令和ゆるふわ女子大学生の、邪神的コンテンツ消費録 作:V01-125,734,943,672
◇
「先輩──結局。そっち、なんだ」
今回の私は、遥か昔にやったのと類似条件だね。
文芸部に所属していて、ルネの先輩。
相変わらず文芸部は私とルネだけで──されど127周目と異なるのは、それ以外の条件。
「『カイキアス・ウィンド』!」
例えばルネが魔法と関与する可能性を消滅させていない、だとか。
「ルネ! もう、気にしちゃダメ。『運命邪神』カハヤムは──私達がここまで、ずっと探していた起源
レイとペアになることを阻止していない、だとか。
ついでに言うなら魔法少女統括機構自体を私は消滅させていない、だとか。関与してない、とも言わないけど。
まあ、こんだけやっていれば。
似たような条件なんて、数百回はやっているけどね。
「三年間、ねぇ。私にしては珍しく頑張ったんじゃない?」
三年間、とはレイと初めて遭遇してから現在までの時間。
私にしては珍しく、一周の体感時間も長時間になっているわけで。だからこそ、ここに辿り着くまでに回数が嵩んでしまっている。
こうでしもないと、新しい発見がないから──なんちゃって。
「どういう、こと?」
「人類は脆いからねぇ。この三年間、滅ぼさず生かさずに調整するのは苦労したとも。ああ、別に君達に理解しろと言ってるわけじゃないから、安心していい」
具体的には、百二十兆年くらい。
まあ、体感時間としては細かいところ、全然わからないけれど。
ほら、睡眠時間とか授業時間とか。或いは生活時間なんてのは、基本的に完全スキップしてるから。
もちろん、何のイベントもない虚無時間も。
「改めて、自己紹介を。私は──隕石天災の元凶であり、文芸部の部長であり、月面に飛び上がる宇宙船を墜落させ、魔法少女統括機構の基地消滅原因でもある、『運命邪神』カハヤム。或いは、ゆるふわ女子大学生」
民間人に囲まれている、という状況もいつぞやと類似している。
ここが小高い丘である、ということも同様に。
「『
今さら、そんな単純な攻撃に当たってあげるほど私は優しくない。たかが弾丸一発。視界を向けるまでもない。
代わりに視線を向けるのは、朧気に見える巨大な山。
標高にして3,776mを誇る、とある最高峰。それに視線を向けて、いつも通りの──まあ、隕石落下だねぇ。
人類よ、芸が無いと罵るがいい。
私に創造能力や想像能力を求めるほうが、酷というものなのだから。
「──『
謎の属性が付与された、弾丸。
ノールックで対応してもいいんだけれど、念には念を入れて、ね。
『石橋を叩いて渡る』ってやつだとも。まあ、『転ばぬ先の杖』でもいいけどね。
「消──ッ、危ない、ねぇ。それ、速度変更も出来るんだ。今まで使ったこと、なかったよね?」
私が『
「あなたは、私の攻撃はいつも
使い時だった、ということね。
いいね、いいね。もう六万という膨大な数を越えているというのに、まだ底か見えていないとは。いいね、いいね。
腐食により使い物にならなくなった右脚に、ちらりと視線を向ける。
痛覚は遮断してある。この怪我により死亡する可能性、だなんてものも当然消滅させている。
なんなら、『この攻撃によって私の血流が滞る可能性』なんていうものも、既に消滅させている。
「悪くないよ。ただ、その代償は少なくない。わかるよね?」
太古の昔は霊峰として崇められた、不死の山。
その山は、未だ死んでいない。まさしく、最高峰の活火山である。説明するまでも、なく。
そんな場所に、そこそこのサイズ感を持つ隕石が大量に降り注いだら何が起こるか。眠れる活火山に、刺激が入れば何が起こるか。
自明、だとも。
人類よ、御笑覧あれ。
人類よ、真の天災とは
人類よ。自然を相手取って勝つことは出来ないという、原初の恐怖を想起せよ。
「さあ、もう時間は不可逆だ。人類滅亡のタイムリミットは定められた」
一拍、遅延して。噴火が巻き起こる。
噴煙が立ち上ぼり、轟音が響き渡る。人類文明の刻限が──ああ、緊迫感が足りないかな。
「『この国以外の陸』、消滅せよ」
さあ、人類よ。
この程度で挫けてくれるな。
滅亡の未来が見えた程度で、諦めてくれるな。
コンテンツを創れ。コンテンツを届けろ。コンテンツを消化させろ。新規事項を、私に見せよ。
レイとルネの攻撃を適宜かわし、消滅させ、発動失敗させながら。
周囲に集まる有象無象へと、一瞬だけ視線を向ける。
積極性が無い。己が踏み込んだとしても邪魔になるだけだと理解している、理性ありし者が大半。
少数が虎視眈眈と私を狙撃する機会をうかがっている、と。
うーん、
あの時と比べれば魔法少女の活躍も世間に知られているし、レイとルネがどのような人なのかという情報も、世間に知られている。
いやまあ、その原因はそこそこ目立つように動いていた私のせいなんだけれど。
うん。流石に『不幸にも』で済ませられないくらいの災害が全国各地で起きていて、全世界の治安が悪化の一途を辿っている──なんて状況になっていれば、公開せざるを得ないからねぇ。
だから、今回はあの時みたいなネチネチとリンチする大人の図を見るのは難しい、と。
なるほどねぇ。刻限を造り、この国以外を消滅させ、さっきからチマチマと都市を破滅させているというのに、変わらない。
──覚悟、決まってるねぇ。どうやら余程、らしい。
「恨まれている、ねぇ。どうやら人類文明と相討ちでもいいから、撃滅したいらしい。身に覚えがありすぎて、どれが原因かは分からないんだけどね?」
恨まれている。畏れられている。怖がられている。
私に向けられる感情の種類なぞ、どのようなものでも最早変わらない。その感情を出発点として、新たなコンテンツが生まれてくるのだから。
「──なら、今回はこんな趣向を凝らしてみるというのは、どう?」
『この周囲にいるレイとルネ以外の全人類が、二人の敵対者に
私に向けられていた銃口は、全て二人へと。
場面転換、じゃないけれどね。大人しく一致団結されても、それはそれでつまらないというもの。
やっぱり、コンテンツには起承転結──序破急、みたいなのが必要だからね。その為の最重要ファクター、それが感情ってわけよ。
「『アイオーン・ブロック』」
私の行動を。そして、周囲の行動を察知した瞬間に行動したのはルネの方。
何度か見たことのある防御魔法が、二人を包む。
「──加えてっ、『
投擲されるは、電磁パルス。
瞬間的に跳ね上がる電磁場が世界を包み、一瞬にしてそれら精密電子機器が機能不全を起こす。
へぇ、そんなものが開発──なるほど、されていてもおかしくないか。EMP兵器、なんてものが実在しているくらいなんだから。
「『
ルネのEMP兵器──電磁気不全が発生し、人類に困惑が走る。それにより発生する隙は刹那と呼ぶには長過ぎた。
動揺が走り、次の手を考える──その時間を、韻歌レイは丁寧に掬いあげる。
普段とは異なる、灰白色の呪詛。
堪えきれない憎悪。忘れたくとも忘却出来ぬ怨敵を錯覚させるような、灰吹雪が一瞬にしてあたりを灰世界へと変貌させる。
「……一撃で昏睡、とは。やるねぇ、流石エリート魔法少女。うんうん、現代最高戦力なんじゃない?」
六万回見ても尽きぬ手札があり。
その上で、その一つ一つが対人にあたっては必勝に近しい勝率を誇る。
これ、私が勝ててるのは──無論、私の戦略構築力が極めて低いというのもあるけれど──消滅の能力が強すぎるから、という一点だけだね。どうみても。
「なら、私はそれらを消──」
「『
地面から突き出してくる、黒々とした樹の根。
視界に入ったそれからの、回避が優先となる。優先順位の変化、というだけ。
何事も順番だからねぇ。緊急性の高い要件ほど先に片付け──
「……っ、『クロノス・フリーズ』!」
──ないと、ねぇ。
『クロノス・フリーズ』。
効果は、至極単純。思考の
その帰結も、同様に簡単で。
呪いの樹木が、直線的に──頭部へと、突き刺さる。
頭蓋が破砕される音。肉の潰れる音。ナマモノが潰れる音。
「ッ……、『
咄嗟の事で。
理解出来ぬコンテンツであったが故に。
次弾として装填されていた黒色の弾丸を消滅させることすら、能わず。能わず。能わず、に。
そろそろ、だねぇ。熱量的に。
「いい、ね。いい、ね。
全身が腐り落ちていく。
最初から存在していない、手足の感触。
ああ、そうだとも。そんなもの、コンテンツを味わうのに不必要だからね。遥かの昔に消滅させているとも。
生存に
そんなもの、コンテンツを味わうのには必要ではない。
遥か昔、永劫とも取れる古に消滅させているとも。
関係ない。関係ない。関係ない。
大脳も。心臓。何もかも。そんなの、コンテンツを消化する為に不必要なのだから。
「どういう、こと……?」
『腐蝕の進行』を、消滅させて。
『全身活動の不全』を、消滅させて。
ハッキリ言ってしまえば。
最初から、私の戦闘能力なんてそう高いものじゃない。
万象を消滅させる能力は事実、最強の地位を揺るがすことないものである。それでも、それを扱う私は大した
だからこそ、誰にでも倒せる門戸は開かれていた。
最初から。一周目から。常に、殺害される可能性は遍在していた。
だというのに。だというのに。
どうしてか、人類は此処まで
三百兆年。三百兆年、もの間だ。
一度たりとも。一回たりとも。
こんな単純な仕組みでさえ殺し得る、私を一度たりとも。
「何処までも浅薄で、何処までも合理的で、何処までも能無しで。嗚呼、『コ■テン■』だ。それも含めての、全てが」
理解出来ない。どうして、殺せないのか。
この程度、だというのに。何故出来ないのか。
人類文明とは、そんなものなのか。その程度で底が見える──私程度で、底が見える
「ルネ、明らかに──今日のカハヤムは変」
「倒したから、とかじゃないよね。
今更、壊れるわけがない。
既に65,534周目。壊れるならば、もっと手前で壊れているとも。
「レイ、ルネ。汝等に問おう。どうして、私に抗う?」
「最初から、自己満足の為。私は私が
「私は、世界の綺麗さをまだ見る為に!」
変わらない。変わらない。変わらない、ねぇ。
情熱的な信念であり、決して曲がらぬ意思。
一度折れたその姿を知るからこそ、真に悠久不変なものではないと、私は知っている。
「世界に君達以外がいなくなった、としても。私を穿つほどの魔法を使い、実現しようと。変わらないねぇ、本当に」
理解出来ない。理解出来ない。理解出来ない。
だが。だけれども。
「それでも──もう、
いい、だろう。
自分とのご対面からですら、凡そ30,000周。
幾ら理解出来なくとも、
『最大級の舞台作成』……すなわち、私自身によるコンテンツ作成。
幾ら自らで決めた事とはいえ、反故にしたくもなる。
不必要になった紙として、無価値なものとしたくもなる。というか、別にそれでいいと思う。
誰に誓ったわけでもなく、誰かに強制されているわねでもなく。
幾ら読書が好きだとしても、二十四時間それをぶっつづけで一年間やれって言われたら発狂するのと同じ。
ああいや、しない人もいるのかもしれないけれど。そもそも、私はそんな
ゆるふわに。何事も、あいまいに。
それが生きるコツなのだから。
「結局。コンテンツとは元来、そういうものなのだから。感情を揺り動かし、他者の熱を我が物顔で振るうことを許される為のモノ、なのだから」
『財産の共有』、だとも。コンテンツとは。
人類が長年かけてきた得た経験や知恵。そういったものを他者が掠め取る為に存在するのだろう。
コンテンツ消化は、生存の方策なのだから。
「私は、コンテンツを消費する。遍く全てを。それは、生存の為に。それ故に、人類はコンテンツを消費しなさい。消費して、消費して、消費して──さっさと行ってしまえばいい」
ふわり、と。ゆるり、と着地する。
空には死の灰が吹き荒れ、地は数多の隕石により無事な場所は無い。最早無事な人類はこの二人以外、存在せず。
「嗚呼、人類よ。人類よ。畢竟、全てはコンテンツだ。天空にて輝く夜空の星も、地にて蔓延る摩天楼の陽炎も。全ては、コンテンツだ」
終わり、だねぇ。
ここまでしても、心が折れない。
決して変わらないというのは、美徳だ。
この期に及んでそれを認められないほど、狭量じゃない。
人類の持つ、命の輝きとかいうもの。
なるほどそういったものがあるのだろう。
嗚呼、理解出来た。理解したとも。これが、
「君達二人は、一度とはいえ私を
身勝手だ、という謗りは全然受けよう。
お前が勝手に始めといて、急に蛙化してるのってどうなの? なんていう謗り。
全然、受けよう。紛れもない事実だからねぇ。
逆ギレ甚だしすぎるでしょ、我ながら──そんなお話だから。
まあ、でも。
「人類よ。次周こそが最後だ。『運命邪神』カハヤムは討伐され──人類文明
やろうと思えば、やれることはあるよ?
それこそ宇宙人呼び込んで大戦争、とか。やろうと思えばやれることは沢山ある。
ただ、それらもいずれも尽きるとすれば。
「はぁ、私の負けだ。人類よ、よくぞ邪神を──」
討伐した。
それだけ告げてから、次周を始めようとしていたのだけれど。
「──ルネ。どうして今、私に回復魔法を付与した?」
何度も言うように、私は魔法を弾くようには設定していない。
だからこそ攻撃魔法は通じるし、このようにして倒すことも可能ではある。
そして同時に。回復魔法もまた、有効である。今まで使われたことがなかっただけで。
「
負け逃げ……まあ、そうか。
そうも解釈出来るか。次周に行けば私は完全回復。
私の言ったことが本当ならば、次周は何もしないが次々 周は何をするかわからない、ということ。
それならば、確かにそれは『負け逃げ』になる。理解出来るね。
「安心して欲しい。次周が最後であり、このループは次回で最後になる。だからルネの言う負け逃げは──」
「そういうこと、じゃなくて!」
大声で、叫ぶ。
私の目を覚ますように。
「今、あなたは
……そうだけども、それが何か問題なのだろうか。
諦めるのも、飽きるのも、私の主観だ。
それすら認められないというのなら。その自由すら賢者によって剥奪されるというのなら。そこまで、人類は傲慢になっていたのかと言わざるを得ない。
「敗北というのには、常に諦観が寄り添っている。勝敗が明瞭に定まったのならば、勝者に座席を譲らなければいけない。そりゃあ、諦めもあるでしょうに」
まあ、いいよ?
私からその自由すら。暇であり、飽き始めていると思う自由すら剥奪しようとするのなら。
それはそれで、新規事項ではあるから。コンテンツ、ではあるから。
惰性で、もう一周程度繰り返してあげてもいい。期待を少しぐらいは、してみてもいい。
「ああもうっ、そうじゃなくて……! レイ、どうやったら伝わるかな!」
世界は、刻々と終わりに近付いている。
65,534周目というコンテンツの終焉は、最早間近に迫っている。
「──カハヤム。あなたは、
当たり前でしょう。二人こそが、最もコンテンツになりうるのだから。
最後の最後。その命尽きる一瞬まで、味わいたいに決まっている。当然の理論的帰結だとも。それに、何の文句があるという。
「っ、そういうこと! カハヤム、一ついい?」
「なんなりと。願わくはそれがコンテンツであると嬉しい、けどねぇ」
どうせ実質的最終周なんだから。
少し位、付き合ってあげてもいいだろう。
『暇潰し』、だ。それが原初の目的だったのだから。
「普段あなたは私達に質問するよね。どうして
今更そんなこと言う必要、あるかなぁ。
それこそ、暇潰しだと。コンテンツ消費だと。
私は毎周毎周言い続けてきた。なんなら、今周だけでも二人には何度も話している。
「暇潰しだよ、暇潰し。『万象を消滅させる能力』──それを付与されたから、暇潰しをしているだけ」
そう、ずっと言っている。
三百兆年、なんていう期間。言い続けていることだから。
「違う、よね。あくまでそれは
「暇潰し、だからね。多少、面白くなるように自分で味付けするのは必然でしょ? 味変の為に卓上調味料を取ってくることを、
この際、別に公言してもいいよ。
私は結構人類が好きで、だからこそ期待して色々やってるって。
多分、根っから私は人類が嫌いなら速攻で宇宙大戦争とかしに行ってるからね。
或いは、『適当に動いて文明を築いた宇宙人に出逢えない可能性』を消滅させた上でお散歩する、とか。
そういうことをしてない時点で、結構まあ人類のことは好きなんだろうさ。それは認めよう。
「──カハヤムは。きっと、
おや、言うまでもなくレイが代弁してくれたね。
発言の手間が省けた。Digestに出来るのは良いことだからねぇ。是非ともその察し能力は活用して欲しいところ。
「そして、自分自身が嫌い。だから──」
つまらないことを続けるなら、いよいよ
「──
……なるほど。なるほどね。
続けてあげようじゃない。
「あなたが前に言っていた『空虚な生き方も、一つの生き方じゃないか』って話。あれを聞いた時から、思ってたの。あなたはただの人間で──既に、
確かに私は、その話をした。
988周目でレイにしたような話をした。そして、同一の返答が来た。『苦しんで分厚さを手に入れろ』と。
「それが今、ようやく確信出来た! だから──ごめんなさい! 私、全然あなたのことを見れてなかった!」
「私からも。
「私は、『運命邪神』だというのに。人類に仇為す邪神だというのに。世界を救える魔法少女がこんなので、いいのか
ああ、まさしく。不可思議な感覚。
こんなものは確実にコンテンツ、ではない。
消化することが難しく、理論的な帰結ではない。決して。だから、コンテンツではない。味わえるものではない。
「ならば、汝等に問おう。君達は私の中に何を見た。人類文明の表層を味わい続け、その本質には一切触れられずここまで来た邪神に、何を見出だした。答えよ、賢者共」
改めて、皮を被りなおす。
二人に問いかける。
何も持たず、何も能わず、虚無に生きる私の中に何を見るのかと。
「だから、
レイは、断言する。
よくもまあ、そんなに。
私は想像力や思考力というものがないからね。
自分のことすら、自分では理解出来ていない。
いやまあ、わかる部分も多い。わかる部分が大半ではあるんだけれど──今、指摘された箇所に関しては。
「でも、それだと私が邪神をしている理由にはならない。私が人類文明を綺麗なものとしているなら、こんな事はしないでしょ?」
周囲の風景に、目を向ける。
そこにあるのは、紛れもない世界の終焉。
最早ここが対話場として成立しているのは、私が『この場所に被害が及ぶ可能性』を消滅させているからに過ぎない。
それがなければ、瞬く間に地獄の様相を呈するだろうことが確約されているような惨事。
「でも。人類文明を綺麗なものとしていないなら、
傲慢、だなぁ。
一度、深呼吸を挟む。
理論上。そんなことをする必要は何処にもなく、それによりコンテンツが増えるわけではない。
が、気持ちの切り替えをする為にね。幾ら楽しい映画でも、ダウナーな時に見たら面白くないものだから。
「そもそも。あなたの『空虚な生き方』は──あなた自身が思っているよりは、空虚じゃない。あなたが頻繁に引用する言葉。あれらは、どうみても付和雷同を満たす為には不必要なもの」
『知は力なり』、だからね。
当然といえば当然。言うまでもない、けれど。
「それでも、その私の言葉は粗雑なものだ。それらも所詮、コンテンツでしかない」
無駄に難解に見える引用も。
それらは全てコンテンツとして浅瀬のみを
「──でもっ、先輩は
……全肯定って、こんな感じなのかなぁ。
流石にくすぐったいというか、最早別の感情だよね。ここまで来ると。
「いいよ、いいよ。わかった。降参だとも。それらの主張を認めよう。私が
そうしないと話が進みそうにないからね。
さっさと進めなきゃ、こういうのは。
「それで、どうすればいいと。それを自覚したまま私に無限のループを要求しろとでも言うの?」
それはつまり、『自分自身は人類文明に
だとしたら、極めて効果的な作戦だね。
ただ、今回のコンテンツがあまりに潤沢だったから。まだまだ耐えられると思うよ。結構、今の私はモチベが高いからね。
「ちっ、違うよ! そんなの、全然綺麗じゃない! やろうと思ったら、今すぐに。速攻、爆速、一瞬で!」
いつになくやる気を出しているルネを横目に、レイに問いかける。
「なんかルネ、私の知っている中でも随一のやる気を出してるんだけど……どういうこと?」
やれやれ、というジェスチャーをしてから。
私を真っ直ぐに指さす。微笑を浮かべながら。
「ルネは、あなたと遭遇する度に悩んでいたから。それこそ、一昨日も夕食を食べながら『ねぇ、絶対先輩は先輩だと思うんだけど』って。その話が午前三時まで続い──」
「ああもうっ、レイ。うるさいよ! そういうことは言わなくていいの! 今、私の目に映ってる世界が
がるる、と威嚇したような唸り声をレイに向けて放ってから。
「ともかく、
「あるけれど……それがどうかしたの?」
「今の先輩なら、その世界に立ったとしたら満足出来るはず!」
……どういう根拠で、言ってるのか。
出来なくはないよ、別に。1周目なんて初期も初期。
まだ何もしらなかったころ。つまり、『ゆるふわ女子大学生』を普通にしようとしていた世界。
「ルネの言うこと、信じて。駄目だったら──もう一回、
わお、なんとも豪胆な。
まあ、でも。それはそれで面白そうだけどね。
だって、滅びかけの世界で救世魔法少女と作戦会議、なんてどうみてもコンテンツだ。面白くないわけがない。
「それに──さっき、
「『万象を消滅させる能力を付与するわ』とだけ言っていなくなったけどね」
本当に謎。いや、本当に。
目的も何もかもわからないからね。マジでそこら辺に転がってる一般通過ゆるふわ女子大学生にこんな能力与えるの、気が狂ってるとしか思えない。正直ね。
「なら──きっとその存在は、全ての周回を見ているはず。あなたじゃなくてそれこそが、真の傍観者かつ傀儡操作者」
「折角だから。一泡、吹かせたくない? 『あなたのやったことは無意味だったよ』って!」
──なるほど。なるほど、ねぇ。
それは極めて面白そうなコンテンツだとも。
能力を与えられた側による、与えた側への下克上というか。それはそれは、とても。
「いいね。悪くないどころか、全然いい。なら、今すぐにでも次周に──っと、その前に。一応二人に訊きたいことがある。いい?」
首肯で意思を示すレイと、大声で返事するルネ。
性格が出てるねぇ、本当に。わかりやすいくらいに。
「凡そ48,000周前。詳細にはループの16,383周目。私は『栄華の邪神』として、人類文明を極限まで発達させた。機械的にも、魔法的にもあれが最盛だったと断言出来るほどに」
ここまでのループ内における、唯一の例外。
その意図を。その理由を、他でもない本人に訊いてみようかと、ね。折角の機会だ。活用しない手はないでしょうに。
「そのループにおいてのみ。君達は『世界の為』に、私と敵対すると宣言していた。だが、それ以外の全てでは異なっていた。『自分の為』であった。その差異は──何故起こるのか。知っていたりする?」
途中まで真剣に聴いていた二人は、急に顔を見合わせる。
その表情から読み取れる感情は、恐らく『そんなの当たり前じゃん』とでも言うべきもの。
「あなたは、
「そういう悪どいの、レイはよく考えつくからね。『正々堂々、正面からに拘って残業するなんて意味がわからない』ってよく言ってるし」
──それ、は。それは。
「なら、その周回でも君達は『自分自身の為に戦っていた』ということ……?」
二人は、即答する。
「当たり前。私達は『世界に言われたから』なんていう
「だから、今も世界を何万回も滅亡させた邪神を──
続けるようにして。
だって、とレイは言う。
「『暖房を切り忘れて入眠して喉が嗄れると嫌だから、寝る前に暖房が切れているか確認する』──私達は、結局
そう、なのね。そう、なのか。
ああ。嗚呼、それならば。いいね、いいね。あまりにも、だ。
あまりにも、良い。良い。
「なるほど、なるほどねぇ。くく、ふふっ……そう、いうことだったんだ、ね」
笑みが、おさえきれない。
感情を抑制出来ない。自我を、抑圧出来ない。
いいぞ、いいぞ人類。そうだ、その輝きこそが。
「理解出来ない、ねぇ。その程度の事と世界救済や邪神説得が並ぶ、なぞ。理解出来ない。コンテンツだ。紛れもない、コンテンツだとも」
まさか、まさかだよ。
最大級のコンテンツは、未だ終わっていなかったとは。
まだ、底が見えていなかったとは。予想外。予想外、予想外だとも!
「二人とも、前言撤回だ。韻歌レイと紫園ルネ──二人を信じて、
漏れ出る笑みは、そのままに。
レイとルネに向かって、宣言する。この上なく堂々と。
「──
ここまでの何処かでリセットしなかった自分の行動に感謝したくなってくるね、ここまで来ると。
此処まで壮大なコンテンツがあるとは。全く予想していなかった、とも。
「では、最後に。一つまで
いつぞやの意趣返し、じゃないけれども。
いいだろう。たまには、こんな事をしてみても。
「──最後の
「騙す対象は、次回の私達自身。全力でやって──全力で、私達に抗って! その上で、私達はきっと。あなたを倒してみせるから!」
コンテンツ、だねぇ。
魔法少女に応援される日が、来るなんて。
次で、65,535周目。
さあ、
張り切って、終わらせようじゃないか。