天才幼馴染の学び合い   作:ひまんちゅ

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勉強会の名前と、噂の正体

参加者が増えると、場所が足りなくなる。

一つのテーブル、六人分の席が埋まった図書室の奥は、いつの間にか“いつメン”の空気になっていた。

 

学年トップ2の悠真と澪に、彼らに勉強を教わっている咲、宮地、結衣。

さらにもう一人、英語が得意な男子―久我(くが)玲司(れいじ)―も顔を出し始めた。

 

「この集まり、もはや部活じゃない?」

宮地が言う。

 

咲が笑う。

 

「顧問はいないけどね」

 

悠真が言った。

 

「じゃあ名前でもつけてみる?」

 

澪が即答する。

 

「不要。目的がぶれる」

 

「朝霧さん、合理的すぎる」

咲が笑う。

 

結衣が小声で言う。

 

「でも……名前があると、入りやすいかも」

 

澪は一瞬黙って、結衣を見る。

“入りやすい”という言葉は、澪にとって重要だった。

彼女は自分が“入りにくい人間”だと知っている。

 

「……じゃあ、機能的な名前」

 

悠真がにやっとする。

 

「“トップ2塾”とか?」

 

咲が吹き出す。

 

「それ、嫌味すぎる!」

 

澪が即却下する。

 

「却下」

 

宮地が言った。

 

「“図書室ゼミ”とかどう?」

 

「まあ、無難」

澪が言う。

 

悠真がふっと思い出したように言う。

 

「そういえばさ。噂、聞いたよ。

“二人は前世で夫婦”ってやつ」

 

咲が「やめなよ!」と言い、宮地が「有名だよな」と笑う。

結衣は「そんな……」と赤くなる。

 

澪はペンを置いた。

 

「……根拠は?」

 

悠真が即答する。

 

「息が合いすぎ」

 

「それは観測結果であって、因果じゃない」

 

「澪っぽい返し」

 

澪は少しだけ目線を逸らす。

 

「私は、幼馴染だからだと思う」

 

悠真は軽く頷いて、でも言葉は止めなかった。

 

「幼馴染ってだけで、ここまで“会話が続く”の、珍しくない?」

 

澪は答えない。

その沈黙が、なぜか図書室の空気を一段静かにした。

 

咲が慌てて話題を戻す。

 

「きょ、今日は何やるの?次、英語?」

 

すると悠真が、少しだけ笑って言った。

 

「じゃあ英語。

でも“勉強としての英語”じゃなくて、

“言語としての英語”」

 

澪がペンを取り直して、淡々と言う。

 

「つまり、構造の話。

受験にも効く」

 

結衣が目を輝かせる。

 

「受験に効く“構造”……!」

 

悠真は、その顔を見て、心の中で小さく思う。

この勉強会は、ただ二人が楽しいだけじゃなくなってきた。

 

誰かが、“分かった”と言って笑う。

誰かが、“できるかも”と言って前を見る。

 

それが積み重なると、この場所に意味が生まれる。

 

そして澪は、ノートの隅に小さく書いた。

 

「図書室ゼミ」

 

誰にも見えないくらい小さな文字。

でも、それは確かに、何かが始まった証拠だった。

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