令和ゆるふわ女子大学生の、邪神的コンテンツ消費録   作:V01-125,734,943,672

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255周目『厄災の邪神(seeking)

 

 

 ◇

 

 

「さて、人類諸君。私こそが、君達の言うところの“黒幕”──『運命邪神』カハヤムだね」

 

 黒幕、だなんて名前はワクワクするよね。

 あれかな。灰色の枢機卿(Éminence grise)的な動きをしてもいいってことなのかな、って。そう思っちゃうのもムリはない──んだけれど、残念。

 

「インダス畔の天災、知恵の館(バイト・アルヒクム)の怪炎、クレルモンの大虐殺、アエギュプトス(Aegyptus)の五十年戦争、大英帝国の落陽、北南米大陸の数理的分割、月面到達の関門……まあ、数えれば限りはないけれど。それら全ての主犯であり、計画者。まあ、たまにはこういうのもね?」

 

 黒幕的なものは。

 もう、大体やっちゃったもので。

 

 無意識的に故郷を守ろうとしていたのか、それとも謎の運命力的なものが働いていたのか。

 結局、最後まで人類がしぶとく生き残ってくれたのは日本っていう名前を持つ、辺境の島国だった。

 

 それで、最早こそこそとしていてもコンテンツ的に面白くない領域になったので、こうやって姿を現してみたわけで。

 

 ほら、ここまで追い詰められると大抵人類ってのは諦めムードになってしまう。

 そうすると、特に面白みもなく緩やかに衰退する、なんてタイムパフォーマンス的に問題大有りの滅亡しかしてくれないわけで。

 

「一応、ね。フェアプレイの為に言っておくと私を倒せれば人類は元に戻るよ。わずか一万にすら満たない人類は、再び億を超える霊長の支配者になれるとも」

 

 まあ、次の周に行くだけっていう見方もある。

 でもウソはついてないから。ウソはダメ。

『隣人に関して偽証してはならない』、からね。海割れる人が言ってるくらいだから、大事だよねぇ。

 

「じゃあ、自己紹介はおわり。ぜひぜひ、足掻いてね。その輝きこそが最も美しいコンテンツになり得るのだから。足掻いて、踠いて、抗って──私を飽きさせないで、ね?」

 

 四方八方から飛び来る魔法、その全てを手始めに消滅させる。

 現在生存人類は8,143人。現状が現状だから、全員が戦闘要員かつ仲間である。流石にこの期に及んで敵対してしまうほど、愚かじゃないらしい。

 

 まあ、数理的国境分割後の民族紛争ではまとまれなかったんだけれど──なんて、ね。

 

「じゃあ、手始めに。大盤振る舞い、してあげよう」

 

『現在、地球上に存在する高さ5m以上の建造物』の消滅。

 見張らしはよくしたいからね。

 映画館とかで端っこの席とかだと微妙に損した気持ちになるでしょ? そういうこと、そういうこと。

 折角のコンテンツ──何時間も消費するんだから、特等席がいい。当然の願望だよね。

 

 初手で968人が落ちて、潰れる。

 高所の建造物にてぬくぬく司令塔システムと化していた人たちかな。のこり、7,175人。

 

 一撃で12%位も削られてるじゃん。人類さん、大丈夫そう? 

 

 

 ただ、もちろん人類君もボウリングのピンではないので。

 

『カイキアス・ウィンド』による不可視の刃、『リグレッション・カース』による忘却性の白灰、『ノトス・クラウド』による極めて鋭利な五月雨、『リプス・レメディ』による防御魔法、『アンフィトリテ・ビースト』による使役獣──これらがほんの一例になるくらいの、多種多様な魔法が同時に発動される。

 

 十人十色。多種多様。いいねいいね、多様性ってやつ。

『水善く万物を利して争わず』だし、『目が手に向かって『お前は要らない』とは言えない』ってやつだね。

 うんうん、とっても大歓迎である──けれど。

 

 流石に、最低限の質はないと困る。

 駄作の映画に千円以上支払って、何時間も懲役刑を受けさせれるのはイヤだからね。だったら、ネット配信されてからSNSでぶつくさ文句を言いながら楽しんだほうが、よっぽど有意義ってもの。コスパ、タイパだね。

 

 一々全部を事細かに、なんてムリムリ。

 世の中は大コンテンツ消費時代なんだから、ね。

 

「『今見えている攻撃が私に届く可能性』の消滅、かなぁ」

 

 ハッピーエンドかバッドエンドかネタバレされてる作品ってさ。まあ楽しめないことはないけれど、それでもちょっと冷笑しちゃうよね。

『なんか今苦しんでるけど、結局いいかんじにご都合がまとまるんでしょ?』とか。

 あるいは『こういう描写をすればウケると思ってるのかなぁ』とか。コンテンツとして楽しみにくくなる。

 

 なので、100%未来が確定するような能力の使い方はなるべくしない。 

 ほら。ジャンプスケアが陳腐ながらも長らく愛されているのと同じで、意識の外から──ってのは、いつまでも永久にコンテンツとなる。

 人類、やっぱ限界があったほうがいいね。

 

 

 消滅させられたのは()存在(・・)していた攻撃だけだという激励が人類軍の後ろのほうから飛んでくる。

 同時にわざわざその制限(・・・・)をかける必要があるんだ、と信じ──盲信せざるを得なくなる。

 

 まあ、考えたくないよね。否定したいよね。真の意味での制限なんて何処にもないだなんて。

『死の五段階受容説』、その最初ってことかな。

 

「ならば、次は憤怒せよ。激昂せよ。その感情、熱量で以て更に足掻け。抑うつや受容なんて、してくれるなよ?」

 

 君達人類は、大事な大事なコンテンツなんだから。

 もったいない、よ。ただで失うには。 

 

「『今、放たれている魔法の速度』と『今、放たれている魔法の発動までの時間』の消滅」

 

 

 瞬時に。

 大爆発が巻き起こる。

 魔法自体の移動を封じられ、その場で発動したらどうなるか。

 火炎魔法は爆発し、風魔法は人を切り裂き、回復魔法は怪我人まで届かない。その場で消費する。

 

 今すぐ。まさに、その瞬間に──人類の多くは、脱落する。

 軍と呼べるほど密集して、お互いの魔法制御能力を信頼しあって作られた隊列であるからこそ。それは、一瞬で瓦解する。

『万物は流転する』、なんてね。

 

 

「おや、いいね。まだ完全には諦めない。サービスとして教えてあげよう。人類の残機はあと、2,500もいない。詳しく言うなら2,439人。ちゃんと攻撃出来る人だけを集計すれば、255人」

 

『推定を見誤る可能性』を消滅させているから、見誤る可能性はそれこそ存在しない。

 それでも諦めないというのは、理解出来ない。彼我の実力差というのを、身に染みて実感しているだろうに。

 いいね、いいね。その蛮勇さ。

 

 

 声が聞こえる。声が届いてくる。

 アイツを倒すにはこうすればいい、だとか。

 あれが有用なのではないか、だとか。

 或いはこのポイントまで誘導出来れば、なんてものも。

 

 私に歯向かう策。殆ど滅亡した種族の出来る、精一杯の反抗心。足掻き、踠き。熟慮。

 そういったものが聞こえてくる。聞こえてくる。

 

 悪くない。それはきっと、コンテンツになりうるものである。

 けれど、それは。

 あまりにも複雑な作戦(・・・・・)で。

 少しばかり難しすぎる。劇的ではない。ドラスティックではない。

『科学の進歩はパラダイムの転換によって起きる』のと同様に。劇的に、革命的に、破滅的に物事を動かしたまえ。

 

 ──端的に言うならば。

 人類よ、それはあまりに長すぎる過程(たいくつ)だ。

 

「『状況が進展するまでの時間』の消滅、だね」

 

 時間は無制限にある。けれど、それは浪費していいわけじゃない。

 空間は無制限にある。けれど、それは自由なわけではない。

 わかりやすく、簡単に、私にも(・・・)理解出来るような簡便さで以てコンテンツを作れ。

 

 これだから。これだから、人類は。

 賢者共は、賢すぎる。才覚に溢れ過ぎている。

 

 

「……そして、君達か。レイ、ルネ」

 

 

 いつものように体感時間を少しだけ消滅させ、美味しいところだけ味わおうとした結果。二人が私の前に立ち向かう。

 人類君はね。もうちょっとわかりやすい方法だったら全部コンテンツ消費しても良かったんだけれど──ちょっとね。タイパが悪すぎた。

 

 長すぎるのは好みじゃない。

 とっとと消費させてくれ、ってね。

 極めて、わかりやすく。それは全ての『消費対象物(コンテンツ)』に共通する目標なのだから。

 

 

「──『黒浮創(クウソウ)』」

 

 レイから、魔法が放たれる。

 当たってあげる道理もなく、特に面白みもないので消滅させて。

 

「問おう。汝らは何故(なにゆえ)、未だ抗うのか」

 

 美味しいところだけを味わおうとした結果、呆気なく人類の総数は2になってしまった。逆に言えばそうなるまで『見せ場』がなかった、ということなんだろうけれど。

 

「ルネ。コイツは多分──過程を消滅(・・・・・)させている」

 

「いいね、慧眼だよ。ご明察。だからこそ、問うている。どうして、君達は抗うの? 仮にここで私に敗北したとしても、君達は誰にも責められることはない」

 

 君達を責める権利のある存在は、何処にもいない。

 ああいや、宇宙人とかはいるのかもしれないけれど──そういう問題ではなくてね。

 

「何なら、逃亡すら咎められることはない。なに、安心していいよ。君達が逃亡するというのなら追いかけはしない。なんなら接敵(エンカウント)ボーナスで何かしらの恩恵をあげたっていい」

 

 例えば、『餓死する可能性』と『枯死する可能性』の消滅、とか。それぐらいならば全然。欲張るなら『寿命及び自殺以外での死亡可能性』を消滅させろ、と言われたって叶えてもいい。

 私としては、そちらの方が理解出来る。

 無駄な足掻き──それが真に無駄だとしたら、やってもしょうがないからね。

 

「──それでも、私たちは戦う。ルネは?」

 

「あたりまえじゃん! ここまで来て逃げるなんて、ありえない!」

 

 愚直、だねぇ。健気、と言えるかもしれないけれど。

 本当に理解出来ない。まったくわからない。

 

「それはあくまで、思考の結果だね。どうして君達は戦う? 無駄だと知りながら、どうして?」

 

 世界は助けてはくれないが、責めてくることもない。

 ならば理由となりうるのは世界(それら)ではない。

 

「私が、私を好きであり続ける為に」

 

 レイは、そう語る。

 

「だって、まだ私の見る世界はキレイだから!」

 

 ルネは、かく語る。

 

 

 なるほどね。ここまでしても、か。

 我ながら結構ちゃんと追い詰めたと思うんだけれどね。

 ちょこちょこ仲間内ギスギスを発生させたり、不信状態にしてみたり。

 

 色々やってみたんだけど、変わらないか。

 まあ、これ以上決まり決まった展開を見ても仕方ないので。

 殆ど1周目の焼き増しになっちゃうから。

 

 

「『 ()──」

 

 

 頑張ろうとしているところ、悪いけれど。

 再配置(Reset)の時間。じゃ、また256周目で。

 

 

 

 

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