リリたま 作:まめつぶ
時の庭園。
そこで銀時は彷徨っていた。
「アイツらどこ行きやがったんだ」
途方もなく歩き続ける。ドアを開けては中を確認し、何もなければ次の部屋へと向かう。
「勝手に人を連れてきておいて放置とは、親の顔が見てみたいぜ」
次なるフロアへと到着する。
フロアの奥には人が入れるほどのカプセルがあった。
「ん? フェイトか?」
中身を確認する。
よく見るとフェイトではなかった。
それに生きていなかった。数多の死体を見てきたため、すぐに判別することができた。
「離れなさい」
「あー、どうも、この家の人ですか? 勝手にお邪魔してすみませんね。でも俺も勝手に連れてこられたもんですから、不可抗力というか──」
「離れろと言っている」
雷撃が銀時を襲う。
「土足で踏み込まれてお怒りなのはわかるけどよ、それにしても随分とご挨拶じゃねぇか」
直撃を回避する。
アリシアに当たらないよう威力を抑えたとはいえ、一般的な魔導師では避けれなかったはずである。
その攻撃を避けた。
プレシアが警戒レベルを上げる。
「面倒ね」
「面倒事なら請け負うぜ。俺は万事屋なんでね」
「なら帰ってもらえるかしら?」
「払うモン払ってくれるならな」
「とんだマッチポンプね」
突如、プレシアが血を吐く。
「オイオイ、あんま無理しないほうがいいんじゃねぇか」
「私にはもう時間が残されていない。あの子を救うためならどんな犠牲でも払う」
銀時は振り返り、真剣な表情で言った。
「アンタ何しようとしてる」
良くも悪くも、銀時は色々な経験をしてきた。
そしてそれらの経験は悪い出来事を予測することに長けていた。
「ありゃフェイトの妹か?」
プレシアが激怒する。
「違う!」
二度目の雷撃。
先ほどより威力と速度を増しての攻撃だった。
「オイ、俺はアンタをどうこうするつもりはねぇよ。フェイトの母親なんだろ? 体は大事にしようや」
「アレの母ではないわ」
「じゃあ何だってんだよ」
「製作者よ」
銀時の脳裏に嫌な予感がよぎる。
SF映画で良くある話である。クローンやらホムンクルス、そんな単語が思い浮かんでいく。
「察する頭はあるみたいね。そうよ、フェイトはあの子のクローン。ただの失敗作よ」
それが本当であれば、フェイトは酷く悲しむことになる。
「私の大切な……一番大切だった子。私はアリシアにもう一度会う」
そして、この狂ってしまった母親の苦悩を銀時は感じ取っていた。
「ふざけるんじゃないよ!」
扉が破壊される。
そこにはアルフがいた。
「フェイトの気持ちはどうなる! アンタのために一生懸命駆け回って! 寝る暇も惜しんでジュエルシード集めてんだ!」
プレシアに詰め寄り、胸倉を掴み取る。
「じゃあ何かい!? フェイトはジュエルシードを集めるためだけに生まされたってのかい!」
「生んでないわ。作ったのよ」
「……こんのっ!!」
拳を振り上げる。
しかし、振り下ろすよりも先に雷撃が腹部を貫いていた。
「オイ!」
駆け出す。
なぜならプレシアが次の攻撃の準備へと入っていたためである。
(間に合え!)
飛び込む。
追撃が放たれるが、どうにか間に割り込むことに成功した。
雷撃が銀時に直撃する。
「アンタ……!」
馬鹿だとは思っていた。
しかし、ここまでの馬鹿だとは思っていなかった。
アルフが大事そうに銀時を抱える。
そうして転移魔法を発動し、この場から離脱をした。
『銀時』
どこからか声が聞こえてくる。
『目覚めよ、銀時』
「いや、すでに目覚めてますけど」
銀時は空を見つめていた。
その空の先にはフェイトたちがいる。
母親を止めに、もう一度家族として歩むために。
『汝、力が欲しいか』
「力? そんなモンいらねぇ……って言いたいところだが」
銀時は彼女たちの横に並ぶことができない。
そのための力が手に入るのであれば、どれほど胡散臭かろうが構わなかった。
「あいつらの手助け出来るなら話は別だ」
再び空を見る。
もしかしたら今頃戦闘になっているかもしれなかった。
「てかアンタ誰?」
『洞爺湖の仙人。貴様はかつて私をそう呼んだ』
「そうか、じゃあ早速でワリぃけど力ってやつもらえる? 洞君」
『あれ? もしかして前の記憶残ってる?』
「さあな。何でもいいけど家族は大切にしろよ」
『やっぱ覚えてるよね……まあいいか』
咳ばらいをして仕切りなおす。
『イメージするのだ、銀時。己が出来ると思うことを強く想像しろ』
「イメージ? それだけでいいのか?」
『ああ、今の私はジュエルシードの力を得ている。その力を利用し、貴様の想像を現実のものにしてみせよう』
「そいつぁ便利なこった」
理屈はわからない。
だが出来るというのであればやるだけである。
『良いか銀時。脆弱な想像では力とは成り得ない。しかし、今の貴様には強固な思いがある。彼女たちを助けたいという強い思いがな』
頑固で分からず屋。
無口で無愛想。
けどどこか放っておけない。
いつか心の底から笑ってほしい。いつからかそんな思いを持つようになっていた。
『彼女たちの元に向かわなければならない。そのためには空を飛ぶ必要がある。ならばそれを想像するのだ』
「つってもな。自分が飛んでる想像ができねぇんだよ。あいつらみたいに元々魔法で戦うってんならイメージしやすいんだろうけど。俺はこいつ一本でやりあってきたからな」
木刀を肩に担ぐ。
銀時にとっての戦いとは、大地を踏み戦場を駆け回るものだった。
どうにも空を飛びながらの戦いというのを想像しにくかった。
「それに俺が空飛んだらおかしくない? 世界観が壊れるっていうか、木刀持った大人が魔法少女と並ぶとか違和感すごいよね」
『問題ない。ブリーチみたいな感じで戦えばいけるはずだ。それでギリ世界観守れる』
「あー、なるほど。ブリーチね」
剣で戦い、空を駆ける。
それであればイメージは可能だった。
「行けそうだな」
『ならば行け。銀時』
「おし、じゃあいっちょやりますか」
『おっと、その前に注意事項だ。ブリーチとは言っても丸パクリは避けよ。あくまでオリジナリティを出しつつ、オマージュの段階に留めるのだ』
「何でよ?」
『丸パクリだと今後私の出番がなくなってしまう。一発ネタとして処理されてしまうのだ。それは避けたい。故に、レギュラーとして出演し続けるために貴様のオリジナル技として使用するのだ』
「あっそ、何でもいいけどよ。とっととおっぱじめるぜ。チンタラしてると守れるモンも守れなくなっちまう」
立ち上がる。
先ほどまでの無力感はなくなっていた。
目に生気が宿る。
「じゃあ行くぜ」
木刀を前に出し、切っ先を真っすぐ前へと向けた。
「卍・解!」
『パクんなって言ったろうがァァァ!!!』
空を駆けていく。
瞬歩だかソニードだかを使い、銀時は時の庭園へと向かった。