CODE VEIN Ⅱ 世界を『楽しむ』旅路 作:ミヤビコウ
この物語は多大なネタバレを含みます。
念頭に置いて楽しんでいただけなら幸いです。
「クイーン?女王様ってこと?」
『ううん。私はね、かつてみんなを守ろうとして暴走してしまった殺戮者なの』
「殺戮者って。こんな小さいのに?それに、守るってどういうこと?」
『文字通りの意味よ。私はレヴナントの実験体だったの』
「れぶ……なんと?」
『地面の下から棺桶を掘り起こし、永遠の眠りについた人間を吸血鬼として蘇らせた不死身の戦士。それがレヴナント』
「じゃあ貴方は吸血鬼なの?」
『人造のね。私の世界では、吸血鬼という種族はいなくて、吸血鬼のことをレヴナントって呼んでいたの』
「吸血鬼がいない世界!?何だか信じられない……あれ?でも待って?私の世界ってどういうこと?」
『ここは時空の狭間に似ている。貴方が死にかけている世界と、私がいた世界が重なって混じり合っている稀有な場所。だからこうして話ができるの』
「私たちが閉じようとしている平行世界の住人ってこと?」
『いいえ。平行世界を通り越した、まったく別の世界。貴方に触れて私も驚いたの。吸血鬼という種族が存在する世界だなんて、病院のベッドで読んだ絵本みたい』
「病気だったの?」
『ううん。実験施設にいたの』
「辛くなかった?」
『思い出したくないって言えばいい?』
「……ごめん」
『気にしてないよ』
「ありがとう」
『紆余曲折あって、クイーンとして覚醒してしまった私は、その力に振り回されて暴走。実験施設だけじゃなくて、人類そのものを滅ぼしかけるまで殺した。殺してしまった』
「人類を滅ぼしかけたって……クイーンはそんなに強いの?」
『うん。だから私を殺すために、大量のレヴナントが製造された。レヴナントは、心臓が無事ならヤドリギから蘇るの。でも代償として記憶を失っていく』
「血液は必要なの?その、レヴナントも」
『もちろん。血液がなければ、やがて堕鬼(ロスト)になってしまう。この世界で言えば変異種かしら』
「そうなんだ。吸血鬼ハンターもいるの?」
『ええ。私の身体を見張るために』
「見張る?」
『私はとあるレヴナントに殺してもらった。それですべてが終わるはずだった。でも、クイーンである私は、殺しても死ぬことはなかったの。そして考えたのが、私の身体をバラバラにして、クイーン因子の強いレヴナントの体内に封じることだった』
「じゃあ、クイーンは今も生きてるの?」
『バラバラだけどね』
「ズルい!私死にかけてるのに!!」
『それはごめん。死んでも私は強くてね?内側からレヴナントを侵食して肉体を崩壊させてしまう。だから、私を封印したレヴナントに限界が来たときのため、その器を介錯し、別の器への封印管理という辛い役割を背負わせてしまった』
「誰かの命令?」
『統制局』
「別の世界にも統制局ってあるんだ」
『どの世界にも政府機関はあるものよ?』
「クイーンの世界って大変だったんだね」
『大崩壊がなかったら、私もクイーンにならなかったのにね』
「大崩壊?大事変じゃなくて?あ、世界そのものが違うんだっけ」
『そうそう。でも貴方の世界と私の世界は、結構共通している部分が多いの。ブラッドコードもその一つ』
「ブラッドコードまであるんだ」
『レヴナントは全員持ってる。もちろん私にも』
「おお~かっこいい!」
『初めて言われた』
「だって女王でしょ?王の力なんて、聞いただけでワクワクするじゃん!」
『ありがとう。貴方は感情に素直なんだね』
「よく言われる」
『自覚があってよろしい』
「クイーン」
『なに?』
「寂しく、ない?」
『寂しい』
「納得はしてる?」
『している』
「そっか」
『ええ』
「……」
『……』
「……」
『……』
「ふふっ」
『アハハ』
「名残惜しいけど、いってもいいかな?」
『もちろん。久しぶりに楽しくおしゃべりできたよ』
「また会えるかな?」
『ここで死にかければ会えるかもしれないわ』
「う、それはちょっと……」
『だから、この出会いは泡沫の夢として忘れて?』
「それは嫌。これは現実。私はクイーンの友達」
『会ったばかりなのに?』
「友達の定義なんか分からないよ。でも、友達」
『うん。ありがとう、別世界の私の友達。そうだ。友達にはプレゼントを渡さなくちゃ』
「プレゼント?」
『うん。その前に確認。貴方は人間?それとも吸血鬼?』
「ルゥの恋人!」
「アハハ。うん。その通りね」
「ね~ぇ~?プレゼントま~だ~?」
『もうあげた』
「え!本当に!?」
『本当。友達に噓をついてどうするの?』
「なにくれたの?」
『うーん。縁?』
「なんで疑問形?」
『今こうして貴方と話している時間がプレゼント。ほんのわずかな縁じゃダメ?』
「充分だよ。私は、その縁を手繰り寄せて歴史を現在に結びつけてきたから」
『その縁を大切にしてね』
「ん?ルゥの声?」
『素敵な恋人さんだね。最後まで大切にしてね』
「うん!行ってくるわ!それとクイーン」
『なにかしら?』
「また会おうね!それじゃ!!」
『っ!……うん!また会おうね!』
「ユキ!!!目を開けて!!!あけてよ…!おねがいだからぁ…!」
「再生完了!お母さんユキちゃんの呼吸は!?」
「辛うじてだがな!!ホリー!アドレナリンは!!?」
「私のポーチ!!ルゥちゃん!緑の蓋!!太腿に刺して!!」
「ぁ…わか…ゲホッ!ゲホッ!わかりまs」
ガシッと、ルゥは誰かにしっかりと手首を掴まれる。
この感触を知っている。
この温もりを知っている。
忘れる訳がない。
「わたし、ちゅうしゃ嫌いなの。だから止めてくれると嬉しいな~」
「ユキ…?あ、あぁ…!!ユキ!ユキぃ…!!」
「痛たたたた……ルゥ嬉しいけど今は抱きつかないで……」
「ユキちゃん!!ルゥちゃんごめんね。確認するから」
「血圧が正常値だと?あれだけの出血をしたはずなのにか?ついに人間を辞めたか」
「あれ?なんでリコリスがいるの?」
「知らん。瞳孔反応も正常。ホリー、脈はどうだ?」
「驚く程に正常よ。ユキちゃん私の手を握ってみて?」
「ん」
「これも正常。ちょっと痛いぐらいね」
「そのようだ(どういうことだ?先程まで本当に死ぬ寸前だった。私とホリーの術式が作用した?それもあるだろうが異常としか言えない回復速度。冗談で言ったが本当に人間を辞めた?……これ以上は止めだ)ホリー、こいつは私が見ておく。お前の役割を果たしてこい」
「……ええ。撃ち抜いてくる!!」
スノードロップを顕現させ、ホリーもイドリスの眷属を倒すべく走り出す。
その姿を見たイリスとリーズは、思わずホリーがユキを処置していた方へ視線を向けると、ヒラヒラと振っているユキと、そんなユキを泣き笑いしながら抱きしめているルゥの姿があった。
「ユキ!」
「ユキ義姉さん!」
「ごめんね~もう大丈夫だから」
「こいつは私に任せろ。絶対に守る」
「え、あんた誰?」
「ホリーの血族だ」
リコリスはイリスとリーズに戦う力があることを示すため、『術式機械腕リコリス』を顕現させる。
「こういうわけだ。絶対に守る」
「~~~っ!リーズ、行ける!?」
「もちろんです!ユキ義姉さんとルゥさんをお願いします!!」
二人もホリーを追いかけるように戦線に加わる。
そしてさらなる朗報が叫ばれる。ゼノンだ。
「術式の解析は終わった。ラヴィニア君、ヤドヴィガ、実証実験を始めようではないか!!」
『ええ』
『上等だ……!』
ゼノン、ラヴィニア、ヤドヴィガ、がこの空間に対して術式を発動させ、これまで全員を蝕んでいた全てを吹き飛ばす。
陽光と月は力を失い、ようやく『吸血鬼』が本領を発揮する時が訪れた。
その変化は、最後尾にいるユキとルゥも感じ取る。
これならば、再生力も憑依も使い放題だ。
「ユキ!再生力を使ってください!」
「ん」
ユキはルゥの言葉通りに再生力を発動させ、身体をさらに回復させる。
気力充分。体力全快。いつものぐっぱも忘れずに。
「さ~て。ぼちぼちリベンジすr」
「ダメ!!!」
「うおう!?ルゥ?どうしたの?そんな大声だして」
「さっき死にかけたのですよ!?忘れたのですか!!?」
「私は平気だかr」
「だから嫌なんです!!貴方は、いつもそうやって無茶を…して……」
「私もルゥと同意見だ。止めておけ。バイタルは正常だが、予断を許さん状況にあったことは確かだ。それとも、もう一度ルゥの目の前で腹を触手に貫かれたいか?」
「それは嫌。嫌なんだけど……」
チラリと全員が戦う戦場を見る。
表情は真剣そのもの。だが、多少の安心が見て取れる。
ホリーがユキの無事を伝えてくれたのだろう。これで目の前の相手に集中できると。
みんなの一撃一撃が鋭さを増し、術式での攻撃も威力が上昇している。
自分がこんなことにならなければ、最初からあのテンションを維持して戦えたろうに。
だから、これからルゥに言う言葉は絶対に『 』と言われてしまうだろう。
「ルゥ」
「何を言っても無駄です。ここで貴方を止めます」
「だよね。だったらさ、ルゥが私を守りながら戦ってくれないかな?その代わりに、私もルゥを守りながら戦うから」
「駄目です」
「私が元気に飛び回ってる姿を見せた方が、前線の士気が上がると思うな~」
「駄目です」
「このまま私も戦闘に加わるなら、ルゥの言うこと、一つだけ絶対に叶えてあげるおまけ付きだったらどうかな?」
「…駄目です」
「大人のキス」
「……駄目です」
「おはようとおやすみのキス」
「……駄目です」
「それも大人のキスで」
「貴方がこれ以上傷つく姿を見たくありません!!」
「私は恋人が私だけを見てほしいな~」
ユキは力強くギュッとルゥを強く抱きしめる。
決意は変わらない。
闘志も砕けていない。むしろ、ルゥを抱きしめたことで余計に燃えてきた。
心配をかけてごめんなさい。
けど、今は踏ん張りどころなんだと。
そして、愛する貴方が隣にいてくれれば百人力なのだと。
ルゥを愛しているから伝える。
ユキを愛しているから理解出来る。
「ユキは『卑怯』です……」
「……」
「こんなことされたら、断れないじゃないですか……」
抱きしめられていたルゥは、ユキをお姫様抱っこをして立ち上がり、そのままいつものキスをする。
「ユキの馬鹿。人たらし。命知らず。私泣かせ。愛しています。どこまで私の心を弄べば気が済むのですか?」
「生きてる限りずっと!!」
ストン。とユキはお姫様抱っこから立ち上がって身体を伸ばしてほぐすと、やっぱりルゥにキスをしてマサムネを顕現させる。
その光景を見たリコリスは、呆れ半分、馬鹿かといった感情半分で、自らの武器でユキとルゥの頭に軽めのチョップをする。軽めと言っても、機械腕の質量ならかなり痛い。
「「痛い……」」
「TPOという言葉を辞書で調べろ愚か者共。気を引き締めろ」
「も~リコリスは私のお母さんなの!?」
「馬鹿を言え。私はホリーの母親だ!」
向かってくる触手を『アイシクルパラージ』で防ぎ、『ガードオープナー』で貫くと、『レイザーブルーム』で切り裂いてバラバラにする。
「ふん。ほら、さっさと行くぞ」
さらに『栄光の架け橋』でユキとルゥの身体強化をする。ただ、今の二人にそこまでの効果があるのか多少不安にはなるが。
「ありがとうリコリス。でもついでにこれも発動しようかな」
『オーバードライブ』
『ストライクライザー』
『鎧落とし』
『ハートブレイカー』
『ブラッドプレデーション』
『オーダーライズ』
「それでこれも」
『七色障壁』
『再生者』
『穢血の守り』
『パーフェクトボディ』
『オーソリティ』
「これは……!」
「おい、なんだこれは!」
ルゥとリコリス、いや、この場にいる全員が驚く。
全員にバフ術式が一度にかけられたのだ。
それに、これだけの術式を発動させるにはイコルが足りない。
その不可能をユキは簡単にやってのけた。
さらに『不可能』は続く。
ユキは『雷霆閃』でイドリスの眷属に斬りかかると、距離を取ったタイミングで『マクリーシュの歯車』を投げつけて牽制する。追撃とばかりに『ブレイズアロー』『ブレイズショット』『ブラストボルト』『ガードオープナー』『アイスウェーブ』を放つ。
「GYAAAAAAAAAA――――――!!!!!」
これには流石のイドリスの眷属にも多大なダメージが叩き込まれる。いつの間にかユキに斬られた首も再生している。そのことにイラついたユキは『アイシクルパラージ』で動きを止めると同時に『烈日の如きフォトンスフィア』を発動させる。
当然、それだけでは済まさない。『秘剣・鎌鼬』の後、『朧影斬』からの『断空刃』。さらに『シュレイドホッパー』の着地後『無尽剣舞』で追い打ちをかけると、『ブラッドインパクト』で吹き飛ばし『ブーステッドキャリバー』を発動。
『烈日の如きフォトンスフィア』の爆発と同時に『ブーステッドキャリバー』での一撃を真正面から叩き込む。
まだ終わらない。終わらせない。青白い光がルーンブレードの形を取ると、『レイザーブルーム』で投げつけて『ストークサテライト』状態にする。さらにもう一対のルーンブレードで『裂き旋風』を決める。だがイドリスの眷属は、巨大な腕をユキ目掛けて振り下ろすが、『カッティングボルテクス』で避けられつつダメージをもらってしまう。
その際に怯んでしまったのがいけなかった。柄頭での『ヒューマングレーネード』でさらに怯まされ、追撃の『ガイアインパクト』からの『墜天衝・動地』を脳天に叩き込まれることになったのだから。
『GAOOOOOOOOOO――――――!!!!!』
叫び声の衝撃波でユキを吹き飛ばしたが、『グレイシャスパラージ』はもうイドリスの眷属の頭を捉えていた。頭だけではない。その巨体に『燎原劫火』も叩き込まれる。
『オーバードライブ』『ストライクライザー』『鎧落とし』『ハートブレイカー』『ブラッドプレデーション』『オーダーライズ』『七色障壁』『再生者』『穢血の守り』『パーフェクトボディ』『オーソリティ』
もう一度バフ術式をかけ直すと、ユキは代名詞の『アサルトダイブ』でイドリスの眷属の触腕を斬り裂いた。
「ユキ、お前…いや、ホリーの話は本当だったようだ」
「心配かけてごめんねジョゼ?」
「ユキ!」
「ライル!まだやれるよね!?」
「誰に言っている?」
「やっと真打登場か?」
「ヒーローはいつだって遅れて来るんだよ、クレイグ」
「流石は我が友人だ!!こちらの想定を簡単に乗り越えてくれる!!」
「当然でしょゼノン!」
「ユキ義姉さん!!よかった…よかった…!!」
「ごめんね~頼りないお義姉ちゃんで。挽回するぞ~!!」
「あとで私もねぎらってよ?」
「もちろんだよイリス。一杯奢るね」
「本当に無茶をするハンターさんなんだから」
「ごめんねホリー先生。あとで大人しく怒られますから」
「まったくだ。お前は医者泣かせだヤツだ」
「ごめんなさいリコリス……」
「ユキ。戦えるかい?」
「もちろんだよヴァレンティン」
「お前には驚かされてばかりだな」
「私は人間ビックリ箱だからね。知ってるでしょノア」
『ユキ。おそらくですが、貴方には…』
「分かっていますラヴィニア様」
『今度、割引料金でスナック菓子を売ってやる』
「本当に!?ありがとうヤドヴィガさん!!」
「絶対にお説教ですからね、ユキ」
「正座は勘弁してねルゥ」
各々が武器を構え直す中、やはりユキに関して驚くことが山ほどある。
まずはあの術式だ。
武器選ばずのユキだから、あれだけ見事に術式を使いこなせる所まではいい。だが、連続で術式を発動することは出来ない。
まずイコルが絶対的に足りない。ブラッドコードやブースターを駆使すればある程度イコル量を増やすことは可能だが、それでもイコルは足りない。
さらに術式の数。術式は武器に取り込ませて発動させる。その数は四つまで。さらにその武器も最大で二つまでしか持てない。なので最大でも術式は八つ。だがユキは八つ以上の術式を使っている。
そして武器によって発動できる術式も異なる。ユキは片手剣。にも拘らず両手剣での術式『裂空刃』、大槌での術式『ガイアインパクト』、銃剣での術式『グレイシャスパラージ』だって使っている。
おまけにユキが使っている術式は『この場にいる仲間の術式』だ。
いくらなんでも異常だ。
人間としても。吸血鬼としても。吸血鬼ハンターとしても。
「ラヴィニア君!!」
『信じ難いことですが、貴方の考え通りのことが起きました』
「ではやはり……!!」
『ユキが『ブラッドコード』に目覚めました』
『それも『人間』でだと?』
「これは歴史の転換期が訪れたようだ!では!さっさと倒してしまおうではないか!」
「ルゥ!」
「はいっ!!」
ユキの一言で、ルゥは自らの身体を霧散させ、黄金の奔流となってユキの身体に憑依する。つま先から手の指先まで力が漲る。
ほんの少しだけマサムネの剣先を下げる。その次には、剣先がイドリスの眷属の眉間に突き刺さっていた。
「GUOOO―――!!!」
頭を振ってマサムネごと振りほどこうとするイドリスの眷属。
だが、ユキはその勢いを利用して後ろに跳び、『ブラストボルト』で相手の目を潰す。
「ルゥありがとう!ジョゼ!リーズ!」
「分かった!!」
「え、でも二人での憑依は無理じゃ」
「私の許婚にできないことなどない!!違うかリーズ!?」
「そうだよね!だってユキ義姉さんだもの!!」
ルゥがユキから出てくると、交代するようにジョゼとリーズが憑依する。
暴食の力が流れ込む。その力は二対の暴食姫の翼となって顕現する。さらにユキは伝承術式『血喰らいの大太刀』を顕現する。
することはたった一つ。
『『「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」』』
三人が、心一つに刃を振り抜く。
「GYAAAAAAAAA――――――!!!!!」
ようやく苦痛にも似た声を聞く。やっと届き始めたのだろう。
斬り落とした腕の再生が遅くなってきた。
「ライル!クレイグ!」
「ようやく出番か」
「待ってたぜ!!」
黎明の旅団の家族、ライルとクレイグがユキに憑依する。握るは伝承術式『絶対処刑剣』
宿る力は卓越した技量に折れぬ信念。向かってくる腕を『絶対処刑剣』で弾くことなど簡単だ。そしてその『信念』を持って、もう一本の腕を斬り飛ばす。
「GYAAAAAAAAA――――――!!!!!」
「イリス!」
「私も?ブースター実験付き合いなさいよ!」
自然と、伝承術式『愚者の大鉄槌』を握る手に力が籠る。心が伝わる。誰かを支えたいという覚悟が。呼吸を整える。全身で振り上げて、地面ごと相手の身体を砕く勢いで『重み』をぶつける。
「GUUUUU…………!!!!!」
動きが止まれば狙いやすい。
「ホリー先生!リコリス!」
「まかせて!」
「娘と共闘とはな!」
命を守る。そのために戦うという強い意志。治すことは壊すことより難しい。知っているからこそ、伝承術式『薔薇騎士の機関砲』の弾幕は、命を奪う存在を許さない。限界まで撃ち尽くす。
「そろそろ私の出番かね?我が友人よ」
「もちろんだよゼノン!」
誰よりも明日への可能性を信じ、邁進する偉大な科学者。愛する妻のため、娘のため、友人のため、より良き未来のため、伝承術式『渇望の手』から決意という凄まじいエネルギーを発射する。
この二人は正反対。だけど真実の親友。
「ノア!ヴァレンティン!」
「やれるよな?」
「間違えたら殴ってくれるだろ?」
互いに友を想い、友のために犠牲になった。今ではそんなわだかまりなど存在しない。互いに支え合い、未来を夢見る親友たちは、伝承術式『永劫の翼』でイドリスの眷属を打ち貫く。
「ラヴィニア様!ヤドヴィガさん!」
『ええ。共に参りましょう』
『たまには一緒に働いてやる』
父のために世界を切り貼りした娘、息子のため尽力した母。その行動理由はどちらも家族を想ってのこと。そのためならば世界をも変えてしまおうという覚悟は、伝承術式『為政者の大弓』の矢じりに込められ放たれる。
そして。
愛する人とは離れたくない。
「ルゥ!もう一回!!」
「もちろんです!!何度でもご一緒します!!」
命を分けてくれた。一目惚れしてしまった。初めて愛しいと思えた。だから最後まで一緒にいようと誓った。恋人のためならば、いくらでも頑張れる。だから二人で伝承術式『戦斧・イドリスの驕り』を全力で発動させて、イドリスの眷属の動きを止める。
これなら、『全てを叩き込める』
「『はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』」
ジェイルから『スティンガー』でイドリスの眷属の身体に突き刺すと、そのまま『アイヴィ』の剣で内側からさらに串刺しにする。
イドリスの眷属は逃げようとするが、『ハウンズ』が噛みつき逃亡を許さない。そのまま引き寄せ『リーパー』の死神の鎌で斬り裂き、『オウガ』を叩き込んで吹き飛ばす。
一回、二回、三回と転がり、ようやく体制を整えたイドリスの眷属が見たのは、『バット』の大きく翼を広げ、今まで吸収した血で生み出した黄金の蝙蝠たちを、空中に浮かび従えるユキと『ルゥ』
バットのフェイスマスクから覗く『青白い』双眸が開き、右腕を空に掲げると、黄金の蝙蝠たちが集まって、巨大な黄金の螺旋の杭の形に変化する。
「『貫けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』」
ユキと『ルゥ』が振り下ろした右腕。
巨大な穴が空いたイドリスの眷属。
霧散し始めたイドリスの眷属。
そこまでを見届けたユキと『ルゥ』は、安心したかのように瞳を閉じると、空中から落下する。
それが『ユキ』が次に起きるまでの最後の記憶だった
DLCの登場人物も書きたいです