令和ゆるふわ女子大学生の、邪神的コンテンツ消費録   作:V01-125,734,943,672

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4,095周目『隠匿の邪神(Reclusive)

 

 

 ◇

 

 今は、4,095周目。

 だから最早聞いたのは、3,000周くらい前のお話だけれど。

 

 ──そんなこと聞いたらさ。

 試してみたくなるのが、道理ってものでしょう? 

 

「韻歌レイに、紫園ルネ。諸悪の根源、その撃破──おめでとう。なんて、ね?」

 

 1,023周目において。

 レイとルネは、元々あのコンテンツ未満を倒そうとしていた、と言っていた。

 私を倒そうとするのはあくまで優先順位の問題でしかない、と。

 

 ならば。

 アレが討伐されるまで、私が目立った活動をしなければどうなのか、という話。

 まあ、簡単な帰結だね。

 

 

 というわけで。

 現在は、そういう場面。

 

 

「この改編痕(かいへんこん)、なに……? 明らかに改編したという形跡はあるのに、それが基礎(・・)になっている」

 

「わからない。それでも──普通じゃありえない。原初の改編痕かも。名無しの虚人(ジェン・ドゥ)よりも、明らかに濃密、だから」

 

 

『月』を、消滅させて。

 満天の星空でもって、操作者の撃破を祝福する。

 それが打倒されることは、それほど喜ばしいことなのだから。

 

『疲労』を、消滅させて。

 連戦であるというハンデを消し去ることで、祝詞の代わりとする。

 ガス欠での終幕なんて、極めてコンテンツ的ではないのだから。

 

「私は、『運命邪神』カハヤム。安心するがいい──何処にでもいる、ゆるふわ女子大学生だとも」

 

 さて、このまま戦闘に入ってもいいんだけれど。

 流石にこの回数繰り返して来たら、いよいよもって飽きが発生する。

 幾らこの二人という、国産最高級コンテンツとはいえね。数千回という回数を経れば、レコードの溝も削れるというもの。

 

「『一般人が大量に紛れこまない可能性』でも、消滅させようか。此により非日常と日常の境界は破綻し──」

 

 

 人類が、現れる。

 老若男女関係なく。人種能力関係なく。

 極めて平等に。極めて無作為に。極めて無慈悲に。

 人類が、揃っていく。集められていく。(あつ)められていく。 

 

 うんうん。

『百鬼夜行』ならぬ、百人夜行だねぇ。

 集められに萃められ、知人他人関係なく集積されていく。二人の魔法少女へと、期待が集められていく。

 

 それはきっと、いっそ呪詛に近似出来るほどの濃密な期待。

 邪神を撃滅してくれるのだろう、と。

 日常を取り戻してくれるのだろう、と。

 

 そんな身勝手で、無責任で、無慈悲な期待。

 それが二人の魔法少女に集められる。さあ、これで逃亡という可能性は潰えた。消え去った。

 さあ、存分に戦闘するがいい。

 

「──二人の魔法少女に、世界の命運は託される」

 

 先手上等とばかりに飛んでくる魔法を、消滅させながら。

 ある種、全人類への宣戦布告をする。人類よ、団結せよ。

 複雑にならない程度に。簡便に、簡明に。童話の如き単純性で以て、敵対せよ。コンテンツとして、消化されよ。

 

「『冠星命(カンセイ)』!」

 

 レイの一言。

 それに呼応し、地面から殺意の込められた鋭利な根(・・・・)が、高速で突き出してくる。

 無論、一本ではなく複数本。具体的には百八本。煩悩の数、だねぇ。

 

「『私が意のままに空中移動出来ない可能性』、消滅させてみようか」

 

 何時になく本気に見えるレイの攻撃を空中軌道で、回避する。

 

「──『ウラノス・アブダクション』」

 

 続けて。

 ルネの周囲に空いた孔から出てきたLASER(レーザー)が、私を狙う。

 凡そ3,000周前のアレと同じだね。謎のマジカルギミックによる追尾機能があるやつ。

 

 それを同様に、空中軌道で──

 

「そういうの、伏線が無いと面白くないからねぇ。私の視界内で準備動作でもしてくれないと」

 

 集められた民衆の中から、私に向けられた銃撃。

 しかも一切の魔法(マジカル)要素はなく、純粋な科学(サイエンス)

 

「っ、と。しかもこれ条約違反じゃん。いいの? こんなの公共の面前で使っちゃって」

 

 ダムダム(Dum Dum)弾、だっけね。

 わざと人体を貫通させずに、体内に鉛を遺残させることで鉛中毒症状を引き起こす、なんてやつ。まあ、私も詳しいこととか全然知らないけど。

 もちろん、そんな危ないのは届く前に消滅させる。

 

 っていうか、それ以外にも来てるじゃん。

 いや、いいんだけどね。どうせ物理耐性完璧だから喰らったところで問題はないんだけどさ。一応、ね。

 ゆるふわ女子大学生としては、銃撃なんてされたくない。まだ魔法でマジカル・ファンタジーしてくれてた方がマシってもの。

 

 お次は──ああ、それね。

 中空弾(Hollow Point Bullet)、か。

 そういうの、私は全然知らないからやめて欲しいんだよね。徐々にコンテンツっぽくなくなっちゃうからさ。

 

「『黒浮創(クウソウ)』、『煉俗黒(レンゾク)』」

 

 そう、だから。

 こういう感じのやつだね。禍々しい呪詛、とか。

 コンテンツっぽいじゃん。

 

 別に私はガチガチミリタリー、とか興味ないんだよね。なんか難しいし、一々難解な作戦考え始めるし。

 ああいうことされると、消化(Digest)出来ないから。そうなると、コンテンツとしての消費も難しくなる。だから、個人的に興味がわかない。

 

「だから──いい加減にしようね。ここは魔法世界(ローファンタジー)なんだから。私が、そのようなコンテンツだと定めたのだから。『適材適所』、って知ってる?」

 

『突然、銃が暴発して爆発しない可能性』の消滅。

 その帰結は当然、暴発或いは爆発。周囲の民間人にまで甚大な被害を与える、そんな地獄絵図。

 

 ほら、よく言うじゃん。

 戦争においては『一人殺すよりも、一人頑張れば助けられるけれど手間が著しくかかる存在を作ったほうが有利になりやすい』って。そういうことだよね。

 まあ、ちまちま一人ずつ作ってあげるほどじゃないけれど。

 

「──この邪神、が……!」

 

 崇めよ。讃えよ。

 私は事実、『運命邪神』であるのだから。

 なんだかんだ4,000周以上してきたけれど、こうやって大勢の前でやりたい放題する機会は、あんまりないからねぇ。

 

 新鮮な感覚。それすなわち、コンテンツだねぇ。

 泣き叫ぶ人類に、狂乱する人類。逃げ出そうとするものも、私が『逃亡方向へと足が動く可能性』を消滅させている以上、そんなことすら許されない。

 

 生命の根源的本能を実行すること出来ず、人類の負の感情が渦巻いていく。

 そして同時に、それは魔法症状への怨嗟(・・)へと転換(コンバート)されていく。

 

 これだから、人類は。

 身勝手に。自己中心的に期待しながら、それを叶えられないと知るや否や反旗を翻して攻撃するんだから、合理的でない。

 いやまあ、本来は『人類には感情と論理があって、それがほどよい塩梅で混和されている』ことを加味した思考を合理的、と言うんだけれども。

 

 レイとルネから向けられる攻撃。

 その全てを消滅、或いは回避でいなしながら。

 

「魔法少女の役目は、愛する民間人の日常を守護すること──相場は、そう決まってるんだけどね。この惨状を見る限り、それは果たされていないように思えるよ?」

 

 無論、二人はそれらをしていないわけではない。

 隙を見ては回復魔法を周囲に散布し、なるべく一般人に被害が向かないように隔壁を魔法で作成したりしている。

 それでも、足りない。足りない。足りるわけがない。足りる理由がない。当たり前、だねぇ。

 

 これこそが『Pareto(パレート)の法則』の証左、なんて。

 数少ない賢者は、数多の愚者を庇いきれない。

 数とは(・・・)暴力(・・)である。

 幾ら極まった質がそこに在ったとしても。隔絶した頭脳を持つ賢者がいたとしても。

 民衆は。多くは。大多数は。大勢は、そうではない。賢者にはなりえない。

 

 だからこその、調和だ。だからこその、付和雷同だ。

 衆愚の中で衆愚になり、自我を表明せずにその集団の中へと溶解する。溶け落ち、懸濁され、混和され、突出しない。

 

 自己という個性を消滅させ、その代償に生存を得る。

 その為に。コンテンツを消費せよ。コンテンツを消化せよ。他人の熱量を、飲み干すのだ。

 賭けられた命も、込められた想いも、秘められた真相も関係ない。それは、生存に必須ではない(・・・・・・・・・)のだから。

 

「……ッ」

 

 怨嗟の声が、起こる。

 サクラなんて仕組んでいない。そんなのは、コンテンツとして面白くないからね。あくまで、その怨嗟は自然に(・・・)

 

「『遠くに見えるあの都市に、迅速に隕石が落ちない可能性』を消滅させようとも」

 

 人類文明の灯。

 夜空に聳える摩天楼が、隕石により零落する。崩落する。

 天災、だとも。人類にはどうしようもない、対処法の存在するはずのない天災だとも。

 

 それを、繰り返していく。

 一つ、一つ、一つ。幸いこの場所が開けた丘故に、視界内の都市は数多い。

 それらを一つ一つ、順序立てて崩壊させていく。

 隕石で。地盤沈下で。巨大火災旋風で。

 

 崩壊していく。日常が。

 崩落していく。帰るべき場所が。

 決壊していく。人類文明の輝きが。

 瓦解していく。地表にて光る満天の夜景が。

 

 怨嗟の声は広がる。広がる。広がる。

 大の大人が、たった二人の『魔法少女』を責め立てる。

 

 

 始まりは、非難だった。

 それは罵声となり、石となり、やがて団結していく。

 無力な彼女らを責める為に。無力な存在を攻撃する為に。

 

 

 実に。合理的だねぇ。

 諸悪の根源はどうみても私だというのに。

 攻撃する対象は私ではなく、二人の魔法少女だと。

 

 私に反抗したとて、敵うわけがないと。だからこそ、多少何かを言ったところで自らが攻撃される心配がない魔法少女へと非難を向ける。

 本当に。本当に、合理的で本能的だとも。

 

「どう、して……? どうして、私たちを責める、の……?」

 

 周囲を恐れる。周囲が敵に回っていることが理解できない、といった表情で。信じられない、と言いたげな表情で。

 

「みんな、なんで……! 私、たちは……」

 

 安心するがいい、ルネ。

 君の反応は当然のものだとも。

 その恐怖は。その無理解は、至極当然のものだとも。

 

 そして、これこそが私の恐れていた(・・・・・)ものなのだから。

 突出するとは、こういうこと。異端になるとは、こういうこと。

 排除される危険を。除外される危険を。疎外される危険を犯す、ということなのだから。

 

「ルネ、気にしちゃダメ。非難に移るのが一瞬なのと同様に、称賛に移るのも一瞬だから」

 

 ──だからこそ。

 彼女の。韻歌レイの、その精神性は理解出来ない。

 

「でも……がんばってた、のに……」

 

「努力は、全てじゃない。それに、私達は世界の為(・・・・)に動いているわけじゃない、から。そもそも、評判なんて──」

 

 向けられるは、禍々しい黒弾。

 幾度となく消滅させた経験のある、攻撃手段。

 

「──どうだって、いい」

 

 それは、私ではなく。

 この状況(コンテンツ)を取り囲む、民衆の一歩手前に。

 着弾地点の地面は呪詛に蝕まれ、黒くドロドロに腐敗する。

 

 あれほど罵詈雑言が飛び交っていた空間に、突如として静寂が舞い戻る。

 当然だ。攻撃される筈のない存在に、攻撃されたのだから。混乱が生じる。不理解が生じる。思考の停止が、生じる。

 

 

「……へぇ、いいね。コンテンツ(・・・・・)、だねぇ」

 

 

 (いたずら)に。只管(ひたすら)に。

 立ち上がるその姿は、まさしくコンテンツ以外のなにものでもなく。

 

「問おう。汝は、何故(なにゆえ)底無しの悪意に耐えられるのか。所詮、人類なぞこの程度だというのに。何故、其処まで」

 

 レイは、答える。

 

自己満足(・・・・)──それ、だけ」

 

 端的に。明瞭に。簡便に。

 心打つほど、短く。解答は為された。

 

『限りなき空の広さも虚無であり、地上のすべての形も虚無である』、というのに。

 嗚呼、理解出来ぬ。理解出来ぬ。全くと言っていいほど、解らない。

 

「故にこそ。私は人類文明こそが最大級のコンテンツだと主張する。不屈の精神、未知の熱量、利己の化身。無限に噴出するそれらこそが、コンテンツとなる。よくぞ吼えた。よくぞ(のたま)った。私はその表層(・・・・)消化(Digest)し続けようぞ」

 

 

 では、またの機会に。

 それじゃあ次周の為に(Re)──

 

 

「カハ、ヤム……! わたしはッ、あなたを救って(・・・)、あげる……から!」

 

 

 ──配置(set)

 

 

 紫園ルネ。

 やはり、君もコンテンツだね。レイと同程度に。

 いいね、とても。面白いよ。全然、飽きさせてくれない。

 

 

 

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