オブ・ザ・キングドラ   作:LAC

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キングドラ3(サカキ)

「チャンピオンリーグの門番。トキワジムのサカキは完璧なトレーナーだ。

 その育成力で高練度高耐久の手持ちを揃えているし、優れた統率力でそれらを一分の隙もなく統制している」

 ここが大一番であることに間違いはなかった。キングドラは普段以上に言葉を選び、少女の反応を確認しながら続けた。

「数あるポケモン技の中でも、彼が得意とする"じしん"は最高の攻撃技のひとつだよ。無警戒で挑んでは返り討ちにあう」

「じめんわざなんだよね? ギャラドスなら飛んでるから大丈夫!」

「ああそうだ、だからこそサカキも、何が何でもギャラドスは刈りに来るだろう。

 本当に優れたトレーナーなんだ。こちらがここだと思ったタイミングも、当然のように読んでくる。

 そこに岩技を合わせてきたら苦しい」

「なら、どうしよう。一番最初に出すとか?」

「それでは読み以前の問題になってしまう。こちらの初手がギャラドスなら、という点は当然考慮して初手を決めているはずだ。

 準備の段階で対策されていると考えてよい」

「そのさ」

 ふと少女の声色が変わったのを感じた。普段の口調に僅かながら含まれる、迷いや気弱さといったものが無くなっていた。

「ギャラドスを出すタイミングは、決めないで挑もうよ。

 私がバトル中にずっと相手を見て、悩んで、考えるから」

 硬質な声だった。何度か聞いたことがある。キングドラはその感情を知っていた。

 自信だ。

「それでね、そうしたらサカキさんはそれを読んで合わせてくるんでしょ。

 だから……」

 キングドラが決めてよ。

 

---

 

「水タイプ統一とは、なかなか意気が込んでいる」

 対面したサカキの第一声だった。ジムトレーナー達との対戦を見ていたぞ、という圧力でもあった。

 対策されているかもしれない、と感じて指揮が狂うトレーナーは少なくない。そしてサカキは、そんな半人前にジムバッジをくれてやるつもりもないのだ。

 その上でもうひと言、付け加えねばならなかった。少女に特別な才能があったからだ。

「いずれもよく育っている。信頼関係も築けている。

 そして君は、ポケモンの言葉が解っているな」

「えっ、はい。なんで……?」

「戦闘後のラプラスの鳴き声を聞いて、頭に伸ばしていた手を引いて尻尾から撫でたろう」

 サカキが言った。

「ポケモンの反応を見てそれを撫でること、あるいは撫でるのをやめることは一流なら当然できる。しかし細かい要求を汲み取ることは難しい。

 あり得ないと思ったが、一度そう疑って観察するとそうとしか思えなかった」

「そうなんだ……。はい、そうです」

「そうか。いい才能だ。大事にするんだな。

 だが!」

 そこでサカキは振る舞いを変えた。完璧な先達、完璧な大人としてのジムリーダーから、全身に満ちた彼の思想が滲み出る、何者かたちの指導者へ。

「何を避け、何を疎み、何に臆するかは振る舞いから伝わるものだ。

 言葉は必ずしも必要ではない」

 強い色のネクタイ、深い色の背広。その背中が翻った。

 八番目のジムバトルが始まった。

 

---

 

 先鋒のドククラゲ、次手のラプラスが既に倒れていた。

 ドククラゲはその上位者としての振舞いの余韻を、ラプラスは力を振るう際の微かな躊躇いを。

 どちらも油断とも言えない、僅かな時間の繋ぎ目を突かれた。

 そうして彼の切り札たるサイドンの前には、今キングドラが立っている。

 

 キングドラたちの次の手について話そう。

 サカキの経験上、指示を無視して勝手に暴れるポケモンはいくらでもいた。

 ただし、そうしたポケモンの振る舞いは当然、トレーナーの低い力量に起因する。サカキの見立てでは、少女はその域を脱していた。

 だからこそ、サカキは対戦相手の視線を追っていた。何を警戒しているのか、何を予想して対応するつもりか。つまりこちらの次の手を、どこまで想像できているか。

 こうしてトレーナーの力量を見抜き、そのスキルに合わせた指示を出す。

 しかしサカキは、同じようにキングドラの視線も追うべきだった。自分と同じ視座の戦術眼を持つ相手は、眼前の少女ではなかった。

 

 ハイドロポンプとメガトンパンチを透かし合った直後のこと。 

 キングドラが鳴いた。

 サイドンは敵の威嚇に身構えた。

 サカキは敵の攻め気を感じ、返り討ちを目論んだ。

 キングドラの言葉を理解したのは、少女一人だった。

 サカキとサイドンが気づいたのは、事が済んだ後。

「わかった! ここで交代だね、キングドラ!」

 

 キングドラは「威嚇だ」と吠えただけだ。

 そこに特別な技や特性の効果は含まれていない。野性のポケモンが度々やる仕草でしかない。

 サイドンは目の前のポケモンが自分を威嚇したと感じた。

 サカキはサイドンがそう受け取ったことを読み取った。

 しかしキングドラと少女にとって、威嚇とは彼のことだ。

 ボールの中からギャラドスが飛び出した。

 その濁流が全てを飲み込んだ。

 

 




ジムリ全員書くことにした
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