オブ・ザ・キングドラ   作:LAC

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キングドラ4(カツラ)

 中央に活火山。他の街とは分断された島。辿り着く唯一の手段は、多種多様な水棲ポケモンがひしめく長大な水道を乗り越えるのみ。

 ポケモン研究所があり、ポケモン屋敷があり、そして炎タイプのジムリーダーが待っている。

 セキチクシティを発ったキングドラたちは、七番目のジムを目的にグレン島を訪れていた。ジムチャレンジを前にした小休止の時間だ。

「いろんな子と会えて、おもしろかったぁ」

 道中経由した19番・20番水道で、一行は巨大な水棲ポケモンの群れと遭遇していた。

「ドククラゲ、友達がたくさんいたね!」

 彼が率いていた群れだ。今はかつて右腕だったというニョロボンが率いている。ニョロボンの体もドククラゲと同じように、様々な傷跡で彩られていた。

「カントーの水タイプが勢揃いだったな。

 通常の手段で出会える水ポケモンとは全て出会えたんじゃないか」

 数多の水ポケモンが集った、壮観な光景だった。化石ポケモンを除いた全ての水棲ポケモンが揃っていたと思えた。

「えっ、でも。あなた以外のキングドラはいなかったよ?」

「私はまだ未発見だからな」

 先日進化したばかりだった。

 特別なアイテムを持たせて通信交換することで姿を変える。まだこの世界の人々はそれを知らないが、キングドラは知っていたし、野生の頃にそのアイテムを確保していた。

「そうなんだ! じゃあさ、ジムリーダーの人もびっくりするかな?」

「するんじゃないか?」

 キングドラはさらりと答えた。ゲームの中の知的好奇心溢れる老人を知ってはいたが、直に会うというのに皆まで伝えるような事でもない。

「炎タイプのジムリーダーなんだ。水タイプについては当然よく研究している筈だ」

「そこにみはっけんのキングドラが登場するんだね! びっくりしそう!」

 そこでふと、ブルーが口を噤む。何に思いを馳せているのだろう、大きな眼をきょとんと広げている。

「どうした?」

「あのね。

 みんな海を越えてチャレンジに来るんだし、みずタイプをゲットする人、多そう」

「まあ、そうだろう」

 彼女はラプラスの背に乗って水道を越えた。種族は違えど、水ポケモンの力で海を越えるトレーナーは多いだろう。そして道中もまた、魅力的な水ポケモンで溢れている。

「そしたらさ、みんなみずタイプ持ってるよね?

 なんでそんな所で、ほのおタイプのジムにしたんだろ」

 火山があるから、炎タイプが棲息しているから。いくつか浮かんだ言葉をキングドラは呑み込んだ。

 確かに難事であると思われたからだ。

 

---

 

「ほのおタイプが一番、強くてカッコイイからじゃ!」

「ちがう! みずタイプが一番!」

「そうか。であれば、ワシにとってはほのおタイプが一番。キミにとってはみずタイプが一番。

 そういうことじゃろ」

「ちがう……」

 カツラにはカツラの価値観がある。当たり前のことで、優劣をつけるものではない。そんなことを、キングドラは口が避けても言うつもりはなかった。

 自分にとっては一番。別の人にとっては、二番か三番。そんなものは、一番ではない。

 知らしめることはできるよ、できるんだ。

 旅立つ前の幼い頃、彼女の傍らにイーブイしかいなかった頃。テレビの中で見たはずだ。一番強くて格好良い称号を持つ人とポケモンたちを。

 

---

 

 繰り出すポケモンいずれもがエース級。炎タイプの大技"だいもんじ"を振りかざし、一匹で勝負を決める力を持つ。僅かな隙を狙って"オーバーヒート"で制圧しにくるものもいる。

 強い技を強く振るう。カツラの育て方がよく解る。

「"やけど状態"になったのう。知っているかな?

 この状態になったポケモンは、時間と共にどんどん体力が減っていくぞ!」

 ラプラスが燃えた。

 何度も相手の大文字や火炎放射に耐えていた。何度も相手に同じ技を使わせたなら、確率の低い状態異常を被ることもある。

 しかしラプラスは、まるで堪えていないかのように振舞う。彼女が呼び出した渦潮で敵のウインディを拘束し続ける。

 シャワーズが置いていった雨雲の下でのびのびと歌う余裕すらあった。

「特別な特性なの。"うるおいボディ"っていうんだって」

 雨天候下で、毎ターン状態異常を回復する。ポケモンがそれぞれ備える特性の中でも、夢特性と呼ばれる珍しいものだ。

 ただでさえ個体数の少ないラプラスの、更に希少なそれは、カツラの知識にない。

 表皮が一瞬煌めいて、ラプラスに取りついた炎が掻き消えた。

 

 効果が途切れた雨雲を再度シャワーズが集めてから、再びブルーの手元に戻る。カツラは交代のタイミングに合わせて、後続に大文字を放った。

「悪いが次は私でね」

 キングドラが現れる。

 直撃した筈の大文字は目立った効果を残さず、余波が寂しげに散った。

「シードラか? いや、別のポケモンじゃな……?」

 カツラの困惑も致し方あるまい。

 水とドラゴンの複合タイプは、どちらも炎技が半減の"かなりいまひとつ"。威力を四分の一に抑えてくる複合タイプとは、初めて会うだろう。

 そして雨の中のキングドラに、追いつけるものなどいない。

 これで終わり。

 

「だがワシの愛は! 消火できんぞ!」

 倒れ際のセリフもダジャレのようで、カツラの性格が表れていた。

 負けても愛が残るなんて、いかにも老人が言いそうなことだ。

 

---

 

 やがて革命の世代が来る。ブルーと同じ、マサラタウン出身の二人の挑戦者が、目まぐるしい交代劇を演じにやってくる。

 その時彼女はあの場所に立っているだろうか。その後も立っているだろうか。

 もしも万が一、退いた時。カツラの言葉を思い出せるだろうか。

 きっと思い出すだろうと、キングドラは思った。そしてその時も、自分は傍にいるだろう。

 

 

 

オブ・ザ・キングドラ 完

 

 

 

 




このSSのことジジイの説教って呼んでました
最後まで読んでくれた人ありがとう
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