天才幼馴染の学び合い 作:ひまんちゅ
「英語は得意だけど、説明は苦手」
玲司が言う。自信はあるのに、言葉が不器用なタイプだ。
悠真は頷いた。
「分かる。できるのと、教えるのは別」
澪が淡々と続ける。
「教えると理解が深まる。自分の穴が見えるから」
咲が笑う。
「朝霧さん、それ言い方が厳しい」
「事実」
悠真が手を叩く。
「じゃあ今日のテーマ。
英語は“語順”が命」
結衣が小さく手を上げる。
「私、単語を覚えても読めないです……」
「それは普通」
悠真はすぐに肯定する。
「単語は材料。
でも文章は“組み立て方”。英語の組み立て方は日本語と違う」
澪が、ノートに大きく書く。
S V O(主語・動詞・目的語)
「英語は、まず“誰が(S)何をする(V)”を置く。
だから読むときも、この順番で拾えばいい」
玲司が頷く。
「俺も感覚的にそうしてる」
悠真は例文を出した。
The girl who lives next door always helps my grandmother.
結衣が固まる。
「長い……」
悠真が笑う。
「長い文は、骨だけ拾う。
まず主語と動詞。
“the girl” が主語、動詞は “helps”」
澪が補足する。
「“who lives next door” は主語の説明。
先に切って、主語を短くすると楽」
悠真が、紙に分解して書く。
主語:The girl
主語の説明:who lives next door(隣に住んでる)
副詞:always
動詞:helps
目的語:my grandmother
「骨に戻すと、
The girl always helps my grandmother.
“隣に住んでる女の子が、いつも私の祖母を助ける”」
結衣は目を丸くした。
「……読めた……!」
咲が嬉しそうに笑う。
「すごいじゃん」
澪は静かに言った。
「今のは“構造”を見ただけ。単語力じゃない」
玲司が、ふと疑問を投げる。
「でもさ、関係代名詞とかって、結局“慣れ”じゃない?」
悠真は首を振る。
「慣れに見えるけど、ルールがある。
関係代名詞は、“名詞に説明文をくっつけるテープ”」
澪が、さらっと例える。
「数学で言う括弧」
玲司が笑う。
「それ分かりやすいな」
結衣が小さくつぶやいた。
「英語って、怖いけど……ちょっとパズルみたい」
悠真が頷く。
「そう。パズルだと思えたら勝ち」
澪はノートの端に、今日のまとめを書いた。
まずSとVを探す
長い名詞句は「説明」を切る
関係代名詞は「テープ(括弧)」
そして、澪は悠真を横目で見た。
悠真は、人が怖がっているところを見つけるのが上手い。
怖さの正体を言葉にして、ほどく。
澪はそれができないわけじゃない。
でも悠真ほど自然ではない。
——だから、いつも少しだけ悔しい。