「…皆、同じだ」
そう恐ろしい声で語りかけると同時に、彼は左手で持っていた鉛筆を握り折った。
(先生が…)ヒナ
(怒っている…?)イオリ
(そんな次元じゃなくない?なんか先生…雰囲気変わってない?)
唯一エイミだけは、先生の変化に気づいていた。
彼は負の感情を蓄積すると、爆発的に発作が起こり、それによってキャラが変わる事がある。しかし、今回は違った。思い出したくない過去、そして仲間を守れなかった後悔、仲間を殺したオールド・ガードへの怒り、それらが
暫くすると、彼は再びモニターを背にして立つ。そして鞄に入っていたノートパソコンを取り出すと、あるサイトを開き、PCとモニターをコードで繋げる
「今回、俺は作戦を立てた。当初は単なる対
バンッ!
と机を勢いよく叩きながら、彼は力強く口にする。その様子は、まるで煽動的な政治家のそれだ。
「具体的にどんな作戦なの?」
ヒナが不思議そうに訊く。
「ああ……聞かれると思ったさ。まだ草案だが、こんな感じだ」
そう言いながら、彼は資料を配る。資料にはマル秘の朱印が押されており、雰囲気からも完全にやばいやつだと分かる。
「これが、
♪〜*1
「ヴァルプルギス…」イオリ
「こいつを立案してくれたのが、まさにここにいるヒマリ達特異現象捜査部と共同開発したAI、“T.O.M.O.R.R.O.W.”だ」
「『
…
「まず軽く作戦を説明する。」
彼はそう言いながら、資料のページを捲る。
「まず作戦第一段階だ。
まず、
「「「「!!??」」」」
最初から想定外の行動に、ヒナとイオリはおろか、開発者の一人であるヒマリも驚愕を隠せない。
「し…深夜二時!?どうしてそんな…」
イオリが動揺を隠せない顔で、そして泣き腫らした顔でそう口にする。そして彼はそれに応える
「深夜二時は夜勤を除いて殆どが寝静まっている。最悪旧衛隊に対し、パテル過激派などの援助が外部からやってくる可能性がある。要するに、作戦開始前に通信網を破壊し孤立させ、本部の状況を外に漏らさない事で、作戦をより円滑に進める事が出来るようになる。それに深夜二時、本拠地がある(とされる)場所は深い森の奥だ。それにH.A.M.M.U.R.A.B.I.は白煙を出さないから、仮に
そう彼が口にすると、彼女は納得したような表情をする。
「続きがある。そして早朝、
日の出と同時に東側からオーケストラを奏でつつヘリコプター編隊で襲撃する」
(ええ…)
これも“T.O.M.O.R.R.O.W.”の力なのだろうか。キヴォトス人にとって、夜襲や奇襲は武装組織への定番のお仕置きだったが、深夜に一度ミサイルで本拠地を焼き、その後日の出と同時にわざわざオーケストラを奏で、ヘリコプターで朝日を背に奇襲をかける、そんなまるで漢の浪漫を詰めまくったような作戦はとてもキヴォトス人の脳味噌では考えつく事はなかっただろう。
「…先生」
「どうした、ヒナ」
「…私達が、生きて帰れる保証はある?」
ヒナの口から、禁断とも言える質問が飛び出す。それに彼は、苦虫を噛み潰したような顔で答える。
「…正味今の状況、半分半分と言った具合だ」
「「「「!!!!」」」」
全員が動揺する。
「先生!いくらなんでも、そんな作戦に同意など出来な…」
叫ぶイオリの肩に手を置き、彼は優しく語らいかけるような口調になる。
「俺はこれ以上、人が苦しむのを見たくないんだ。だから終わらせる。確かに平和は
「…そうよ。私は…もう…
友達の葬式なんか…したくないのよ…
」
再び涙を流しながら、彼女はカヲルに語りかける
「そうか…」
カヲルもまた、彼女の零した発言に対し嫌なことを思い出したような顔をする。
「俺もだ」
彼はそう言いながら、笑みを浮かべた。
「もうこんな時間だ。みんなも持ち場に戻って、備えるが良い。俺はコイツを評議会に提出してくるから」
そう言い、彼は戸を開くと、不敵な笑みを浮かべたまま、部屋を後にした。
しかし、彼女らは、部屋を後にしようとはしなかった。
「先生…いつもと違うわよね…」ヒナ
「ええ…
「先生も元は軍職だったんだ。弔った仲間を思い出したんだろうな」イオリ