想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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六章 王位継承編
第101話 光り輝く「想い」


 俺は、彼の名前を聞いた瞬間、思わず目を見開いた。

 

 ――荒木。

 

 その姓に、真っ先に浮かんだのは一人しかいない。

 

「俺の名前は近藤大地《こんどうだいち》だ」

 

 名乗ってから、俺は思わず聞いた。

 

「なあ……荒木って、あの荒木だよな?」

 

 男――燈真《とうま》は、当然だろと言わんばかりに肩をすくめた。

 

「当たり前だろ」

 

 その答えに、俺はさらに踏み込む。

 

「じゃあ……あんた、荒木相馬《あらきそうま》の弟か?」

 

 その瞬間、燈真の目がわずかに細くなる。

 

「なんだよお前。俺の弟のこと知ってるのか」

 

 そして、軽く笑った。

 

「俺は、あいつの兄だ」

 

 ――驚いた。

 

 だって、目の前の男はどう見ても若い。

 どう考えても、荒木さんより年上には見えない。

 

 その表情を見て察したのか、燈真は「あぁ」と声を漏らした。

 

「あー、そうか。この世界だと俺、年齢変わらないんだよ」

 

 軽く頭をかく。

 

「今の現世だと、あいつの方が歳いってるのか。おっさんだな」

 

 そして豪快に笑った。

 

「はははっ」

 

 俺は混乱したまま、問いかける。

 

「……この世界はいったいどこなんだ?」

 

 燈真は空を見上げながら答えた。

 

「ここは現世の裏にある場所」

 

 一拍。

 

「人々の想いの終着点」

 

 そして、俺を見た。

 

「想界《そうかい》って呼ばれてる」

 

 少し考えるようにしてから、付け加える。

 

「まあ、分かりやすく言えば――異世界だな」

 

 異世界。

 

 その言葉に、思わず息が詰まる。

 

「……異世界?」

 

 俺は思い出す。

 

 想界石。

 

 あの瞬間。

 

「俺、想界石に吸い込まれたんだ」

 

 自分でも信じられない話だった。

 

「それで気づいたらここにいた」

 

 燈真は眉をひそめる。

 

「冗談はよせ」

 

「いくら想界師でも、触れただけでここには来ない」

 

 一拍。

 

「ましてや吸い込まれるなんてな」

 

 疑いの視線。

 

 だから俺は、これまでのことを全部話した。

 

 ファズエット。

 

 御生万の襲撃。

 

 落葉松の裏切り。

 

 天舞愛華。

 

 そして、ここに来るまでのすべて。

 

 話を聞き終えた燈真は、頭を抱えた。

 

「……はぁ」

 

 深いため息。

 

「俺がいなくなったせいで、弟はグレて」

 

「嫁は俺を探すために暴れて」

 

「親友は死ぬ」

 

 一拍。

 

「挙句、かわいがってた落葉松《からまつ》が裏切って想界石を狙う」

 

 空を見上げた。

 

「……どこまでもついてねえ男だな、俺は」

 

 少しの沈黙。

 

 だが、燈真はすぐに顔を上げた。

 

「悔やんでも仕方ねえ」

 

「そうなれば、確かに早く現世に戻る必要がある」

 

 俺はすぐ聞いた。

 

「何か手はないのか?」

 

 しかし、燈真は首を振る。

 

「残念だが――」

 

「ここから出る手段はない」

 

 俺の胸が凍る。

 

 燈真は続けた。

 

「この世界と現世は、想界石で繋がってる」

 

 一拍。

 

「だが、この世界の想界石は――」

 

 静かに言った。

 

「俺が壊した」

 

 人想戦争を止めるために。

 

「だから、現世から来ることはできても」

 

「こっちから戻る手段はない」

 

 血の気が引いた。

 

「そんな……」

 

 思わず叫ぶ。

 

「なんとかならないのかよ!」

 

「弟や愛華の命が危ないんだぞ!」

 

 燈真は俺をじっと見た。

 

 そして、静かに言う。

 

「……そうか」

 

「愛華がお前をよこしたのか」

 

 何かを考えるように腕を組む。

 

「お前は、何を頼まれた?」

 

「……あんたを助けてほしいって」

 

 燈真は、少し笑った。

 

「なら話は簡単だ」

 

 一歩近づく。

 

「俺がお前を助けるんじゃない」

 

「お前が俺を助ける」

 

 俺は目を見開く。

 

「つまり――」

 

「お前は、ここを出る手がかりってわけだ」

 

 燈真は遠くを指した。

 

「想界石は壊れた」

 

「だが、台座は残ってる」

 

「そこなら、何か分かるかもしれない」

 

「台座だけでも、想界石の力は少し残ってる」

 

 そうして俺たちは、台座へ向かった。

 

 道中、燈真はこの世界について話してくれた。

 

 甘い果実のこと。

 

 強大な想獣のこと。

 

 そして――

 

 人想戦争の話。

 

 この世界の王は、多岐という男に利用されて殺された。

 

 今、この世界に王はいない。

 

「だから俺が代理で管理してる」

 

 燈真は言った。

 

「だが俺が出ていけば、この世界は荒れる」

 

「その影響は、いずれ現世にも及ぶ」

 

 つまり。

 

 それも解決しなければならない。

 

 やがて。

 

 大自然の奥。

 

 そこに、それはあった。

 

 巨大な台座。

 

 植物に覆われながらも、神々しい存在感を放っている。

 

 俺が近づいた瞬間だった。

 

 ――光。

 

 白いオーラが、俺と台座を包み込む。

 

 燈真の目が見開かれた。

 

「……まさか」

 

 そして、驚いた声で言う。

 

「大地《だいち》」

 

「お前が――」

 

 一拍。

 

「想王《そうおう》の器だったのか」

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