気が付いたら、俺はレグルスに生まれ変わっていた。
レグルス・コルニアス
Re:ゼロから始める異世界生活。通称リゼロに登場するキャラクター。
立ち位置は敵キャラでリゼロ内では屈指の強キャラだ。
魔女教司教
しかし中身は小物そのもの。クソガキがぽっと出の最強パワーを手にしてそのまま大人になったような性格…いや、それ以下だ。
作者も劇中屈指の強キャラであると同時に屑キャラと評価し、このキャラだけ区別するためにさん付けで呼んでいる。
とまあ、要するにどうしようもないドブカスってことだ。
で、俺はその屑に転生してしまった。
「(まずいまずいまずい!)」
レグルスの最期は悲惨だ。
強力な能力を格下相手に封じられ、生きたまま水に沈められる。
外伝では今まで好き勝手した罪を清算されるかのように惨たらしく事される。
そんな死に方は嫌だ。どうせならかっこよく死にたい。
「(よし、決めた。俺は強欲にはならない!)」
幸いまだ原作は始まってない。
今の俺はまだ子供だ。本編みたいに白髪になってない。
なら、原作みたいな末路を回避出来るチャンスはある筈だ。
目指すは俺の人生ハッピーエンド。
原作なんざ知った事か。
普通に生きよう。
折角手に入れた第二の人生なんだ。
平和に生きて、幸せを掴んで、満足しながら死のう。
水門都市プリステラ。
ベネツィアを彷彿させる美しい街。
しかしその誕生経緯は町全体が魔女を封じる牢獄であった。
深い底に新ずんだ魔女の遺体。ソレを求めて魔女教の大罪司教が迫り来る。
しかし全て撃退された。
平凡な少年、ナツキスバルと彼率いる猛者たちの手によって。
最強の騎士ラインハルト・ヴァン・アストレア、最優の騎士ユリウス・ユークリウス、獣人傭兵集団鉄の牙。
様々な面々が協力する事によって、全ての大罪司教は全て無力化されたのだ。
「さあ、町の人たちを元に戻してもらうぜ、カペラ!」
ラインハルトが剣を突き付ける。
大賞は色欲の大罪司教カペラ。
如何に変幻自在といえど、最強の刃が捉えていては逃げようがない。
「ッへ、もう勝かった気になっていやがるんですの!?こちとらには、最強の切り札が残ってるんですから!」
「最強?ソレなら目の前にいるだろうが」
スバルは吐き捨てた。
戦闘力に限ればラインハルトを超える者など存在しない。
ソレは信頼だの妄信だのといったものではなく、紛れもない事実。
現に、大罪司教の中で最も強力かつ厄介なカペラは彼の手によって犠牲なく無力化された。
ラインハルトを超える怪物など存在しない。
その認識はスバルだけでなくこの場にいるもの全員に共通していた。
「お前は知らねえんだよ。知らねえからそんなことを言えるんだ。『最凶』レグルス・コルニアスをッ!」
「「「ッ!!?」」」
レグルス。
その名を聞いた瞬間、スバル以外は手を止めた。
「はぁ?誰だソレ?」
「学の無いバルスは知らないのは当然ね。あまり知られてないもの」
強欲の大罪司教レグルス・コルニアス。
活動は他の大罪司教と比べてあまり無いが、経歴自体は最も長い。
曰く、たった一人で小国を幾多も滅ぼした。曰く、軍事国家であるヴォラキア帝国にたった一人で宣戦布告して勝利した、曰く、神龍を討伐した等等…。
悪行を超えて偉業の規模が段違いに凄まじい。
「けどいねえんだろソイツ。この場にいない奴の話しても意味ねえだろ」
「分かってねえなぁ!レグルスもここに来るってちゃんと書いてんだよッ!」
福音の書。
魔女教徒なら誰もが持っている自分限定の予言の書。
彼ら彼女らはその内容に沿って行動する。
ただ一人の例外を除いて。
「面白い話をしているようだね」
突如木霊した第三者の声。
この場には他に誰もいない筈だというのに。
誰かが近づく気配は一切しなかったというのに。
その姿を確認しようと一斉に全員が振り向いた。
しかし、その先には誰もいない。
「何処見ている?僕はこっちだ」
再び全員振り返る。
今度こそ声の主はいた。
そこにいたのは男だった。
白衣のような神父服を着た男。
死人のように白い髪と白い肌。
黒い眼は闇を宿しているようでありながら、ギラギラとした光が宿っている。
男は時計塔の頂点を台座に、月明かりと星空を背景にして、男はカペラの首を掴みながら立っていた。
「な…何!?」
慌てた様子でラインハルトは捕らえた筈のカペラに目をやる。
そこにあったのは、人間サイズの丸太―――カカシだった。
すり替えられた。
たった一瞬で。
最強と最優が警戒している中、ほんの刹那の隙に。
「アイツ、まさか仲間を取り返しに!?」
「いや、助けたにしては様子がおかしい! あの持ち方には殺気すら感じる!」
「なんかカペラ震えてねえか?…え、アイツ血ィ流してるぞ!あんなに殴ってもピンピンしてたのに!?」
急な展開に一同は困惑。
ついていけない。何が何だから分からない。
突如現れた謎の男はそんなことなど露知らず。
突然ボロボロになったカペラの首を掴み、ぞっとするほど冷たい目を向けていた。
「な…なん、でぇ………?」
「何でって?心当たりなんて山ほどあるだろ」
「おかしいよ!あんなに愛し合ったじゃないか!一緒に何度も床とベッドを共にして…」
「黙れ。僕が欲しいのはお前の血と力だ。お前じゃない。ましてやお前の愛なんて…!」
苦虫を嚙み潰したように、忌々しく吐き捨てる男。
「ま…待って!じゃあこうしよ!一緒に魔女の身体を分けよ!そうしたらダーリンもアタクシ強くなって、アタクシはダーリンに尽くすわ!またいっぱい愛し合いましょ?アタクシを好きに使って…」
「僕は黙れと言ったんだ」
グシャッと、カペラの喉を潰す。
彼女の権能ならどれだけ身体を潰されようが無意味。
存在そのものを書き換えるかのように変幻自在の肉体は、あらゆる干渉に意味を持たない。
しかし、ここに例外が存在する。
「もう用無しなんだよカス」
ヴォン!
カペラが身体の存在を書き換えるなら、この男は世界そのものを書き換える。
一度世界が息を止めて吹き返した瞬間、カペラの息は完全に止まる。
ソレを象徴するかのように、男の手には彼女から抜き取った赤黒い心臓が握られていた。
「じゃあなカペラ。会った時から最期まで、お前のことは嫌いだったよ」
男がカペラを放り投げる。
空中分解していくカペラの身体。
立ち上がる様子も、再生する様子も無い。
塵となって消えて逝った。
ヴォン!
再び世界が書き換えられる。
ソレに気づく者は誰もいない。
ただ一人、ソレを可能にするこの男を除いて。
「し…死んだ、のか?あのカペラが?」
信じられなかった。
どれだけ切り刻もうが、どれだけ焼こうが、どれだけ大規模な爆発だろうが。
あらゆるダメージを逆再生するかのように回復させ、あらゆる攻撃を変幻自在に身体を変える事で無力化させたあのカペラが。
たった一瞬であっさりと殺された。
理解不能。
一体あの男は何をした。
誰もが疑問のあまり混乱している中、男がゆっくりと口を開く。
「初めまして皆さん。今夜は月がキレイだね。…ああ、ゴメン。名乗り忘れた」
男の声は嫌に静かな夜の街に響く。
「魔女教大罪司教強欲担当、レグルス・コルニアス。通称『最凶』…とでもいった方がいいかな」
あんな力手に入ったら好き勝手しちゃいますね。
誰だってそーする。俺だってそーする。