憑依レグルスは最強になりたい   作:大枝豆もやし

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仮面ライダーエグゼイドの『JUSTICE』聞きながら掻きました。


中編

 

 彼が名乗った瞬間、弾丸の如く三名が動いた。

 ラインハルト、ユリウス、ガーフィール。

 三人の得物がレグルスを捉える。

 

ヴォン!

 

 世界が上書きされる。

 気づいた瞬間にはもう手遅れ。

 残った結果は、三人が倒れ伏す瞬間のみであった。

 

「ば、かな‥‥!?」

 

 壁に叩きつけられるユリウス。

 元居た場所から十mは優に離れている。

 吹っ飛ばされた瞬間にも気づかず、壁を何枚も貫通して気絶した。

 

 

「―――ガハッ!?」

 

 地面に叩きつけられるガーフィール。

 瞬間、凄まじい震動が発生。

 町が揺れるかのような衝撃を受けて気絶した。

 

「ゴホッ…………!!?」

 

 血を吐きながら倒れ伏すラインハルト。

 背後に少し離れて佇むレグルスの手には心臓らしきものが。

 レンガ造りの舗装された道を赤く染めながら、その場から動かなくなった。

 

「う、嘘…だろ………?ラインハルトが!?」

 

 スバルは目を疑った。

 

 ラインハルトは最強だ。

 彼が負ける姿など微塵も想像出来ない。

 チートの権化であり最強を通り越してもはや無敵。

 最強を超えた最強。ソレがスバルにとっての…いや、この世界のラインハルトだった。

 

 そんな彼が殺された。

 瞬きする間もなくあっさりと

 あり得ない、質の悪い夢だ。そうに違いない。

 必死に現実逃避を行うも、目の前の事実に変わりは無かった。

 

「これで邪魔者はいなくなった。ゆっくり話が出来る」

 

 パンッと、レグルスの手を叩く音が響く。

 ソレによってスバルの意識は無理やり現実逃避から戻された。

 

「僕の目的は君だよ、ナツキ・スバル…いや、その背後にいる彼女かな?」

 

 ドクンッと、スバルの心臓が跳ね上がった。

 何故知っている。

 誰にも話せない秘密を。

 打ち明けてしまえば彼女がやってくる。

 世界の全てが止まり、金縛りのように体だけ動かなくなる。

 そのままあの恐ろしく冷たい手で心臓を…。

 

 嫌だ。

 ソレだけは何としても防がなくてはならない。

 最悪の事態を回避する為、スバルは己が出来ることを全うする。

 

「な…何で、何が目的だ!?」

 

 スバルは時間稼ぎに専念した。

 この場にいた戦力は全滅。スバル自身の戦闘力は雑魚同然。

 兎に角時間を稼いで援軍を待つ。それしか出来なかった。

 

「目的?力が欲しいからだよ。知ってるかい、魔女因子を持つ者が他の魔女因子を取り込むと権能が強化される、或いはその者が持っていた権能を一部手にしたり、新しい権能を獲得出来るんだ」

「何でだよ?お前もう十分強いだろ!?カペラどころかラインハルト倒せたんだろ!?ならもういらねえじゃねえか!?」

「そんなことはない。僕はもっと先を行きたいんだ」

 

 レグルスは夜空に向かって手を伸ばす。

 まるで空高くで輝く星を掴むかのように。

 夢に向かって進む少年のように。

 

「確かに僕の権能は強い。文字通り世界を支配出来る。けど支配できるのは、ほんの一部だけ。僕はね、この世界の(ことわり)全てを支配したいんだよ」

「は?」

 

 あまりにも規模過が大き過ぎて具体性が無い目標。

 だがこの男なら。そう思えてしまう程に、彼の力は大きい。

 

「誰だって自分に与えられた才能を伸ばす権利はあるだろ?僕はソレを行使しているだけだ」

「そのために他人を踏みつけるってか?そんな権利がお前にあるのかよ!?」

「あるさ。僕の権利は何よりも優先される。ソレを侵害するということは僕の権利の侵害だよ」

 

 無茶苦茶だ。

 一見すればペテルギウスのような狂人ではないと思ったが、コイツもコイツでどうかしている。

 いや、魔女教の司祭なんてやってるのだからイカレて当然といったところか。

 

「時間稼ぎはここまでだ。では面会といこうか。合図は確か・・・君と彼女との秘密だったな」

「や…やめろ!」

 

 止まらない。

 レグルスはその秘密を暴露する。

 それは、災厄の魔女より与えられた最強の祝福にして、最悪の呪い…。

 

 

「死に戻…」

 

 彼がその先を語ることはなかった…。

 

 

 

 世界が止まった。

 彼が現れた時と似た感覚。

 だが、今回のはソレと比べてより冷たく重々しい。

 

 

 

「愛してる」

「―――ッヒ」

 

 

 掠れた悲鳴が、スバルの喉から漏れる。

 呼吸が出来ない。

 身動きが出来ない。

 思考が出来ない。

 その声を聴いた瞬間、あらゆる自由がスバルからはく奪された。

 

 耳元で囁かれた声は。

 優しく、甘く、そして狂気を孕んだ声。

 

 

「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる…」

 

 

 

 闇に覆われる。

 

 底なし沼にでも呑み込まれるかのようにゆっくりと。

 

 世界が凍ったかのような静けさで凍える中、恐怖で脈打つ心臓の鼓動だけがスバルのに響いく。

 

 そんな中、彼女は壊れたラジオのように耳元で囁き続ける。

 

 

 悍ましい程の大きな愛。

 

 最早それは狂愛といってもよい。

 

 

「私はあなたを愛してる」

 

 

 魔女が手を伸ばす。

 

 再び世界をやり直すために…

 

 

 

 

 

 

「おっと、先ずは僕と面会してもらおうか」

 

 本来ならば誰も立ち入られない空間。

 

 魔女と自分だけの空間。

 

 そんな中に一人の異分子が飛び込んできた。

 

 

 

「やっと会えた。この時をどれだけ待ち望んでいたか…」

 

 通常ならすぐさま精神を侵される闇を涼しい顔で流しながら、レグルスは彼女達へと歩み寄る。

 

「貴方は、誰?」

 

 魔女質問に、彼は堂々と名乗りを挙げる。

 ソレ己の存在証明であると同時に、己の権利の表明。

 

「初めまして。僕は魔女教大罪司教強欲担当、レグルス・コルニアス。完成された個に近い存在であり、やがてこの世の全ての理を従える者だ。そして、君の力を奪いに来た簒奪者でもある」

 

 堂々と名乗りを上げるレグルス。

 例え相手が魔女であろうとも屈することなく己を貫く。

 その姿にスバルはラインハルトを思い浮かべた。

 本来なら対極である筈なのに。

 

 魔女との対峙。

 更に欲する強い欲望。

 そして最強の魔女相手でも己が勝つという自信と信念。

 強欲の魔女因子はそれらと共鳴し、更なる進化を遂げた。

 

 

 彼女は困惑した。

 自分と彼しかいない秘密の空間。

 他は誰も立ち入れない筈なのに異物が紛れ込んだ。

 困惑は怒りと化して最も分かりやすい方法で伝えられる。

 暴力という原始的かつ破壊的な方法で。

 

 レグルスに伸ばされる無数の手。

 亡霊のように影から伸ばされるソレらはレグルスを引き裂かんとする。

 

「ペテルギウスの見えざる手に似てるね。けど、流石はかつて世界を滅ぼしかけた魔女だ。パワーも数もアイツとは比べ物にならない。上位互換ってところかな?」

 

 それらを容易く潰すレグルス。

 影の手が彼に触れるも、引き千切ることはなく逆に潰れていく。

 まるでレグルスの周囲に強固な壁でもあるかのように、影の手は指一本触れることは出来なかった。

 

「だがソレだけだ。奴の上位互換ってだけなら拍子抜けだ。退屈させると潰してしまうよ。こんな風に!」

 

 レグルスが手を振るう。

 瞬間に放たれる無数の刃。

 一見すればただのナイフ。

 しかしソレらは無数の影の手を貫き、サテラへと襲い掛かった。

 だが、それすらも彼女には届かない。

 彼女の眼前の空間が歪むかのように壁となり全てのナイフを遮った。

 

「時間も空間も含め、この世界は全て君の所有物ということか。コレは困った、いつも通りにはいかない」

 

「けど、僕と僕の手にあるものは違うみたいだね。如何に君と言えど、僕の権利と所有権までは奪えないようだ」

 

 彼女は再び困惑した。

 眼前の異物は自身の力が通じない。

 まるで彼の周囲だけ世界から切り離されたかのように。

 

 怖い。

 強大且つ最悪の力を持つ彼女が。

 百数年ぶりに恐怖という感情を思い出した。

 瞬間、彼女の拒絶はより狂暴なものへと化す。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!」

 

 金切りのような声をあげる彼女。

 闇一色に包まれた空間中に響き渡り、一瞬だけ静寂が支配する。

 だがソレはほんの一瞬。次の瞬間には全てがひっくり返った。

 

 轟く爆音。

 連続で辺りに発生する衝撃波。

 超高速移動によるソニックブーム。

 威力、質量、速度…。何もかもが異次元。

 あまりにも規模が大き過ぎて情報そのものが暴力に感じる。

 観客であるスバルには、何をどうやっているのかすら分からない。

 傍から見たソレは、まるで怪獣映画の中に入って怪獣同士の殺し合いを見ているかのようだった。

 

「そろそろ幕切れだ。手土産くらいは貰っておこうか!」

 

 遂にレグルスの手が彼女に触れようとする。

 しかしソレを阻む亜空間バリア。

 まるで意中の男以外には触らせないとでも言わんばかりに。

 

「ック、愛する者以外には毛先も触れさせないのか!身持ちが固いな!」

 

「だが無理やりでも貰っていく!なにせ僕は強欲だからね!」

 

 レグルスの手が赤黒く発光する。

 同時、変化していくレグルスの左腕。

 まるでカペラが使った権能のように凶悪なモノへと変貌しながら、亜空間バリアにめり込んでいく。

 

鮮血色(クリムゾン)気功疾走(オーバードライブ)!」

 

 悪魔のような鋭い爪に、肥大化した腕。

 ソレは赤黒い光と共に亜空間バリアを突破。

 彼女の髪を数本だけ掴み、力ずくで引き抜いた。

 

「ッ!!?」

 

 闇へと消えて行く彼女。

 どうやら分が悪いと判断したようだ。

 対するレグルスは追わない。

 引き抜いた髪の毛を眺めながら、彼女と反対方向へ向かう。

 

「しょっぱいねぇ。反動で能力が制限されたのに報酬が髪の毛数本。全然割りに合ってない」

 

「けどまあ仕方ない。本来の目的は達したんだ。これ以上欲張るのはいけないね」

 

 空間の闇が薄れていく。

 主が消えたせいで崩れかかっているのだ。

 まるで霞が晴れていくかのように境界線が消え、本来の世界へと戻っていく。

 

「ああ、あの時は気づかなかったけど服が台無しだ」

 

 レグルスはボロボロだった。

 しかしソレはあくまで服だけ。

 彼自身はピンポンとしている。

 しかし、次の瞬間には直っていた。

 まるでビデオの逆再生でもするかのように。

 

「ッ!!?ま、まさか………!!?」

 

 その様を見たスバルは一つの仮説が思い浮かんだ。

 突然現れたレグルス、まるで場面を切り取ったかのような急な展開の数々、そして目の前で起きた逆再生。

 まさかコイツの権能は…。

 

「時を…操る………?」

「おッ!ビンゴッ!」

 

 レグルスは両手の人差し指をスバルに向けた。

 

「その通り!僕の権能は獅子の心臓!時間を限定的に操る事が出来るんだ!」

 

 ソレを聞いた瞬間、スバルは眩暈がしたと同時に納得した。

 ラインハルトや彼女を倒せたカラクリに。

 確かにそんなチートが使えるなら、あのチート達も倒せるだろうと。

 

 突然現れ、カペラを殺した。

 何をしても殺せなかったアイツを一瞬で殺したのだ。

 普通ならありえないが、時を止めたなら考えられる。

 如何に姿形を変えられると言っても、時を止められて殺されたらひとたまりもない。

 

 ラインハルトを殺した。

 ガーフィールとユリウスを一掃した序でのように。

 普通ならありえないが、時を止めたなら考えられる。

 如何にラインハルトといえども、時を止められて殺されたらひとたまりもない。

 

 だが、彼女の空間では出来なかった。

 おそらく、あの闇の中は彼女の支配域だったからであろう。

 時間すら支配するあの中では、彼女の意思がレグルスの権能より優先された。

 しかしそれでもレグルスとレグルスが持つ物までは支配出来なかった。

 だからレグルスは彼女を倒せたのだ。

 

「けどそれだけ!とても世界の全てを操れるわけじゃないんだよ!」

「………いや、十分だろ」

 

 時間。

 誰にとっても平等なもの。

 強者だろうが弱者だろうが一秒は一秒。

 たとえ国や時代が変わっても、時間だけは変わらない。

 レグルスの権利はその根底を覆そうとしているのだ。

 己だけの権利として。

 

「ちなみに停止した時の中で死を迎えた者は復活できない。死と言う瞬間のまま永遠に止まり続けるのさ。このやり方で僕は不死鳥の加護持ちや不死者を殺したことがあるんだよ」

「嘘…だろ………?」

「そういうことで僕はお暇するよ。君自体には用無い。あくまで駄賃代わりに接触しただけで本命は果たしたからね」

 

「じゃあね。多分会う事はないだろうけど」

 

 踵を翻して去ろうとするレグルス。

 先程まで最凶の魔女と思わしき彼女と戦い、最強の騎士ラインハルトを殺したというのに。

 その様は悠々としており、まるで散歩から帰るかのようだった。

 

 

 

「何処に行く気だい?」

「ッ!!?」

 

 彼の首を、先程殺したはずの剣聖が捉えた。

 





え~、ここからゴジラとキングギドラの殺し合いが始まります。
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