対面した敵に"いかく"を放ち、その攻撃力を下げる。"たきのぼり"で相手を怯ませる。
ギャラドスはそうして、相手の精神を押し込めて支配するポケモンだ。勿論後先なく一度暴れれば、敵陣を打ち砕き蹂躙するだけの破壊力も持ち合わせている。しかし彼の強みは、精神的に優位に立つことで相手のプランを狂わせる事にあった。
強い攻撃技を振り回して相手を粉砕するのではない。
強い攻撃技がある事を相手に知らしめて、次の一歩を躊躇わせるのだ。
「こうしてギャラドスは、精神が挫け、手足が縮こまり、己の一挙手一投足を過剰に警戒しすぎて何もできなくなった相手の前で悠然と振る舞う。
後は持ち合わせた破壊力を、当たり前に振りかぶるだけだ」
破壊の化身と謳われたポケモンだ。本質もそうなのだろう。しかし彼の力が齎す影響は、極めて私たちの戦いと相性が良かった。
「ギャラドスと対峙したポケモンが、どのようになるか解るか」
「うん、精神が? くじけて……てとあしが……」
そうではない、と続けた。
「今の君のようになるんだ」
無自覚なのだろう、彼女は緊張で青くなった顔を両の手で触った。
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「すっごくキレイで、キラキラしてて、自信満々で! かっこいいんだぁ」
憧れのトレーナーの話を聞いたときは、然もありなんと思った。
少女と同じく女性で、水着を纏い、水タイプのポケモンを使い、そして強いトレーナー。
そんな水タイプジムリーダー、カスミが待ち構えるハナダジムへの挑戦を前にして、今彼女は緊張で縮こまってしまっている。
「ギャラドスを前にしたポケモンと同じと言ったな」
「うん……。私って今そんな感じ?」
「ああ」
ギャラドスの背中越しに何度も見ているのだ。彼女の脳裏にも思い浮かんでいるだろう。
「彼らは全員ギャラドスに負けたか?」
「えっと、違うよ」
「そうだ。君と同じ状態に陥っても、それを突破してくるポケモンもいた」
これまでの全ての対戦を、ギャラドス一匹によって解決してきたかと言われたら、そんなことはない。
時に手傷を負わされたり、あるいは突破される瞬間もあった。
特に少女の幼馴染とは何度も戦っているが、ギャラドスで自由に蹂躙できたのは、彼の加入直後から二、三回までだった。相手も当然対策を練ってくるし、かの幼馴染の意識の高さには疑いの余地もなかった。
「どうやって負けたんだったか」
「ええと、なんか、いつも通りに……」
「いつも通りに負けた?」
「うん、いつも耐えられなくて負けちゃう技を、いつも通り打たれて耐えられなくて」
「どんな様子だったか覚えているか」
「それも、いつも通りで……」
自信満々だった、と言った。
相手が自信や自負を持っている技を、普段通りに打たれて負けたのだ。
「それをこちらもしよう。
何に自信を持っている?
何を拠り所とすれば、普段通りに振る舞える?」
シャワーズも、ドククラゲも、ギャラドスもそれを知っている。勿論私も。彼女が無自覚な、その特別さに惹かれてついてきたのだ。
そしてもう一匹はまだその感触を知らない。
「ラプラスの話を聞いてやれ。君はポケモンと"話し合える"んだ」
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「ラプラスはね、時計なんて人間のものは知らないって、好きな時に歌いたいんだって」
「辛い木の実は食べたくないし、毎日渋い木の実だけでいいんだって」
「全部はだめだよね、私もそう思う……」
「でもね、もしバトル中なら!
時間が過ぎてから歌うのはしょうがないよねって、話したの!」