―しばらくして 都内の寿司屋
久々に暖簾を潜った回らない寿司屋に内心驚きながらも鏑木の隣に座るハジメ。この場の緊張と鏑木への不審感から複雑な感情に見舞われていると鏑木の方は湯呑みのお茶を飲んでからこう促してきた。
「好きなのを頼むといい、この場は僕が持つから」
小さく微笑みながらそう促す鏑木に更に疑心の心が強くなるハジメ。
この男は間接的にとは言え、あかねを炎上まで追い込んだ男だ...油断してると足元を掬われる。
そう思うとつい顔に出てしまった。
鏑木もそれに気づかないわけがない...ハジメの目から言いたいことを察すると湯呑みをスッと置いてから語り始めた。
「別に心配する必要はないよ。
今回はキミへのお礼と今後の番組の方針を伝えるために呼んだ」
「お礼と番組の方針...?」
言っていることがよく分からないと言った様子で復唱するハジメ...そんな彼に対して鏑木は小さく笑みを浮かべながらも包み隠さずに話し始めた。
「キミ自身は身に覚えがないかも知れないけど...
キミは一度僕を助けているんだよ?」
「助けてる...って?」
「ボク、炎上の案件でスポンサーの偉い人を怒らせてね...
危うくスポンサーが降りて番組の存続が不可能になりかけてたんだ。
そんな時にキミが番組内で前の車の奴を披露した...
ジムカーナ、だったかな?名前が間違ってたら申し訳ない。車には疎いものでね」
そう説明しながらも目の前で大将が握ったマグロを口にする鏑木。一貫だけ食べてから再び話しを続けた。
「あれのおかげで視聴者の範囲が国内どころか海外にまで広まったんだ。アメリカはYoutuberやインフルエンサーから、ヨーロッパではBBCの番組から...向こうから英語で電話取材が飛んできた時は驚いたよ」
そう話してから大将に向けて「穴子、追加してくれるかな?」と注文する鏑木。空いた時間を埋めるように再び湯呑みのお茶を口にすると「ふぅ...」と小さく息をつく姿を見てハジメはある疑問を投げ掛けた。
「海外からの需要が増えると...何か良いことがあるんですか?」
「あるよ。直接的な数字には影響しないけど、間接的には影響してくるんだ...それからこっちではあまり知られてないが、今ガチは一応海外向けの配信サイトでも配信されていてね。
そこでの視聴数があの後に20倍以上にまで跳ね上がったんだ。中国や台湾、韓国ぐらいしかなかった視聴圏をヨーロッパやアメリカにまで広げてね」
「に、20倍....!?」
「そう。これによって配信サイトでの広告収益がかなり増えてね...おかげで崖っぷちの状態から一気に駆け上がるような形になったんだ。
上は予算会議前に来シーズンの放送を決定したし、今シーズンも延長することが決定してる。視聴者はキミと星野アクアの2人による黒川あかね争奪戦がみたいだろうしね」
そう言っている間に鏑木が頼んだ穴子が彼の前に出されるもすぐには手をつけない。後ろの荷物置きから自分のカバンを手に取り、ガサゴソと中を漁ってはホッチキスで留められた厚めの資料をハジメに手渡した。
「今後の番組の方針だ。
他の出演者にもその内見せる予定だけど、キミにだけ特別に先行で見せてあげようと思ってね」
そう語って穴子を食べ始める鏑木に対し、恐る恐る資料を手にとって資料を読み始めるハジメ...今まで今ガチとは明らかに違うような取り組みがある。
その中でも特に目立ったのが2つの新設コーナー。
一つは対局デートマッチ...
男性側が意中の相手を誘い出してデートを行うという内容。通常収録日とは別日にデートする休日デート、通常撮影日の撮影後に行われる放課後デートというシチュエーションで考えられていて、もし意中の相手が被ってしまった場合は放送日にマッチ形式での視聴者投票で勝敗が決められる。
別に勝ち負けでどうこう決まったりするわけではないが、今後の相手側の心の動きが左右される要因になるには変わりがない。
そして、極めつけがもう一つ...
恋愛ディベートマッチ。
男性側の意中の相手が誰かと被ってしまった場合、どちらが彼氏に相応しいのかという討論を顔合わせ形式で行う。
討論中、意中の女性は別室で待機しながらもその様子を見守ってどちらが本当にいいのか見定めるというもの。
この時にも視聴者投票での勝敗も決められる...
そう、今まで自然な流れで行なっていた方針に対してライバルとバチバチに競い合うような放送内容になっているのだ。
明らかにハジメとアクアの二人を意識した方針だ。
それにしても一つばかり疑問が残るハジメ...単刀直入にそれを問いかけた。
「どうして自分にだけ見せようと?」
問いかけに対して静かな面持ちで聞きながらも穴子を食べる鏑木。食べ終えたところで湯呑みに手を伸ばしながらも小さく微笑むようにして答えた。
「僕なりのキミへの恩返しっていうのもあるけれど...
本音を言うとちょっとした"ハンデ"だよ」
「ハンデ?」
再び復唱するように問いかけるハジメ。鏑木は湯呑みの入ったお茶を静かに一口だけ飲んでから真剣な面持ちで語り始めた。
「さっきも言った通り、キミが黒川あかねを狙うなら相手はあの星野アクアだ。
彼はキミの実年齢の5つ下の16だが...侮れないよ。
平均年齢30代の番組サイドに対して一杯食わせた男だからね...ただの高校生と思わない方がいいよ」
そう言ってはチラリとハジメの席の卓上を見る鏑木...何も頼んでいない状況を見てフッと言わないばかりに口角を上げるようにすると「遠慮せずに頼むといい」と再度促す。
促しでハジメが大将にマグロを頼んだ後、鏑木はお茶をもう一口だけ飲んでから確認するようにこう問いかけてきた。
「他に僕に聞きたいことはあるかな?
答えられる範囲であれば...答えるよ」
他に聞きたいこと...と言っても、この男と話すのは初めてだ。どういう情報を掴んでいて、どの範囲までが許容範囲なのかもイマイチ分からない。
自分が欲しい情報...何かあるだろうか?
色々と思考を巡らせるハジメ。
すると、ある一つの疑問が浮かび上がった...星野アクアに関することだ。
彼はどうして番組に出ようと思ったのだろうか?
彼は何故、あかねを狙い始めたのだろうか?
序盤は全く興味が無さそうにしていたのに、急に彼女を狙い始めたのには何かしらの理由があるはず...
黒川あかねを守るにはその真相を明らかにする必要がある。
その一歩を踏み出してみよう...
そう思ったハジメは大将に握られたマグロをゆっくり手にとっては食べずに見つめるようにしながら単刀直入に問いかけた。
「一つだけ質問が...星野アクアはどうして今ガチに出ようと思ったのですか?」
そう聞かれてから"そう来たか"と言わないばかりに再び真剣な表情に戻る鏑木。答えようか悩んでいるのか、湯呑みに入ったお茶をもう一口だけ飲んでからマグロを食べたハジメの方に目を向けてこう答えた。
「まあ、彼に秘密にするようにとも言われていないし...話そうか。
キミは...アイというアイドルを知ってるかな?
12年前に亡くなった伝説とも言えるアイドルなんだけれども」
12年前...となると、ハジメは9歳。
タダでさえ芸能関係には疎い彼だったが、そんな彼でも名前は何となく覚えていた。
「はい、詳しいことは知りませんが...聞いたことはあります」
「星野アクアにはアイの情報と引き換えという条件でこの番組に出てもらったんだ」
12年前に死んだアイドルの情報欲しさにわざわざ?
しかも、12年前となると彼は4 歳だ...いくらなんでも幼すぎる。
最近アイの存在に気づいて追っかけ始めた?
いや、9歳で芸能関係に詳しくない自分でも未だに何となく覚えているほどの存在だ。
役者という肩掛けを持った芸能関係者のあの男が知らない筈がない。
引っ掛かる...考えれば考えるほど引っ掛かる。
鏑木が持っているアイの情報にヒントがあるかも知れないと思えば更に問い詰めた。
「星野アクアにどのような情報を話すつもりですか?」
再び単刀直入な質問...だが、それに対して鏑木はゆっくり首を横に振るようにして回答を拒否した。
「すまないが...ここから先は話せないんだ。
芸能界にも色々と裏事情があってね。
黒川あかねの炎上を見てキミも察しがついたと思うけど、この世界は表は綺羅びやかなように見えていてもとてつもなく闇が深い。
僕の勘が正しければ、彼に話そうと思ってる情報はその闇の部分の入り口になり得ない...もっと掘り下げたら色々と危ないものが出てくることも考えられるようなものだ」
何故そんな情報を欲しがる...?
普通のファンなら寧ろ、避けたがるような情報。
答えが分からないが...疑念は深まるばかりだ。
その中でも答えを探そうと色々と思考を巡らせる中、鏑木はイカと日本酒を頼む。それに合わせるようにハジメもエンガワを頼むと届いた日本酒を静かに飲み始めた鏑木が「それにしても...」と話しを切り替えるように語り始めた。
「キミにはスゴい才能を感じるよ。
キミの出演を推していた井出CEOが言っていた言葉の意味が今なら分かる...」
「前のジムカーナを見て...ですか?
あれ、紛れですよ...練習じゃあそこまで上手くは」
そう答えてから大将に握られたエンガワを食べ始めるハジメ。そんな彼に対して鏑木はフッと静かに笑い、再び日本酒に手をつけてから語り始めた。
「僕...今ではこんな仕事をしてるけど、若い頃はジャンルに問わられない有力な若手をピックアップして取材するという番組を担当していてね。
芸能だけでなくスポーツ、歌唱、ダンス...将棋や囲碁なんかもあったかな。
その当時にピックアップした者の大半は無名のまま終わったが、中には一流にまで上り詰めた者も少なからずいてね...
精鋭の中でも本当に一握りとも言えるような人間だったが、キミとの共通点が2つあるんだ」
「共通点...?それって」
「一つ目は僕みたいな全く無知な人間でも一目でスゴいと言えるような技量を持っていること。
そして、もう一つに関しては...キミはズバ抜けて優れてる」
「そのもう一つ...とは?」
ハジメが問いかけている間に日本酒を再び口にする鏑木。彼は一口、二口を飲んでから若干酔に身を委ねるようにして答えた。
「...ここぞという本番に"異様な"ほど強いこと。
一般的に本番に強いと言われるような人間は練習で一番よく出来た時の80パーセント以上のパフォーマンスを出せる人間のことを指し示す。だが、この前の君はそんなレベルじゃなかった。
ただでさえ練習の時に上手いと感じたパフォーマンスが素人目で見ても違いがハッキリと分かるほどのハイパフォーマンスになっていた...
あくまで素人目線の見立てだけど、あれは120パーセントは出てたんじゃないのかな。
誤差程度で105...大目に見積もって110パーセントぐらいのパフォーマンスを見せる人間は何人か見てきたけど、君ほどの人間はいなかった」
「そう、ですか?単に紛れだと思いますが...」
そう答えつつもタイを注文するハジメ。しかし、そんな彼に対して鏑木は「いや...」と即答で否定してはお猪口に追加の日本酒を注いでは水面を見つめるようにしながらもこう答えた。
「キミ自身は分かっていないみたいだし、僕自身もあくまで憶測的な答えになってしまうが...
キミの中で何かしらのトリガーみたいなものがあるのかもしれない」
「トリガー?」
「ああ、あくまで憶測だからそれがあるのかどうかも分からないが...井出CEOが君を推した理由が今ならよく分かる。
キミの将来を見据えて何かしらの投資をしたいところだけれども...生憎、僕が今抱えてる番組でそれが出来るところが無くてね。機会があれば投資させて貰うよ」
・
―今ガチ撮影日 家庭科室
鏑木に特別に見せて番組方針資料から今までよりも積極的に動こうと乗り出すハジメ。
デートマッチやディベートマッチの前にアクアとの差をつけようとあかねをこの場所に呼び出してはある行動に乗り出した...それは彼が得意としているパンづくりだ。
二人ともボウルを用意して生地を作ろうとヘラで混ぜ合わせているが、あかねの方は恐る恐ると言った様子を見せている。
「パン作るの初めてだけど...生地はこんな感じでいいかな?」
「そうそう、そんな感じ。そんな感じ。
やっぱ料理出来るだけあって飲み込み早いな」
そう言いながらも混ぜ合わせていると二人とも生地の丸い形が出来上がり、ボウルから生地を出して台に乗せる...ここからは生地をこねる作業だ。
ハジメが「見本見せるから見てて」と言って先に生地をこね始める...慣れた手つきで手のひらで生地を伸ばし、圧力をかけてはパンッと叩き、余分な水分を蒸発させて水分調整。何度か繰り返すようにして見せてから生地から離れて「やってみて」と促すとあかねも「うん」と頷いてから生地をこね始めた。
思ったよりも力を使う作業...
ハンバーグをこねるのともまた違う動きに少しぎこちない上、本人も如何にも苦戦しているような表情だ。
「大丈夫?」
「う、うん...」
確認するように聞かれて小さく頷いて答えるあかね。しかし、ハジメは仕方ないと彼女の横に立つようにしては手を伸ばして一緒に同じ生地をこね始めた。
「ほら、こんな感じで....」
親切心で吸い込まれるように一緒にこねていたが、ふと顔を横に向けた時に彼女との距離感の近さに気付く...恐らく顔と顔の距離は50cmも無いほど。思考回路が追い付かず、思わず「あっ」と小さく声を上げて固まってしまう。
彼女も小さな声に気づいて頭上に?を浮かべながらも顔を横に向けると距離感の近さに硬直...互いに徐々に顔を赤らめるとバッ!と顔を背けて離れた。
しばらく沈黙が続く...
掛け時計のチクタクという音だけが鳴り響く中、先に沈黙を破ったのはあかねの方だ。若干モジモジと身体を動かしながらも恐る恐る提案するようにハジメに話しかけた。
「あ、えっと...間に合わなくなるから早くした方が...」
「そ、そそ、そうだよな!よし、続き続き...!!」
そこからこね終えると発酵や成形等の工程を進めてオーブンに入れて焼き上げ。焼き上がったパンを教室にまで運んで出演者たちに配る。
ノブユキの一口食べてからの「うまっ...!?」という言葉を合図に食べた出演者達が絶賛の声を次々に上げ始めた。
「えーっ!ジョーダン抜きでお店の味!」
「この味は...!作ってるところ動画にあげたらバズりそうな味!!」
「まさか、こんな特技があるとはな...」
先行で食べた四人とは別にまだ食べていない有馬かなとアクア。かなに関しては「私の分は?」と聞かないばかりの表情で配っていたハジメに近づくと彼も気づいて顔を向けた。
「どうした?」
「いや、どうしたって...私の分は?」
「あー、フ◯パンのネオバ◯ーロール用意したから自分で焼いて食べなよ」
「あれ美味しいけど、なんで私だけ既製品なのよぉぉッ!?」
「ジョーダン、ジョーダン。ほら、やるよ」
そう言ってパンを餌付けするように渡すハジメ。
かなはハムッと口を開けて食べると「うみゃあぁぁ!ナニコレェェ..!?」とややオーバー気味なリアクションを披露してきた...
食べた出演者たちの反応を離れた位置で見ていたあかねも小さく笑みを浮かべる中、ハジメは最後の一人にパンを配った。星野アクアだ。
「ほら、食べなよ。アンタの分もある」
そう言ってアクアにパンを渡すハジメ...
表情的には至って普通だが、無言の圧を掛けていた。
"持てるもの全てを使ってお前を潰す"という圧だ。
勿論、察しがいいアクアがそれに気づかないわけがない...同時に今まで感じたことのない若干の焦りのようなものを感じていた。ドライビング以外にもこういう特技があるというのは全くの想定外だったからだ。
「(まさか、こんなカードを持っていたとは...想定外だ)」
内心危機感を感じ始めてる中、ハジメは出演者達の輪の中心まで移動して談笑を始めていた。
本当に文字通り番組の中心を担う存在になってきてる...外堀を埋めるように他の出演者の心も掴んでいる。
これは正攻法だけで戦うのは分が悪いかもしれない。
「(国内情勢はまだ俺の方が良いが、ひっくり返るような最悪のケースも考えてプランを練らなければ...
俺には黒川あかねが必要だ。
アイを殺した犯人...俺の実の父親を殺すために)」
・
―撮影終了後
ブレザーから私服に着替えては校舎から出ていくハジメ。
夕焼け色の空の下、彼の頭の中に浮かんだのはこの前の鏑木の話だ...星野アクアは12年前に殺害されたアイの情報欲しさに番組に出演したというもの。
無頓着だった彼が急に黒川あかねを欲し始めた理由はなんだろうか?あかねが何かしらの自身がアイとの接点があるのか、あるいは何かしらのスキルを持ち合わせているのか...
ハジメの中で思考回路を巡らせていくとふと視界に入ってきた一人の人物...あかね本人だ。
この際だから本人に探りをいれるのもありかもしれない。
そう思った彼は軽く駆け寄るようにしてから「あかね」と声を掛けて見る...彼女が振り向きながらも足を止め、「どうしたの?」と聞いてきたところで単刀直入に問いかけた。
「あかねは...何か特技とかあったりする?」
「特技...?んー、お料理とか」
料理...確かに食べたとき凄く美味しかったと心の中で過去の回想に浸るハジメ。しかし、アクアに食べさせてるところ見たことない上、料理だけであそこまで動くとは考えにくい。
...が、ふとハジメの脳裏にこんなことが浮かんだ。
アクアがあかねを狙い始めたのはいつだろうか?という疑問だ。思えば、あかねが炎上後に彼に対して理想の女性を演じ始めてからではないか。
そう考えると質問の内容を変えることにした。
「あかね、アクアの前に見せてたあの演技みたいなのだけど...」
「えっと...B小町のアイの演技、のことかな?」
本人からの言葉であれがアイの演技だったと初めて知るハジメ。若干衝撃を受けつつもそこから更に掘り下げるように問いかけた。
「その実在する人物を演じるにあたって、なんかすることとかってある?心掛けてることとかでも何でもいい」
ハジメの言葉に「うーん...」とどう答えようか悩むあかね。少し間を開けて答えが纏まると彼女は驚きの回答をしてきた。
「アイみたいな実在してた人物だと色々な情報を探ることから始まるかな?インタビューの記録から写真や動画の一部から歩き方や癖、箸の使い方とか...足りない部分は自分の想像で補って、パズルのピースを埋め合わせるようなイメージでどんどんカタチにしていく感じかな...」
あかねの答えに衝撃を受けるハジメ。
もしかすれば...アクアが彼女を欲する理由はここにあるのではないか?
そう思うともう少し深掘りするような質問をすることにした。
「あかねはアイのことを調べた時...どこまで深く知ることが出来た?」
「んー、色々あるよ。
"どういう生き方をしてきたのか"ということとか、"どういう男が好きなのか"とか...
あと、"アイに隠し子が居たんじゃないか"ってところまで」
「えっと、それ...アクアは知ってる?」
「うん、前に聞かれたから答えたよ」
間違いない、星野アクアが黒川あかねを狙う理由はこれだ。
彼女のこのスキルを利用しようとしている...コレを使って何をしようとしているのだろうか?
内心そう思っていたが、あかねの推理力がどれほどのものかというのも気になったハジメ。思わず半信半疑と言った表情を浮かべているとあかねの方からある提案をしてきた。
「よかったら、次の撮影までの間にハジメくんのことも調べてみよっか?一日だとあまり深く調べられないけど、次の撮影までならもっと知れることもあると思うよ」
そう言われるとどれほどの実力なのかと興味本位で気になる半面、自分の情報を丸裸に見抜かれてしまいそうだと恥ずかしさもあるハジメ。だが、この場は興味本位な部分が買ってしまった。
「じゃ、じゃあ...お願いしようかな」
「わかった。じゃあ、次の撮影までハジメくんのこと調べさせてもらうね」