俺はみんなを支えながら、入渠ドックに到着した。
(うわ……ここ、ゲームみたいに広大な風呂みたいなドックだ……みんな一斉に入るのかよ……金剛のデカパイが湯にプカプカ浮かんで湯気で透けるとか、比叡のムチムチ太ももが水滴で光るとか、雷のプニプニ幼フェチボディが湯に沈んで泡立つとか、曙のツンツンした表情で濡れた髪が張り付くとか……エロすぎてヤバい! マジで理性が吹っ飛ぶわ……こんな状況で勃起とか最悪だろ! いや、見るな! 絶対見るな! 変態心を全力で封印しろ、俺!)
艦娘たちに囲まれて、心臓がバクバクしっぱなし。みんなの傷が治っていく様子を見てるだけで、胸が熱くなる。でもこの光景、現実だぜ……このエロい湯煙と裸体みたいな光景、絶対に一生忘れねぇ。高校生の俺には刺激が強すぎるけど、それ以上に、みんなを救えてる実感が嬉しい。
近くの雷に相談した。
「雷……みんなを入渠させるには、どうすればいい?」
雷が少し無理をした明るい顔で、
「……ここに、みんな入るだけ……資源があれば、自動で……」
「わかった。みんな、入渠して。俺はちょっと、食堂に戻るよ。ご飯作って待ってるからな」
俺はそう指示を出して、みんなをドックに残し、先程の部屋から繋がる食堂に戻ってきた。
(食堂……ここで何か食べ物作れないかな。みんなお腹空いてるはずだぜ。腹減ってちゃ、傷も治りにくぃし、心も折れちまうだろ。俺が作って、みんなに笑顔を届けたい)
部屋を見回す。埃っぽくて、荒れ放題。棚は傾き、テーブルは傷だらけ。でも、まだ使える。
妖精さんがいるか確認したけど、
……いた。しかも、20人以上。
小さな妖精さんたちが、棚の上やテーブルにちょこちょこ集まってる。みんな元気いっぱいだ。
一人の妖精さんが、金剛っぽい元気な感じで近づいてきた。
「てーとく! おかえりなさいでーす! やっと来たっぽい!」
もう一人は、駆逐艦みたいな可愛らしい感じ。
「ごはん、つくるの? おてつだいするっぽい! わーい!」
天龍みたいな姉御肌。
「よし、みんなでやるぜ。てーとく、しきってくれよな」
睦月型っぽい幼い感じの。
「にぎにぎ、おにぎりつくりたいなー! 丸く丸く〜」
などなど、20人の妖精さんたちが、それぞれ艦娘の特徴を反映した口調で、わちゃわちゃ集まってくる。まるで本物の艦娘たちみたいに賑やかで、俺の心が少し和む。
だから…俺は笑って、
「みんな、手伝ってくれる? 食材、神様に頼むよ。今日はみんなで最高のご飯作ろうぜ!」
スマホを取り出して、神様に電話をかけた。
「おーい、坊主、どうしたんじゃよ?」
神様の声がすぐに出た。
「神様、ちょっと頼みがあるんだけど……食材、支援してくれない? みんなにご飯作ってあげたいんだ。腹ペコで傷も治りにくいし、心も元気にしてやりてぇ」
「ほうほう、食材じゃよのう。ふむふむ、わしの支援でできるだけやっちゃろうわい。どんなもんが欲しいんじゃよ?」
「えっと……基本的なもの。米、野菜、肉、調味料とか……たくさん! あと、みんなが喜ぶようなおかずも!」
「よしよし、わかったぞい! 今から送ってやるわい! 腹いっぱい食わせてやれよ」
スマホが光って、通知が来た。
【食材セット × 1 支援完了】
【米 × 100kg】
【野菜詰め合わせ × 50】
【肉類 × 30kg】
【調味料一式 × 1】
【その他厨房用品 × 1】
(すげぇ……これで料理できるぜ! マジ神様、最高! みんな喜ぶ顔が見たい)
「ありがとう、神様! あ、あと……あのクズ提督の後始末、どうしようかと思って……頼めない?」
「ふむ、クズ提督じゃのう。わしが、憲兵呼んでやるよ。海軍に引き渡して、きちんと始末させてやるんじゃよ」
「マジで? 助かるよ、神様」
「まかせておけよ。もうすぐ行くからな」
電話が切れた後、すぐにドアの外から音がした。
バタバタと、憲兵の集団が入ってきた。
厳しい顔の男たちが、クズ提督を縄で縛って、引きずり出していく。
「この男、海軍本部に引き渡します。神様の指示通り、厳罰に処します」
俺は頷いて、見送った。
(これで、後腐れなしだ…! みんな安心して治せるぜ。もう誰も怖がらなくていい)
妖精さんたちが、わいわい言いながら食材を運び始める。
「てーとく、こっちきってー! 米研ぐよ!」
「おにぎり、にぎにぎー! 具は何入れる?」
「よしよし、みんなでやるか! 野菜切るぜ!」
俺はみんなと一緒に、料理を始めた。
簡単なおにぎりとおかず。みんなで手分けして、楽しく、真心込めて作る。妖精さんたちの小さな手が忙しく動き、笑い声が食堂に響く。俺も包丁を握って、みんなの分を丁寧に作った。
(これ食ったら、みんな笑顔になるかな……エロいボディも元気になって、ますますヤバくなるけど……いや、守るんだよ、俺! みんなの笑顔が一番だぜ)
入渠ドックの湯気が、ゆっくりと天井へ昇っていく。
あたしは目を閉じたまま、湯の中に体を預けていた。
傷口がじんわり熱い。けど、それは痛みじゃない。治っていく感覚だ。
ずっと慣れ親しんだ痛みが、少しずつ消えていく。それが逆に落ち着かなくて、あたしは小さく息を吐いた。
「……はぁ……」
隣では龍田が眠っている。呼吸はまだ浅い。顔色も悪いままだ。けど――生きてる。
それだけで十分だった。
あたしはそっと手を伸ばして、龍田の指先に触れた。温かい。ちゃんと温かい。それだけで胸の奥が少し軽くなる。
「……ったく」
思わず小さく笑いが漏れた。あんな形で助けられるなんて、思ってもみなかった。あの提督。
いや――新しい提督。
あいつ、何なんだ本当に。急に現れて、クズ野郎をぶっ飛ばして。資源出して。修理させて。飯まで用意してるらしい。意味が分からねぇ。普通の提督じゃねぇのは確かだ。
それに――
思い出す。あいつが刀を拾った時のこと。あたしの刀だ。折れてもいねぇ、まだ使える刀。
あたし自身がもう動けなかったのに、あいつはそれを拾った。「借りるね、天龍」あんな状況で、そんなこと言う奴がいるかよ。
普通は黙って使う。命かかってんだからな。でもあいつは違った。ちゃんと許可を取った。あたしを「物」としてじゃなく、ちゃんと「艦娘」として扱った。
……あのクズとは、真逆だ。あいつは、俺たちを「兵器」じゃなく「仲間」として見てくれた。それが、胸に刺さる。
湯気の向こうで、駆逐艦の連中が話してる声が聞こえる。
「助かったね……」
「うん……」
「もう叩かれないよね……?」
小さい声だ。怯えた声だ。でも――少しだけ明るい。
あいつら、ずっと一緒だったからな。殴られるのも。罰受けるのも。泣くのも。全部一緒だった。だから今も、固まってる。それが少し安心なんだろう。
反対側では戦艦連中が静かに話している。声は聞こえない。けど分かる。多分まだ疑ってる。無理もねぇ。
今まで何人も提督が来た。優しいこと言って、すぐ消えた。中には、途中からクズに変わった奴もいた。だから信じられない。それが普通だ。
あたしだって――最初は疑った。今も少し疑ってる。あんな都合のいい奴がいるわけねぇってな。
でもよ。助けられたのは事実だ。龍田も生きてる。みんなも治ってる。それは現実だ。
湯の中で拳を握る。力が戻ってきてる。指がちゃんと動く。腕も上がる。
さっきまで死にかけてたのが嘘みてぇだ。
「……すげぇな」
思わず呟いた。資源が潤沢ならここまで治るのか。
いや――違うな。資源だけじゃない。あいつは迷ってはいたな。でも逃げなかった。あの部屋で。
あたしらを見て。逃げなかった。それだけでも十分すげぇよ。
普通は無理だ。あんな光景見たらな。吐くか、逃げるか、固まるかだ。それこそあいつの仲間じゃねぇ限り…
でもあいつは飛び出した。叫んでた。怒ってた。本気で怒ってた。……あれは演技じゃねぇ。
分かる。
長く生きてりゃな。そういうのくらい分かる。
湯気の向こうで、第六駆逐隊のやつらが笑っている。小さな笑い声だ。
久しぶりに聞いた気がする。それだけで胸の奥が少し軽くなる。
あたしは天井を見上げた。
白い。ただの天井だ。でも――もう血はついてない。あの部屋の天井とは違う。静かだ。
悲鳴もない。鞭の音もない。足音に怯える必要もない。
「……終わったんだな」
口に出して、やっと実感した。長かった。本当に長かった。
あたしは目を閉じた。これからどうなるかは分からねぇ。あの提督が本物かどうかも分からねぇ。
でも――今はいい。今だけは信じてやる。
あいつはあたしらを助けた。それだけで十分だ。
龍田の手を軽く握る。
「……なぁ龍田」
返事はない。まだ眠ってる。でも構わねぇ。
「今度の提督はよ……」
少し考えて。少し笑って。小さく呟いた。
「……当たりかもな」
湯気が静かに揺れる。体が軽い。痛みはもうほとんどない。もうすぐ動ける。
そしたら――やることは決まってる。
あたしはゆっくり目を閉じた。
少し休んだら。ちゃんと礼を言わねぇとな。あたしらの提督に。
「……頑張るよ、提督さん」
今度ははっきりと口にした。誰に聞かせるわけでもなく。ただ静かに。でも確かに。
そう誓った。