令和ゆるふわ女子大学生の、邪神的コンテンツ消費録 作:V01-125,734,943,672
◇
流石にね。
幾ら面倒臭がりだからといって、一回も行かないのは変でしょう。
と、いうわけで。
「どうして此処が──『
現在地、魔法少女統括機構。
まあ、わかるよ。
というか私にとって探し物なんて時間がかかるものじゃない。当たり前でしょう?
『適当に歩いて、目的地まで最短距離で行けない可能性』というものを消滅させてあげれば、簡単に辿り着ける。
なんなら、『辿り着くまでの時間』とかも全然消滅させられる。全然難しくない。体感的には呼吸とかと同レベルの簡単さ、だね。
「でも、ね。今回は君が目的じゃないんだ。申し訳ないね」
この世界線においては、私とレイ&ルネは何度も遭遇している。
その度に戦闘し、その度に私に逃げられている──まあ、いわば宿敵的な。そんなポジションではある。
ただ、今回の目的は彼女達じゃない。というか、じゃなきゃわざわざこんな所まで来ない。
そう、魔法少女統括機構。
いやいや、明らかにおかしいでしょ。
考えるまでもなく。正式名称はわからないよ?
実は『マジカル・アドベンチャー』みたいなファンシーネームなのかもしれないけれど。少なくとも、世界線次第ではレイがそう呼んでいたから、その呼び方が完全には無意味じゃないはず。
で。その機関に侵入している、と。
「これ、レイはおかしいと思わない?」
レイから飛んでくる魔法自体は、消滅させられる。
この能力、発動のトリガー自体は言葉じゃなくて思念だからね。『見てから消滅余裕です』って感じではある。
ただ、元々そういう設定にでもしていない限り。
視覚外だとか、意識外からの攻撃は全然受けてしまう。まあ、受けないようにしてもいいんだけれど──それだと、コンテンツとして面白くないからねぇ。
軽く、息を吐いてから。
追い詰めるように曲がりながら飛んでくるレーザー。
Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation──その略称として存在している
いや、まあ。
光の等速度性っていうのは、時間や空間よりも優先される絶対法則であるから。まるっきり有り得ない、完全空想ファンタジー! ってわけではないんだけれども。
「流石に、
魔法、プラス科学ってところかな。
まあ原理なんて難しいこと聞いても仕方ないんだけどね。ここで『この工学的原理から』とかいう説明が始まったとしたら、私は全然躊躇なく『説明時間』の消滅するからね。
「──ッ、『
直視しただけで呪詛が纏わりつくような──
まじまじと見てないからじゃないか、という意見には反論出来ないけれど。
それにしても、気のせいじゃなければ──ああ。
いいや、そういう深読みは私の得意分野じゃない。
コンテンツを受動的に楽しもうぜ、ってね。考察とかは専門の人がやってくれるでしょう。
まあ、そんな人いないんだけどね。
「レイ。これで十度目だが──それでも、問おう。君はどうして、未だに抗うの?」
なんだかんだ、まともに答えてくれることが少ないからね。意志疎通、ってのが難しいんだと思う。
ほら、俗説だけどよく言うでしょ? IQが20違うと話が通じないってやつ。
多分あれなんだと思う。もちろん、私が下の方で。
「そんなのっ、あなたが──」
側方の爆破。エネルギーだかジュールだか、そこら辺の物理法則に従って吹き飛ばされるものの。
無論、物理攻撃耐性は完璧だからダメージを喰らうことはない。
ただ、爆破のせいでレイの解答が聞こえなかったのは残念だったかな。
まあ、そんなコンテンツ──幾らでも取り返せる。なんせ、時間は無限にあるのだから。文字通りに飽きるほどにある、ってね。
それに。所詮、そんなものは大した問題じゃない。
此処に来た本概を果たすほうが、よっぽどコンテンツだとも。
「というわけで、やっほー。私の自己紹介は必要かな?」
部屋の中心にて、椅子に座る人類への挨拶。
まあ、ゆるふわ女子大学生なので。それっぽくね。
最近はちょっと邪神ムーブ──『運命邪神』らしい動きをし過ぎているので、たまには。たまには、ね?
「しなくてもいいが……一応、してくれるかしら? 貴女の言葉としての認識をする必要がある。だから、お願いできたり?」
随分と、まぁ。
口調が安定しないようで。いやいや、私も言えたことじゃないけれど。
でも、私のものとは別種でしょ。どうみても。
私はあくまで、ゆるふわ女子大学生。世間にて平穏アンド平和に生活するためにそうしているだけ。
だから、意図して『いやぁ、君の足掻きはコンテンツだねぇ』なんて言ったりはしない。
ただ、この人類は違うでしょ。明らかに意図してこうなってる。
絶対厄介者じゃん。シンプルに理解出来ない──コンテンツ。まさしく、だね。
「ならば、改めて。私は『運命邪神』カハヤム。君の率いる魔法少女及び、人類文明を謳歌している邪神だとも」
「
あからさまな偽名を名乗られてもねぇ。
それ。
「早速本題に入って悪いが──それで、アナタは此処に何を求めているのかしら?」
正直、意外だった。こういうタイプはなんだかんだと面白いと面白くないの中間……飛ばすには勿体ないくらいの面白さの絶妙な話とかをしてくれやがるせいで、焦らされると思っていたんだけれど。
簡明に。率直に訊いてくれるとは。
いいね。わかりやすいコンテンツはいいよ。
底が見えるのは論外だけれど、あまりにも複雑怪奇で難解なコンテンツもまた、消費しにくいからね。
「私が求める物はシンプルだよ。どうして、君達は
ここでいう毎回は、当然
ここまで累計1,023周目。積極的か消極的かを問わず、邪神ムーブした時は必ずこの反抗してきた。
えーっと、何周目だっけな。
それこそ12周目あたりの初期では、寿命まで大人しくゆるふわ女子大学生しようとしてて。
生活を便利にしようと『ミスで食器を落とす可能性』を消滅させてたら、それが廻り回って討伐隊が組まれたわけで。
まあ、イヤになってくる。
その周も結局飽き始めてたから、どっちみちそれが無くてもいつか邪神ムーブで人類殲滅してたんだろうけれど。
というわけで。
そんな毎回毎回飽きもせずに、私に抗ってくる君達は何者なんですか、というお話。
私の言葉を受けて人類は、立ち上がり。
手に持つ杖をくるりと回してから、突く。
「親は子に成長を期待する。帰納的に考えれば、祖先は
人類は、杖を上空へと放り投げる。
くるくると廻りながら、杖は空へと向かい。
踏み出した右足が、猛禽類のものに。
曲げた左足が、
杖を投げた右手は、巨大な翼へ。
広げた左手にな、魚鱗が犇めき。
「僕の使える魔法に、『統合』があってね」
杖は、最高点まで辿り着き。
落下していく。同様に回転しながら。
「其れ故に、
──なるほど。
なるほど、ね。つまり、君がある種のコンテンツ提供物だということか。
魔法がある人類文明において、こうも毎回毎回やってくる魔法少女統括機構の存在原因。
謎が深いと思ったけれど……その程度か。
なるほどね、それだけか。
「予想以上につまらなかった。『事実は小説より奇なり』って言葉があるから、期待してたんだけどね」
案外。いや、案外とかいうレベルじゃなくて。
予想の何倍もつまらなかった。あまりにも理解出来る。あまりにもわかりやすい。期待外れだね。
「どうやら、君がいない人類文明を最初に造った方がいいのかな。全ての黒幕がこんな単純な一人の思惑によるものでした、ってのはコンテンツ失格だよ。コンテンツとして弱すぎる」
この施設外、その全てを消滅させる。
1,023周目。この世界に残るは、この魔法少女統括機構の建物のみ。
「そういえば──ミトコンドリア・イヴ。アナタは聞いたことがありますか?」
「Matrilineal most recent common ancestor。和訳するなら現生人類最近接共通女系祖先、だね。だからどうしたの? 君の出生秘話なんて訊きたくもない。興味もない。コンテンツとして、面白みに欠ける」
1,024周目以降はどうしようか。
取り敢えずこれを消滅させてから、様子を見るとか?
適当に1,000周くらい過ごせば、また何かわかってくるかなぁ。
はぁ、と思わず嘆息する。
本当に面白くない。本当に、つまらない。
これならさっさと此処に来て見ておけば良かった。
大体、だ。
人類が最大級のコンテンツなのは、一人の意思程度じゃどうにも制御出来ないからだろうに。その予測不能性。その偶然性。その奇跡性があるからこそ、コンテンツなんだってお話。
何度上映しても違う映像を見せてくれるフィルムみたいなもの。だから毎回新鮮に見ることが出来るし、だからこそ私は飽きずにいられる。
だというのに、というお話。
──つまるところ。二重にがっかり、ということ。
たかが一人にここまで制御されてしまう人類文明も、たかが一人がここまで全ての要因だったということも。双方に。
なんだろうね。
同じフィルムを毎回使っているのに、違う内容の映画が見られると思っていたのに──実際は、違うフィルムを使っていたことがわかった、みたいな。
いやまあ、何でもいいや。そんな時間のかかるような細かい話を……うん?
「──君、何をしたの?」
「私は言いました。『
嗚呼、本当に。
本当につまらないことをしてくれるな。
コンテンツを消費する時に、咀嚼して時間をかけろって?
馬鹿を言うな。妄言は過去に留めておけ。これ以上、
「統合、統合、統合。総てを累ね、総てを併せ、総てを紡げ。その統合はきっと、長大な過程となるのだから」
大体、魔法とかいう摩訶不思議兵器の存在がいただけない。
あれがあるせいで物理法則は無視され、人類は縦横無尽にやりたいことを始めてしまう。
よりによってこんなのが出てきてしまうんだから、本当にやってられない。
躯体を人類のものへと戻したソレは、私へと視線を向ける。
いい加減にしろよ。何処までも、何処までも。
いっそのこと、この惑星に人類以外が定着しない可能性を消滅させることで、次周以降は対応しようか。
「改めて、汝に問おう。
「答申済だ、邪神。其れは
コンテンツ未満が。コンテンツを崩壊に導く扇動者が。
よくも、其処まで大言壮語を吐く。よくも、其処まで知った口を。
「君は支配者にでもなったつもりなのかな。良かろう。良いだろう。主文は後回しだ。大罪を抱えて、疾く消滅せよ」
統合され、引き延ばされた時間。
不快に不快を重ねられ、苛立ちは尽きない。
こんなもの、コンテンツにはならない。
一切消費出来ぬ物なぞ、味わう必要すらない。
存在する必要すら、何処にも。
「
要は、長すぎる。長すぎて、ダレるでしょうが。
私の行動へ全ての集中を向けている、ソレを無視して。
「
1,024周目へ、向かおうとして。
「『
投擲された杖が。
私ではなく、ソレに向けられて。
「──『
「『
ソレは『
だが。次に『
それが、
数百を越えるそれらは、ソレを腐食させ、腐り落とす。
「一応。もう一回──『
全ての光を呑み込む呪いの──澱みの雨雲が、頭上に顕現する。湧き出た雨雲は、そのままに黒色の雨を降らせる。純然たる殺意と呪詛が混濁されたそれは、確かに。しかりと溶かし落とす。
理解出来ない──違う。予想、していなかった事態だね。
それも、完全に。恐らく、今しがた溶かされたソレにとっても。
「
「元々怪しいとは思っていた。ルネもそう言っていたし──私達は、それを知った上で
おお、いいね。
本当に。本当に、これだから人類は。
コンテンツだ。コンテンツが、此処に在る。
これこそは。これこそが。
前言撤回だ。
溜めただけはあった。時間をかけた甲斐自体は、あった。
いいね、いいね。
「紫園ルネ。どうせ、いるんでしょう? 隠れなくてもいいよ。宣告の時間程度は与えよう」
にしても、失敗したな。
ここまで良くなるんだったら、『この施設以外』を消滅させる必要はなかった。自棄になるんじゃなかったね。
ああ、これこそ。
『善を行うのに飽いてはいけません。失望せずにいれば時期が来て、刈り取ることになります』ってやつだった。焦った私がナンセンスだったことを認めよう。
私だって、自分の非を認めないわけじゃないからね。
「『運命邪神』カハヤム……!」
「やっほ、ルネ。嗚呼、それと。今の私は気分がいいから、普段とは逆に何でも答えてあげよう。極めて鋭い洞察眼を持つ君達だから、それはきっと良い問いになるのだろう、という期待も込めてね?」
ここまで含めて、ならば次回以降ソレを消滅させる必要はない。それも含めてコンテンツとなるのだから。
そして事実、アレ一つに人類文明は制御されていなかった。いやぁ、いいね。いいね、流石人類。最大級コンテンツ。
「
レイは、私に訊く。
訊いた本人にとっても恐らく予想している解答はあり、これは一種の答え合わせのようなものなんだろうね。
「私は、最初から
「あなたに歯向かう為に無数の策略を企んでいたとしても?」
「当然だ。誰が統制された一つの群をコンテンツにしたいと望む。完全な秩序なぞ唾棄されるべき存在なのだから。人類を完全に制御するだなんて──つまらない、つまらない、つまらない。そんなの、コンテンツには決してならない」
混沌、攪拌、攪乱。
スノードームを揺らさない人類はいないのと、根本的には変わらない。
あの模造吹雪が半球の底に沈んでいる様を永劫に見られる人類なぞいないだろう。
攪拌し、混沌を造り出し──吹雪が造る
それと、根本的には何も変わらない。
その中に『綺麗な円を毎回描くように調節する』なんてものがいれば、排除したくなるでしょうに。
「だからこそ。傍観、操作の神を気取る君達がアレに抗い、討ち倒した事こそを、私は高く評価している」
「──
ああ、そうだとも。
幾度となく
「嗚呼、そうだとも。自覚していないわけがない。だから、名乗っている。『運命邪神』だと。私は、
それとも、四行で詩集でも綴ってやろうか。
皮肉気に虚無主義でも騙り、大地と海の双方が沈黙を貫くことを嘆こうか。
さすれば、カハヤムの名にも虚構の意味が付与されるだろうよ。
語り続けても。騙り続けても構わない。それが底を濁り落とすというのならば。
「レイ、カハヤムはやっぱり
これだから、賢者は。これだから、才覚者は。
『一を聞いて十を知る』、だねぇ。私が吐いた言葉一つから、十の事実を推定する。
「紫園ルネ。君には訊きたいこと、あったりする?」
「──どうして、私達と
レイとは異なり、ルネは即答する。
考える間もなく。消滅させる過程すら、必要なく。
「私は人類文明を何度でもやり直せるからね。次回の為、だね。『人間は考える葦である』、でしょ? 君達の言説に
『賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ』、だね。
賢者にまで成り上がったつもりはないが、愚者未満になった記憶も私にはない。それ故に、経験から学ぼうぞ。
コンテンツ消費が為に。暇潰しが為に。飽きが、来ない為に。
「違うよ。あなたは、その為に会話をしているんじゃない。
いいね。その考え方は、面白い。
『
面白い。それは充分にコンテンツだとも。
「では、我は汝に問いかけよう。やり直しをすれば君達の記憶は誰も持たない。だというのに、それは
「──説破。影響を受けたあなたが、次の私達に話すのなら。結果的に、それは双方向となる。次も、前も、全ては
ルネへの質疑を、レイが引き継ぐ。
そして、それは見事説破──解答になっていて。
反駁が極めて難しい。レイやルネの影響を私が受けていない、と言いきることが出来ない為に。
こうして、時間を取っている以上。
異例とも呼べるほどの『時間』を取っている以上、完全に否定できない。アレに取られた時間を差し引いても、充分に長すぎる『時間』だ。
「いいだろう。受領した。受容した。では、改めて問い直そう。君達はどうして、私に抗い続けるのか」
答えよ。答えよ。
大きな収穫があった今ならば、きっと如何なる解答であっても消費することが出来る。
「私は──私が私を好きで有り続ける為に、だけれど。
レイは陳述する。
聞き慣れた一つの理由と、もう一つの理由。
「カハヤム。あなたはどうして、
当たり前、でしょう。
コンテンツは、大量消費が大前提。
飲み干し、食べ砕き、消化する。
他人が抱き、創ったその熱量を消費していく。
それの連続だとも。それの連続こそが、必要なのだから。
咀嚼して味わう暇なんて何処にもない。
押し潰れんばかりの数量を。浴びるほどの分量を、消費しなくてはいけない。
「それがコンテンツであるからこそ、だね。今すぐ、この瞬間に、消化せねばならない。深遠な意味や熟慮なぞ要らぬ。己の中にある何かしらと勝手に結び付けることが可能であり、共感の素振りが出来れば──それだけでコンテンツとして充分なのだから」
勘違いをするな。
私にとってのコンテンツは、人類だけではない。
偶然にも人類文明こそが、最大級のコンテンツとなっているだけなのだから。
「どうせ、質なぞ解らぬだろうさ。咀嚼する時間は無く、振り返る時間は無く、産み出す時間は無い。ならば求めるは量のみ。他者を消費して得られる悦楽ほど、楽な物もないのだから」
だから、だ。
コンテンツは他者が存在する限り、生み出される。
ならば摂取しない理由がない。貪食しない理由がない。
それで飽きが来ないというのなら、此程までに楽なことがあるだろうか。
「──あなたを、その
「私も、あなたに世界の
理解、出来ないねぇ。
まったく、理解出来ない。
「吼えるなよ、賢者共。1,023周目は、此処に終焉を迎えるというのに。私の
収穫は充分に得ている。
この時間はロスタイム、みたいなもの。
良いコンテンツを見せてくれた者達への、ね。
「次回以降の私達も、私達──だから! さっき、レイが言った通りに!」
いいだろう、取引だね。
『五段階受容説』の三段階、なんてね。
「
1,024周目行きの切符に、片手を乗せながら。
最早、この施設のみとなったが故の世界の静寂さに包まれながら。
二人の、言葉を待つ。
「その笑みを、コンテンツ以外で引き出してみせるから!」
「此処まで来ても、あなたは私達を直接
──