CODE VEIN Ⅱ 世界を『楽しむ』旅路   作:ミヤビコウ

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注意!
この物語は多大なネタバレを含みます。念頭に置いて楽しんでいただけたなら幸いです



旅団の一員

「無茶をさせてすまなかったな」

「本当だよクレイグ~見てよルゥのこの顔」

「……」

「本当にすまなかった。代わりと言ってはなんだが、今日はお前たちの歓迎会だ。旅団の連中が張り切って準備していたぞ」

「ルゥ、これで手打ちにしてくれないか?」

「……ユキさんが歓迎会で禁酒するなら許して差し上げます」

「そ、そんな殺生な……」

 開拓者の城、団長執務室にてユキ、ルゥ、ライル、クレイグが集まって、いつものようにフランクに話している……ルゥがご機嫌斜めなのを除いて。惚れた相手が死ぬかもしれないほど身体を酷使させられたのだから、当然と言えば当然だ。

 それにしても感慨深い。この場所は旅団の象徴であり、家族の象徴だ。百年前からはためく団旗を見ると誇らしくなる。

「一先ず荷物を部屋に置いてこい。歓迎会はその後だ。ライル、案内してやってくれ」

「ああ。ついて来てくれ」

 そのままライルに着いて行く二人。道順も内部構造も知ってはいるが、どうやらリンネを封印していた百年の間に改築もしたのだろう。記憶にない扉や部屋が増えている。そして一番驚いた場所があったので、思わずライルを呼び止めてしまう。

「ねぇライル、ちょっといい?」

「どうした?」

「ここってそういう場所?」

「ああ。二人は知らなかったな。ここに温泉を引いたんだ」

 そう。『ゆ』と書かれた暖簾がかけられたその部屋は、マグメルにもある温泉だった。

「以前クレイグがホリーの勧めで湯治をしていただろ?旅団は危険な任務も多い。だからこそ、心身を癒す施設として造ったんだ」

「ほえ~よく造れたね」

「ここの近くに源泉があったんだ。それを利用している。あとで入ってこい。旅の疲れも癒えるはずだ」

「うん。そうするよ」

「着いたぞ。この部屋を使ってくれ」

 ガチャッと扉を開けられた部屋は、本当に二人部屋か?というぐらいに広く、ベッドのサイズだって大きい。これに一人で寝るの?というサイズだ。床のカーペットだってフカフカで、設置されているソファだってフカフカだ。

「なんか、すっごい豪華に見えるのって私だけ?」

「久しぶりに古参の団員が帰ってきたんだ。クレイグからの餞別だと思ってくれればいい」

「有難く頂戴するよ」

「ああ。歓迎会には迎えを行かせる。それまでくつろいでいてくれ」

「そーするよ。ありがとねライル」

「歓迎会で会おう、相棒」

 トン、と二人は拳を合わせると、ライルは部屋から出ていった。

 これだけ広いとどこに荷物を置こうかと迷う。ちゃんとクローゼットもあるがそれも大きい。かくれんぼで人気の隠れ場所になるぐらいの大きさだ。

 とにかく、ソファに荷物を置いて、荷解きをすることにしたが、お風呂セットを手に取ったルゥに捕まる。

「ルゥ?どうかしたの?」

「温泉、行きましょう」

「え?」

「行きましょう」

「……はい」

 その有無を言わさない迫力に、あっさりとユキは負けて、自らも荷物からお風呂セットを取り出すのだった。

 

 カポーン……

「あ~きもちいい~いきかえる~」

「……」

「~♪~~♪~~~♪」

「……」

 いつもの鼻歌を歌うユキ。リラックスしている証拠だ。

 開拓者の城の温泉は、マグメルの温泉よりも広く、長めに浸かっていられるように多少ぬるめになっている。旅団の団員の人数は知らないが、少なくともここまで広くなければいけない人数なのだろう。

 だが、ルゥのご機嫌は癒されていないようだ。

 原因は明白。ユキとライルの模擬戦だ。

 さてどうしたものかと鼻歌を歌いながら考えるが、温泉があまりにも気持ちいいものだから考えが纏まらない。効能が違うのだろう。いやそうじゃなくて……

 コツンと、ルゥがユキに寄りかかる。

「貴方は約束してくださいました。『一緒にいる』と」

「……うん」

「ですが、今日はその約束を破ろうとしました」

「……うん」

「貴方を失うことが、たまらなく怖いのです」

「……うん」

「ですから、もうあのような無茶はしないでください」

「……えっと、それは時と場合によるかも」

「でしたら、私も貴方のために無茶をします」

「……うん。それはちょっと困るかな~なんて……」

「でしたら、貴方が困らないように、私に無茶をさせないでください」

「……うん」

「百まで数えてしっかり暖まりましょう」

「それじゃあ一緒に数えよう。『一緒』にね」

「……はい」

 

「「「かんぱーい!!!」」」

「全く、もう少し顔出してくれよ!」

「そうですよ。最近はユキの顔を知らない団員の方が多いんですから」

「今じゃ『幻影の団員』と呼ばれているぞ」

「それ絶対クレイグでしょ噂流したの!!」

「間違ってはいねぇだろ。所属はしてるが姿を見た奴がいねぇんだから。なぁライル?」

「確かにな。だが、今日から幻影は現実に変わった。そうだろ、相棒」

「えぇはい確かにそうですねアルコールの入ったジュース飲みたーい!」

「ユキさん?」

「……すみませ~ん」

 開拓者の城、司令室前で立食形式で宴会が開かれた。参加メンバーは、百年前からユキを知っている古参の団員たちだ。今ではそれぞれが師団長を任される幹部に出世していた。今では辺境域最強の軍隊だ。統率するためにはそれなりの上下関係も必要になるので必要措置でもある。

 それでも百年前のあの空気感は一切変わっていない。どれだけ大きくなろうとも、上下関係が生まれようとも、黎明の旅団の根本は変わることはない。

「ジョゼから聞いたけど、護衛任務もしてるの?」

「ああ。やはり万が一の可能性に対して備える必要がある。それに、行軍の実地訓練にもなる。一石二鳥だ」

「成程ね~ちなみになんだけど、それ以外の任務ってなんなの?」

「そうだな、生態系の調査に、新種の動植物の捕獲もしている」

「え?なんで?」

「俺たちの活動範囲は広い。だから様々なエリアに足を踏み入れる機会が多いんだ。地域が変われば生態系も変わるし、新種を見かけやすいんだ」

「復興が終われば発展の時代に変わる。その際、生態系に影響を及ぼすような発展をしてしまってはお前たちの百年を無駄にしちまう。これは辺境域に生きる人間と吸血鬼とで話し合って決めたことだ」

「それに、新種の植物から薬効成分が発見された事例が多数報告されている。その植物を安定的に栽培することが出来れば、薬の安定供給にも繋がる」

「そっか~沢山の点が繋がって、大きな絵になってるんだね。なんだかワクワクするね!」

 目をキラキラさせながら笑うユキ。目だけじゃない。声も、表情も、ユキは全身でワクワクしていることがよく分かる。

 

『あいつらを解放することができた時、あいつらがワクワクするような世界に俺たちがしてやろう。それがあいつらに対する最大限の礼だと俺は思う』

 

 リンネを封印し、これからの辺境域についての話し合いの場で、ノアがそう言ったのだ。その一言で全員がユキの笑顔を思い浮かべた。辛い場面でいつもユキは笑っていた。

 

『絶対に皆で笑おう!』

 

 決まってユキはそう言っていた。

 だからこそ、今度は我々がユキを笑わせる番なのだと。

 そしてようやく、この百年が報われたのだと確認することができた。

「ユキ、実は別件で考えていることがあるんだ」

「別件?なんなのクレイグ?」

「俺のおふくろの慰霊祭を開いてみたらどうかという意見が旅団の中で上がっていてな」

「クレイグさんのお母様というと、開拓女王イモージェンですね」

「ああ」

 マクリーシュ家前当主にしてクレイグの母、酸の谷を切り開き、その身を犠牲にして酸の谷を守った偉大な女王。それがイモージェン・マクリーシュだ。

 百年前、ある事件で彼女に永遠の安らぎをユキとライルが捧げた。

 その場にはクレイグもいたのだが、開拓者の城に襲撃があった為、その指揮を執るため転送術式で城に戻り、結局最後には立ち会えなかったが、彼女の女王としての覚悟、家族に対する深い愛を知ることができたのだ。

「お前たちがリンネを封印していた間、定期的に俺とライルだけで、おふくろの最後の場所で祈りを捧げていたんだが、知っての通り場所が場所だからな」

「だからこそ、慰霊碑をこの近くに建設し、黎明の旅団として慰霊祭という形で日々の無事と感謝を伝えたいというわけだ」

「クレイグ、これ絶対にやろうよ!ううん、やらなきゃダメだよ!!」

「ですが、今の口振りですと慰霊祭は開催されていないように聞こえます。何故なのですか?」

「そりゃあ決まってる」

「団員『全員』で執り行うためだ」

 ずっと待っていてくれたのだ。百年もの間、黎明の旅団は『ユキ』の帰還を。本当に敵わない。嬉しくて仕方がない。胸が熱くなる。目尻も熱くなる。笑顔が崩れそうになる。このままだと涙がこぼれてしまう。

「ルゥごめん!やっぱり飲みたくなっちゃった!ワインもーらいっと!」

「ユキさん!禁酒だと言ったはずですよ!」

「祝いの席は飲んでなんぼじゃーい!!」

 そんなドタバタ劇が繰り広げられる中、他の団員もユキにあれもこれもと酒を勧め、その度にルゥがブロックするという、結局終始楽しい宴会へと発展していった。

「笑うことは得意だが、相変わらず誤魔化すことは苦手なヤツだ」

「ああ。昔から変わっていないな」

 

「ユキさん。どうして土下座をなさっているのですか?」

「お、お酒を、飲んで、しまった、からです」

「ユキさん。どうして土下座をなさっているのですか?」

「や、約束を、破って、しまった、からです」

「ユキさん。どうして土下座をなさっているのですか?」

「ル、ルゥに、許しを、請う、ためです」

「ユキさん。一週間抱き枕の刑は覚えておいでですか?」

「も、もちろんで、ございます」

「今から刑を執行しますので、許して差し上げます」

「流石にお互い寝る支度してからでお願いします!」

「……ふふっ」

「その笑いなに!?本当に申し訳ありませんでした!!」

 

 そんな宴会後の茶番劇があった翌日、執務室で慰霊祭の話し合いが行なわれていた。

 慰霊碑の建設場所は、第二拠点からエレベーターで降りたすぐに近くと、開拓者の城、かつてライルの封印殻のあった場所の二つだ。

 慰霊碑の建設場所は最初この二つのうちのどちらかに設置する予定だったが、黎明の旅団の団員数が増えていたため、一か所に絞ってしまうと人が集中してしまうことを防ぐため、クレイグの鶴の一声で決まったのだ。

 建設自体は術式を利用するので簡単なのだが、クレイグには一つ譲れない事柄があったのだ。

 それは、イモージェンが最後を迎えた場所の砂を、その慰霊碑に混ぜ込むということだった。

 吸血鬼は死ぬと霧散し遺骨どころか死体も残らない。

 だからこそ、イモージェンが確かにここにいたという証が欲しいと考えた時に、思いついたのが、その場にあった砂というわけだ。

 百年という時が経過して、もはやその時の砂があるのかは分からないが、確かにそこにイモージェンという偉大な女王がいたという証を再確認したいという願いからだ。

 もちろん、ユキもライルもその案に賛成した。寧ろ反対する理由が存在しない。

「二人共ありがとうよ」

「じゃあ早速砂の回収部隊を編成しなきゃだね」

「クレイグは当然として、護衛として俺も着いて行く」

「相棒が行くなら当然私も行くよ」

「ユキさんが行くのでしたら私も行きます……心配ですので」

「ルゥには悪いがそれはダメだ」

「……は?」

 クレイグのその一言は、ルゥを宇宙猫にするのには十分だった。

 着いて行けない?ユキに?どうして?

「ルゥは黎明の旅団の『新人』団員だ。新人にはこの重要任務に同行することは許されない」

「新人はまず一端の戦士へとするために二週間の基礎訓練に参加なんだ」

「で、ですが、百年前にはそのような訓練はなかったはずです!」

「百年前はな。今は違う。この時代の変異種は強力だ。生存率を少しでも上げるためにクレイグと決めた。いくらルゥとはいえ決まりは守ってもらう」

「そんな……」

 確かにクレイグやライルの意見は正しい。これから始まる任務は黎明の旅団にとって最重要な任務だ。新人がそんな最重要任務についていけるわけが……

「そういえばユキには副官がいなかったな」

「確かにそうだ。ユキは旅団の幹部にも関わらず、まだ副官を付けていない。どうするクレイグ。今から選ぶか?」

「ユキ。誰をお前の副官にする?出来れば見込みのありそうな『新人』がいいんじゃないか?それも絶対的な『信頼』を置けるような新人が」

「誰を副官として推薦する?お前の決定になら反対はしない」

 まるで予め決めていたような会話をライルとクレイグはしている。もちろん、その会話にユキも混ざる。

「では、昨日合格したルゥ・マグメルを推薦します。彼女は剣の腕もそうですが、最も『信頼』の置ける新人です。団長」

「よし。ならばルゥ・マグメル。クレイグ・マクリーシュの権限に置いて、本日よりユキの副官に任ずる。いいな?」

 茶番劇もいいところだが、旅団としての体面を保つためにはこの茶番劇が必要なのだ。というか、初めからルゥを連れていくつもりだったのだ。

 全てを理解したルゥは、クレイグに向き直って姿勢を正す。

「了解いたしました。ユキさんの副官の任、このルゥ・マグメル、只今より着任させていただきます。粉骨砕身の気概で当たらせていただきます」

「これからお願いね。副官」

「了解です。ユキ上官」

「よし!茶番劇はここまでだ!早速向かうとするか!」

「「了解!」」

「相変わらずだな。どいつもこいつも……」

 

「最後に来たのはいつだったかな……」

「一か月前だ。必ず月に一度は来ているだろ」

「団長は母親思いですなぁ~ね、副官」

「そうですね、上官殿」

「お前らなぁ……よし、ここからはいつも通りに行くぞ。ユキが真面目な口調だと肩が凝ってしょうがない」

「え~私ってそんな感じ?」

「自覚がないのは本人だけだな」

「ですね」

 イモージェンが最後を迎えた洞窟の入り口に、クレイグ、ライル、ユキ、ルゥの四人が並ぶ。

 百年前、この洞窟付近で地震が頻繫に発生するという報告から全てが始まった。ここが酸の谷、全ての分岐点といっても過言ではない場所だ。

 ここの過去での出来事に介入出来たからこそ、今こうして四人が並んで立っているのだ。

「では行こう。クレイグ、お前の武器はでかいから、取り回しに気を付けろよ」

「誰に言ってやがる。よし、行くか」

「はいはーいっと!」

「了解です」

 この谷には多数の鉱脈が発見されており、鉱山開発の計画が持ち上がっている。だが、開発に伴う環境汚染への懸念も指摘されており、現在はどこをどう掘ったら効率的かつ環境に大打撃を与えない削岩作業が出来るのかという調査が進められている。

 だが、そのために掘られた穴や既存の洞窟は変異種の格好の住処であり、新たに洞窟が発見されると新たに変異種が発見されるという事態になっている。

 おまけに、洞窟の全てが把握されているわけではないので、調査が完了したと思った場所から、新たな空洞が発見されたという報告だってある。

 そのため、調査用の術式の開発が進められているが、違う調査をすればそれに対する術式が必要になるというスパイラルが起きている。

「大変なんだね~でもゼノンが喜びそう」

「ゼノンさんはそういう方ですからね」

「まぁそれはいいんだが、辺境域全体で頭の痛い問題があるんだ」

「辺境域全体で?なにさ?」

「リンネ信仰だ。今も存在している」

 リンネによる変質は、新たな自分へと生まれ変わる救済であるというカルト宗教で、リンネ封印の旅の中でも度々襲われたり、拠点を潰したこともあった。とにかく危険な集団だ。

「危険な存在だからこそ、それを曲解している連中がまだいるのさ。リンネ封印に尽力した連中を目の敵にしている」

「そっか……あれ?その話だとルゥと私が狙われる可能性があるじゃん。百年も信仰対象を封印してたし」

「その逆だ。リンネの守護者として崇められている。そして分散封印の成った今、守護者が地上に降臨し、我らを救済に導いてくれる。だったか。捕らえた信者がそんなことを言っていた」

「うえ~どっちにしろ狙われてるじゃん……」

「だから二人とも気を付けろよ。もし連中にバレでもしたら、何をしでかすか分からんからな」

「そのようなことになっていただなんて……」

「心配させないようにラヴィニア様とヴァレンティンが黙っていてくれてたんだね。リハビリ中に心に負担がかからないようにって」

 簡易ライトで洞窟を照らし様子を伺う。変異種の姿はなし。気配もなし。足跡もなし。この四人ならよっぽどのことがない限り大丈夫なのだが、それでも慎重に進む。危険というものはどこにだって転がっているものなのだから。

 一先ず、この先の安全が確保されたので四人は進む。イモージェン最後の場所までもう少しだ。

「ユキ、リハビリブースターはいつ取れる?」

「イリスとホリー先生の話だと、本調子に戻ったらブースターは勝手に消えるって言ってた」

「ですが、ユキさんのブースターは『しばらく』消えることはないでしょうね」

「うぐっ。副官からの精神攻撃が痛い…」

「俺もだ。ここまでの威力は初めてだ…」

「皆さんにご理解いただけて何よりです」

「団長の俺にも容赦ない新人だぜ……着いたな」

 何も知らない人からすれば、そこはただの洞窟の行き止まりの大きな空間。

だが、知っている人からすれば、ここは神聖な空間。

 酸の谷を守った偉大な女王が、最後を迎えた空間なのだ。

 墓石も、石碑も、特に何があるわけではない。ただこの空間を荒らさないようにするために何も手を加えていない。

 自然と四人はその場で黙禱を捧げる。

 これから行うことは、この場の砂を持ち帰ること。ここで亡くなった偉大な女王の魂の一部を持ち帰ること。その役目を許されているのは、黎明の旅団団長、クレイグ・マクリーシュただ一人だ。

 黙禱を終えると、クレイグがこの空間の中央に歩いて向かうと、その場で膝をつき、とても大事に砂を掬って袋に入れる。

 

―――母上、覚えておいでですか?我が旅団の一員がようやく帰還しました。これで貴方を日の当たる場所へ連れていくことが出来ます。

 ―――そして見ていただきたいのです。母上が命をかけて守護した今の谷の光景を。

 

 その日の夕方、クレイグが旅団の団員に召集をかけた。

 慰霊祭の前に、慰霊碑を建設するため第二拠点近くのエレベーターに集合して欲しいと。その言葉でエレベーター近くには多くの旅団のメンバーが押し寄せる結果となった。これほどの大イベントに参加しないというメンバーがいない方が当然だ。

 そんな旅団のメンバーの前に、砂の入った袋を持ったクレイグが現れ、それに続くようにライル、ユキ、ルゥも姿を現した。

 その姿は何かを吹っ切ったように威風堂々とした表情をしている。

「悪かったなお前ら!随分と待たせちまったが、ここに開拓女王イモージェンの慰霊碑を建設する!」

 クレイグの声に旅団のメンバー全員が叫ぶ。

 その後ろ姿はとても偉大で大きく、かつて記憶の回廊で見たイモージェンを彷彿させる存在感だった。

 クレイグは袋から砂を取り出すと、その砂が混ぜ込まれた慰霊碑を、術式を利用して建設した。

 時間にすればものの数秒。だがその数秒は黎明の旅団にとっては神聖で意味のある数秒。慰霊碑の形は黎明の旅団の団旗で、中央に開拓者女王が振るっていた武器の形が刻まれていた。

「これから黎明の旅団は、常に開拓女王イモージェンに見守られることとなった!だが忘れるな!見守られているということは、常に女王からの視線があるということだ!偉大なる女王に恥じることのないように、より一層の働きを期待するぜ!!」

 

 うおおおおおお!!!

 

 本当に、クレイグはすごい。

 そうユキが思っていると、今度はライルが前に出た。

「聞いてくれ!さっきクレイグが使った砂は、俺とクレイグが毎月鎮魂の祈りを捧げている女王が最後を遂げた場所から運んだものだ。そしてその道中、俺たちの護衛をしてくれたのが相棒であるユキと、そのユキが選んだ副官のルゥの功績だ」

 ん?ライルがそんなことを言うとは珍しいなと思ったユキ。それはどうやらルゥも同じようで困惑した表情を浮かべていた。

「ルゥはまだ入団したばかりだが、その実力は俺とクレイグが保証する。だからこそ、女王の前で入団の証を渡したいと思う。皆にはその証人となってもらいたい!」

「え?え?」

 さらに困惑が増していくルゥだったが、ユキはルゥの背中を押してクレイグの前に立たせる。

「ほらルゥ。片膝着いて」

「わ、わかりましたが、なぜここで?」

「お前の存在をここにいる全員に認識させ、常に相棒といても副官だからという理由にできる。それに、お前はもう旅団の一員だからな」

 何となく理由は戸惑いながらも理解出来たルゥの元に、旅団の一員である証のダガーナイフを握っているクレイグが目の前にいた。

 

「我ら、一振りの刃にて困難を切り開き遥かなる旅路を共に征く者なり」

 

 この言葉とともに旅団の刻印が刻まれたダガーナイフを渡されたこの瞬間、ルゥは正式に黎明の旅団の一員として迎えられたのだった。

 

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