令和ゆるふわ女子大学生の、邪神的コンテンツ消費録   作:V01-125,734,943,672

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988周目『韻歌レイ(Secondary)

 

 

 ◇

 

 

 

「ねね、君。少しばかり──」

 

「『黒浮創(クウソウ)』」

 

 

 再配置(Reset)かな。

 

 

 ◇

 

 

「やあ、少しばかりおはなしでも──」

 

「『黒浮創(クウソウ)』」

 

 

 再配置(Reset)だね。

 

 

 ◇

 

 

「どうしてあなたはそうも好戦的で──」

 

「『黒浮創(クウソウ)』」

 

 

 当然、再配置(Reset)

 

 

 ◇

 

 

 というわけで、988周目。

 紫園ルネについては少しばかり理解できたから、次はレイをターゲットにしようと思って話しかけていて。

 

 様々な可能性を試した。

 当然、本人が魔法少女になる可能性なんてとっくに排除している。

 その上で親族が魔法使いである可能性を排除すれば通りすがりの魔法使いから『お守り』をもらい、魔法と関与する可能性を消滅させれば彼女を守るように別存在が同一魔法を放ってくる。

 

 そんなわけで、キリ良く301周目から始めたというのに既に988周目。

 ロクに情報も集められず、文明を凡そ700回程度リセットさせられている。

 

 うん、流石に。

 流石に、そろそろ本腰を入れたくなってくるよね。

 

 1周目と同じ展開にはならないよう、全ての周目で『ルネと出逢う可能性』を消滅させているけれど、それが問題なのかなぁとか考えつつ。

 

 そろそろ、ね。

 

「やあ、韻歌(いんか)レイ。ちょっといいかな。ああいや、無論キミに拒否権なぞ存在しない。三兆年分の借りがあるからね」

 

 手始めに、『地球』を消去。

 次に『人間に生存不可能な領域』を消滅させ、『レイが死ぬ可能性』を消滅。加えて『レイ以外の知的生命体』を消滅させて。

 

 さあ、これで邪魔者は物理的にいなくなった。

 対話(・・)の時間だ。存分、正面きって話し合うとしようじゃないか。 

 

「──『黒浮創(クウソウ)』」

 

 ああ、無論。言うまでもなく。

 

「その魔法は使えないよ。私が消滅させたからね。いいよ、気が済むまで全ての魔法を使うといい。『君が私に攻撃能力を使える可能性』は完全に消滅させたから」

 

 大体、魔法とかいう摩訶不思議兵器の存在がいただけない。

 あれがあるせいで物理法則は無視され、人類は縦横無尽にやりたいことを始めてしまう。

 まああれが無ければ私の飽きもさっさと来るだろうから、等価交換染みているところもあるけれど。一長一短、ってやつ。

 

「──改めて、君の名前を問おう。交友関係を深めるには、お互いの正体を認識するところからだからね。そのようにして、人類は敵味方の判別を続けてきた。互いを識別すること能う──意志疎通が可能、というのは思っているよりも生命体において重視される」

 

 原初、言葉というのは敵味方の峻別をする為によって生まれた──そんな学説が存在する程度には。

 言語というのは、人類の発明したある種の最強兵器なのだから。

 

 物理的暴力よりももっと冒涜的で、もっと革新的で、もっと無慈悲な断頭刃。

 語られぬものに真理が宿り、自由が刑罰になる世界における最大にして最悪の──そして、必ず生まれることになる発明。

 それこそが、言語だからね。

 

韻歌(いんか)レイ」

 

 知っているはずだけれど、という視線が突き刺さる。

 ああ、私が評価しているのは君のそういうところだからね。

 目の前で地球を消滅させてみせ、使う魔法全てを無力化させる害敵(・・)に対して敵意の視線を向けられる、その強靭な精神。

 私には決して理解出来ない、その無謀さにして蛮勇さ。評価(・・)せざるを得ない。

 

 理解出来ないものがあるということは、それを解明せんと足掻くことにより暇を潰せる。それはもう、私にとって最高級の消費コンテンツ。

 

 他人の人生や情熱(パッション)のうわべだけをなぞって、共感して感動した風に装うのだけは天下一品だからね。消費文明万歳。ガンガン理解した気になっていこう、ってね。

 

「私は『運命邪神』カハヤム。君達にもわかりやすく言うなら、破壊神ってところかな」

 

「……嘘。貴女の言葉からは厚さ(・・)が感じられない。感慨が見られない。薄っぺらい(・・・・・)

 

 そんなこと、言われてもねぇ。

 そもそも、一言一言に重さを乗せているほうがおかしいとは思わない? 

 普段の何気ない日常会話で、人類は一言一言に意味を乗せることはない。

 

 己から発された言葉一言一句を未来の伏線にしよう、だとか考える狂人はいないでしょうに。

 大体、人類はそこまで考えられるほど賢くない。そういったものを完全に制御出来るのならば、いよいよもってそれは人類ではない。

 

「軽薄なら軽薄でいいけどね。ならば言わせて貰おう。君の人生は真に厚い(・・)ものなの? 与えられたように思わせられている虚構の選択肢から選び取り、それで満足しているだけの欺瞞じゃないのかな」

 

 可能性ごとき、何の苦労もなく消滅させることが出来る。

 人々の選択。自由意思。そういったものは、瞬きの間すら消費せずに消滅させることが出来る。

 そういった私から見たら、君達人類はそもそも大前提として分厚くない。

 

 軽薄、翩翩(へんぺん)、浅短──まあ表現は何でもいいんだけれど。ともかく、そういったものにしか見えない。

 

「ならば君達が今まで踏み潰してきた絶滅種達にも、きっと自由意思はあったのだろう。だがそれを人類は省みなかった。同じ生命だ。重厚(・・)ではあったはずだ」

 

 それを人類は無視した。一切見ようとしなかった。

 だから──

 

「カハヤム──貴女のそういうところ(・・・・・・・)が軽薄だと言っている」

 

「聞こうじゃないか。高々、数十万年の繁栄で霊長の王を自称する傲慢の獣よ。個体数で昆虫に敗北し、多様性で微生物に負け、神話を気取る種族の最先端(・・・)よ」

 

 自然と共生する為に人類君には犠牲になってもらおうね、なんて勿論言わない。

 正面からの勝負で他種族に勝利するというのは、よくある生存淘汰サイクルのひとつでしかない。だから、否定する気なんて全くない。

 

 そういうの否定すると、近頃の教育カリキュラムでは後々に波風が立つからね。

 付和雷同に、唯々諾々にふわっと流し聞きしてアウトプットしておくのよ。

 

「貴女は個体を見ようとしない。歴史や種族を引き合いに出すことで、個体への関心(・・・・・・)を持とうとしない。全てに対して『どうでもいい』と本気で思っているからこそ──貴女は空虚でしかない」

 

 

 

 …………空虚、空虚。まあ、いいんじゃない? 

 実際その通りだからね。ならば逆に問おう。

 

 命名には命名を。質問には質問を。同害復讐ではないけれど、そういったものは適切に為されるべきなのだから。

 

「秀でた能力を持たない個体は、周囲と同調することで己の安全圏を確保する。無論、その際最重要視されるのは保身(・・)であり、生存(・・)である」

 

 自分の欲望を叶える、なんて二の次。

 兎に角生き残らなければ話は始まらない。

 

「その環境で自我を、意思を出すことが。重厚(・・)となることが──どれだけ生命の危機に直結することか、解らぬとは言わせないぞ。思想の露呈、自我の表明、意見の開示がどれだけ危険(・・)だと思っている」

 

 汝に問おう。問いかけよう。答えよ、答えよ。

 どうすれば良かったのか、と。どのようにして生きれば良かったのか、と。

 

『分厚い人生』とやらが高尚であるという思想、なるほどよく理解した。だがそれ以外が廃絶される理由なぞ何処にもない。

 波風立てず、空虚に生きる──それもまた、人生だろうが。

 

 それとも。

 英雄的でなく、秀でた個になれず群れることしか出来ぬ無能者は高尚な人生(・・・・・)を送れない、と貴様は言うのか。嗚呼、それこそ真に傲慢であろう。

 才覚に秀でた者の、特権だろうが。

 

 答えよ、答えよ、答えよ。

 

「一般論に迎合する。全ての意見に対しての反駁を用意しながらも、全ての意見に賛成能うよう備える──その空虚さは、貴様には見苦しく思えるのか。返答せよ、応答せよ、答申せよ、賢者よ」

 

 私の言葉に驚くレイを見て、再配置(Reset)に向けて指が向かう。

 やはり、という確信を抱きかけて。

 

 

「──ならば、苦しむべき(・・・・・)である。その経験が人生を『分厚く』するのだから」

 

 

 これだから、賢者は。

 自由を、自由意思を刑罰だと思わない賢者は。

 自己というものを、他人の存在による規定としか捉えられぬ苦しみを知らぬ──賢者は、これだから。

 

「どうして、笑っ……て──」

 

 いいだろう。いいだろう。

 今回の収穫はあった。ここ700周は全く収穫を得られなかったのだ、それに比べて今回はこんなにも豊作なのだから。

 

 いいね、本当に。人類は。

 理解不能であり、底が見えない。

 この『コンテンツ』は、これだからやめられない。

 

 

「──さあ、続けようか」

 

 

 無限の繰り返しに、未だ出口なし。

 閉鎖された密室(Huis clos)はまだ続くんだから。

 

 ──再配置(Reset)

 

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