死体を異世界に捨てる簡単なお仕事   作:手の目は勝ちにくい

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10話 炎上

 1時間ほど車を走らせて、セーフハウス(隠れ家)に辿り着く。大層な名前だが、ただの普通のマンションだ。緊急避難の場所に大仰なものは必要ない。というより、ほぼ倉庫みたいなものだった。この場所は偽造の身分証明で借りているので、紗季さんにも知られていない場所だ。

 

 佐藤は疲れていたのか、移動中はずっと寝ていた。揺すって起こすと、一瞬混乱していたが、直ぐに状況を把握して、黙ってマンションのエレベーターに乗ってくれた。

 

 2LDKの部屋の中には、所狭しと物資が置かれている。水、保存食、医療器具、工具、通信機器、簡易トイレなんてのもある。ただし、違法なものは一つもない。医療器具が少々怪しいが、まぁ大したものはない。もちろん、普通のマンションだから水道・ガス・電気は使える。

 

 生活感のあるものは、ベッドとテレビぐらいだ。

 ベッドは一度も使ってないのでナイロンカバーで覆われたままだ。

 

 佐藤は物資で狭くなった部屋を、物珍しそうにきょろきょろと眺めている。

 

「そこら辺に適当に座ってくれ。食いながら話そう」

 

 聴力は会話できる程度には回復していた。まだ違和感があるが、どうやら鼓膜は無事だったようだ。絶対、破れて中耳まで傷ついたと思ってたのに。

 

 俺は『食料2022』と書かれたダンボールを開封する。購入した日付だ。大体3~5年は持つものが入ってる。缶詰、アルファ米、保存水。適当に取り出し、床に座っている佐藤に渡す。

 

「ここに住んでるの?」

「いや、セーフハウスだ。倉庫みたいなものだな」

「ふぅン」

 

 興味がアルファ米の説明書に移った佐藤を尻目に、俺は医療物資のダンボールを開ける。

 AEDを引っ張り出し、底にある救急箱を取り出す。

 

「AEDなんて持ってんだ」

「色々とな。万が一の備えの物資だよここは」

「はーん?」

 

 備え付けのスプーンを咥えながら気のない返事をする佐藤。アルファ米に保存水をドバドバと注いでいる。お前ちゃんとパッケージに書いてある作り方読んだか?

 

「いちちちち」

 

 佐藤の指から爪が無くなっていた。怪我の度合いでいえば、佐藤の方が重症だ。

 救急箱片手にベッドに腰を下ろす。少し埃が舞った。

 

 だが俺は自分を先に治療する。なぜなら俺の家で、俺の医療道具だからだ。

 手鏡で自分の鼻を確認する。赤黒く腫れ上がっている。ひー痛そうだ。まぁ痛いんだけど。

 

「なぁ、これ折れてると思う? 絶対、折れてるよね?」

 

 缶詰のプルタブに悪戦苦闘している佐藤が顔を上げる。

 

「大丈夫なんじゃない? 意外と骨って丈夫なんだよ。私、看護学校目指してたから分かる」

 

 目指してた、は全然なにも説得力は無い。皆無だ。黙ってろ素人。

 

「治してやろう。お姉さんに任せなさい。映画で見たことあるからな」

 

 佐藤が嬉しそうに身を乗り出す。

 

 ヤメロ触んな。 映画の知識で治療するやつが一番ダメなヤツなんだよ! やっぱり重さんは正しかった! ダメな映画を見ると馬鹿になるんだ!

 

 足で追っ払う。笑いながら座り直す佐藤。

 佐藤は無理をしているのかもしれない。努めて明るく振る舞い、それで俺がどう反応するのか。

 

 当たり前か。地下室爆破して、その後も銃で皆殺しにした人間だもんな。

 

「氷のうが要るな。冷やさないと」

 

 痛々しい鼻の観察お終い。どうにもならない。医者に見せないと。

 氷のうを作りにいくついでに、佐藤の缶詰のプルタブをいくつか開けてやる。

 

「ほらよ」

「……あんがと」

 

 1ヶ月ぶりに流れた水道は少し臭ったので、そのまま流しっぱなしにする。

 冷凍庫から氷を出し、ジップロックに入れる。

 

「それで? なんでエスカンパニーに捕まってたんだ?」

 

 タオル、タオル。佐藤にも渡してやるか。

 

「……あのサラリーマン、エスカンパニーって言うんだ? 元はと言えば、私を売ったニンベン師(偽造師)をとっ捕まえて、一緒に捕まってたミヤモトユイちゃんが何処に行ったのか吐かせるつもりだったの」

「誰だって?」

 

 おい何て言った。コイツまさか逃げる途中で捕まったんじゃなくて、自ら突っ込んでいったのか?

 

「ミヤモトユイ。小学生ぐらいの女の子だった。怯えて、泣いていた」

 

 おお……なんというか。おお?

 

「警察には行かなかったのか?」

 

 佐藤は俺を睨むように見る。

 

「……『忘れろ』って、アンタが……モルグって言われてたっけ? モルグでいい?」

「モルグでいい。俺もみっちゃんって呼ぶ」

「……モルグが、『忘れろ』って忠告したからね。警察に行ってたら、私はきっとろくでもない事になるんでしょ? そうしたら誰がミヤモトユイちゃんを助けるの? 警察? ハッ。あの連中の腰の重さったらないよ。間に合う訳が無い」

 

 無視するなよ。本当に呼ぶぞ。

 

「親が被害届、行方不明者届を出してたらその限りではないと思うが」

「きっと私みたいに居なくなってもいい人間なんじゃないかな。下手すると親に売られたのかも。だからそれは無いと思った」

 

 それは当たってるかもな。エスカンパニーはRリストの人間を集めていた。

 

「モルグに助けてもらったから迷惑も掛けたく無かった。だから、その、SNSで闇バイトを集めて、熊スプレーとか。それでニンベン師を捕まえようと」

 

 すげぇ馬鹿だ。

 

「闇バイトとか、よく分かんなかったから。モルグから貰った100万で報酬を払って、いざその場所に行ったら、全員逃げ出して」

 

 すげぇ馬鹿だ! もはや面白いまである。

 

「あのサラリーマンの集団に捕まって、それで……まぁ……色々と殴られたりした」

「エスカンパニーはなんて?」

「私を買った上客を探してたみたい。私が自由に動いてるから、そりゃ容疑者だろうね」

「もしかして良心に目覚めて、解放してお金をくれたのかもしれないじゃん」

「はは。ウケる」

 

 冷笑やめてね。

 

「俺の事は喋らなかったのか」

「喋らなかった」

「そこまでの仲だっけ俺達?」

「途中からは意地だよ。アイツ等が欲しがる情報をやるぐらいなら死ぬ方がマシだ」

 

 根性が座っているというか。キレてるというか。

 

「もうなんか、痛すぎてぼんやりしてた頃に、アンタが来た」

 

 こちらを見据える佐藤。

 

「で? モルグ。アンタはなに?」

 

 うーん。どこまで説明したものか。

 佐藤に関しては、正直、身内には居てほしくないタイプだが見てる分には面白い人間だ。

 面白い人間というか、面白人間というか。

 関わりたくないだけで、好感は持っている。だから最低限の身元を説明することはやぶさかではない。でもなんか、嫌な予感がするんだよな。こいつと関わると泥沼にハマっていきそうで。縁を切るなら今なんだろうが。

 

 だったらエスカンパニーとも敵対してないか。

 

「安堂守久。24、いや25歳だ。ヤクザの外部構成員で死体を隠蔽する仕事をしてる。あだ名はモルグ」

「25歳!? 私より一個上じゃん! 嘘つけー! どっからどう見ても栄養不良気味の高校生じゃない!」

 

 やっぱり無理して適正な年齢の戸籍を買うべきだったかもしれない。

 あと数年もすれば違和感はなくなるだろうから、節約したのだが。

 

「童顔なんだ」

「そのガイコツみたいな顔でよく言えたね」

 

 ……人が気にしてることをこの女。角度によってはイケるだろ。

 

「ともかく。お前と初めて会った、あの日も仕事の途中だったんだ」

「というと……」

「なんでか知らんが、お前を買ったであろう、おじさんがな。後ろから煽り運転してきて、挙句の果てに思いっきり、ぶつけてきたんだ。ハンドル取られて事故りそうになったよ」

「……あの豚はどうなったの?」

 

 水を汲んで氷のうを作る。水道を止めると意外と静かになった。

 

「殺して処分した」

 

ハッキリと伝える。やはり佐藤は逃げるべきだったんだよ。少なくともチャンスはあった。

 

「……そう。ニュースとかには載ってなかったけど?」

「隠蔽するのが仕事だからな」

「……私も、私も殺して隠した方が良かったんじゃないの?」

 

 おお、聞くのか。そうだよな。立ち位置を知りたいよな。

 

「その選択もあった。あったが、まぁ、顔を見られてはないし、ギリセーフみたいな」

「あの時、もっと大声を出してたら?」

「殺してたな」

「……」

 

 黙って考える佐藤。あの時のこいつは薄氷の上を歩いてた。ただ俺はしっかりと氷の厚い場所を教えてやったつもりだ。それで踏み外すなら、それは本人の責任だ。

 

「……分かった。ともかく、ありがとう。命を助けてくれて」

「みっちゃんのガッツで生き残ったとも言える。ただ従順なだけだったら、もしかしたら、煽りおじさんと一緒に埋める判断をしたのかもしれん。分かってると思うが、俺は悪党の部類だ。通常はリスクで判断してる」

「結果が全てだよ。私は助かった。あと、みっちゃんは止めろ」

 

 止めてやろう。

 

 それから俺は、氷室組との関係と、その経由でエスカンパニーから仕事を受けたこと、現場に行くと佐藤が捕まっていたこと、仕事の業務内容を土壇場で変更してきたので、敵対関係になり、地下室をC4で爆破して今に至ることを説明した。

 俺が持つ異能は当然、伏しての説明だ。

 

「自分自身がこうした目にあっても、現実感がないよ。アホみたいな裏社会が存在して、日々暗躍してるみたいな。それこそ映画や漫画の世界だ」

「言っとくが、エスカンパニーが異常だからな。あそこまで無遠慮にシノギを拡大するのは珍しい。エスカンパニーに比べたら、武闘派の氷室組もお上品と言えるよ」

 

 その時、俺の持つトバシのスマホが震える。ディスプレイを見ると紗季さんからの通話だった。俺は佐藤に黙っておくようにジェスチャーする。

 

「モルグです」

『よぉ。耳はもう大丈夫なのか?』

「はい。少し聞き取り辛いですが会話に支障はありません」

『そうか。さっそく本題だが、モルグには指定するエスカンパニー拠点を襲撃してほしい』

「……」

 

 なんだって? 襲撃? 今はどういう状況なんだ? エスカンパニーと俺との抗争なのか?

 

『お。驚いてるな? 安心しろよ。お前が行く拠点は無人の場所だ。想定してたより、遥かに大規模な組織だったから手が足りてねぇーんだ』

「想定してたより、というのは……」

『私達は初めからエスカンパニーと事を構える気でいたんだよ。内偵を進めていて、ほぼ準備は終えてた。まぁ別角度からの情報はあっていいから、お前にも依頼してたが、戦争は確定事項だった。あとはその理由が必要だったのさ』

 

 ハメられたか。なんてこった。俺がその理由になるとは。しかし、理想的ではある。これで氷室組とエスカンパニーの抗争が確定した。

 

『言っとくが、きっかけ程度でこちらから因縁をつけるつもりでいたんだぞ。それが何で13人も殺ししてんだ。頭おかしいのか? 刑場を張ってた連中から報告が来て、耳を疑ったぞ』

 

 見張りもついてたか。そりゃそうか。しかし、なんだって氷室組はエスカンパニーを狙うんだ?

 

『エスカンパニーの持ってる名簿だよ』

「名簿? Rリストですか?」

『馬鹿。連中は自分たちの悪事の「おはよう」から「おやすみ」まで全て記録してるんだ。警察、政治家、悪党共との取引全てだ。それがエスカンパニーをさらに押し上げ、名簿を分厚くさせていった。雪だるまのように膨らんでいった情報を、私達が手に入れる』

 

 そういや普通の会社みたいに記録を残してたもんな。絶対問題になるとは思ってたが……。

 

「……それじゃ今回のは本家筋の指示なんですか?」

 

 指定暴力団、加藤組。日本でも有数の組織力を持つヤクザで、氷室組はその3次団体になる。さすがに計画された抗争となれば、本家の意向なんだろうが。

 

『いや。本家は今回の事に関与しちゃいない。連中はエスカンパニーと昵懇だからな。私が名簿を確保することは許容できないはずだ。本部の一部が離反して、私達に付いているから、そこから崩していくつもりだ』

 

 く、クーデターじゃねぇか! 3次団体が内部抗争引き起こすのか!?

 

「……紗季さんが名簿を確保して、それで組織を牛耳るつもりですか?」

 

 無茶だ。いくら名簿が強力でもあらゆる勢力を敵に回すことになる。

 

『いや? 私は名簿を公開するつもりだが?』

「は?」

 

 なん、なんだって?? 公開? えと、すると……どうなるんだ?

 

『私はね。モルグ。我慢ならないんだよ。腐敗したゴミに集るハエ共が、さも己の権利であるかのように蛆虫を植え付け、食い荒らしていくこの現状が。悪事を働いたのなら、いずれ報いがあると怯えなければならない。そうだろう。安寧と共にベッドで死んでいくなんて、あまりに理不尽だ』

 

 なにが、何に対して。

 

『死すべき理由を思い出させてやらねば。それが皆が幸せになる方法なのだから』

「さ、紗季さんは、その、自分がやってきたことに対して、後悔を?」

『後悔はない。だがいずれ来る報いに恐怖しない日はない。まともに眠れた日なんて、もう記憶の彼方だ。あまりにも恐ろしい。だがそうでなければならないのだ』

「……すみません、あまりよく分かりません」

『今は構わないさモルグ。お前は本質的には理解しているはずだから。自分に訪れる無惨な最期を』

「……」

『ともかく! 今は名簿の確保が最優先だ。モルグの今いる所は、4階の角部屋のマンションだろ? 比較的近い場所に、小規模な拠点がある。そこを調べてもらいたい。スコアは低いが念の為だ』

 

 くそっ。セーフハウスの場所もバレてるのかよ。マズイぞ。どこまで本気か分からないが、紗季さんが名簿を確保したら、めちゃくちゃになる。日本中の権力組織が名簿を巡って争う事態だ。逃げる算段をしなければ。絶対にマズイ。

 

『モルグ。お前が火種になったんだ。せめて最後まで付き合え。TVを点けてみろ。状況が理解できるはずだ』

 

 混乱中の俺は言われるままに、リモコンでテレビを点ける。

 テレビの中では燃え盛るビル群が映し出される。

 

『続いて新しい情報です。東京・新宿区で発生している火災について、現場周辺では先ほどから発砲音のような音が聞こえたという通報が相次いでいるということです。

 警視庁が現在、現場の状況の確認を急いでいますが、詳しいことはまだ分かっていません。

 さらに、関係者への取材によりますと、都内の別の地域でも同じように火災や騒ぎが起きているという情報があり、警察が関連を調べているということです。

 現時点で原因は分かっておらず、警察や消防が現場の安全確保と状況の把握を急いでいます。

 また政府関係者によりますと、状況によっては組織的な事件やテロの可能性も含めて警戒を強めているということです。ただし、現時点でそれを裏付ける情報は確認されていません。

 現場周辺では交通規制や立ち入り制限が行われているということです。付近にいる方はむやみに近づかず、警察や消防の指示に従ってください。新しい情報が入り次第、続けてお伝えします』

 

 脳が上手く情報をキャッチしてくれない。もしかしたら耳は回復しておらず、ずっとおかしくなったままなのかもしれない。空撮で撮られた画角は、炎の色で染め上げられていた。なにが、一体、どうして。アナウンサーはひたすら、悲痛な表情で避難を呼びかけている。

 

『場所は送っておいた。パソコンに詳しいやつを連れていけ。こっちは火口が各所で(おお)わらわだ。ウチはまともなハッカーは火口ぐらいなもんだったからなぁ。失敗したよ』

 

 紗季さんは、いつも通りの声だった。今日ほどこの男が理解できないと思ったことはない。どれだけ犠牲者が出てるんだ。

 

『じゃあなモルグ。頼んだぞ。もし名簿を確保するか、拠点の確認が終わったら連絡してくれ。今夜が勝負だ。朝までに確保出来なければ、私も、お前も、それまでだ。幸運を祈る』

 

 通話が切られる。だが俺は固まったように動けなかった。テレビでは次々と被害状況を知らせるニュースを読み上げている。佐藤がTVと俺を交互に、不安な表情で見ている。

 

 落ち着け。考えろ。何が最善手だ。どうすればいい。

 

「……モルグ?」

 

 佐藤を手で制した。もう少し待て。

 まいった。パニックになってるぞモルグ。

 ……よし。とりあえず、よし。佐藤に説明しよう。頭の整理しなければ。

 

「佐藤、まずはこれは氷室紗季が起こしたヤクザ本家へのクーデターの一環だ。氷室はエスカンパニーが持っている、名簿と呼ばれる、情報を欲しがっている」

 

 佐藤は驚いて、画面を見つめる。

 

「酷いな。マジで言ってる……? 名簿ってのは?」

「名簿は、エスカンパニーが培っていった犯罪の履歴、顧客データだ。警察や政治家もその顧客に含まれている」

「……じゃあ、その名簿にはミヤモトユイの情報も載ってる?」

 

 ああ? ミヤモトユイ? 誰だ。いや佐藤と一緒に拉致されてた女の子か。

 

「そりゃ、載ってるんじゃないか? 全て記録してあるはずだ。当然、行き先も」

 

 佐藤は何か考え始めた。嫌な予感がする。

 

「言っとくが、恐らく日本中が名簿を求めてる。争奪戦になってるかもしれん。紗季さんが確保したら、名簿を、その、理解出来ないが、公開するそうだ。だからそのミヤモトユイとやらの情報も待ってたら、公開されるかもしれない」

「……氷室にとってそれは何の利益があるの?」

「知らん。なんか理不尽なんだとよ」

 

 クソ。狂人すぎる。紗季さんが名簿を公開したら、俺はどうなる。氷室組の一員として見られるか、それとも最初に火を点けた大バカ野郎として責任を求められるか。

 

「それで? 止めないの?」

「止める? 馬鹿言うな。巻き込まれたヤツらは気の毒だが、こっちの身が危ないんだ。保身第一だ」

「……私は、アンタに助けられた身だから何か願う立場にないってのは分かってるわ」

「ごもっとも」

 

 もう佐藤がどうとかいう状況じゃない。エスカンパニーだって混乱してるだろう。逃げても俺は放っておくだろうし。多分、逃げ切れるんじゃないか?

 

「今からどうするの?」

「エスカンパニーの規模が大きすぎるから、手が回らなくて、俺にも小さな拠点を調べてこいとさ」

「分かった。私も行く」

 

 救急箱を持つ佐藤。待て待て待て。分からん。なんでそうなる。

 

「私はユイちゃんを助けたい。モルグは名簿を確保したい。お互いの利益は一致してるよ」

「別に俺は名簿は欲しくない。紗季さんが欲しがってるだけだ」

「その氷室が先に名簿を確保したら、モルグはどうなるの? ここまでやる連中だよ。もうコントロールなんて出来るわけがない。だけど、先にアンタが名簿を確保したら、もしかしたら、自分の状況ぐらいは何とか無難に着地できるかもしれない。違う?」

 

 そうか? 本当にそうか? 全てをなげうって海外にでも逃亡するのがベストなんじゃないか? いや。追手が掛かるだろう。自分の身の安全には、確かに名簿が必要かもしれない。政府でも警察でもヤクザでも何でもいいが、取引をして、日本から出る。あるいは庇護下に入る。これか?

 

「紗季さんはパソコンに詳しいやつを連れていけと言った。悪いが、俺はその手には疎い。確保出来なくはないが、時間が掛かる。なんかアテはあるか?」

 

 佐藤は眉を上げ、ニヤリと悪い顔で笑った。

 

「一人、心当たりがある。ニンベン師だ」

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