令和ゆるふわ女子大学生の、邪神的コンテンツ消費録 作:V01-125,734,943,672
◇◆◆◇
或る日の、帰り道。
「──コンテンツ、だねぇ」
令和のゆるふわ女子大学生として。
もちろん、普段からこんな話し方をしているわけじゃない。
ほら、あるじゃん。素とかいうやつ。あれが漏れでたってところ。
「あなた、大丈夫?」
まさか通学路で通り魔に襲われかける、とは。
流石に私も予想していなかった。しかも、背後からだったから気付かないままに人生が終わっていた可能性があるときた。
で、それを見知らぬ高校生……か中学生終わりくらいの少女に助けられる、とは。
いやぁ。まさしく、コンテンツだとも。
あのまま一般通過通り魔に殺されてたら異世界転生でも出来たのかと思うと、大人しく刺されにいっても良かった気がしちゃうけれど。
まあ、結果的に刺されなかった──そういう運命だっていうなら、大人しく享受しとくのが、令和のゆるふわ女子大学生の鉄則ってものだね。
「ありがとね。むしろ、君こそ大丈夫? 助けられた私が言うのもアレだけど、ああいう危ない人を見たら普通は逃げるんだよ?」
この時代、わざわざ助けに行くなんていうのは全然リスクになる。
英雄的であればあるほど、それは取り沙汰される。
取り沙汰されるということは、他者と比べて
というわけで、そんな簡単な論法から助けるのもノーリスクじゃない。むしろハイリスクってもの。
「でも、出来そうだったから。それに、通報は友達がしてくれたから」
「
恩には恩を──ではないけれど。
こうやって恩は返しておいた感を出さないと、あとから問題になるからね。ふわっと、ゆるゆるに。
「ああ、実はルネ……友達と、この後カフェに行こうって話をしてて。いい、の?」
「いいとも。その友達の分も、君の分もまとめて私が支払ってあげよう。だいじょーぶ。私、これでもお金は最低限あるから」
潤沢にある、ってほどじゃない。
ほら、漫画とかでよくいるじゃん。株式でなんとか、みたいなの。ああいうのはムリムリ。そんな才能、私には微塵もない。
「にしても、本当に危ないんだからね? 次からはしないこと。喩え、あなたが強かったんだとしてもね?」
「……でもあの人、
「無気力そうとは失礼な。まあ、あんまり否定できないけどね?」
嗚呼、本当に野蛮だ。下手をすれば無謀であると裁定されても文句を言えない。
一応通り魔は成人男性だったんだから、彼我の実力差がわからないとは言わせない。それでも助けるのは──理解が出来ない。理解が出来ない、ねぇ。
心底、理解ができない。こんな厄介ごとになんて絡まられる必要はないだろうに。
「メニューを端から端まで二個ずつ、とかされると困っちゃうけれど。まあ何を頼んでもおごってあげよう」
いやまあ、本来はそんなものじゃ倫理上釣り合わないんだけれど。
『命はお金では買えない』からね。こんなカフェで奢るくらいじゃあ、返却できない。
コンテンツによっては、ここから彼女に私が尽くすようになってもおかしくないんだろうけれど──残念ながら、そんなことをするつもりはない。
というか、出来ない。日々の生活にて調和を取り続けるのが精一杯なのでね。
「え、じゃあ『イチゴムースパフェ味ソーダ』とか頼んじゃおうかな」
「イチゴムースパフェ味ソーダ???」
ごめん、もうちょっと珍妙じゃないものを出費換算する予定だった。明らかにイカツイ味してそうじゃない? それ。
ゲテモノな未来が結構見えてるよ?
「そのカフェ、結構色々売っているから。折角奢ってくれるなら珍しいものを、と」
……正しい使い方ではある。正しくはある、ね。
まあ、うん。合理的か。合理的だね。非合理ではない、少なくとも。
「ちなみに他にはどんなメニューがあるの?」
「『アスパルテーム青汁』や『ボックスド・スライム』」
なんかもう、それはそれで別のコンテンツだろ。
大学で一切話題にあがってなかったけど、全然コンテンツに出来る。自信をもってオススメ出来る。
「イメージおいくら?」
「ものによるけれど、高いものは3,000円、とか……?」
「ぐっ、無駄に『無用の用』空間の広いフレンチじゃないんだからさぁ……! 奢るよ。うん。ちょっと痛い出費だけど、刃物で刺されるよりは痛くないと思うから」
うん、別にいいんだよ。
そろそろ買い換えようと思っていた
ごめんよ、
自室にある
「あ、さっきのお姉さん!! 大丈夫でしたか??」
「君がルネだね。ああ、警戒しないで。彼女が名前を言ってただけだから」
「ああもうっ、レイはそうやって。危ないんだからね? そういう
お、常識がありそう。
少なくとも『イチゴムースパフェ味ソーダ』を初対面の人に奢らせてくる人よりは、色々と。
うん、奢るよ。奢るとも。二言はないよ? でも、ね。ね?
「この人、あそこのカフェ奢ってくれるって。だから、どうせ」
「え、奢って──おごって、くれるんですか?」
「うん、奢るよ。奢る奢る。好きなものを頼みなさい。年の功、ってやつだし……私が助けられた側だからね」
目をキラキラさせてるね。とっても。つよく。キラキラ。
もしかして、ゲテモノ好きなのかな。
「因みに。ルネはそのカフェで何を頼もうとしているの?」
「『シュールストレミング・サルミアッキ』、です!」
うーん、閉業してくれないかな。
狂ってるよ。狂ってる。カフェで出すものじゃない。絶対に。お願いだから何かしらの法律にひっかかっていてくれ。理解出来なさすぎる、あまりにも。
「さ、最近の若者は理解出来ない……」
コンテンツ、だねぇ。いや本当か?
これをコンテンツ認定したら何でもアリでしょ。
「それ、頼んだらお店の営業が終わらない?」
「だから、完全個室があるんですよ。排気機能付きの」
高級焼肉店かな。
そこまでしてメニューに加える必要はあったのだろうか。気が狂ってるとしか思えない。本気で。
というか、
「完全個室だから、私のクラスメイトも密談でよく使ってる」
「その年齢で密談することなんて──ああ、恋愛系。恋バナね。そういう相談なら私でも乗れるし、全然いいよ」
「定期試験首位簒奪計画、とか」
が、学生らしいけど学生らしくない……!
しかもメニューがメニューだから余計変になってるって。
「……勉強、ねぇ。教えられなくはないけど」
こんなんでも、大学生なので。
本当に最低限は知ってる。ああいや、結構忘れているところとかありそうだけど。
ああ、でも。学問はできないよ。
「じゃあ、そろそろ行くよ」
「おっけー、っと。その前に」
レイの強引の
何かを確認するように、後ろへ──私へと、振り返る。
「私は
実に、コンテンツだねぇ。
コンテンツ、大好きだからね。
こんなの、まさしくって感じじゃん。
「嗚呼、私の名前ね。私は──」
何者でもない、からね。
人類文明という超巨大コンテンツの中で埋没していく、ゆるふわ女子大学生であるが故に。
「なんでもいいよ。それに、敢えて答えないほうが──ミステリアスで面白いでしょ?」
もしくは、それが嫌いだというのなら。
「
私自身も、コンテンツになろう。
そのようにして、人類文明は廻り続けるのだから。
「こんな『ゆるふわ女子大学生』だけれど、よろしくね。韻歌レイ、紫園ルネ」
汝等に、
さすれば、その結果を。
私は、特等席で眺められるから──なんちゃって、ね?