IF 〜もしもあの時〜   作:マグウェル

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第二幕 Buckshot act.Final

 

 

 

―今ガチ最終回 収録前

 

 

学校

 

 

この日はスタジオになっているいつもの学校から各々意中の相手を外に呼び出して撮影を行いという形式で進められる。

 

スタッフがロケ用のハイエースや機材を慌ただしく進める中、アクアはゆっくりとした足取りで彷徨うように歩きながらもあるワードを頭の中で反復させるように過ぎらせていた。

 

その言葉は前に真奈美に会った時、あかねを諦めると公言した時に言われたあの忠告だ。

 

 

 

 

『その言葉、嘘じゃないよね?

もし嘘だったら...アンタの人生無茶苦茶になるまで追い詰めるから』

 

 

 

 

無茶苦茶になるまで追い詰める、か....

その言葉と共に過去の出来事が脳裏に浮かび上がる。

自分の母親であるアイが刺されたあの日の出来事だ...血塗れの玄関で最後の言葉を残してこの世を去った彼女の姿、十年以上経った今でも鮮明に覚えている。

 

それと共に思わず自嘲染みたような笑みを溢すアクア。

 

なにが人生を無茶苦茶に、だ...

 

俺の人生はあの日からもう既に無茶苦茶だ。

 

 

 

そう思っている時に視界に入ってきた二人組...ハジメとあかねだ。軽い談笑をしつつも背中を見せて歩く二人...特にハジメの姿を見て不意にこんなことを思ってしまった。

 

 

 

 

 

「(俺はこんなに惨めなの気持ちなのに、お前は何故そんな幸せそうなんだ...)」

 

 

 

 

 

その思いとともにふと湧き上がってくる負の感情...

衝動の強さから殺意に似た何かすら感じられるそれから握り拳をつくって身体を震わせてしまう。

 

どうせ俺の人生も無茶苦茶なんだし、道連れにお前の人生も無茶苦茶にしてやろうか?

 

 

等と思っている最中、後ろから誰かが近づくようなコツコツという足音が聞こえてきた。振り向くとそこには意外な人物が...有馬かなだ。

 

 

 

 

 

「アンタ...まだ黒川あかね狙ってるの?」

 

 

 

 

 

恐る恐るといった様子の問いかけ方。

かなにしては珍しくしおらしく見える...

 

その問いに対して明確な答えが分からず、両手をポケットに突っ込みながらも軽く俯くようにするアクア。だが、彼女の続けるように発せられた言葉に彼の心は揺れ動いた。

 

 

 

 

「アイツもアンタも黒川あかね、黒川あかねって...

 

アタシのことを見てくれる人は居なくなったのかしら」

 

 

 

 

その一言だけ告げて去っていくかな...

気付かされたように彼女に目を向けようとすると既に行き交うスタッフたちの向こう側へと行ってしまった。今更追ったところで追いつかない。そんな中で視界に入ってきたのはディレクターの姿、現場内での指示出しを終えて一息つきたそうにしている彼にアクアは「すいません」と話しかけた。

 

 

 

 

「進行予定って...今から変えられますか?」

 

 

 

 

 

「急にどうした?」

 

 

 

 

 

「いえ...現場を困らせるようであれば無理にとは言いません」

 

 

 

 

 

冷静に考えてここでの変更はスタッフだけでない、他の演者にも迷惑が掛かる可能性もある...大人しく引き下がろうとそう告げてその場を去ろうとするアクアの背中を見たディレクターは少し間を空けるようにしては「待て」と呼び止めた。

 

 

 

 

「言うだけ言ってみろ、出来るかどうか考えてやる」

 

 

 

 

帽子を深々と被るように直しながらもそう告げてきたディレクターにアクアは思わず苦笑いの笑みを浮かべる。

 

思えば、この男はあかねが炎上するように差し向けた男だ。

 

そんな男に同情されるとは....いや、そもそもこの男の思考が変わった可能性もある。

 

変わったのなら何処で変わったのだろうか?

 

内心そんな疑問がふと浮かび上がると遠回しにこんな質問を投げ掛けた。

 

 

 

 

「最近、なんか変わったことでもありました?」

 

 

 

 

「いや、特にないさ。

ただ...ちょっと感化されたっていうか、なんていうか」

 

 

 

 

帽子を直した彼の視線の先にはハイエースに機材を詰め込むスタッフの方に目を向けるハジメとあかねの姿が...

 

何処か遠くの存在を見据えるような目で見ながらも軽く腕を組むようにするとアクアに対して「なあ」とこう話し始めた。

 

 

 

 

 

「あの二人、あと10年もしたら化けるぞ...かなり」

 

 

 

 

 

「10年ですか...その時には自分も26です」

 

 

 

 

「26?まだまだ若いな。俺の今の歳よりも全然下だ」

 

 

 

 

 

フッと鼻で小さく笑ってから視線をアクアの方に戻すディレクター。そのまま話を元に戻そうと組んでいた腕を直しつつもこう問いかけた。

 

 

 

 

「それで進行のどの部分を変えたいんだ?

予定に組める範囲なら...組んでやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

              ・

 

 

 

 

 

 

 

 

―数時間後 夜

 

横浜 ベリッシモ所有の港

 

 

 

最終回にハジメが選んだのはあかねを奪うという決意を全員に知らしめた、あのジムカーナを見せたこの場所だ。

 

辺りは日も沈んですっかり沈黙が支配している...

 

耳を澄まして聞こえてくる波音。そして、静かに優しく包み込むように吹いてくる潮風の風切り音。

 

 

街灯の照らされた所々にはジムカーナをやった爪痕とも言えるタイヤ痕がまだ残っていた。

 

 

そして、ハジメとあかねがいるのはあの時に観客席ともなっていたクルーザーが寄せて停泊していた箇所だ。

 

彼の愛車の白いNSXを背にしながらも二人横並びで思い出話に浸った。

 

 

 

 

 

「ハジメくん、どうだった?ここでの撮影」

 

 

 

 

 

「楽しかった。"久々に"学生気分が味わえて」

 

 

 

 

 

「そっか、もう3年前には卒業してるものね」

 

 

 

 

 

「ああ。それに、俺の学生時代って振り返ってみるとそれほど満喫してるって感じでもなくてさ...」

 

 

 

 

 

「え、イジメられてた...とか?」

 

 

 

 

 

「いや、そうじゃなくてさ。必要出席日数分だけ出てあとはチームでの練習が多かったなぁって...だから、学生生活っていうのが無くてほとんど車漬けって言っても過言じゃなかった。まあ、それはそれでオレは充実してるって思ってるけど...けど、この撮影では俺の学生時代に味わえなかったものを味わえた気がしてさ。新鮮で楽しかった」

 

 

 

 

 

そう言いながらも頭の中で今までの撮影を振り返るハジメ...

余韻に浸るように少し間を空けるとチラリとあかねの方に目を向けながらも単刀直入に問いかけた。

 

 

 

 

 

「あかねの方は...どうだった?」

 

 

 

 

 

「えっ...私は辛いこともあったけど、みんなのおかげで立ち直ることができた。新しい自分を見つけることが出来た...だから、すごい感謝してる」

 

 

 

 

 

小さく微笑みながらも回想に浸るように答えるあかね。

その余韻に浸るのも終えて軽く見つめ合うようにしてはハジメの方からその話に繋げるようにしてこう語り始めた。

 

 

 

 

「あかね、俺はここで最高のパートナーを見つけた。

一緒に並んでゴールラインまで走って欲しいって思うパートナーだ。

 

あかねの方は...そんなパートナーを見つけれた?」

 

 

 

 

「うん、見つけたよ...私なりに」

 

 

 

 

 

そう言って手をそっと差し伸ばしてくるあかね...応えるようにハジメも手を伸ばして繋いだ時、時が止まっているような感覚に陥った。

 

それと共に心臓の鼓動が高鳴っていくのを感じる...日常生活では感じたことのない感覚だ。

 

この感覚に呑まれないように精神を安定させようと瞳を軽く閉じながらもスゥー...と小さく息を吸う。

 

そして、決意を固めると共にゆっくりと瞳を開けると真っ直ぐとした眼差しでこう告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒川あかねさん、俺と付き合って下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の告白と共に潮風がザッと強めに吹き荒れる...

あかねの青みを帯びた綺麗な髪がユラユラと靡き、それを整えるように彼女が片手で軽く押さえる。

 

ほんの一瞬...だが、一瞬だと感じさせないほど異様に長い時間を過ごしているような感覚だ。

 

そして、そんな感覚の中であかねは小さく微笑みながらもハジメを見つめるとこう答えた。

 

 

 

 

 

「...はい。不束者ですがよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

その返事を聞いて微笑み返すハジメ...そっと抱き寄せては誓いの口付けを交わす。

 

 

柔らかい、温もりを感じる...

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

欲を言えばいつまでも楽しみたかったが、そうもしていられない。番組の尺の都合もある。

 

 

名残惜しそうにしながらも互いに一旦離れる。

そこから少し間を空けるようにしてハジメが再び笑みを浮かべながらそっとあかねの頭を撫でるようにし、顔を軽く覗き込むようにしてこう促した。

 

 

 

 

 

「....行こっか」

 

 

 

 

 

「行くって....どこに?」

 

 

 

 

 

「さあな、二人で気長に一緒に決めよう」

 

 

 

 

 

そう言ってはNSXの助手席側のドアをバッと開けて乗るように促し、彼女が乗り込んだ所で閉めてから運転席に乗り込む。

 

キーを差し込み、セルを回してエンジン始動。

ヴァゥンッ!と始動音が響き渡る...

 

いつになく透き通って聴こえるサウンド感に胸を弾ませながらもリトラクタブル型ヘッドライトをウィーンと開けて前方を照らす。

 

 

そこから程なくして出入り口に向けて走り始めるNSX。

 

 

カメラの照明や街灯の明かりが届く範囲を抜け、横長のテールランプぐらいしかまともに見えなくなった所で映像はフェードアウト。

 

それと共に表示されるカップル成立テロップ。

 

 

これと共に番組は終了...

 

 

一時は嵐のように世界を巻き込みかけた今ガチのシーズンは静かな幕引きを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

               ・

 

 

 

 

 

 

 

 

―数日後 番組終了後 

 

都内のおしゃれなレストラン

 

 

 

昼はカフェになっているこの場所を貸切り、立ち飲みスタイルで行われた番組打ち上げ。

演者だけでなく、スタッフ、更には一部スポンサーの重鎮らを交えての打ち上げだ。

 

 

 

いつもの制服姿とは違いフォーマル寄りな服装の演者組が円を組んで乾杯をしようとするも、あかねの隣にいるハジメのグラスを見て疑問を抱いたノブユキが乾杯前に一つ単刀直入に投げ掛けた。

 

 

 

 

「ハジメ、酒飲まなくていいのか?

もう皆に年齢バレてんだし、呑んでもいいんじゃ...」

 

 

 

 

「まあな。けど、そういう気分じゃないんだ。

今日ぐらいは"まだ"学生で居させてくれ...ちょっとでも青春味あわせてくれ」

 

 

 

 

小さく笑みを浮かべながらもそう答えるハジメに対し、色々と察したのかそれ以上は聞かずに笑みを返すノブユキ。それから間もなくしてMEMちょの方から皆に質問を投げ掛けた。

 

 

 

 

 

「ねえ、こっちのグループは誰が乾杯仕切るのー?」

 

 

 

 

 

「まあ、それはー...あかねかハジメくんじゃない?

今回唯一のカップリング成立だし」

 

 

 

 

 

ゆきの提案で再び全員の注目がハジメの方へと向かう...

隣にいるあかねに振ろうと目をチラリと向けて軽く腕をグイグイと押してヘルプのサインを送るも、彼女は小さく小悪魔染みた笑みを浮かべながらもこう答えた。

 

 

 

 

 

「頑張って、"最年長さん"」

 

 

 

 

 

そう言われると引くにも引けない...

込み上げてくるものを断ち切るようにオホンッと軽く咳払いするも、そこからどう話そうかな?と言わないばかりに天井を仰ぐ姿を見て有馬かなが「あー!もう...!!」と痺れを切らしたように小さく叫んではそこからこう促した。

 

 

 

 

「さっさとしなさい!グラス干乾びちゃうわよ!!」

 

 

 

 

 

「干乾びるわけないだろ、どれだけ掛かるんだよ」

 

 

 

 

 

「例えよ!例え!!そんなのも分からないの!?

ったく、ちょっと前にあんなキレキレな討論してたのに...」

 

 

 

 

 

「それとこれとは違うだろ、それに今キレキレにキレてんのはお前だろ」

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!?なんですって!もういっぺん言いなさい!!」

 

 

 

 

 

激化しそうなトーク...久々に見た光景にケンゴが「まあまあ」と苦笑いしながらも静止するように間に入るとハジメの方に目を向けた。

 

 

 

 

 

「こういうの慣れてなさそうだし、簡潔に乾杯だけでいいんじゃないか?」

 

 

 

 

 

「...確かにな。食事と飲み物が待てない猪女もいるみたいだし」

 

 

 

 

 

「だーれーがー猪女よ!!アンタ、後で覚えてなさい!!」

 

 

 

 

かなのキレっぷりに「はいはい、わかった。わかった」と面倒くさそうに返してから直ぐに「おつかれさまっした、カンパーイ!」とグラスをカンッとぶつけ合って乾杯を交わす今ガチメンバー。

 

 

自分の業種的に他のメンバーと会う機会ももうない可能性もある。その思いからあかねを連れながらも他のメンバーやスタッフと積極的に交流をしていく。

 

出来るだけ多くの人と話したいと5分ほど目安で話しては次へ次へと人を変えていく...が、そんな最中でハジメの目に一人の男の後ろ姿が視界に入ってきた。星野アクアだ。

人と交わりたくないと言わないばかりに窓際で外を眺めながらも一人でグラスに入ったジンジャーエールを飲んでる。

 

 

 

 

 

「...あかね、ちょっと待ってて」

 

 

 

 

 

「え...?あ、うん」

 

 

 

 

 

あかねの肩にそっと手を添えてそう告げるとアクアの方へと歩み寄るハジメ。足音や気配を感じ取ったのか、ゆっくりと振り向く彼は何も言わずに近づいて横に立つハジメに対し「フッ」と小さく鼻で嘲笑っては自嘲染みた笑みを浮かべながらもこう語り始めた。

 

 

 

 

 

「....勝者の余韻か?」

 

 

 

 

 

「余韻もクソもない...あれは単に運が良かっただけ」

 

 

 

 

 

そう言いながらもフゥ...と小さく息をつくハジメ。過去の撮影を振り返るように天井を仰ぐように見ながらもこう語り続けた。

 

 

 

 

 

「実際にあかねと結ばれたのは俺の方だ。けど、完勝ってわけじゃない...過去に一度お前に完敗してるからな」

 

 

 

 

 

「完敗?何の話だ」

 

 

 

 

 

珍しくよく分かっていない様子のアクアに対して苦笑いの表情を浮かべるハジメ...

少し間を空けて何かを決意するようにスゥーと大きく息を吸ってから「いいか、一度しか言わないから耳の穴かっぽじってよく聞けよ」と前置きしてからこう答えた。

 

 

 

 

「....あかねを救ってくれてありがとな。

お前が居なかったら彼女はこの世に居ないかもしれない」

 

 

 

 

それだけ伝えてから背中を向けて離れようとするハジメ。しかし、数歩ほど歩いたところで何かを思い出すように足をとめると「それと...」と付け加えるように最後に一言告げた。

 

 

 

 

 

「有馬かなと上手くやれよ。

最後の告白時に誰にも告白しないって方針に変えたの、アイツの活動に気を遣ってだろ?」

 

 

 

 

 

その言葉に涼しげな顔を装いながらも目を逸らすアクア...

彼の様子にそうなるよなと言わないばかりにクスリと笑うとそのままこう続けて語り始めた。

 

 

 

 

「アンタは役者で俺はレーサー、今後は互いに違う道を歩む。もう会うこともないかもな」

 

 

 

 

「...そうだな」

 

 

 

 

アクアの言葉を聞いてから背中を向けて再び歩を進め始めるハジメ....互いに表情は見えないが、どんな表情をしてるのかは何となく察することが出来る。そんな中で片手を上げてハジメから最後になるであろう挨拶を交わした。

 

 

 

 

 

「じゃあな、精々頑張りな。"クソガキ"」

 

 

 

 

 

再びあかねと合流するハジメ。楽しげに談笑する姿を遠くから見るとアクアは別の方向に向けて歩みを進める...有馬かなの方だ。近づくや否や「なあ、有馬」と冷静な口調で話しかけた。

 

 

 

 

 

「打ち上げが終わったら...一緒に行きたいところがある」

 

 

 

 

 

アクアの言葉に意外そうにキョトンとした表情を浮かべるかな。

 

それぞれがそれぞれの方へと歩みを進め始めた頃...

 

 

外では冬の訪れを告げるような冷たい風が吹き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               ・

 

 

 

 

 

 

 

―同時刻 

 

 

ベリッシモ本社 CEO室

 

 

 

玉座に座る井出の目の前で書類にサインする似合わないながらもスーツを着た一人の男...レーシングチーム・カタギリの社長代理である皆川だ。

 

書類の内容はチーム間での選手引き渡しに関するもの。

最後のサイン欄にサインを書き記したところでボールペンを胸ポケットにしまうと井出は書類を手に取り、サイン欄を確認してから意外そうにこう呟いた。

 

 

 

 

 

「もう少しゴネるのではないかと思いましたが、あっさりサインなさいましたね」

 

 

 

 

 

「ええ、ウチのチームとしてはアイツに残って欲しいという気持ちはもちろんあります。ですが、現状ウチではあれ以上アイツを成長させるのは不可能だと思います...ヤツの先のことを考えての判断です」

 

 

 

 

 

素直にそう答える皆川に気に入ったように口角を軽く上げるように笑みを浮かべる井出。その彼に応えてやろうと引き出しからある資料を取り出し、引き渡し書類と引き換えにと言わないばかりに渡して見せた...

 

その内容は来シーズンのスーパーGTのチーム構成案だ。

 

参加するのは初参戦というのもあってスーパーGTの下位クラスGT300。メインドライバー二人、ハジメともう一人の相方も決まっていて予備のリザーブドライバーも決まっている...監督も何人か候補が選出されていて、ここから絞り込むといった状態だ。

 

 

 

 

 

「意外ですね...あのハジメの相方は"石神風神"ですか」

 

 

 

 

 

「ええ、性格的に対照的とも言えるドライバーですが...

GTレースの歴は彼より長い上、腕は確かなドライバーです。

凸凹の歯車がキッチリと噛み合えば最高のコンビになるのではないかというのが私の見立てです」

 

 

 

 

 

「なるほど...監督の候補も意外な人物が多いです。監督としての経歴がないものが多数います」

 

 

 

 

 

「ええ。次のチームに必要とされる監督の要素は...監督としての手腕よりもドライバー心理の理解度が重要視されます。あの二人...特に五十嵐ハジメのドライバーとしての次のステップを踏ませるにはそれが必須となる筈です」

 

 

 

 

 

そう言いながらも立ち上がって背を向けるようにし、夜景を眺め始める井出。数秒ほど間を空けてからこんなことを呟いた。

 

 

 

 

 

「私は...五十嵐ハジメという男に僅かながら希望を抱いております。今回はあくまで計画内における一つのステップ...その先の先まで見据えております」

 

 

 

 

 

淡々とした口調でそう述べる井出。そこから続けるようにして別れ際に一言言い残した。

 

 

 

 

 

「その資料、持ち帰られても構いませんが外部には絶対に漏らさないように...如何せん、うちのレーシング部門でも知っているものは一握りのものに限られるもので」

 

 

 

 

 

「そうですか...わかりました。では、失礼します」

 

 

 

 

 

資料を手に持って一礼してから部屋を後にする皆川。彼が去ったのを確認し、再び玉座に座ろうとすると脇に控えていた秘書が静かな足取りで近づくや否や、こんなことを問いかけた。

 

 

 

 

 

「よろしいのですか?本日、今ガチのクランクアップからの打ち上げがあるとのことでしたが...」

 

 

 

 

 

「出なくて結構です。私、タダでさえロスになり掛けてるのにそんなのに顔を出したらもっとロスが悪化してしまいます」

 

 

 

 

 

苦笑いしながらもそう答えて引き渡し書類を引き出しに仕舞う井出。本職を進めようと承認印やサイン待ちの書類の束を出し、ペンや印鑑の準備をしていると秘書が間を空けるようにしてこんなことを問いかけた。

 

 

 

 

 

「五十嵐ハジメと黒川あかねのカップリングは...今後、長く続きますか?」

 

 

 

 

 

秘書の問いかけにピタッと手を止める井出。すると、椅子の背凭れに軽く凭れるようにしつつも意外にもこう答えた。

 

 

 

 

 

「正直、難しいかもしれませんねぇ。住む世界が違いますからねぇ...」

 

 

 

 

 

「住む世界?」

 

 

 

 

 

「ええ、淡水の魚は海水の魚と共存することはできません。その逆も然り。必ず大きな壁がやってくるはずです。

その壁を越えられるか、どうか...そんな感じです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               ・

 

 

 

 

 

 

 

―数日後 都内の料亭

 

 

豪華な和食膳の前で胡座をかきながらも対面するような形で日本酒を飲む二人の男...

一人は今ガチのプロデューサーの鏑木雅也。

もう一人の男は銀髪と黒髪に分けた彼よりも一回り、二回りは若そうなサングラスを掛けた男。

 

彼の名前は雷田澄彰。

イベント運営を手掛ける会社『マジックフロー』の代表だ。

 

 

 

 

 

「いやー、色々と当初の予定と比較して誤算があったけどなんとか行けそうな感じになったよー。鏑木ちゃんの頑張りのお陰でいい感じの子結構集まってきてるし」

 

 

 

 

 

その言葉を聞きながらも静かに日本酒を一口飲んでは小さく笑みを浮かべる鏑木。

 

彼らの膝元には2.5次元舞台の"東京ブレイド"の企画書が。

 

確認のためにと雷田が企画書を手に取ってペラペラと中身を確認すると「それにしても...」とあることをふと呟いた。

 

 

 

 

 

「鏑木ちゃんも性格が悪いよねぇ、よりにもよって黒川あかねとカップリングが成立しなかったアクアを共演者として提案するんだから」

 

 

 

 

 

「確かに。でも、世間の注目は集められる...それに二人とも演技は一流だ。起用しない手はないだろう」

 

 

 

 

 

そう答えてから再び日本酒を口にする鏑木。

雷田が読んだ企画書の出演者一覧には...

 

鞘姫役:黒川あかね

 

刀鬼役:アクア

 

 

と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 




















・・・・・・・・・・・・・・・・・




どうも、作者です。

今ガチ編が終わり、ようやく一区切りがついたのでちょこっと色々後書きっぽく書かせていただきます。


まず作者的に感想を言うと思った以上にこの小説伸びてて驚きました...今までZEROを書く以前にも二次創作を書いたことはあるのですが、恋愛メインで取り上げたものはあまりなかったんで正直不安でした。

ですが、なんとか評価されてるみたいでなんだか嬉しい限りです。皆さんのお陰で今後とも執筆を続けるモチベーションを維持できそうです。


さて、二次創作を書いてるとこのキャラの声優さんはこの人かなーとか、ここBGMコレがいいとかってなるのは私だけでしょうか?
このキャラにはこの人とか、ここのシーンはこれ流したい!とかあったらコメント頂けたら嬉しいです、一緒に妄想に浸りましょう←

でも、こういうので特についついなっちゃうのが個人的にOPとかEDとかですかね...運転しながら聴いてたりするとあーって結構なりますもん。

個人的にはこの作品にOPとEDつけるなら、ONE OK ROCKかなと思ってます。特にSave YourselfとかCry outとか歌詞めっちゃそれっぽい気がします、まあ前者は一章寄りな感じですが。2章コレがいいよとかあったらまたコメント下さい!一緒に妄想にry


と、まあ冗談はこの辺にして...



本当に皆さんには頭が上がりません、これからも頑張って執筆を続けたいと思います。

是非、3章のANTARES編もお付き合い下さい。

よろしくお願いします。






※ここまで呼んでいただけた方向けおまけ※


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