普通の美少女アンドロイドです。通してください。 作:Alkane・Havok
美少女アンドロイドの
新しい名前を考えた結果、中二病が書く二次創作のオリキャラみたいな名前になりました。フハハハ。夜馬なんて苗字にしたらそりゃそうなるよね。
まあそれは置いておきまして、昨日授業という形でこの世界のことをアビドスの生徒さんと先生に教えてもらい、基本的な情報を覚えました。
まず、ここは治安が世紀末並なだけで終末世界ではないらしい。超銃社会の巨大学園都市、名前をキヴォトス。一つの学園が一つの国のような役割を果たしており、自治区を持つ。所属する生徒が治安維持や政治をしているとかなんとか。大人が存在しないわけではないが基本的にそういったことには不介入らしい。子供に政治をさせるなよ。
そして弾丸一発程度では赤ん坊もロクに殺せないような世界であり、実銃による銃撃も戦車や迫撃砲による砲撃もそこらじゅうで発生するのに子供一人すら死なない。それどころか幼稚園児が本物の手榴弾を投げて遊ぶのが当たり前の光景。
シロコさん達のような生徒の場合、ヘイローという頭に浮かぶ天使の輪のようなもので保護されているのだとか。キヴォトスの外から来たシャーレの先生には無く、先生が飛んできた銃弾に当たればボクのよく知る結末を迎えるらしい。ならばなぜあんな軽装で出歩いているのだろう。自殺志願者?他にも色々と教えてもらったが、長くなるので割愛する。
◇◇◇◇◇◇◇
そうやって授業内容を振り返りながらアビドス高校の保健室で最初の夜を過ごす。なぜ保健室でと思うかもしれないが、ホシノさん達からのご厚意だ。
ボクが最初にいた場所は廃墟同然...というか廃墟なので、いつ崩れるかも分からない。だからといって今すぐ用意できる物件は無いし野宿は論外。最終的に学校内の使っていない部屋を貸すということになり、ならベッドのある保健室にしよう、となった。
アンドロイドなのでベッドが無くてもおそらく大丈夫ではあるが、元人間の身としてはベッドに寝転がりたいのでご厚意に甘えることにしたのだ。
先生と一緒にホテルに泊まるという案もあったものの、美少女アンドロイドと成人男性が同じホテルに入っていくのはだいぶアレなので無しになった。
申し訳ないと思っている。
明日はカタカタヘルメット団のアジトを襲撃する予定らしい。おそらくボクはまた参加できないけど、なかなか楽しそうだ。
ベッドで横になって瞼を閉じ、誰に向けるわけでもなく、おやすみなさいと呟いた。
...ボクに睡眠の概念はあるのかな?
◇◇◇◇◇◇◇
グッモーニン、世界。
睡眠の概念があったので休息をとれたボクです。
結果だけ言うと、カタカタヘルメット団のアジトは壊滅した。アビドスの勝利である。(大本営発表)
どうやら先生が活躍したらしい。ボクはアヤネさんがオペレーターをしているところを眺めていただけなのでよく分からないが。
そして、みんなが学校に帰還した時のこと。
「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」
「ただいま〜」
「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ」
「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」
みんながぞろぞろと部屋に入って席に着く。
昨日は気が立っているように見えたセリカさんも、今は上機嫌な様子だ。
「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」
「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!」
それが祟って口を滑らせてしまったようだが。
“借金返済って?”
「......あ、わわっ!」
◇◇◇◇◇◇◇
「私は認めない!!」
アヤネさんの止める声も聞かず、セリカさんは部屋から出ていってしまった。ノノミさんもセリカさんの様子を見てくると言って退出し、ボクと先生を含めた五人が残った。何があったのかと言えば、クズ共の所為で差し伸べられた手を信じることの出来なくなった少女が、救いの手を叩き落として逃げてしまったという話だ。まあよくあることだろう。
そしてセリカさんとノノミさんが抜けた後、ホシノさんが語り始めた。
曰く、アビドス高校には借金があるそうで、その額なんと9億6235万円。そんな途方も無い額を返済しなければならず、できない場合は廃校手続きを取らざるを得なくなるらしい。
だが実際に完済できる可能性は0%に近く、ほとんどの生徒はアビドスを捨て、彼女達のような有志だけが残ったそうだ。
悪徳業者に頼るとロクな目に遭わないというのがよく分かる。一方で相手がいつ終わるかも分からない自然災害では幾ら金を借りようがどうしようもないのではとも思うが。
「私達の力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で......弾薬も補給品も、底をついてしまっています」
「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生とカゲ、あなた達が初めて」
「......まあ、そういうつまらない話だよ」
そう締めたホシノさんは少し沈んだ顔をしていたがすぐいつも通りの気の抜けた笑みを浮かべる。
「で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけ〜」
「もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし」
「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない」
.........うーん。
“......私も対策委員会の一員として、一緒に頑張るよ。見捨てて戻るなんてことは絶対にしない”
先生はどうせそう答えるだろうと思っていたけど、ボクは何かするべきかな。アビドスの将来だとか、そんなのどうでもいいし。
でもなぁ、右も左も分からないところを助けてもらって住処まで与えてもらったのに、何もしないのは流石にダサいよなぁ。せっかく美少女アンドロイドになっても、それでは台無しだ。
ふと視線を先生に向けると、目が合った。
“ねえ、カゲはどうしたい?”
圧をかけないでください。冗談です。協力します。
ここで逃げても誰も責めないだろうけど情けなくて自害したくなるので。二度と美少女アンドロイドを名乗れないし、そうなったら悲しいと思うので。
「......へえ、二人とも変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」
それは本当にそうだと思う。こんな面倒事に巻き込まれるのなら、普通は見捨てる。ボクは自分の面子を守るためだけど、先生の場合はよく分からない。ただの偽善者ならばそこまでしないだろうし、本気でそう思っているからなのか。
なんにしろ、みんなは希望を抱いてくれたようだ。
ここに残っている時点で元から捨てていなかった気もするけど、「先生」という明確...な味方ができたから元あったそれが大きくなったのかもしれない。
こちらにこっそりとサムズアップをしている先生へ心の中でサムズダウンを返しつつ、そう考える。
「......ちぇっ」
ドアの前で聞き耳を立てていたセリカさんの気配には気付かなかったことにしておこう。