彼女を選んだのは、少年自身に他ならない。
全部を与えられたのは間違っていない。
だけど婚約者に関しては、断ることはできた。
親同士が決めたとはいえ、少年の才を持ってすれば成長したあとに全てを白紙に戻すことは出来る。
計画を今から企てることなど容易だ。
だがそうしないのは、彼自身が選んだからに他ならない。
「何を言うかと思えば……わたくしがあなたを選んだのです。親が定めたのは関係ありませんわ。たとえ親と親の仲が深くなくとも、わたくしとあなたは必ず出逢います。あなたとわたくしはそう廻り廻って、必ず出逢う運命にありますのよ。あなたの名前のように――廻様」
天道
天道家未来の当主であり、子息。
しかし神童とされた少年には、廻には理解が出来なかった。
才子もまた天才である。
知能で比べれば今の少年では勝てない。いいところまではいっても、まだ負ける。
そして優れた容姿は引く手数多。
廻を選ばなくても彼女を欲するものは多い。
「そう思った方がステキ……だと思いませんこと?」
頬に手を当て、何処か上目遣いで見つめる。
穢れのない綺麗な白い肌。肩にまで伸ばされた薄水色に蒼眼――ライトブルーの瞳。
美少女としか言いようのない、人形のように綺麗な少女が向けるそれは大人ですら魅了するほどの破壊力を誇る。
だが廻にだけは、一切の効果はない。
「才子様……なぜ俺を……」
「今と同じ、ですわよ。あなたはわたくしの容姿など気にも留めないでしょう? わたくしの外柄でもなく内面を見て、わたくしの全てを受け入れてくださる。他の俗物とは違う、その真っ直ぐな純粋なお心。宝石のような瞳。全てを見抜いてなお、わたくしの全部を受け入れてくれて、守ってくださる。お傍に居てくださる。わたくしはただ――あなたに惚れ込んでるだけですわ。いいえ、あなたをこの瞳で見た時からきっと、わたくしはあなたに夢中だったのかもしれません。一目惚れ、いいえ……そんな簡素なものではありませんわね。運命を感じた、と言うべきでしょう」
生まれが生まれであり、子供の頃から親が開催するパーティには嫌なほど行かされる。
初めて彼女と会ったのは、廻が個性に芽生えて開催されたパーティだった。
富裕層にとっては現代社会において子供の個性は強力な武器だ。ただでさえ注目されていた廻を大々的に発表することで、さらに力を示すことが出来る。
没落寸前とはいえ、元々は名家。どうアピールするかなど心得ている。
廻もまた納得して出たし、未だ会ったことのない婚約者と会ういい機会だと言うのもあった。
まだまだ子供が多く、喋り方が拙い少女が多く居る中、1つ上だろうと才子だけは異質だった。
巧みな話し方。周囲や大人の意図を理解するほどの地頭の良さ。そして完璧とも言える仕草や作法。
廻は彼女が他と異なると理解した。
また才子も廻が他と異なると理解した。
互いが互いに、初めて見た時からそう感じたのだ。
廻がそう感じたのは他だと“八百万”家のご令嬢くらいだろう。
ただ当然、金持ちが集まる社交場。
その度に向けられる視線は人を人と思わない、価値だけを見るような品定めするような目。その外見に向けられる厭らしい目。どう利用するかという企みしかない。
他の令嬢からしても、天才同士であるがため、廻とウマの合う才子は嫉妬の対象となる。
特に廻は数百年に1度しか生まれないとされるほどの天才であり、神の生まれ変わりとされるほどの人物。
まだ家が大きくなくても、過去の栄光を取り返すどころかさらに大きくなるのは幼くとも分かる。
女子が行う行動は陰湿だ。男と違い、力がないが故にやることが分かりづらい。
廻を襲う男は何人も居た。大人も含めて命を狙い、毒殺しようとする者や誘拐する者も。
特に話を聞いた限りでは裏社会において、廻は賞金首を掛けられているようだ。
だがその程度で幼少期に武や武器の扱い方を
無論個性をコピーすることは出来ないため、個性を使われたら対処は出来ない。ただし個性を使ってきたら個性で対抗して終わりだったが。
だが女子の間は実力ではない。
嫉妬からバレないように嫌がらせをしてくるのは当然だ。名家ともなれば誘拐などしようとする裏社会の人間はゴマンといる。
だから廻は、偶然居合わせたから守り、居合わせてなくても先を読む知能で先回りして彼女を救った。
偶然を装って彼女の命を狙った危機から救った。
そして犯人を捕えた。
それらの行動は廻が印照才子の婚約者だから――ではなく、彼が初めて家族以外に興味を持ったからこそ、自らの手で守っただけに過ぎない。
才子は打算的にではなく。廻も打算的にではなく。
互いに互いを受け入れた結果が、今にあった。
「あなたが権力やわたくしの外見などで選んだのではあればわたくしからお断りでしたわよ。御伽噺のような
「……いえ。ですが俺には勿体ないでしょう。あなたならば俺以上の相手はいる。家柄的にもまだ相応しくはない。もし貴女のお心が変わるようであれば、俺は心を完全に殺してしまう」
「では約束しましょう。わたくし、印照才子は天道廻様と生涯を共にする、と。ですから、わたくし以外を見ることは許しません。わたくし以外に視線を奪われてはいけません。あなたの全部をわたくしにくださいまし」
「才子様……」
「それでは如何ですか? もっと直接的に言うのであれば、わたくしとご結婚を前提に――“これからも”お傍に置いてください。ああ、ただ今はまだ不可能ですが、結婚が可能な年齢になったとき、あなたから告白して欲しいものですね。わたくしも、乙女ですので」
流石に恥ずかしいのか頬を赤く染めているが、瞳は嘘では無いと証明するように真っ直ぐにエメラルド色の瞳を射抜いている。
家柄上、感情の機微に敏感な廻にはそれが嘘でないことははっきりと分かった。
瞳を伏せ、真剣な瞳で見つめ返した廻は才子と恋人繋ぎになっている手に力を入れて握り返す。
「約束しましょう。俺の全部を使って、貴女を必ず幸せにすると。この誓いを違える時は、この命を差し出しましょう。次の告白は、俺からさせてもらいます」
「ええ、約束ですわ。破った暁には、わたくしの総力をあげてあなたを追い詰めます。そして同じく、わたくしも違えることがあれば、この命を差し出しましょう。どうせならば、後で書類上の契約も致しましょうか」
「……才子様がそれで不安にならないのであれば」
「それならば、あとで用意させますわ。その方が互いに安心でしょう?」
「はい」
幼いながらに物騒な約束。
しかし全てを与えられた廻にとってこの約束は、自分自身が選んだ本当のものでもあった。
恋人繋ぎから、小指を絡める約束へ。
親が決めたはずの婚約から、本当の婚約者へと。
「……ふぅ」
「……才子様?」
「申し訳ありませんわ。安心してしまって、つい」
指が離され、力が抜けたように背もたれに持たれかかった才子は息を吐く。
その様子に不思議がる廻に、才子は苦笑を浮かべた。
社交場で出会い、救われてからずっと才子は廻を見てきた。
契約上は親同士の約束。
長いこと一緒に居ても、本人同士にはそんな約束は交わされていない。
周りは権力者ばかり。
近づいてくる男も権力目当てと才子の容姿に惹かれてるだけで中身を見ない。
笑いかければ、それだけでデレデレするものばかり。今のうちに恩を売ろうと考える者ばかり。
唯一違ったのは廻だけで、彼は容姿や権力などどうだっていいとすら思っている。
見てるのはその心。権力者を嫌ってるのもあるだろう。
そもそも廻の容姿も良いわけで、容姿の良さだけで選ぶなら引く手数多なのだから。
それこそ八百万家の令嬢でも選べばいい。
だが廻は頭が良すぎた。
神童とされるだけあり、悪意や大人の考えを、意図を正確に理解してしまっていた。
幼いながらに利用価値のある存在と認識した結果が、保身や権力欲に塗れた大人たちへの失望。
そのため、自ら感情を殺して母のために自分すら利用した方がいいと理解してしまった。
歪でありながらも人のために行動し、打算なく、身を救ってくれた恩人。その人の本性のみを視る廻は穢れた暗闇の世界に居るような錯覚を覚えた才子にとって“光”のように感じられた。
だからこそ、この話を持ちかけた。
自分から。
「安心、ですか」
「ええ。こちらにいらして?」
「分かりました」
才子は手招きすると、廻は従うように椅子から立ち、回り込むように彼女の横に立つ。
すると廻の体は突如として引っ張られる。
「……才子様?」
まるで抱きしめられるように、彼女の胸元に顔が埋まる。
まだ発達もしていない、幼い体。
廻と違い、何処か柔らかさを感じる体。
彼女の心臓の音が廻の耳を打つ。
「感じられますでしょう?」
「……はい」
「この話をしてからずっと、心臓が爆発するのではというほどにドキドキしてましたの。初めて心から好きになった殿方と将来を誓うお話をしたのですから。いいえ……何度も何度も就寝前に悩み、こうして勇気を出す前からずっと」
「……そうでしたか。申し訳ありません。気づけなくて。ただ……そうですね、俺のこの鼓動も……そういうことでしたか」
「同じ気持ちでしたならば嬉しいですわ。あなたは少々、感情が分かりづらいので。ですけど……それがまた、ステキですわ。あなたの機微な変化は全部――わたくしのものにできますもの。貴方の笑う顔も喜ぶ顔も恥ずかしがる顔も悲しむ顔も、全部。見せるのはわたくしだけでいいですの」
「……適応しただけです。それほどまでに俺の力は、存在は危険だ。弱さを見せてはならない」
「知ってますわ。ですから……ふたりっきりの時は、わたくしに全部を曝け出してくださいまし、廻様」
耳元で囁くような、そんな声。
心地良さを感じる心臓の鼓動。割れ物を、愛おしい者に触れるような優しい手つきで撫でられる髪。
母親からしかされたことのないその行為に、廻は不思議と安堵を覚えていた。
愛情を注ぐ、母親にしか感じなかった感情。
父は母と違い、廻に教育しか施さない。だが廻はそれが全部自分のためだと理解していて、不器用な愛情を注いでくれていることは知っている。
才能は腐らせてはならない。
廻の才を誰よりも見抜いているのは、彼の父親だった。
子供が最も才能を開花させるのは幼少期だからだ。どんな天才でも環境が悪ければその才能は開花せず芽吹くことすらない。
故に彼の父親は愛情を持ちつつも、厳しさを全面的に出していた。それを廻が見抜いていると理解していながら。
だからだろうか。
全てを持って生まれ、全てを与えられてきた廻だが侘しさはあったのだろう。
それを埋めるかのように、自分の全てを受け入れる彼女と共に過ごす時間に惹きつけられていた。
初めて会った時から今に至るまで、その心を溶かすほどに。
「わたくしはもっと強くなりますわ。あなたに相応しい
「……そうですか。俺は特に、ないですね」
「ゆっくりと考えればいいですわ。どんな道を選ぼうとも――わたくしはあなたを受け入れますから。わたくしの愛しい、廻様」
「……」
将来というものを、廻は定めていなかった。
家を建て直す。
それ以外に目標という目標はない。全ては愛情よく接してくれた母のためだ。必要なことを教えてくれる父のためだ。
母と父は元々身分違いの結婚。
廻のお陰で母の権力も大きくなってきているが、逆に言えば産んだ子が廻でなければ周囲から弾圧されていただろう。もしくは男でもはなく女を産んでいたならばいよいよマズかったかもしれない。
廻はその母を守るために今まで動いてきた。もう解決間近。
あとは周りが勝手に担ぎあげる。
母は夢を見つけることを願っている。
しかし“なりたい自分”は存在しない。
「何もない俺でも――両親と才子様だけは守りたいと願ってます。他人の中では、あなたは俺を打算的に見ていない。俺の見た目だけを見ていない。これまで会ってきた中で、俺が知るのは才子様を含めて二人だけです」
「八百万家のご令嬢、ですわね。早速浮気ですか?」
「そういうつもりでは……」
「冗談ですわ。ですがまあ、彼女より早くあなたに会えたことには安心しましたわね。廻様が他の女に目を向けるなど――許せませんもの。いえ……断じて許しませんわ」
引き離され、交差する瞳。
冗談でもなく、その瞳は本気だった。
綺麗な蒼眼の中に混じる、何処かじっとりとした湿った感情。
既に才子にとって、廻の存在は大きくなっている。浮気など当然許すつもりは無い。
でなければ、婚約の話などしない。
天才と天才。
英才教育によって様々なことを学び、既に小学生顔負けの両者にとって婚約がどれほど大きな意味を成すかなど理解してないはずもない。
6歳と7歳。
まだまだ子供でも、その芽は既に開花しつつあった。
「貴方はわたくしだけの
「……もちろんです」
廻の返事に安心したように笑みを浮かべる才子に、廻は頷くだけだった。
ただその温もりを感じるように背中に手を回して、才子は廻を離さないと言うように、抱き締めた。
小学生となった廻は才子と同じだったが、学年が違うため授業を一緒に受けることはない。
富裕層ばかりが集まる学校。掘須磨大付属小学校。
国内有数の進学校で、小学校から大学までが隣接した土地にある。
愛知県の一等地。
これらの維持費は入学者やOBOGの献金によって賄われている。また、警護専任のヒーローもおり、安全性はかなり高い。
というよりは、富裕層が集まる学校が安全性が低い方が問題になるだろう。
廻自身もここに来る前は父が信頼を置く執事が運転する車でここまで連れて来られている。
当然普通の一般校と違い、レベルは高い。
学ぶのであれば相応のものを学ばなくてはならないからだ。ヒーローになるか、もしくは家を継ぐか。どちらにせよ、学びを得なくては意味がない。
一般の学校に行かせてもなんの勉強にもなりはしないのだ。
大人しく席に座り、容姿のせいで目立つ中で周りには誰も居ない。
ただでさえ容姿がいい廻はさらに整えられたのも大きいだろう。その際に子供に向けてはならない感情を向ける女性の方々が居たが、流石に手を出すようなことはしなかった。したところで身の危機を感じた場合は個性を使用するため、まず勝つことは出来ないだろうが。
だが僅か1年で天道家は復権間近なのもあり、注目の的ともいえる。今のうちに取り入りたいと願う者は数しれなかった。
その件に関しては今更慣れてるため、特に何も感じない廻は外を見ていた。
すると人の気配を感じる。
目を向ければ、そこには黒い髪の少女が一人。
「あ、あの……お久しぶりですわ」
「……八百万家のご令嬢、ですね」
「ええ! 天道さん! 知り合いの方が居て安心しましたわ!」
何度か会ったことがあるため、知り合いと言える。
純粋無垢な瞳。特に警戒する必要がない相手であるため、廻も特に警戒はしない。
それは彼女も同じなのだろう。
彼女は廻の手を握って安心したように笑みを浮かべると、自分が何をしてるのか気づいたのか頬を赤めて慌てて手を離していた。
廻は興味なさげに見つめる。
「あ、改めて自己紹介致しますわ。
「天道廻。個性は――」
「知っていますわ! 天道さんは有名人ですもの! とってもすごいものだと聞き及んでます!」
「そうですか。そういうあなたも便利な個性を持っているでしょう」
廻の個性は既にこの小学校では知られている。
そもそも天道廻というだけで特定されているのもだろう。
あまりに有名人なのだから。
「いえ、私が創るものはそれがどんな成分でできているか知っている必要がありまして。まだまだ勉強不足です。今作れるのはマトリョーシカくらいですわ」
「ロシア人形、ですか」
「お母さまがお土産にと頂いたもので、私が初めて個性で創り出せたものですの」
「そうですか」
思い出の品を創造する。
それは八百万が創りたいと願ったから出来たものだろう。
使い方によっては便利な力だ。
「それはまあ……ヒーロー向きな個性ですね」
「! え、ええ! そう言ってもらえるのはとっても嬉しいですわ! 天道さん、私はヒーローになれると思いますか?」
「努力次第だと思いますが、可能だと思いますよ。そもそも目指すことに反対する権利は誰にもないでしょう。なりたいようになればよいのでは?」
「そう……ですわね。なりたい私……。ふふ、誰かに肯定されたのは初めてですわ!」
「家柄上仕方がないでしょう。それよりも席に座らなくても良いのですか? もう少しで時間になりますよ」
「まあ! 失礼しますわ、またお話致しましょうね!」
スカートの裾を摘み、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を深く曲げ、腰を曲げながら深々と頭を下げた彼女は急ぎ気味に戻っていく。
カーテシーと呼ばれるお辞儀の一種。
まず間違いなく一般の学校ではやらないが、ここでは富裕層の集まりだ。
挨拶もまた異なる。
何やら気に入られたような感じがしたが、ふと悪寒を感じた廻は僅かに体を震わせる。
思わず周りを見渡したが、悪意は感じられない。
廻は首を傾げたが、気のせいだと思うことにした。
HRを終え、強制される自己紹介をしたあと、大講堂で入学式があった。
当然八百万家の両親や廻の両親も参加している。
特に問題なく事が済み、滞りなく終了すると次々と授業もないので帰っていく。
一応いつでも個性を使って親と自分を守れるように警戒だけはしていた。
といっても免許がない以上、あくまで自己防衛でしか使えないのだが、廻は自分の命が狙われてることは理解している。
嫉妬か、もしくは脅威に思われているのか。
守ってくれるヒーローがいると知ってても信用するつもりはなかった。
裏切りなどいつあるか分からない。それが人間なのだから。
今回は特に何事もなかったため、廻は両親と合流する。
「お母様、お父様」
「廻ちゃんの凛とした姿、とても素敵だったわ」
「流石私たちの子だ」
「ありがとうございます」
無表情を貫いていた時点で分かるのかと思ったが、廻の母親こと天道
両親に褒められて悪い気はしない。
校門前で撮影をしたあとは帰る予定だ。
「貴方は……お久しぶりです刹那さん。縁さん」
「まあ、八百万家の……」
「これは……
そうこうしてるうちに、八百万の家族と対面することになった。
会うのは初めてではない。
数ヶ月前に会っており、軽い会釈をする。
刹那というのは廻の父親の名前。莫というのは八百万家の父親の名前だ。
「いえいえ、こちらこそ百のことをよろしくお願いします」
「廻くんも百のこと、よろしくお願い致しますね」
「……はい。莫様、
流石に八百万という名前で呼んでは誰か分からないため、名前呼びしながら流れるように丁寧な挨拶をする。
もはや芸術の一種にしか見えない所作に感心したような反応を示す二人。
「何度観てもご子息の所作、素晴らしいものですね。ここまで完成させるなんて、刹那さんの教育の賜物なのでしょう」
「いえ、息子が優秀なだけですよ。それより何か御用が?」
「廻くんにお話がありまして。娘が友達になれたと喜んでいてね、その感謝の一言を言いたかったのです。百は……娘は親の贔屓目抜きに優秀な子でして。私たちが勧めた習い事や勉学を文句の一言も言わず励んでいます。ですがやはり、親としては子供には一生の宝物になる友達を作って欲しい気持ちもありまして……。だからそのお礼をしたかったのです」
「なるほど、そういうことでしたか」
納得を示す両親に対して廻は友達……? と内心で首を傾げていたが、表に出すことはしなかった。
特に悪いことを考えてる訳でもないならばなんでもいいか、と思考を投げ捨てると、莫が廻に目を合わせた。
「百と、娘と友達になってくれてありがとうございます。ぜひこれからも仲良くしてやってくれませんか?」
「はい。其方がよろしければ」
「少し安心しました。もし何か困ったことがあれば仰ってくださいね。八百万家の総力を上げて力になりますので」
「その時は頼りにさせてもらいます」
そう言って互いに握手をしていた。
廻はただ母を見ていたが、創華とも問題なさそうなので視線を外す。
父親の心配は元よりしていない。当主である以上、社交場には慣れている。
元一般の家系である母がストレスを抱えないか心配しただけだった。
「天道さん。申し訳ありません、少々話した程度で勝手にお友達に……」
「いえ、構いません。友達に定義はないでしょう。僕で良ければ、どうぞよろしくお願い致します。八百万さん」
友達になるなど一言も言ってないのは彼女も気づいてるようだが、廻にとっては別に八百万は初めて会う仲ではない。
そういう関係を望むなら受け入れるだけで、あっさりと受け入れた。
ちなみに彼は普段は『俺』だが、『僕』にしてるのは外だからだ。
『俺』と一人称にする場合はこういう金持ちが集まる学校でないか、家族の前か、もしくは婚約者である才子の前だけである。
正確にはふたりっきりの時に“僕”に変えたら心底嫌そうな顔をされたのでやめただけなのだが。
“私の前で偽るのは嫌です”との事。
「! はい、よろしくお願いしますわ! あ、あのっ、お友達でしたら名前で呼び合うとか……だ、ダメでしょうかっ」
「……どうぞ。では百さん、と呼ばせていただきます」
「え、ええ! その……め、廻さんっ」
かああ、と顔を赤くする百に対し、廻は変わらず仏頂面だった。
それからは少し話して解散となったものの、車の中で隣に座る緑が少々困ったかのように頬に手を当ててふと呟いた。
「廻ちゃん、将来が心配だわ。結婚できるのは一人だけなのよ?」
「お母様、俺は才子様の婚約者ですよ」
「そうではなくて……うん、まぁ廻ちゃんならばどうとでもなるかな。お母さん、廻ちゃんが幸せならなんでもいいからね」
「少なくとも我が家は安泰なのは変わらないだろうな」
「お父様まで何を言ってるんですか……」
笑う両親に対し、廻は溜息に近い息を吐いていた。
廻にとって婚約者は才子ただ一人であり、約束を違える気など毛頭ない。他の誰かを選ぶつもりは死んだとしてもなかった。
しかしヒーローになりたいということに肯定した際、まるで夢を見つけたかのように目を輝かせていた百の姿が浮かぶ。
自身の大切な婚約者である才子と同じ、ヒーローという夢。
いくら強力な個性を持っていても、廻にはその想いはない。ないから、羨ましいとすら思った。
全てを持ち、与えられたとしても夢というものだけは生まれ待って持つものではない。
だからこそ彼は持ち合わせていなかった。
主人公は裏社会からは個性芽生えた時から何か分からないけど纏う雰囲気がやばいと思われてる感じ。有名なジャンプ作品で例えると呪術廻戦の幼少期五条悟みたいに。
ちなみに個性使用時はエメラルドから金色の瞳にはなってるけど、一般的には未来視の個性とは思われてる。
本来の個性を知ってるのは印照家と両親のみ。
本当は第1話でAFOに狙われて家族や家含めて全部失ったあと印照家に引き取られて復讐のために動く話だったけど、あまりに普通だしシリアスばかりだしボツになってマイルドになってます(建前)
本音は才子様とイチャイチャして欲しかった(素直)
才子様は権力パワーかどうにかして物語上、主人公と同じ学年で雄英に入れる。じゃないと出番なくなっちゃう。
A組は二人か一人消えるけど、ままエアロ。
少なくとも物語にそこまで関わらない砂藤くんは確実に消える。書いてても変換のせいで間違えやすいしね!
一体何人の二次創作作家が間違えたことか……。
結局お試しなので原作までは書くよ。
あとの方は小説が伸びたら書きます。