IF 〜もしもあの時〜   作:マグウェル

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第三幕 ANTARES act.2

 

 

 

ー1ヶ月後 ララライ稽古場

 

 

それぞれの相方だけでなく、全体での合わせも始めた頃合い。劇団ララライの創設者でもあり、演出家の金田一敏郎の前で演技を披露するあかねとアクア。

審査員のように座りながらも腕を組んで見ている金田一に対し、あかねはこれまで積んできた稽古の成果を披露しようと指定されたシーンを演じ始める。あかねが演じる鞘姫が姫川が演じる主人公ブレイドが率いる新宿クラスタとの敵対を決意するシーンだ。

 

 

 

 

「新宿の連中を...皆殺しにするのです」

 

 

 

 

葛藤の中で導かれた決断を行うように両手をすり合わせるようにして演じた演技。自分としては原作のイメージ通りに行ったつもり...しかし、演出の金田一はあまりしっくりきていない様子だ。

 

 

 

 

「黒川、そこはもっと自信があるように演じてもいい」

 

 

 

 

原作イメージとはかなり違う感じの要求に一瞬戸惑うあかね。しかし、言われたからにはと自信を見せつけるように片手をサッと前に出して見せるようにして再び演じ始めた。

 

 

 

 

「新宿の連中を皆殺しにするのです!」

 

 

 

 

自分のイメージとは違う演じ方...彼女のイメージする鞘姫とは違い、まるで戦闘狂を思わせるようなものだ。しかし、金田一からは「オッケーだ、次」とゴーサインが出た。

 

 

本当に良いのだろうか...?

 

 

 

そう思いながらも金田一相手に演技を披露し続けるあかね。

しかし、彼女が不安を抱えているのは演出の求める鞘姫のキャラ像と自分が考える鞘姫のキャラ像が全く異なるということだけでない。

 

 

隣の刀鬼を演じるアクアだ。

一緒に稽古するようになったが、ただただやっているという感じでイマイチ乗り気ではないような様子だ。

 

 

 

金田一に向けての演技披露を終えてから出入り口の方へと歩くアクアの方に近づくあかね。「ねえ、アクアくん」と声を掛けてから単刀直入に問いかけた。

 

 

 

 

「アクアくん、なんか乗り気じゃないよね。今回のお仕事」

 

 

 

 

歩を進めていた足を止めてため息混じりに「ああ」と頷くアクア。その場でゆっくりと振り向くとその理由に対して淡々とした口調で語り始めた。

 

 

 

 

「舞台の芝居っていうのがどうにも好かないんだ。

大袈裟な芝居、背景から小道具まで手作り感がある。

その上、シーン切り替えの時には裏方が早急に動いての対応...没入感に欠ける」

 

 

 

 

その言葉にクスリと小さく笑うあかね。不思議そうな目を向けているアクアに対して笑みを零しながらもこう話した。

 

 

 

 

「確かにアクアくんの言う通り、そういう感じにやってるところもあるよ。でも...私達が次にやる舞台の会場はそんな常識が覆るようなところだよ」

 

 

 

 

言葉で言われてもイマイチよく分かっていない様子のアクア。ここは仕方ないとあかねはスマホを手に何かを確認してからある提案をした。

 

 

 

 

「アクアくん、よかったら今度の週末一緒に観に行かない?私達が演劇する予定の舞台の会場」

 

 

 

 

あかねの言葉に内心動揺するアクア...

彼の脳裏には再び斎藤真奈美との会話の記憶が過っていく。

 

 

 

"「黒川あかねのことは....諦める。

今後、彼女とは関わらないように立ち回る」"

 

 

 

"「その言葉、嘘じゃないよね?

もし嘘だったら...アンタの人生無茶苦茶になるまで追い詰めるから」"

 

 

 

 

稽古の合わせをするのは仕事だという名目で関われるが、プライベートで会うとなると流石に言い訳が出来ない。予定が合わないと言って断ろうなんて考えている間にあかねが彼の背中を後押しするようにこんな言葉を続けた。

 

 

 

 

「アクアくん、これもお仕事の一環だよ?

ちゃんと下見してどんな場所なのか把握するのもお仕事のうち」

 

 

 

 

仕事...そうだ、これも仕事の一環だ。

理由さえ言えば誰だって納得するはず。

そう心の中で自分に言い聞かせてからスマホでスケジュールを確認するアクア。

静かにポケットにしまいながらも「わかった」と答えて承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               ・

 

 

 

 

 

 

 

—同時刻 岡山国際サーキット

 

 

積車から降ろされ、ピットで準備が進められる1台の白いGTマシン...

 

フェラーリ296GT3。

赤いBellissimoの派手なステッカーが貼られた車両を腕を組みながらも眺めるハジメと石神。二人とも、ベリッシモの白いレーシングスーツを着用してシェイクダウンの時を待っていた。

 

 

 

 

「最初、どっちから乗ります?」

 

 

 

 

「俺から...と言いたいところだが、お前から走れ」

 

 

 

 

「俺から?まあ、いいですけど...」

 

 

 

 

車両準備が整うと共にベリッシモの白いヘルメットを被り、車両に乗り込むハジメ。ウィンドウ越しに整備士に親指を立ててグッドサインを出してからゆっくりとピットからピットレーンと出ていき、本線に合流するとアクセルを踏み込んで1周目は軽くウォームアップ。

 

ハンドリングやタイヤのウォームアップのために時折左右に蛇行するような動きを見せつつも2周目から本腰を入れるようにペースを一気に上げた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

グォウンッ!というV6ツインターボエンジンのサウンドを轟かせながらも約600mからの右への直角コーナー、左への直角コーナーと次々と抜けていく...

 

ペースは悪くない。が、ハジメの表情はイマイチぱっとしない様子だった。そのまま緩いコーナーを抜け、低速コーナーからの約700mのバックストレートに入る...が、ここでもイマイチと言った様子だ。

 

 

バックストレートからの連続低速コーナーを切り抜け、三周目に入る...まだ納得いかない。

 

そこから更に三周したが、結局のところ納得がいかないまま石神にバトンタッチ。ヘルメットを外し、離れた場所で休憩。

 

空いた隙間時間にスマホを触り、あかねにメッセージを送った。

 

 

 

 

"いま、岡山。

 

新しい車、結構ムズかしい...苦戦するかも。

 

そっちは稽古捗ってる?"

 

 

 

 

そう送信してからスポーツドリンクを手にするハジメ。どうせ向こうも稽古中だから返信も遅くなる、のんびり待とうと気長に飲んでいると先ほどのドライビングの感じが脳裏に過り、複雑な表情に...それを察した秋山が近づいてきて声を掛けてきた。

 

 

 

 

「おつかれさん、どうだ?あの車は?」

 

 

 

 

「...包み隠さず、単刀直入に言ってもいいですか?」

 

 

 

 

ハジメの確認の仕方に疑問を抱く秋山。だが、監督としてはその方が細かいセッティングをメカに要求出来ると思い「いいぞ、何でも言いな」と答えると彼は率直な感想を引き出した。

 

 

 

 

「全体的にややアンダーステア寄りな傾向です。岡山の路面からして脚はもう少し柔らかくてもいいかもしれません。」

 

 

 

 

「それだけじゃないだろ?素直に言ってみな」

 

 

 

 

秋山の催促にやや言葉詰まらせるハジメ。包み隠さずとは言ったが、彼自身突っかかるところがあって自制したのだろう。意を決するように小さく息を吸うとこう答えた。

 

 

 

 

「...速い車ではありますが、自分のドライビングと同調していくような感覚がありません」

 

 

 

 

 

「同調...というと?」

 

 

 

 

 

「言葉で言うと難しいのですが...

自分の中でフェラーリと言えばV12エンジン、そうじゃなくてもV8。あの甲高い官能的なサウンドという固定概念あります。そんな中でアイツはフェラーリでもV6ターボ、サウンド感もなんかもっさりしてる...そういう部分でチグハグしてるのかもしれません。

言ってみれば...とてつもなく蟹にそっくりなカニカマを食わされてる、みたいな?」

 

 

 

 

エンジンに関する指摘...しかし、メカの調整ではどうすることも出来ない内容だ。流石の秋山もお手上げと言った様子でため息をつきそうな表情でハジメと向き合うと肩をポンッと置くようにした。

 

 

 

 

「お前の気持ちは分からないでもねえ。

俺らの若え頃もフェラーリっつたらV12ってイメージだったしな...だが、今は与えられたアイツでなんとかするしかねえ。

マシンとしてはしっかり出来てんなら蟹にそっくりなカニカマで我慢しろ、いいな」

 

 

 

 

「わかってますよ、なんとかします」

 

 

 

 

疾走する石神がドライビングする296GT3を見ながらもそう答えるハジメ。そんな彼に秋山はふと何かを思い出すように「そういえば」と呟いてはスッと分厚い資料のようなものを彼に手渡した。

 

 

 

 

「これは?」

 

 

 

 

「GT300の各チームと昨今の情勢についてだ。次の会見までに頭の中に叩き込んでおけ」

 

 

 

 

「石神さんには?」

 

 

 

 

「アイツは去年までディープスターってチームのドライバーだった。情勢ぐらいは教えなくたってわかる」

 

 

 

 

そう秋山が答えている間に与えられた資料を読んでいると秋山の方からわかりやすいように簡潔に纏めるような説明が入った。

 

 

 

 

「俺から注目して欲しいチームは3つある。

一つは昔、石神が所属していたディープスター。

車両はブルーで派手な黄色の星のデカールがついた911GT3、ドライバーは影山理人(カゲヤマリヒト)とジョズアライアン。アライアンは他チームからの移籍で来たらしい。恐らく、石神の代わりだろう。シーズンランキングでも常時上位を占める強豪の一つだ。

石神を引き抜いたウチを間違いなく意識してレースしてくる」

 

 

 

 

ペラペラと資料を捲り、ディープスターのページを開く。

彼の言う通り青い車体に派手な星のデカールが入った911GT3の姿。そのページの脇には20代後半ぐらいのツリ目の黒髪の男と丸目の西洋系の顔立ちの茶髪の男の姿が...この二人が影山理人とジョズアライアンだろう。ゆっくりと資料に目を通していると秋山は次のチームについて語り始めた。

 

 

 

 

「二つ目はヴィブルスRT。

車両は黒いランボルギーニウラカンGT3。

3年前まではシーズンランキングでトップだったチームだ。ドライバーは中郷孝之(ナカゴウタカユキ)と國生裕二(クニキユウジ)。二人の中でも中郷はGT500で走った経験もある実力派だ、しかもその中でも成績も良かったって話だ」

 

 

 

 

 

ヴィブルスのページをペラペラと開く真っ黒なランボルギーニウラカンの姿が。マッドブラックの艶がないボディが特徴的な車両に目を向けてから片隅に目を向けると再びドライバー二人の姿が。

 

 

30代後半ぐらいの濃いめの輪郭がくっきりした顔立ちの男と30前半ぐらいの色白の醤油顔の男。これが中郷と國生だろう。

 

しかし、そんな中である一つの疑問がハジメの中で浮かび上がった。

 

 

 

 

 

「ヴィブルスは3年前までは独走だったんですよね?

では、2年前から別チームにその座を奪われた...ということですか?」

 

 

 

 

ハジメの素朴な疑問に「そうだ」小さく頷くように答える秋山。

少し間を空けるようにしたかと思えば小さく息を吸って軽く呼吸を整えてからこう答えた。

 

 

 

 

「次に話すチームがGT300で現状最速でトップを独走してるチームだ。

名前は...MARS。

Makimoto Automobile Racing Serviceの頭文字を取ってMARSって呼ばれてる。

マシンはワインレッドのGT-R nismo GT3。

ドライバーは火原幸也(カハラユキナリ)と多田勇斗(タダユウト)。

 

火原のオッサンのことはお前さんでも知ってるだろ?」

 

 

 

 

「はい、詳しくはあれですが...グループAがあった時代からプロとして走ってる超ベテランですよね。10年ほど前にGT500ドライバーから引退して最近戻ってきたって話は聞きましたが」

 

 

 

 

そう話しながらもページをペラペラと捲るとMARSの資料が出てきた。

 

厳格で古風な短い白髪の男...他のドライバーより一回りどころか二回り以上歳上だと一目で分かるドライバー。頰には歴戦の猛者を感じさせる斜めに切ったような傷跡...この男が火原だ。

相方の多田は30代半ばぐらいの優男感がある色白の男だが、写真から見て火原の方が圧倒的な猛者だと分かる。

そして...車は最新鋭というわけでもなく、やや型落ち気味になり始めてるワインレッドカラーのR35型GT-R nismo GT3。これでトップ独走してるのだから相当な猛者なのだろう。

 

そう思いながらのページを1枚捲る...すると、次のページは丸々火原の説明に経歴から何まで書き込まれていた。

 

 

 

 

「火原のオッサンは年齢的に見れば62歳、普通の企業なら定年退職してもおかしくない年齢だ。俺なんかよりずっと歳上...なんせ、俺が物心ついた時にはもうグループAで走ってたからな...赤いR32 GT-Rで。その時代からかなり優秀な成績だったし、90年代の国内モータースポーツ黄金期の立役者の一人なんて言われてる。立役者と言われたドライバーで現役で走ってるのは火原のオッサンただ一人だ。

GT500時代でもシーズンチャンピオンを2回獲得してる」

 

 

 

 

秋山の説明を聞きながらも経歴に目を通していたハジメ。すると、ある状態に目が止まる...これはもしやと内心引っ掛かると「監督」と秋山を呼んでから確認するように問いかけた。

 

 

 

 

「JGTC時代のGT300に所属していた、この牧本製作所って...」

 

 

 

 

「気づいたか...MARSの前身になる会社だ。

2000年代半ばに名前が変わったんだ。その時から牧本と火原はタッグを組んでいて相性が良いって言われててな。

相方がヘマするか、マシントラブルでも起きない限りは表彰台の高い位置が確約されたも同然だったんだ。

 

それでついたあだ名がある」

 

 

 

 

「あだ名?二つ名みたいなもん...ですか?」

 

 

 

 

ハジメの問いかけにコクリと頷く秋山。

その場で軽く腕を組むようにするとゆっくりと口を開いてこう話した。

 

 

 

 

「"不墜の火星"。

真っ向勝負で挑んで墜とした者はいないという意味でこの名前がついた。特に、復帰したばかりのこの2年はかなりヤバイって話だ。文字通りサクセスウェイトなしの勝負ではヤツに誰も歯が立たない状態だ」

 

 

 

 

そう説明してからハジメに背中を見せるようにして離れ始める秋山。彼は両手をポケットに突っ込みながらも歩いてはそのままハジメに言い残すようにこう伝えた。

 

 

 

 

「次の会見までにしっかりと頭に入れて自分なりにどうするべきか目標を決めておけ。

井出のおやっさんや俺に恥かかせるようなヘマはすんなよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               ・

 

 

 

 

 

 

 

 

—同時刻、とある静かな道場

 

 

黒とグレーのシンプルな袴を着て鞘に納められた日本刀に手を伸ばす60代の白髪の男。

 

低い姿勢で構え、スゥー...と精神統一するように静かながらも深く息を吸い止める。

 

 

そして、その刹那。

 

 

素早く刀身を抜き、斬撃を繰り出した。

 

目の前にある藁の束を綺麗に真っ二つに斬ったかと思えば無駄な動作無くしてチャキッと鮮やかに納刀。

 

 

 

...この男こそ、"不墜の火星"と呼ばれている火原幸也だ。

 

居合術火原流の現師範でありながら、現役のGT300ドライバー。

90年代モータースポーツ黄金期の火付け役の生き残りだ。

 

 

 

居合を終えて立ち上がると、斬れた藁を拾ってその断面を見る火原。そんな中で奥の襖がサァー...と静かに開いた。現れたのはメガネを掛けた30代後半ぐらいの男。その姿を見た火原はため息をつきそうな表情ながらも彼に歩み寄る。

 

 

 

 

「先代から何も聞かなかったか?居合してる時に勝手に上がるなと」

 

 

 

 

先代というのはMARSが牧本製作所だった頃の創業者のことだ。そして、このメガネを掛けた男は最近後を継いだばかりの2代目...先代の息子。少し前まで社内で広報担当だった者だ。

 

 

 

 

 

「申し訳ありません。ですが、玄関で呼び鈴を鳴らしても応答が無かったもので...」

 

 

 

 

呆れたようにフッと鼻で嘲笑い、背中を見せる火原。

「何用でここまで来た?」と冷たく問いかけると2代目はある資料を恐る恐ると差し出した。

今年のスーパーGTの参加リストだ。

 

 

 

 

「菊正監督からです。自分から渡すよりも経由して渡したほうがいいんじゃないかという話で...」

 

 

 

 

「菊正が?直接言いづらいからって遠回しにも程がある...これだから三流は困る」

 

 

 

 

そう言いながらも受け取ってパラパラとページを捲ってからリストを畳むと部屋の脇に置いてから居合片付けを進めると2代目に対してこう問いかけた。

 

 

 

 

「簡潔に去年とどう変わったかまとめてくれ」

 

 

 

 

「去年と...ベリッシモモーターワークスの参戦が一番の大きな変更点ですね」

 

 

 

 

その答えにピタリと動きを止める火原。

意外そうに「ほう...」と言葉を漏らして自らの顎を軽く持つようにしながらもこう語り続けた。

 

 

 

 

「あそこは国内のハコレースには興味がないように見えたが...ドライバーは誰だ?」

 

 

 

 

「ディープスターから引き抜かれた石神風神...それから、今回初参戦のドライバーが一人。

 

五十嵐ハジメって名前です。

 

最近メディアでちょこちょこ出てたドライバーなのですが、聞いたことは?」

 

 

 

 

「ないな。いくつだ?」

 

 

 

 

「21です」

 

 

 

 

「若いな...俺の息子よりも歳下だ。

世代的には孫と言ってもおかしくないような歳だ」

 

 

 

 

そう言いながらも再び片付けを進める火原。袴から着替えようと更衣室に足を運ぶ前に足を止めると、振り向きながらもこう話した。

 

 

 

 

「菊正に伝えてくれ、今度回りくどい立ち回りをしたら刀の錆にしてやるとな」

 

 

 

 

火原の言葉に「わかりました、失礼します」と一礼してから立ち去る2代目。再び更衣室へ移動しようとする火原だったが、2代目が置いていったスーパーGTの参加リストを再び手に取ると先ほどよりも1ページ、1ページ長めに読み込む...

 

参加リストにはGT300だけでなく、GT500のリストも載っていたが500のドライバー達の顔ぶれを見てフッと鼻で嘲笑った。

 

 

 

 

「(今シーズンを終えたら500に移ろうと思っていたが、500に昇格したとてこの顔ぶれじゃ俺の渇きを満たせそうにない。

 

落ちぶれたモノだ...日本のレース業界とやらも)」

 

 

 

 

そう内心思いながらもページを捲っていくと、GT300の紹介ページで見たこともないドライバーを見つけた。

 

 

ゆるくパーマを掛けたような茶髪、やや切れ長な目つき....

 

名前を見るとそこには"五十嵐ハジメ"の名前が明記されていた。

 

 

 

 

「(コイツか、今年から参戦するドライバーとやらは...)」

 

 

 

 

先ほどよりも長めにページを読み入る火原。

片手で参加リストを持ちながらも空いた手で自分の顎軽く持つようにして吟味するとフッと鼻で小さく嘲笑った。

 

 

 

 

「(元レーシングチーム・カタギリ所属...世代的には小柏の教え子か。

 

だが、だからと言って大したことはないだろう。

 

そもそもGT300は俺にとっては踏み台以下のクラス。

先代が昔拾ってくれた恩がなければ立ち寄りすらしなかった下位クラスだ。

 

そんな所で満たされるわけがない)」

 

 

 

 

そう思いながらも参加リストを畳み、再び更衣室に戻ろうと歩き始める火原。その姿は静かながらも歴戦の猛者の風格が漂っていた。

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