全てを持って生まれた少年の話   作:共依存からしか摂取できない栄養がある

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色はついたけどオレンジ、2話投稿しても伸びは微妙かぁ……他の作品書いてるから分かるけど、やっぱりランキング入らないと伸びないな。いや今までの傾向から色がついてからが本番だからまだ伸びる可能性を信じたい。
ただ正直、才様ヒロインだからもっともっと伸びるかと思ってた。アニオリキャラってのもあって知名度が低いのか?
あと感想ありがとうございます。作品の意見代表みたいなとこあるから、読んでる方がこの小説をどう思ってるのかの指標や新たなインスピレーションが生まれるヒントになったりしますからね。




ヴィジランテ
鳴羽田の自警団(ヴィジランテ)


中学に上がった頃。

不幸というのは誰にでも降りかかるものだ。

例えそれが神の生まれ変わりだの言われている廻ですら。

才子と休日に出掛けていた廻はヴィランと遭遇した。

――いや、巻き込まれたというべきか。

 

「あれは……サイですわね」

「……騒ぎの原因はこれですか」

 

明らかに普通では無い体格の、サイの見た目をしたヴィランが迫ってくる。

そんなヴィランの前に、オールマイトパーカーらしきものを着た人が一人這いずり回っていた。

 

「よし、このまま人気のない方角へ――」

「待って! コーイチ! そっちの方角に子供がいる!」

「エッ!? うわ、やばいっ!」

 

廻は嫉妬からかどうかは知らないが、よく知らない大人に襲われることもあればヴィランに襲われることもある。

取り乱しはしないが、基本的に対人だ。

こんな大きいサイを見るのは初めてだな、と呑気なことを考えていた。

 

「そこの二人、早く逃げて!」

 

このままでは踏み潰されるため、才子をお姫様抱っこした廻は荷物を抱えながら走るが、オールマイトパーカーの男の方が速いようであっさりと並ばれる。

 

「俺があいつを引き付けるんで! このまま――」

「それはおすすめしませんわ。確認したところ、この先にはまだ避難が終えてない人がいます。ヒーローが対処中のようですわ。同時発生とは運がないとしか言えませんが」

 

才子は天道家が創ったサポートアイテムの試作品を持っている。

モノクルのメガネ。

機能としては視野の拡張、銃に取り付けられるスコープと似た機能があるといえば分かりやすいだろう。

それによってこのまま逃げたら別の避難先にヴィランを持って行ってしまうことを先に察知していた。

 

「マジか! というか凄い冷静ですね!?」

「これでもヒーロー志望ですので。それよりヒーローの応援は?」

「へえ、ヒーロー志望……! あっ、そこはまだ未定!」

「でしたらもうわたくしたちで倒すしかありませんわ」

「なら自己防衛の一種になりますね。正直このまま逃げても埒が明きません。誰だが存知ないですが……ええっと――」

「俺は呼び名に困る相手に名乗る男! ザ・クロウラー!」

「いや名前はどうでもいいので」

「そんな!?」

「それとそこの女の人」

「私?」

 

軽快な動きで跳躍して着いてきているのはアイマスクで顔を隠したピンクの女性。服装はかなり際どい。

しかし仲間同士というのは見て分かる。

それよりも後ろからは既にかなり接近されていた。

 

「この辺りに戦闘になっても問題ない場所は?」

「ちょっと待って! もしかして貴方たちは戦う気!?」

「そうしないと追いつかれるか他に被害が行くだけでしょう」

「それはそうだけど……でも子供を巻き込む訳には……」

「子供に子供と言われましても」

「いやまあ、そうだけどね!?」

「心当たりは俺あるよ! ほら、予め誘導決めてた路地裏! ポップは先に行ってて!」

「あーもう、あそこね! 分かったわよ!」

 

残念ながら応援はまだ来ない。

本来ならば巻き込むべきではないが、普通の子供ではないのも確か。なぜならヴィランを前にして恐れるどころか全然平常心を貫く二人だ。

ポップこと、ポップ☆ステップは何か策があるのだろうと――否、ヤケクソで叫んだ。

 

「決定ですわね。ザ・クロウラーさん……でしたかしら。スピードはまだ出せますか?」

「ぉおおおお……! ちゃんと呼ばれると嬉しい! スピードはまだいける! でも俺がスピードを出しすぎると君たちが……」

 

ザ・クロウラーは長年の間ちゃんと呼ばれたことはなかったが、最近呼ばれるようになってきた。

しかし初見で会う人でヒーローにすら間違われていたので、明らかに土地勘の無さそうな、この街の住人ではないであろう廻と才子に間違われずに呼ばれたことに感動を覚えた。

 

「なら出してください。全力で。でなければ置いていかれますわよ」

「……へ?」

「廻様」

 

どういうことかとクロウラーが疑問を抱くと、才子は廻に回している腕の力を強める。

それだけで理解した廻は自身の個性を発動させる。

 

加速(アクセラレーション)

「うわ、速っ!?」

 

その瞬間、廻の速度が今までと比にならない速さへと昇華し、ザ・クロウラーは驚きながら出遅れる。

一応言っておくと、現時点でのザ・クロウラーはまだロックダウン(例の事件)を経験していない。

しかしその時点でもあのインゲニウムのサイドキックたちの誰よりも速いとされる速度を出すことが出来る。

つまり何が言いたいかというと、まだ“至っていない”ザ・クロウラーとはいえ、全力で加速しなければ置いていかれてしまうくらいには廻の個性はあまりにバケモノ地味ているということ。

 

「とにかく今は加減して――KGD(気合をギュッとしてドーン)!」

(ダサい……)

(微妙ですわ……)

 

手のひらの反発力を集中させて小さな弾丸を発射するザ・クロウラーだが、本人は至って真剣なのだろう。

威力こそ対したダメージにはなってないが、ヘイトは取っていた。

名前は、まあ廻や才子ですらイマイチな反応をしてしまうネーミングセンスだったが。

少なくとも滅多にない、廻が言葉遣いを崩すレベルで。

 

「こっち来たぁ! というが怒ってる! あっちも速い!」

「もっと上げるしかありませんわね」

「これ以上は流石に危なくない!?」

「大丈夫ですわ。速度だけではありませんので」

「どういう……?」

「こういうことです。加速(アクセラレーション)

「うわぁああああ!? って、全然動ける!! 片手だけでさっきの速度と同じくらいに……! スゴい!!」

 

万能とされるだけあり、廻の個性は他人に付与することすら可能だ。

そして廻の個性、その一部の力。

加速(アクセラレーション)。未来視よりも本来の使い道はこっちの方。全身や部分的な発動を可能とし、準備時間(インターバル)は存在せず常時発動が可能。

アクセラレーションというのは『高速化』、『促進』、『加速』の意味を持つ。

廻がやっているのはそれらの意味全部の力が含まれた、肉体だけではなく思考速度や反応速度にも及ぶまさしく規格外の力。

ただデメリットとしては自分の体と違い、当然他者の肉体は構造が違うため付与する際の負荷が自分の肉体でやるよりもあるということ。

個性維持の体力は他者ではなく廻が受け持つため、クロウラーに付与した分と自分に付与している分、ふたつの負荷が掛かってしまう。

その程度で力尽きるならば、様々な評価を受けるはずがないので問題ないのだが。

 

「じゃあ一気に行くとしましょう。2倍速(ツインターボ)

「了解!」

 

クロウラーの速度を上げたため、自身の速度を一段階引き上げる。もう一度掛けた、つまり2倍の状態……になってるのではなく、そこにさらに掛けることで2×2をしたと考えてくれた方が分かりやすいだろう。

時折飛んでくる瓦礫を高速で避ける二人は目的地へと向かっていく。

その間にも才子は思考を加速させていた。

本来ならば目を閉じる必要がある個性。

しかし任意発動型へと切り替え、目を開けた状態でも可能になっている。当然深く思考するならば目を閉じて余計な情報を遮断した方が効率は良いものの、ヴィランを目の前にして目を閉じる行為など自殺行為でしかない。自身の個性を戦闘に流用出来るように個性もまた彼女の想いに答えて成長したのだ。

個性というのは身体能力の一部。そしてまた、個性の理解度が成長へのきっかけになるのだから。

ちなみにだが、才子の個性はIQ。

自身のIQを倍にする個性だが、体感時間の引き伸ばしと言った方がいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない路地裏。

そこへ辿り着いた廻たちは逃げながら作戦を決め、それを実行していた。クロウラーの個性は“滑走”。正確には手足から力場のようなリング状の斥力を放出する力。ポップ☆ステップは“跳躍”。

それがこちらの手札。

サイヴィランにやり過ぎない程度で戦闘不能にするという条件。

ヴィランの耐久力、速度、力。

それらから考えた結果。

 

突進してくるサイの攻撃を両手が空いた廻が正面から受け止める。

パワーを増強させる個性よりかは出力こそ低いが、速度に耐えれる肉体くらいまでは強度もパワーも上げられている。

だが完全に押さえつけることは出来ず、廻の肉体は少しずつ壁へと追いやられていた。

資格があればボコボコにして終わりだが、そういう訳にはいかない。正当防衛でも過剰防衛になってしまえば意味がないからだ。個性を無許可で相手に振るうことは許されていない。

 

「ザ・クロウラー!」

「準備OK!!」

 

地を蹴って加速しようとするサイに対し、廻は背後を見ると手を離すのと同時に高速で後退し、跳躍する。

 

「ザ・クロウラーKGD(気合をギュッとしてドーン)!」

 

チャージされた空気砲がサイの足へと直撃し、体勢が僅かに崩れる。

その瞬間。

サイの上に乗った廻が素早く落ちていた紐で首元を締め付け、暴れ狂う中で振り回されないように踏ん張りながら廻を乗せたサイはコンクリートに突っ込んだ。

立てられていた鉄パイプと壊れた瓦礫が次々と落ちていき、埋もれていく。

 

「大丈夫!?」

「問題ないです」

「うわっ!?」

 

いつの間にか隣に立っていた廻に驚くが、無事な姿にほっとしたクロウラーはサイヴィランに近づいた。

目を回して気絶しており、目立った怪我らしき怪我はない。

気絶してるため、廻とクロウラーは協力してサイヴィランを引っ張り出していた。

すると才子を抱えていたポップ☆ステップが降りてくる。

 

「あとは拘束しておきましょ」

「通報はもうしてありますわ。廻様、怪我はありませんか?」

「これくらいならば」

「ダメです」

 

手馴れた様子で拘束する姿を傍目に才子は廻に近づくと、彼の手を取って表向けさせた。

切り傷程度だが血は出ており、ハンカチを取り出してすぐに巻いていた。

 

「いやー助かったよ。ありがとう」

「いえ。こちらこそ」

 

免許を持ってない以上、緊急時において個性を使って拘束したのはいいがやってることは自警団(ヴィジランテ)になる。

そのため警察にバレないように現場から離れる必要があった。

 

「じゃあ俺たちはこれで!」

「巻き込んじゃってごめんね」

 

そう言って個性を用いって帰っていく姿を見送る。

ヒーローでないのは確か。ヒーローなら一般人の協力を求めれば個性の戦闘は可能になる。

しかしやってることはヒーローとそう変わらない。

免許を持たずに個性を使ってヒーロー活動する者たちを非合法(イリーガル)ヒーロー、ヴィジランテ。

 

「……廻様?」

「すみません。少し気になって……」

「付き合いますわ。わたくしのことは気にしなくていいですのよ」

「……ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏となり、すっかり暑くなってきた季節。

ザ・クロウラーこと灰廻航一はヴィジランテであり、就職活動中の仁波(ひとなみ)大学4年生。

共に活動している少女が同じくヴィジランテであり、ポップ☆ステップとしてアイドル活動をしている、高校3年生。

本名は羽根山和歩。

 

「あの二人、なんだか凄かったね。ああいう子がヒーローになるんだろうなぁ」

「なによ、急にそんなこと言って」

「女の人、ヒーロー志望って言ってたでしょ? 大物というか、ヴィランを前にしても二人とも臆すこともなかったからさ。ふとそう思ったんだ」

 

航一はこれでも中学時代、本気でヒーローになろうとしていた。しかし受験前に川で溺れていた()()()を助けたあとに向かったため、間に合わずに受けることが出来なかったのだ。

その事に今更後悔はしていないが、ああいう年代の子でヒーローを目指してると聞いたら考えてしまう。

脳裏に浮かぶのは先程の二人の姿。

普通ならばヴィランを前にして冷静さを失うのが普通。巻き込まれかけてるのだから慌てて逃げようとするだろう。

しかし二人はパニックになることなく、それどころかやるべきことを考えて行動出来ていた。

あの作戦を立てたのも彼女だ。

男性の方は男性の方で個性の扱い方だけではなく、肉体もしっかりと作られていたのを見たら分かる。恐らく加速系だが、サイの突進すら受け止めていたのだ。

航一もまた師匠と呼ぶ存在が居て、その人に教わった。肉体が出来上がってるかどうかくらいの判断は出来る。

 

「…………」

 

そしてポップ☆ステップこと羽根山和歩はそのことを言い出せないでいた。

何を隠そう、彼女こそが航一が男の子と誤解している助けられた少女。

何度も感謝を告げようとした。

言いたいことがあった。

タイミングが悪かった。

勇気が出なかった。

 

「ポップ?」

「なんでもない。早く帰りましょ」

「だね」

 

そして今も言い出すことは出来ず。

罪悪感が心を蝕んでいる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃ビルが立ち並ぶ、都心駅から徒歩5分くらいにある旧市街の廃ビル屋上に建てられた格安のペントハウス。

家ビルの屋上にあるプレハブ小屋が彼らの拠点だった。

時間も時間なのもあり、ご飯を作っているとふと扉を叩く音が。

 

「あれ、ポップ。誰か来る予定とかあったっけ?」

「今日は特になかったはずだけど」

「うーん誰だろ。はいはーい」

 

ひとまず放置していたら危ないので火を止め、航一はエプロンを着たままドアを開ける。

 

「ごきげんよう。ザ・クロウラーさん」

「あ、さっきのっ! なんでここに!?」

「つけさせてもらいました、すみません」

「全然気づかなかった……!」

 

扉を開けた先に居たのは先程の男女。

黒い髪にエメラルドの瞳を持つ廻と薄水色の髪にライトブルーの瞳を持つお嬢様らしさのある挨拶をする少女、才子だった。

どうやら後をつけて特定したらしい。

廻が謝罪をしているため、悪意があるわけではないのだろう。

ここに来たってことはまず何かあるってわけで。

 

「えー……入ります?」

「ええ、よろしければ」

「ど、どうぞ」

「感謝しますわ」

「ありがとうございます。これ、代わりと言ってはあれですが」

「手土産? ってええっ!?」

「コーイチ? どうしたの……ってあんたたちは……」

「あら……」

 

ひとまず航一は、二人を入れることにしたのだが、渡された紙袋の中身を見て驚愕の声をあげる。

何事かと和歩が覗きに来ると、才子と廻に気づいたらしい。

二人もまた和歩に視線を向け、合点がいったようだった。

見た目はかなり変化しているが、後をつけてここに来ている。つまり和歩の正体はひとつしかない。

 

「貴女はポップ☆ステップですわね」

「ど、どうも……って、そうだ! 何かあったの、コーイチ」

「いやこれ、手土産で」

「駅前の高級スイーツ!? いいんですか!?」

「そのために持ってきましたのよ? 人様のお家にお邪魔するのですから当然です」

「も、もっと安いものを持ってくると思いますけど……」

「すみません、荷物は何処でもいいですか?」

「あ、うん。大丈夫だよ、その辺に置いちゃって」

 

思わず和歩は敬語になってしまったが、それも仕方がないと言えるだろう。

万札はするであろうスイーツをお土産感覚で持っできたのだ。一般家庭で育った和歩や航一ではとてもじゃないが手を出せない。

まぁその航一は既に驚きから覚め、廻に置き場所を聞かれて対応していたが。

 

 

 

 

 





ヴィジランテのアニメやってるから書きたくなる。
いよいよスカイエッグだし。
どうやって主人公に雄英に行かせる選択肢を取らせるか考えた結果、最初からヒーローの彼にスポットが当たりました。
偶然でもオールマイトと会うのはあまりに都合が良すぎますし、時系列的にはザ・クロウラー最後の夏だから鳴羽田行ったら会えますしね。

航一はヒロアカ本編でも出したいけど、今の勢いだと投稿がそこまで続くかどうか。息抜きでドロドロしたものを書きたいと書いたやつなので……。
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