天才幼馴染の学び合い   作:ひまんちゅ

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読解は「論理」と「感情」の二重奏

参加者が増えた。

一年生の女子は、紺野(こんの)結衣(ゆい)。国語が苦手で、特に現代文の選択肢で迷うタイプらしい。

 

「数学の会じゃないんですか……?」

結衣が小声で言う。

 

悠真が笑う。

 

「数学もやるし、国語もやる。澪が数学担当で、俺が文章担当」

 

澪が淡々と補足する。

 

「互いの弱点を補う。合理的」

 

結衣は目をぱちぱちさせた。

 

「……トップの二人が、弱点?」

 

悠真が肩をすくめる。

 

「あるよ。俺、計算が荒くなる時がある」

 

澪がすぐ刺す。

 

「“ある”じゃない。“よく”」

 

「そこはフォローして?」

 

澪は結衣に向き直った。

 

「結衣さんは、現代文のどこが苦手?」

 

結衣は迷って、正直に言った。

 

「……なんか、どれもそれっぽく見えて、選べないです。

“筆者が言いたいこと”が、ふわっとしてて」

 

悠真は、その言い方を否定しない。

 

「うん、普通。

現代文って、“言葉の空気”で選ぶと外れる」

 

結衣が「えっ」と顔を上げる。

 

「じゃあ、どうするんですか」

 

悠真はノートに二つ書いた。

 

論理(根拠)

 

感情(ニュアンス)

 

「現代文はこの二重。

でも入試の選択肢は、基本“論理”で切る」

 

澪が横から入る。

 

「数学と同じ。根拠がないものは不採用」

 

結衣が苦笑する。

 

「数学こわい……」

 

悠真が言った。

 

「じゃあ、超ミニ練習。

この文を読む」

 

彼は短い文を作って、紙に書く。

 

「彼は努力を否定しない。だが、努力だけを信奉する態度を危ういとも感じている。」

「筆者(語り手)の立場は?」

 

結衣が迷う。

 

「努力は……大事だと思ってる?でも、努力だけじゃダメ……?」

 

悠真が頷く。

 

「そう。で、選択肢がこうだったら?」

 

A:努力は無意味だ

B:努力は重要だが万能ではない

C:努力さえすれば全て解決する

D:努力する人間は愚かだ

 

結衣は「B」と即答した。

 

澪が言う。

 

「今のは根拠が“否定しない”“だが”“危うい”。接続語で論理が決まる」

 

結衣が驚く。

 

「接続語……」

 

悠真が笑う。

 

「現代文って、接続語と指示語を追うだけで、かなり勝てる。

気分じゃない。ルールがある」

 

結衣は少しだけ顔が明るくなった。

 

「……国語にも、数学みたいなルールがあるんだ」

 

澪がさらっと言う。

 

「国語は数学より複雑。曖昧さがあるから。

でも、その曖昧さを扱うために“根拠”を集める」

 

宮地が「それ研究じゃん」と笑う。

 

悠真は結衣のノートを見て、柔らかい声で言った。

 

「結衣さん。

迷ったら、“自分の気持ち”じゃなくて、“本文に書いてあること”に戻る。

これだけで違う」

 

その言い方が、結衣には優しすぎるくらい優しかった。

 

澪は横で、ほんの少しだけ視線を落とした。

悠真の“人に向ける優しさ”は、澪の知らないところで誰かを救う。

それを、澪は誇らしくも、少しだけ悔しく思う。

 

——そういう感情を、澪はまだうまく言葉にできない。

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