天才幼馴染の学び合い   作:ひまんちゅ

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「説明できる」は理解の証明

次の放課後。

図書室の奥には、もう一人見学者が増えていた。理科が得意な男子、宮地(みやじ)だ。

 

「確率ってさ、結局、公式覚えるだけだと思ってた」

宮地が言う。

 

悠真が即答する。

 

「覚えてもいいけど、覚えるほど混乱するやつもある」

 

澪は頷く。

 

「だから、“公式”の前に“定義”。

確率は、場合の数が分かったあとの話」

 

宮地が腕を組む。

 

「でも場合の数って、数え漏れが怖いんだよ」

 

澪はここで、少しだけ違う話に切り替えた。

 

「いい質問。じゃあ、“数え漏れ”を防ぐ方法。

分類して、漏れなく、ダブりなく」

 

悠真が指で机をトントンと叩く。

 

「いわゆるMECE」

 

宮地が「それ経営のやつじゃん」と笑うと、澪が冷静に返す。

 

「学問のコツは、だいたい共通。

数学も、分類ができないと事故る」

 

そして澪は、軽く例題を出した。

 

「じゃあ、実践。

“1〜6の目が出るサイコロを3回振る。出目の合計がちょうど10になる回数”を数える」

 

咲が「えっ」と固まる。

宮地が「いきなり重い」と言う。

 

悠真が言う。

 

「大丈夫。分類でいける」

 

澪は“分類”を宣言する。

 

「3つの数の和が10。

1〜6の範囲。

まず“最大値”を固定して分類する」

 

宮地が「最大値?」と聞く。

 

「例えば最大が6のとき、残り2つの和は4。

(1,3)(2,2)(3,1) の3通り。

ただし順序があるから、並べ替えも数える」

 

咲が混乱しかけると、悠真がすかさず補助を入れる。

 

「ここで“順序あり”なのは、3回振るから。

(6,1,3)と(6,3,1)は違う」

 

澪が頷き、さらに進める。

 

「最大が5のとき、残り2つの和は5。

(1,4)(2,3)(3,2)(4,1) の4通り」

 

宮地が「最大が4だと?」と聞く。

 

「最大が4なら残り2つの和は6。

(1,5)は無理、5は出ない。

(2,4)(3,3)(4,2) の3通り。

ただし最大が4だから、残りの4が“最大とタイ”になるのはOK」

 

咲が「分類ってこういうことか……」と小さく言った。

 

悠真が笑いながらまとめる。

 

「で、今のは“骨組み”。

実際に並べ替えまで含めて数えるときは、

同じ数があるときは重複に注意。

ここが“ダブりなく”の部分」

 

澪が最後に刺す。

 

「この話、解けるようになる以上に大事なのは、

他人に説明できるようになること。

説明できるって、理解の証明だから」

 

咲が小さく頷いた。

 

「……じゃあ次、私が説明してみてもいい?」

 

澪は嬉しそうに見えないくらい平然と、でも確かに優しい声で言った。

 

「うん。やってみて」

 

悠真はそのやり取りを見ながら、また思った。

この時間は、学力のためだけじゃない。

 

二人の間にある“長い何か”が、

勉強という形を借りて、毎日更新されていく。

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