IF 〜もしもあの時〜   作:マグウェル

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第四幕 Radioactive act.12

 

 

 

―翌日 群馬県 渋川市

 

ドリームエンジェルス出入口

 

 

 

 

深掘れ!の取材班を引き連れてきたルビー。

オープニングを取ろうと教習所のようになっている施設の出入口で満面の笑みをカメラの方に向けるとマイクを口元に近づけてから動き始めた。

 

 

 

 

「こんにちはー!

深掘れリポーターの星野ルビーでーす!

さて...私は今から、斎藤真奈美さんを取材する為に群馬県の渋川市にあるコチラの施設の前に来ていまーす!

さて、施設側に許可は事前に取っているので早速、中に入っていこうと思いまーす!!」

 

 

 

 

そう言いながら取材班を引き連れてガチャッとドアを開けて中へと入っていくと、事務所の前を通り過ぎて教室のような場所で足を止める。カメラマンが出入口の窓ガラス越しに中を撮影...そこには入校式らしい真っ最中の光景が。フォーマル寄りな黒い衣装に身を纏った5人の生徒の中に紛れている真奈美にカメラマンがズームしてフォーカスを合わせていくとルビーが再び語り始めた。

 

 

 

 

「おぉー?なんだか中で真剣そうにやっていますねー、突撃しちゃいましょう!!」

 

 

 

 

「失礼しまーす!」という声と共にガラガラッとドアを開けて中へと入ると共に全員が意識をルビーを含めた取材班達に向ける。事前に位置を確認していた彼女の元へと歩み寄るとやや驚いたような表情を見せてきた。

 

 

 

 

「あのー、なんですか?」

 

 

 

 

「この度なんと、斎藤真奈美さんが深掘れ大賞候補にノミネートされました!なので、斎藤さんのことを密着取材したいのですがよろしいでしょうか!?」

 

 

 

 

「えぇー、うそ!?えー、どうしよっかな~...」

 

 

 

 

 

「今日1日だけですので、よろしくお願いしますっ!」

 

 

 

 

 

....全部事前に渡された台本通りのシナリオ。

このような導入の方が視聴者が視聴するのに馴染ませやすいということでこういう形でオープニングを撮っているのだ。心の中でため息をつきそうになるほどの衝動を抑えつつも「まあ、今日だけならいっかー!」と答えるとルビーは「ありがとうございます!」と答えてからカメラマンに向けて目を向けた。

 

 

 

 

「じゃあ、今日は斎藤真奈美さんの1日を深掘りしまーす!

せーの、深掘れ!ワンチャン!!」

 

 

 

 

指を向けてクイクイッと動かしたところで現場内に「カートッ!」の声が響き渡る。撮影班の緊張の糸が緩み、一気にザワザワと次の撮影に関して軽くその場で打ち合わせをする中で真奈美は「はぁ...」とため息をつきながらもルビーを見ていた。

 

 

 

 

 

「(アンタじゃなくて、かなちゃんとかMEMちょが来てくれれば終始楽しく出来たかもしれないのに...

 

しっかり目は光らせておかないと)」

 

 

 

 

 

そう思いながら見続けている間にふと後ろから視線を感じ取ると色々と察しがつきながらも渋い顔で振り返る真奈美....視線の主は舘由梨花だ。"なんだ、お前"と言わないばかりにジーッと見つめてきていた。

 

 

 

 

「なーに、そんな目で見つめて....」

 

 

 

 

「いや、入校式早々有名人ムーブで取材班引き連れてくるとは思わなかったから」

 

 

 

 

コイツ、早くも嫌味か...!

ぐぬぬ...と噛みつきそうな表情で由梨花を見ていると彼女は凛とした雰囲気を漂わせながらも長い前髪をゆらりと揺らしながらも更に追い打ちをかけるようにこう続けて呟いた。

 

 

 

 

 

「まあ、客寄せパンダするのもいいんじゃないかしら?

 

レベル低い貴女にピッタリよ」

 

 

 

 

 

嫌味しかないような言葉を吐き捨てつつもそのまま撮影陣のことは放っておくようにそのまま廊下へと出ていく由梨花。

 

 

明日から覚えてろよ、コンチキショー....!!

 

 

内心そう思い噛みつきそうな表情でぐぬぬ...となっている中、マナーモードにしていたスマホがブーブー!とバイブしてメッセージのキャッチを通知。撮影の合間ということでチラッと確認...ハジメからだった。

 

 

 

 

"何時から行けばいい?"

 

 

 

 

 

それを確認してから撮影班の方をチラリと確認。まだ動き出すには時間がありそう...ゆっくりと返信出来そうだ。

 

 

 

 

 

"これから施設の説明とか色々やってから移動だから...

 

あと3時間後ぐらいでちょうどいいぐらいかも。"

 

 

 

 

 

"わかった。旅館でもう少しゆったりする"

 

 

 

 

 

そのメッセージを確認するとスマホをポケットにしまう真奈美。

旅館でゆったり...二人とも旅行デート楽しんでるんだろうなぁと想像を膨らませ、なんだか微笑ましく思えていたがそんな中でルビーの姿が視界にふと入ってきた。スマホを触っている...あまり怪しい素振りも見せずに堂々と触っている様子から今のところはまだ大丈夫そうだ。

 

 

 

 

「(とりあえず、まだ大丈夫そう...だね)」

 

 

 

 

そうこう考えながらも撮影班が機材を持つと「お二人とも移動お願いしまーす」と声かけ。「はーい!」と二人で返事しては教官である佐藤真子と合流し、施設内の設備などの案内。

 

テレメトリーモニターが備えられた部屋やサーモグラフィカメラや自動追尾ドローン等が置かれた機材室、教習用の車輌が駐車されている車庫...

 

 

最後に施設内のジムカーナコースでルビーが真奈美の86の助手席に乗ってドリフトを体験することになった。

 

 

 

 

 

「わー!怖いけどなんだかドキドキするなー!!」

 

 

 

 

動きやすい格好に着替えたルビーはそう呟きながらも黒いヘルメットを着用。「お邪魔しまーす!」と乗り込む彼女を白いヘルメット越しに笑顔で迎え入れる真奈美だったが、心境としては勿論良いものではなかった。

 

 

 

 

 

「(神聖な私の助手席に座るなよ、穢らわしい。アンタなんかスポイラーに掴まって振り回されるのがお似合いだよ。まあ、掴まったところでそのまま振り落としてやるけど)」

 

 

 

 

 

心の中でそう呟くとともにチッと小さく舌打ちしたところで撮影班から合図が出た。前方に設置されたパイロンに向けて一気に加速、手前でガッとサイドブレーキを一気に引き上げてリアロック。

ステアリングを素早く操作してからクラッチを蹴る。アクセルを煽ってキィィィィッ!!と辺りにスキール音が鳴り響くとルビーは「きゃあぁぁ!!?」と悲鳴とも驚きとも捉えられるような声を上げた。

 

 

 

 

「スゴい!スゴーい!車に乗ってるのに景色が横に流れてるー!!」

 

 

 

 

「(うるさ...ドリフトなんだから当たり前でしょうが)」

 

 

 

 

そう内心思いながらも次のパイロン、次のパイロンと3回計3回ほどドリフトで振り回していく...

キィィィィッ!キィィィィッ!!と最後のパイロンでのドリフトを終えてスタート地点に戻って停車した86から二人が降りてくるとヘルメットを外した。

 

 

 

 

「すごーい!斎藤さん上手ですねー!!」

 

 

 

 

「いやいやー、それほどでもー!」

 

 

 

 

ルビーの反応に照れるように「てへへー」と呟く真奈美。

勿論本心は全く違うものだ...

 

 

 

 

「(何が上手ですねーだ、知らないクセして。超下手くそだよ、正直ミスったよ。距離も角度も微妙...プロが見たら鼻で笑われかねないよ、正直恥ずかしいからもう一回やり直したい)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―同時刻 伊香保温泉の温泉旅館

 

 

駐車場に停まるNSXに乗り込むハジメとあかね。

昨日の夜の事で逆にこそばゆさから会話がない...喧嘩どころか、逆に親密になってすらいるのに互いに顔を赤らめてなかなか顔を合わせられずにいた。

 

 

 

 

「(さ、誘われたとは言え一線越えちまった....)」

 

 

 

 

「(ちょ、ちょっと大胆に誘いすぎちゃったかな...

なんだか恥ずかしい....ドン引きしたりしてない、かな?)」

 

 

 

 

互いに色々と昨日の振り返りつつも目的地のドリームエンジェルスの拠点までゆっくり走らせていく。しばらく会話がない沈黙が続くも、信号待ちでそれを破ったのはハジメの方だった。何かを決意するような目を見せたかと思えば恐る恐ると言った様子で間を空けつつも「あかね」と名前を呼んだ。

 

 

 

 

「これからも一緒に居られるように...

キミに相応しいと思われるような男で居続けれるように頑張るから」

 

 

 

 

 

真っすぐとした目で言われて胸を撃ち抜かれたような感覚に陥るあかね。一瞬驚いた表情を浮かべるも、小さく笑みを浮かべるようにすればこう答えた。

 

 

 

 

 

「...なら、私もキミに相応しい女性で居続けられるようにがんばらないとね」

 

 

 

 

お返しと言わないばかりの言葉によって沈黙は一気に崩れると共に互いの絆が一気に深く強いものになると感じる。

 

暖かい...

 

包まれるような幸福感に満たされていると信号が青に変わる。再びゆっくりと走り始めるNSX...沈黙の壁が崩れた車内で今度はあかねの方から話題を振ってきた。

 

 

 

 

「そういえば...ずっと気になってたんだけど、ハジメくんは真奈美さんとどう出会ったの?」

 

 

 

 

 

「どうって、そんな大した出会いじゃない」

 

 

 

 

 

「大したことなくても、初めてサーキットでコーチしてるの見た時からずっと気になってるんだー。教えてくれる?」

 

 

 

 

意外にも深く聞こうとするあかねに"そこまで言うなら"と古い記憶を頭の中で辿っていくハジメ。前を走るプリウスの速度に合わせるように巡航させつつもテールを眺めてはこう話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「前に高校時代の後輩って話はしたっけ?」

 

 

 

 

 

「たしかに聞いたような....」

 

 

 

 

「俺がアイツと初めて会ったのは高校の卒業式。

卒業証書を片手に校舎から出ようとした時にいきなり話しかけられてさ...」

 

 

 

 

「い、いきなり...?」

 

 

 

 

まさかの出会い方に流石のあかねも驚き混じりに確認するように問いかける。だが、ハジメの方は動じるような様子も見せずに「あぁ」と答えてはそのまま語り続けた。

 

 

 

 

 

「"センパイ、プロのドライバーさんなんですよね?私が卒業したら教えてくれますか?"ってさ。

最初はジョーダンだと思って適当に分かったって返してやったよ。

でも...2年後にマジで卒業証書手にしながら当時の職場のカタギリまで尋ねてきてさ。

社長も俺の師匠も...全員目丸くさせて驚いてたよ、むさ苦しい男だらけの職場に制服姿のJKが俺ご指名で来たって」

 

 

 

 

 

「その、事務所に尋ねてきた時にハジメくんは昔の言葉を覚えてたの?」

 

 

 

 

 

「まさか...本人に言われるまで完全に忘れてた。

それ以降だな、アイツに色々教えるようになったのは」

 

 

 

 

 

この話を聞いてあかねはただの昔話では済まないと考えてしまう。前から察しはついていたが、これで確信してしまう。

 

今はそうではなさそうだが、彼女は昔...恐らく。

 

そうこう考えている間にドリームエンジェルスの施設前まで到着。近くにあった駐車場に車を停めて門前まで歩くと見覚えのある女性の姿が...真奈美だ。

 

 

 

 

 

「おっ、二人ともー!こっちこっちー!」

 

 

 

 

撮影班が中で次の撮影に関する軽い打ち合わせしている間に、今日1の笑顔を見せながら手招きするようにブンブンッと手を振ってくる真奈美。二人でやや駆け足気味に彼女の元へと近づくと、あかねの方から小さく笑みを浮かべながらも話し掛けた。

 

 

 

 

「お久しぶりです、真奈美さん」

 

 

 

 

「あかねちゃん、おっひさー!ハジメくんもおひさだねー!」

 

 

 

 

「ああ、群馬生活はどうだ?」

 

 

 

 

「まあ、ド田舎だけど楽しくやってるよー。

みんな他所者扱いしないで優しくしてくれるいい人ばかりだしねー」

 

 

 

 

 

そう言った時に何かに気付くように「ん?」と首を傾げる真奈美。ハジメが「どうした?」と問いかけると彼女は思ったことを包み隠さず指を差しながらも答えた。

 

 

 

 

 

 

「いやー、二人ともなんだかいつもよりも"スッキリ"してるような...」

 

 

 

 

 

"スッキリ"

 

この短い単語に思わずギクッと反応する二人。顔を真っ赤にさせながらも明後日の方向に目を向けると案外図星だったと分かり、「あっ」と声を漏らすもののそれ以上は察して聞くのを止めた。そうこうしている間に撮影班の準備が終了。進行上なのか、撮影用のバン2台の内1台一班だけ現場に残して1台だけで出るようだ。バンに乗り込む予定の撮影クルーの一人が台本を手にしつつも門前で会話している真奈美の元へと駆け寄った。

 

 

 

 

「斎藤さーん、次の現場行きま...

ってアレ!?五十嵐さんとあかねちゃん!?なんでここに...!?」

 

 

 

 

 

「プライベートで近く来ただけだから。

俺は別にいいけど、彼女は撮らないでくれよ。事務所厳しいから」

 

 

 

 

そう言ってハジメが撮影クルーを適当にあしらう間にあかねが真奈美の手を握った。

 

 

 

 

 

「撮影、頑張って下さいね」

 

 

 

 

「うん、ありがとっ。行ってくるねー!」

 

 

 

 

そう言って手をフリフリと軽く振りつつも撮影クルーと共に撮影用のバンに乗り込む真奈美。施設から車が出ていったのを確認し、そろそろ行こうかと思ってる時に門から出てきて「あの...」と誰かが話し掛けてきた。ゆっくりと振り向くとそこには指導教官の佐藤真子の姿が...

 

 

 

 

「五十嵐ハジメくん、よね?」

 

 

 

 

「え、佐藤さん...?」

 

 

 

 

ハジメは気づいたが、あかねはその存在について知らないようにキョトンとしている。それも無理はないと小声で耳打ちするように簡潔に説明した。

 

 

 

 

「ここの指導教官であり、責任者...ちょっと前まで女子プロの華って呼ばれてたような本物だよ」

 

 

 

 

ハジメの言葉に「へー...」と若干驚くように真子を見るあかね。真子の方は二人の視線に小さく笑みを浮かべるとこんなことを提案してきた。

 

 

 

 

「こんなところで大物二人を立たせてるなんて申し訳ないわ、よかったら施設を見て回らないかしら?」

 

 

 

 

「え、いいんですか?」

 

 

 

 

「いいわよ。むしろ、二人が来た方がみんな喜ぶと思うわ...今日は入校式だから」

 

 

 

 

そう言って先導するように前を歩き始める真子。

一方、施設を出て一番最初の信号を抜けた撮影用のバン...その後ろを黒いBMWが追っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ・

 

 

 

 

 

 

 

 

―撮影用のバン

 

 

 

真奈美の日常に密着しようと動く撮影班とルビー。

まず到着したのは彼女がバイトしている地方のホームセンター...制服姿でガラガラと品出しやら何やらやりつつもお客さんとすれ違う度に「いらっしゃいやせー」と挨拶を交わす彼女の姿をカメラがしっかりと押さえる。軽いインタビューを交えつつもバイトを終えると行きつけのお店の紹介などに移る...小料理屋やガソリンスタンドなど、引っ越してからお世話になっているところを回る撮影班。

 

 

何件か周ったところで流石に真奈美のお疲れの様子だ...

 

 

 

 

 

「(結構まわったなぁ...これ、どれぐらいオンエアで使われるんだろう?)」

 

 

 

 

 

そろそろドリームエンジェルスの拠点に戻るだろうと内心思いながらもバンに乗り込む真奈美。ふと片隅に座っているルビーをスマホの液晶を反射させように確認...その時だった。

 

撮影用のバンがキィィッ!とスキール音を上げると共に急ブレーキして停車したのだ。全員が「おわっ!?」と驚いたように言葉を漏らし、Gの変化で前のめりに...

 

 

 

 

 

「馬鹿野郎が!危ねえだろうが!!」

 

 

 

 

 

現場を仕切っていたディレクターが運転していたADに向けて叫ぶも、目の前の光景を見て全てを察した...

 

黒塗りのワゴン車が道を塞ぐように横を向けて止まっていたのだ。恐らく、横の路地から待ち伏せするように出てきたのだろう...そこからぞろぞろと顔を隠した男たちが降りてくる。男たちの中には鉄パイプのようなものを持ったような者の姿もいた。

 

間違いない、計画的にルートを調べて襲撃しに来たのだ。

 

 

 

 

「お、おい!け、警察!110番ッ!」

 

 

 

 

「今から間に合うわけないじゃないですか!?」

 

 

 

 

 

カツ、カツ...と靴音を鳴らすようにして撮影班のバンに接近する男たち。真奈美は男達を静かに睨みながらもシートベルトの留め具に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              ・

 

 

 

 

 

 

 

 

―同時刻 ドリームエンジェルス拠点

 

ジムカーナコース

 

 

 

中の説明を受けてからなんだかんだで生徒の前でドライビングを披露することになったハジメ。

 

ヘルメットやグローブがないと言って言い逃れようとしたが、貸し出し用をモノを真子に差し出されて渋々やることに...

 

 

 

 

 

「(あの人、最初からこれ目的で中に入れただろ...まんまとハメられた)」

 

 

 

 

 

そんなことを言いたい衝動に駆られつつも、困り顔を見せながらもグローブをハメてヘルメットを被ろうとした時...隣にいたあかねが小さく笑みを浮かべながらも彼を送り出すようにエールを送った。

 

 

 

 

「がんばってね?カッコいいところ見せてっ」

 

 

 

 

そう言いつつもどこか妖艶にも見えるような笑みを見せてくるあかね...そこまで言われたら彼氏として仕方ないと「わ...わかった」と受け入れつつもヘルメットを被るとNSXに乗り込んだ。

 

 

特にこれをやれという指示もない...

逆に困るやつだと内心思いながらも今日が入校式だということを考えるとNSXを走らせた。

 

 

 

 

パイロンに向けて駆け抜けていく白いNSX..

ターンインポイントよりかなり手前で逆方向に車体を振ったかと思えば一気にパイロンの方に車体が振られた。

姿勢が崩れ、キィィィィッ!!とスキール音を上げながらもドリフト態勢に入る車影に観ていた生徒達からワァー!と一気に歓声が上がっていく。

 

 

 

 

 

「すごー!?さっきの86と段違いじゃん!」

 

 

 

 

「速く走らせるだけじゃなくて、ドリフトも出来るなんて...!」

 

 

 

 

歓声を上げる生徒たちの中で黙々と真剣な眼差しでじっくり観ていた由梨花。腕を組みながらも自分の頭の中でコメントを並べていた...

 

 

 

 

「(一見簡単そうにやってるけど、NSXみたいなミッドシップで重量比がリア寄りになってる車はオーバーステア傾向が強い...ステア操作やアクセルワークを少しでも間違えれば一発でスピンする。故にあれだけの長い距離を綺麗に繋げていくのはかなり難しい...

しかも、キッカケづくりがフェイントモーションから入ってる。まるでラリーカーね...とても90年代を代表する和製スーパーカーとは思えない)」

 

 

 

 

一方、あかねの方も目をキラキラと輝かせてその姿を見ていた。興奮冷めない中で次のコーナーもブレーキングドリフトで駆け抜けていくのを眺めていると誰かが近づいてくる...指導教官の佐藤真子だ。

 

 

 

 

「さすがね、彼...私も女子プロとしてやってきたけど、コレは認めざるおえないわ。即興であんなことして見せるなんて」

 

 

 

 

「はい、本当にスゴいです...!」

 

 

 

 

目を輝かせているあかねの顔をチラリと見る真子。

何か思うことがあるのか、考え込むように間を空けるとふとこんな質問を投げかけた。

 

 

 

 

 

「黒川さん、アナタは...彼とお付き合いしてるのよね?」

 

 

 

 

「あ、はい...番組がキッカケでそこからずっと付き合っていて」

 

 

 

 

 

胸が疼くような感覚に満ちているあかねに対して真剣な眼差しの真子。そこから更に考え込むようにしてはこんなことを問いかけてきた。

 

 

 

 

「黒川さん、彼のこと...好き?」

 

 

 

 

「え、えぇ...」

 

 

 

 

「そう。彼を愛して、彼に愛されて...アナタは幸せ?」

 

 

 

 

「は、はい...でも、どうしてそんなこと聞くんですか?」

 

 

 

 

少し質問をしている意味が分からずに確認するように問い返すあかね。すると、真子は自嘲染みた笑みを浮かべながらもこう答えた。

 

 

 

 

 

「ただの確認よ。

ただ...幸せだと思うなら必ず守り抜きなさい。

コレは人生の先輩としてのアドバイスよ、余計なお世話かもしれないけれど」

 

 

 

 

 

そう話している間にドリフトを終えて帰ってきたNSX。あかねと真子の前に停まって運転席からハジメが降りてくると、彼はヘルメットを脱ぎながらもやや不満げな表情だ。

 

 

 

 

「2回目ドリフト、もうちょっと繋げられそうだったけどなぁ...」

 

 

 

 

「でも、カッコよかったよ。生徒さんだけじゃなくて佐藤さんもスゴいって褒めてた」

 

 

 

 

あかねに言われて満更でもないような表情へと変わるハジメ...その間に生徒が指を差しながらもコソコソと小声で会話を繰り広げる。

 

 

 

 

 

「あの二人、エモすぎ...」

 

 

 

 

 

「生であのカップリングのイチャイチャ見れるなんて...」

 

 

 

 

「あーあ、ワタシも彼氏欲しいなぁ」

 

 

 

 

 

そうこう会話を繰り広げる生徒に気づかずにその場で軽く談笑しようとするハジメ。

 

しかし、その時だった。

 

コースの外で待機していた深掘れ撮影班の別動隊が何やら慌てた様子であちこちと走り回っている光景が目に入ってくる...

 

 

一体何があった?

 

 

 

ふと嫌な予感がしたハジメ。急いでその場を離れ、ADの一人を捕まえて「何があった?」と単刀直入に問いかける...すると、彼は慌てた様子でこう答えた。

 

 

 

 

「外に出ていた撮影班のバンが襲われた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





























_____________
おまけ∶我慢できなかった世界線

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