―翌日
アクアデート日
今ガチでの新企画、デートマッチが開幕。
黒川あかねを巡る戦いの先攻はアクアからスタート...
午後2時、原宿の隠れ家カフェで待ち合わせ。
窓際の席でコーヒーを飲みながらも待つアクア...撮影スタッフが少し離れた後方でカメラやマイクを構え、静かに待っていると程なくしてあかねが到着。
「お待たせっ、待った?」
「...いや、待ってない」
アイの振る舞いで現れた彼女に対して冷静な口調で対応するアクア。静かにカップを置いてそう答えながらも対面に座る彼女に目を向けると会話の話題を作ろうと早速話しかけた。
「最近忙しいって聞くけど、どう?」
「んー、そうだねー。新しい舞台のお仕事も入っちゃったから...アクアの方は?」
「まあまあ...ってところか」
正直、自らの仕事に関してはどうでもいいと思っていたアクア。あえて少し考えるような素振りを見せるもざっくばらんな回答をしつつもスマホで時間を確認...アクアにとっては交通の便なども考慮すればあと30分ほどしたら移動時間だ。その後も互いにコーヒーを飲んだりして軽い雑談をし、時間が来たところで店を後にして移動開始...
だが、思っていたよりも早い移動に後ろにいた撮影隊もちょっと困惑気味だ。あたふたとして手間取りつつもカメラとマイクを回す...
午後4時...次に二人が訪れたのは美術館だ。
出来るだけ離れた位置からカメラとマイクを回し、二人きりということをなるべく意識させるような構図にしようとする。が、思ったよりも二人の動きが早くいいアングルで撮影出来ない...背中ばかりのアングルで時々横顔を入れるのが精一杯な様子だ。
「―あー、くそ...!打ち合わせをあまり詰めなかった弊害がここに来るとはな...!!」
仕方ないと美術館内に置いていた固定カメラと併用してなんとかやり過ごす。なんとか会話の内容もしっかり取れた...編集次第で誤魔化せそうだ。
「この絵、どう思う?」
「んー、筆のタッチの感じとかで力強さを感じるかな。
でも、どこか繊細さも感じるような...アクアはどう思う?」
会話の内容としてはそんな感じだ。まあ、構図のアングルでなんとか大丈夫そうだ。編集でなんとかしようと裏方で話し合いをしていると、二人が美術館を出て再び移動を開始...また予定よりも動きが早い。
続いて二人が訪れたのは静かな公園。
二人で軽い会話のキャッチボールをしつつも歩いている様子を撮影班が離れた位置で木陰に隠れるようにして撮影...なかなか順調だ。しかし、思っていたスケジュールとは違う動きを見せ始めた...ベンチに座ったのだ。
「―...カメラは大丈夫だが、マイクを入れづらいな。二人についてるピンマイクに任せるか」
そう裏方で会話しつつも再び撮影に集中...すると、アクアの方が手を軽く組むようにしてやや前傾姿勢で語り始めた。
「昔...物凄い怖い思いをしたんだ。
たまにその時の記憶がふと蘇って、夢に出ることがあるんだ」
「そうなんだ、ツラい思いをしたんだね...でも、大丈夫だよ。アクア、今日は私がついてるから!」
そのまま会話を交わし続けると日も暮れ始め、「そろそろ行こう」とアクアの方から提案して動き始める...
公園の照明では二人の顔も映しづらいと苦戦するも、なんとか遠距離から撮影を続けるスタッフ達。
そして、アクアとあかねが次に訪れたのは夜景が綺麗なレストラン...店内の照明が暗めないい雰囲気のレストランだ。
だが、接近しないと画角的にも上手く撮りづらい...仕方ないと事前に置いてあった固定カメラ3台でなんとかやり過ごすことに。なるべく雰囲気を壊さないように遠距離から撮っていたスタッフ達にとっては踏んだり蹴ったりな一日だ。
「―遠くからだとこれが限界だな...
ま、編集次第でなんとかなるレベルには撮れたからこれでヨシとしよう」
軽い会話を挟みながらもオシャレなコース料理に舌鼓する二人...そして、午後8時。
デート終了...近くのタクシー乗り場まで見送ろうと二人で歩く。
「じゃあ、気を付けて。また連絡する」
「うん、ありがとね!今日は楽しかったよ、アクア!」
そう言いながらも目の前で停まったタクシーの後部座席に乗り込むあかね。乗り込んでから静かに走り去っていく車影をアクアは軽く手を振って見送ってから自らの帰路を歩き始めた。
・
―1週間後、編集室
現場から届いてきた素材にやや苛立ちを感じていた先輩編集。いつもよりも眉間にシワを寄せて険しい表情を浮かべながらも編集に取り掛かる...時折、頭を搔くようにしてPCと向き合っているとハァーと大きなため息をついた。
「(なんだよ、このゴミみたいな素材の数々は?
思い切り編集に丸投げしようって魂胆見え見えだぞ)」
カチカチと作業に取り掛かる彼..傍から見ても苛立っていると分かるような様子の彼に気付くように一人の男が近づいてきた。プロデューサーの鏑木だ。
「おや、イライラしてるみたいだね。何かあったのかな?」
「何かあったじゃないですよ、なんですかこれ?編集に丸投げもいいところでしょ」
「まあ、冷静に考えてみなさい。今回、新企画で現場も慣れてない。その上、ある程度のスケジュールが組まれてるとは言え動き自体は演者二人任せだ」
「とは言っても、星野アクアも黒川あかねも役者ですよ?もっとカメラ配置意識するんじゃ...」
「役者とは言え、離れた位置から自分達を撮ってるカメラにまで気を配るとなるとかなり難しい。それも、撮影が長時間になると尚更だ」
そう答えている間に先輩編集とは逆にカタカタ!とピアノの鍵盤を弾くように隣で黙々と作業を進める新人。どこか表情もにこやかな気がする彼を見た鏑木は口角を少し上げるように小さな笑みを浮かべながらも先輩にこう告げた。
「新人くんは素材にご不満はないみたいだよ?
現場にいたスタッフは似たような人材なのにこの差とは...キミら二人の違いはどこにあるだろうね」
そう言っては自分のデスクに戻ろうと歩き始める鏑木...彼の言葉に気づいた先輩が新人の方の仕事を覗き見する。
やはり違う、編集自体を楽しんでいるようにも見える。
何故だ、何故....?
もし負ければ、次シーズンでは自分の仕事を取られてしまう。
苛立ちと焦りが募り始める先輩編集...
しかし、ある事実がそんな彼の気持ちを落ち着かせた。
それは国内の情勢だ。
「(国内ではアクアとあかねのカップリングの支持率高い...
そう簡単には覆らないだろう。俺は仕事をやればそれで勝てる、ヘマしなければ勝てるんだ)」
そう内心思いながらも自分の編集を進めようと再びPCと向き合う先輩編集。新人の方は彼が見てきたことも気にせず、PCと向き合って自分の仕事にひたすらのめり込んでいた。
まるでピアニストのようにノリに乗った彼の仕事ぶり...自分のデスクから軽く見ていた鏑木は思わずフッと小さく笑った。
・
―三日前
ハジメデート日
オープニングは二人のメッセージアプリでのやり取りからスタート、出発前日にハジメはあかねに向けてこんなメッセージを送っていた。
"明日、8時30分に箱根湯本駅集合!
動きやすい格好で着替え何着か持って来て!"
アクアの指定した時間よりもかなり早い時間の指定...
言われた通り地味な色合いの動きやすい格好で電車乗り込み、しばらく揺られていると予定時間よりも若干早く箱根湯本駅に到着。
駅前ロータリーまで歩を進めて辺りを見回していると程なくして一台の白い車がやってきた...ハジメのNSXだ。
近くまで寄せるようにして停まると運転席から彼が降りてくると「おはよう」と早速挨拶を互いに交わした。
「よーし、じゃあ...行こうか」
助手席側のドアを開けるようにしてあかねを中に乗せると、再び運転席に乗り込んでシートベルト締めるハジメ。そこからオーディオを触るような素振りを見せる彼に疑問を抱いたあかねがシートベルトを締めながらも小さく首を傾げると単刀直入に問いかけた。
「ハジメくん、今日はどこにいくの?
やっぱり、箱根だから...温泉、とか?」
恐る恐ると言った様子の問いかけ方に小さく笑みを浮かべるハジメ。オーディオの再生ボタンを押す前に彼女の方に目を向けてはこう答えた。
「温泉も行くけど、それだけじゃない。
まあ、強いて一括りにして言うなら..."冒険"」
そう言っては再生ボタンを押すハジメ。それと共に流れる二重奏のチェロバンドがカバーした"Wake me up"が流れ始めた。軽快なステップを踏むような弦楽器の音色に合わせるように発車させる...撮影隊の車が後続に続き、白い車影をしっかりと捉えると共に映像がより臨場感や迫力があるような映画風の画風に変わる...
二人が一番最初に到着したのは箱根神社。
軽く本日のウォームアップにと芦ノ湖の湖畔に浮かぶ鳥居まで軽く歩く。到着して間もなくして鳥居をバックにあかねの写真をパシャリと撮影...すると、案の定あかねの方も一人じゃ寂しいとハジメの手を引いて一緒に撮ろうと試みてきた。
「ハジメくん、やっぱり一緒に入らないと」
「い、いいって、俺は...!ここ地元だし...!!」
そう言っている間に離れた場所にいる撮影隊ではなく、通りすがりの観光客の男性に目をつけたあかね。早速話しかけ、スマホを渡してからのツーショットでの撮影...二人で「ありがとうございました」と頭を下げては鳥居から離れる。そこからお参りを済ませたから二人でお守りを買ったり、おみくじを引いたりして楽しんでからその場を後にする。
二人が次に挑戦したのは芦ノ湖での二人乗りカヤックだ。
ライフジャケットなどを着用していざ挑戦...
ここはドローンが空から二人を追うような映像とカヤックとヘルメットに取り付けられたアクションカメラが間近な映像をお届け。
息が合ってないとなかなか難しい二人乗りカヤック、慣れないウチに転覆して水浸しになった二人。しかし、なんだかんだ「ハハハ!」と笑い合って楽しそうにしながらもチャレンジ続けると芦ノ湖から見える富士山の景色が...
なかなか見ることのない湖上からの富士山に心が洗われるような感覚に見舞われ、思わずうっとりと見惚れてしまった。
カヤックを終えるとランチだ、地元の定食屋でワカサギ料理を堪能。向き合うような形でお互いに「おいしい」と言いながらも食べ進めるとあかねがこんなことを呟いた。
「こんなに小さいのにスゴい存在感...私もこんな女優になりたいな」
「なれるよ、あかねなら。というか、もっと実力派のビックになると思う」
そんな感じの会話を交わし、次は箱根ターンパイクへドライブへ...法定速度で優雅に走る白い車影を再びドローンが様々な角度で追尾。更に車内に設置していたカメラが二人が談笑している姿を押さえる...車内ではこんな会話が繰り広げられていた。
「この車、前よりも静かになった...?あと乗り心地も良くなった気がする」
「き、気の所為じゃない?ほら、勾配きつくなってきたしもうちょっと行くぞ」
そう言ってアクセルをググッ...と踏み込んで行くハジメ。
コーナーのRに合わせるようにスッ...とステアリングを切る。そして、しばらく走らせていくと次の目的地であるスカイラウンジに到着。
2階のカフェテリアに足を運ぶと、先ほどカヤックをしていた芦ノ湖と富士山が一望できる絶景が...休憩と言わないばかりにのんびりと景色を眺めてコーヒーを飲み、去る前に併設されていたブランコに乗り込みぶらーん!と足を伸ばして童心に返える二人。
しかし、この後のスケジュールは更に童心に返ることになる。
次に二人が体験したのはアスレチック体験施設だ。
箱根の大自然の中でジップラインなどの体験が出来る施設で、子供向けの難易度から大人向けの難易度のものまである誰でも身体を動かして楽しめる施設だ。
もちろん、二人が挑んだのは大人向けの難易度のものだ。
「舞台の吊りワイヤーより怖いかも!!」
と叫びながらもあかねがジップラインに挑み、続けてハジメも挑んでいく。着地時にバランスを崩しかけるも「っと」となんとか堪えて次のステップへ...傾斜をロッククライミングのように登りきって頂上に到着するとゴールといった状況であかねがこんな提案をしてきた。
「ねえ、ハジメくん。どっちが先に到着するか勝負してみない?」
「えー、俺車以外のレース苦手なんだけど...」
そう苦笑いしながらも競争スタート。
最初はあかねが快調に飛ばしていく...役者魂という奴だろうか?にしても、大丈夫?
などと思いながらも進んでいくと案の定なことが起きた。
あかねが「キャッ」と足を踏み外して落ちてきたのだ。
ロープが繋がれているため落ちても大丈夫だが、ハジメの身体が反射的に動いて落下する彼女の手を掴んだ。
「...ほら、行くぞ。自分のペースでいい。
大丈夫、ゴールは逃げていかないから」
自然とポロッと出てしまった言葉だが、あかねが「あ、ありがとう」と言いながらも復帰した時に思い返してカッコつけてる風に見えたかな?と顔を真っ赤にする彼を見てあかねは再び疑問を抱いた。
「どうしたの...?顔赤いよ。お熱でもある?」
「き、気の所為!ほら、上った上った!!」
そう言って再び上り始め、二人でゴールに到達。
記念写真を撮って次のエリアへと移動...
いよいよ冒険も終盤だ。
ここまで蓄積された疲労を癒そうと日帰り温泉でゆったり、のんびりと過ごす...湯上がりで二人でコーヒー牛乳片手にプアハァと飲んでからディナーに移行..駅前の鉄板料理の店だ。筋肉の疲労回復のためか、赤身肉が多めのコース料理を堪能すると気付けば外はすっかり暗くなっていた。
「どうだった、今日の旅路は?」
「うん、楽しかったよ。ちょっと疲れちゃったけど」
「不安なら家に帰ったらセルフマッサージもしてみるといい。やるかやらないかで翌日の疲労の引っ張り方変わってくるからな」
そう言っている間に帰りの電車到着まであと5分のところになった。やや寂しそうにする彼女に対し、ハジメは小さく笑みを浮かべながらもこう伝えた。
「また次の撮影で会おう。二人で振り返りがてら思い出話にでも浸って...」
「そう、だね。じゃあ...また次の収録日に」
「ああ、またな」
そう言って荷物を手に駅の改札へと歩き始めるあかね。彼女の後ろ姿が見えなくなるところまで見送ってから、ハジメはNSXに乗り込んで自らの帰路を走り始めた。
・
―数日後 チューニングショップスパイラル
デートマッチ回での放送後の視聴会は祝勝ムードが漂っていた。先攻のアクアと後攻のハジメで真逆のデートプランだったが編集の見せ方で大差がついたのだ。
如何にもテンプレートな形のアクア側の編集に対し、まるで旅番組のような冒険心を燻るような構成のハジメ側の編集。
事前の念入りな打ち合わせが功を奏したようだ。
当初3:7と劣勢だった国内も情勢が6:4までひっくり返ったのだ。
「すごいな...逆転したぞ」
視聴後にスマホで最新情報を確認した奥山がポツリと呟く中、真奈美もスマホを確認してエゴサ開始...ハジあかのタグがいつもより多く投稿されていた。
·冒険心を燻るアクティブデート!
こっちの方が自然な笑顔が多い!!
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@aika02lot
·胸キュンシーン多すぎ!
キュンキュンすぎて寿命縮んだかもっ!
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@mikachiki3246
·思わず踊りだしたくなる映像...
俺でなくても見逃さないだろうね
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@hunt__02er
·でも、あのプランだと女の子は疲れちゃうんじゃない?
アクあかの静かなエモさの方がいい
#今ガチ #アクあか #アクあかしか勝たん
@kiicha__243
·あれで疲れるとかって心配あるけどさ...
言ってる奴ら舞台役者の体力ナメすぎだろwww
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@etoron__03
·ターンパイクにスープラ停まってた!
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@JDM__S__121315
·Is that a Supra?!
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@strikeigod06
·EEEEEEEHE!!SUPRAAAAAAA!!!
#今ガチ #ハジあか #ハジあかしか勝たん
@Goddess540
「いやー、コレはもう勝ち確だねー。ハジメくん」
ニヒヒ...と笑みを浮かべながらも肘でグイグイとハジメの腕を押す真奈美。そうこうしている間に「にしても...」と奥山が振り返るように語り始めた。
「あかねちゃんにバレてたな、音が静かになったのも乗り心地が良くなったのも」
「え、あれ気の所為じゃなかったんですか?」
奥山の言葉に食らいつく真奈美。
静止しようと「ちょっと、待...!」とハジメが介入しようとするも彼は気にせずそのまま語り始めた。
「撮影の1週間前にECVの導入と足回りの調整をしたんだ」
「ECVって、確かエキゾーストの間にバルブを入れて音静かにするやつですよね?ハジメくんに世界一似合わないパーツだと思ってましたが、まさかあかねちゃんの為に入れるとは...これはもう相当ゾッコ」
一方的に語る真奈美の額に勢いよくデコピンをかますハジメ。「ひでぶっ!?」と叫びながら倒れた彼女に気にすることなくため息をつきそうな表情を浮かべたハジメはそのまま奥山に目を向けつつも釘を差した。
「奥山さん、あまりベラベラ喋らないで下さい...
俺、もうこの鑑賞会来ませんよ?」
「あー、すまないな。
ただ、本気になって取り込んでるお前はカッコいい。これからも胸張って挑み続けるといい」
・
―同時刻 イチゴプロ事務所
スパイラルとは違い、いつになく敗戦ムードが漂うアクア陣営。アクアも今日になって編集されたものを初めて視聴したが、編集の内容から素材が良くなかったというのは五反田監督の下で修行してきた彼の目から見ても察することが出来た。
「(マズいな...想定外だ。
現場の撮影班と俺の動きの波長がここまで合ってなかったとは)」
ソファーに座りながらも深刻な表情でスマホを手に取り、最新情報を確認するも逆転されて劣勢になったという事実は変わらない。考え込むように空いた片手で軽く自らの顎を持つようにしていると「おにーちゃん!」と誰かが話しかけてきた。彼の妹のルビーだ。
「このままだと、あかねお姉ちゃん取られちゃうよ!
なんとかしないと...!!」
「わかってる、ちょっと一人にしてくれ」
そう言ってソファーから立ち上がって自室まで移動してはパソコンを開くアクア。五十嵐ハジメという人物を記憶で辿り、色々と彼にまつわる検索をかけてみる。
そして、いくつか試してみるウチにあるワードを入れた時にピンと来るものを見つけた。
そのワードは...
"富士スピードウェイ 走行会"
ある大手メーカーが主催する定例走行会の画像を漁ると良いものを見つけた。ちょうどいい、使えそうだ。
内心そう思いながらも保存をして編集アプリを使って編集...
違和感がないようにあえて画像の質を粗くする。
そして、見つけてから程なくしてある画像編集が終わった...
メールを開くと知り合いのツテで知った週刊誌にその画像を添付して送信。
しばらくすると、彼のスマホにある人物から電話が掛かってきた...週刊誌の編集長からだ。
「―画像見たよ、本当にあれ使っていいの?」
「はい、かまいません」
「―分かった。でも、流した相手がキミって世間に知られたらキミの立場も危うくなるかもよ」
「その心配はありません。やってください」
「―はいはい、やっておくよ」
そう言われるとピッと通話を切るアクア。
編集長は彼としてもあまり関わりたくない部類の人物だが、そんな人物に頼ってまですることには彼の強い信念があった。
「(アイを殺した犯人、俺の父親を探すためにも黒川あかねは必ず必要だ...多少汚い真似を使ってでも手に入れて見せる)」
そう改めて決意しながらもスマホをポケットにしまうアクア。パソコンには真奈美とハジメが近い距離感で写ってる編集画像が映されていた。
楽曲
Wake Me Up/2CELLOS