五話
(どうしてこんな目に…)
ヘンリーは考えた。どうして自分が刑務所にいるのかを。
二日前
鼻歌まじりで帰っていたヘンリー。
「あっ!」
つい手が滑ってしまい、金の延べ棒を川に落としてしまう。
「やばいやばいやばい!」
すぐさま取りに行こうとすると、
「おい、何やってるんだ?」
後ろを振り向くと誰かが立っていた。
「あっ…これは…金の延べ棒を川に落としてしまって拾おうとしたところです。」
そう正直に話すと、
「おまえかぁぁぁぁぁぁ!!!」
と急に発砲してきた。この人の正体はさっきの博物館の警官だったのだ。
という感じで捕まってしまった彼は前科もあったせいで死刑になってしまった。
「おい、お前、死刑の準備をしろ。」
(ここで死ぬわけにはいかない……!)
追い詰められたヘンリーは、咄嗟に目の前にあった巨大な「ハンマー」をひったくった。
一撃で鉄格子を粉砕し、この絶望から抜け出すために。
「うおぉぉぉぉ!!」
渾身の力を込め、頭上高くに振り下ろそうとする。
……だが、あまりにもそのハンマーは重すぎた。
「…………え?」
振り上げた勢いに体が耐えきれず、ヘンリーの体はまるで漫画のように後ろへとひっくり返る。
――ゴンッ!!!
凄まじい衝撃音が響き、運悪く背後の鉄の壁がひしゃげて崩落した。
ヘンリーは重いハンマーを抱えたまま、空いた穴から外へと真っ逆さまに落下していった。
(……この感覚、どこかで……!)
落ちていく彼の脳裏をよぎったのは、数時間前に川へ沈んでいった「あの黄金」の姿だった。
(一応やってみるか。)
次に彼は電話を手に取り、ある電話番号へと電話した。
◻︎◻︎月⚪︎⚪︎日 午前11時
地方裁判所
「これよりヘンリー・スティックミンの法廷を開廷します。」
「検察側、準備完了しております。」
「弁護側も準備完了しています。」
「さて。亜外検事。」
「なんでしょうか、裁判長。」
「ヘンリー・スティックミンは博物館から金の延べ棒を窃盗したということですが、どうやって侵入したでしょう。」
「この接着剤がついた赤いスーツです。屋上に脱ぎ捨てられていました。」
「なるほど…証拠品として受理しましょう。」
(あれ捨てときゃよかったな…)
「しかも!ヘンリースティックミンが使ったとされるテレポーターも展示台の裏に落ちていました!」
「わかりました。それも証拠品として受理しましょう。」
(どんどん証拠品が受理されていく…)
彼は道具を処分していなかったことに後悔している。
「さらに、ヘンリースティックミンが召喚したとされる鳥のようなクリーチャーも捕獲されたのです!」
「なるほど、若羅内くん、本当かね?」
「はい…本当です。クチバシが痛かったです。」
「…わかりました。ヘンリー・スティックミンに判決を言い渡します。」
(今度は……)
そうして手に取ったのは工業用ドリルだった。
「いけぇぇ!」
ドリルを床に突き立て、電源を入れると、石の床を貫く。だが、貫いた先は、
「………」
「………………………………」
ひたすら胃が痛くなるような沈黙が続く。
「お前、誰だ!」
銃を構えられるまでに10秒はかかっただろう。