想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第109話 奔流する「想い」

「……やっぱり」

 

 俺は拳を握る。

 

「俺は荒木家のやり方が性に合うぜ!」

 

 改めて、目の前の仲間たちを見る。

 

 号。

 

 吉沢さん。

 

 花崎。

 

 瑠偉。

 

 たとえ偽物だとしても、その姿で立たれるだけで胸が痛んだ。

 

 それでも、俺は前を見る。

 

「たしかに落葉松は強い」

 

「どうしようもないくらいにな」

 

 一歩前へ出る。

 

「だけど」

 

「諦めるわけにはいかない」

 

 拳を握る。

 

「戦いの中で死ぬかもしれない」

 

「それでも――」

 

 俺は仲間たちを真っ直ぐ見た。

 

「俺たちは想界師だ」

 

「想いを胸に戦う」

 

「想いを隠して」

 

「それで生きるなんて」

 

「そんなの耐えられるわけがない」

 

 一拍。

 

「どこまで逃げようとしたって」

 

「想界師であることからは逃げられない」

 

 俺は自分の胸を叩く。

 

「だって――」

 

 もう一度、強く叩く。

 

「ここにある想いは、抑えきれない!」

 

 偽物の仲間たちは黙って俺を見ている。

 

 それでいい。

 

 これは、こいつらに理解させるための言葉じゃない。

 

 俺自身が、俺の想いを確かめるための言葉だ。

 

「見てろよ、みんな」

 

 俺は両拳を天へ掲げる。

 

「俺が活路を開いてやる!」

 

 両拳の甲を合わせる。

 

 想力が渦を巻く。

 

 白い光が、拳の周囲で膨れ上がっていく。

 

「これが俺のやり方だ」

 

「誰も見捨てない」

 

「俺も逃げない」

 

 純力が、想いに呼応するように唸る。

 

「俺の想いは」

 

「誰にも止められない!」

 

 叫ぶ。

 

「フィスト・ペネトレーター!!」

 

 拳から、白い奔流が天へ放たれた。

 

 それはビームのように真っ直ぐ伸び、天井へ激突する。

 

 轟音。

 

 空間が震える。

 

 だが、天井は砕けない。

 

 この試練そのものが、俺の想いを押し返そうとしていた。

 

「……まだだ!」

 

 俺はさらに力を込める。

 

 拳が軋む。

 

 腕が悲鳴を上げる。

 

 それでも止めない。

 

「こんなところで……!」

 

 想いを込める。

 

 ひたすらに。

 

 迷いなく。

 

「俺は、止まらねえ!!」

 

 その瞬間だった。

 

 光が、さらに強くなる。

 

 俺の想いに応えるように、純力が膨張した。

 

 そして――

 

 天井を、貫いた。

 

 白い亀裂が走る。

 

 次の瞬間。

 

 穴の向こうから、光が差し込んだ。

 

 太陽だ。

 

 まるで、暗闇に閉ざされた部屋へ差し込む、一筋の希望みたいに。

 

 その光が、俺を照らす。

 

 仲間たちを照らす。

 

 空間全体を照らす。

 

 照らされた号たちは、ふっと表情を緩めた。

 

 満足したように。

 

 安心したように。

 

 そして――

 

 静かに消えていく。

 

「……やっぱりな」

 

 俺は小さく呟く。

 

 その時だった。

 

 声が響く。

 

「やはり、おぬしは我とは違うようだ」

 

 俺が振り向くと、そこには一人の男が立っていた。

 

 前王――

 

 ガイア。

 

「先ほどぶりだな、大地」

 

 俺は目を細める。

 

「ガイア……」

 

 ガイアは静かに続けた。

 

「この仲間の試練は、どんな結末であれ、ここまで来た者は王となる」

 

 俺は眉をひそめた。

 

「……どういうことだ?」

 

「この試練だけは」

 

 ガイアは言う。

 

「王になるための選定ではない」

 

 一拍。

 

「どんな王になるかを示す」

 

「予言のようなものだ」

 

 その言葉に、俺は息を呑んだ。

 

 ガイアは遠くを見るような目をした。

 

「我は、この試練で耐え切れなかった」

 

「仲間を……殺した」

 

 重い声だった。

 

「その後、我は力に飲まれていった」

 

「最後には多岐という人間に利用され」

 

「民も、仲間も守れぬまま死んだ」

 

 拳を握る。

 

 悔しさが、滲んでいた。

 

「だからこそ」

 

「おぬしが王となり、同じ未来を辿ることを恐れた」

 

 ガイアは俺を見る。

 

「だが」

 

「それは我の間違いだった」

 

 一歩近づく。

 

「おぬしは仲間を見捨てなかった」

 

「自分の想いも貫いた」

 

「そんなおぬしは――」

 

 静かに問う。

 

「なぜ王になろうとする?」

 

 俺は少し考えた。

 

 そして、正直に答える。

 

「別に、王そのものには興味ねえよ」

 

 ガイアの目がわずかに揺れる。

 

「俺は、違う世界にいる仲間を救うために」

 

「ここを出なきゃならない」

 

「だから王の力が欲しかった」

 

 一拍。

 

「最初は、それだけだった」

 

 でも。

 

 俺は神殿へ来るまでに、この世界を見てきた。

 

 火山。

 

 海。

 

 想獣たち。

 

 どれも確かに、生きていた。

 

「この世界を旅して分かったんだ」

 

「想獣だって、ちゃんと生きてる」

 

「俺たちと完全に分かり合えるかは分からない」

 

「共存だって簡単じゃないと思う」

 

 それでも。

 

 俺は拳を握る。

 

「それでも、もし俺が王になるなら」

 

「最善を尽くす」

 

「だって――」

 

 胸の奥から、言葉が出る。

 

「もう後悔するつもりはないからな」

 

 真っ直ぐ、ガイアを見る。

 

「救ってやるぜ」

 

「仲間も」

 

「この世界もな!」

 

 沈黙。

 

 だがその沈黙は、重くはなかった。

 

 ガイアは目を見開いていた。

 

 やがて。

 

 その顔に、ゆっくりと笑みが浮かぶ。

 

「……そうか」

 

「そうか」

 

 嬉しそうだった。

 

 どこか救われたように。

 

「ならば」

 

「おぬしを信じよう」

 

 その言葉と同時に、世界が白く染まる。

 

 視界が揺れる。

 

 意識が遠のく。

 

 そして――

 

 俺は目を覚ました。

 

 体を起こす。

 

 周囲を見回す。

 

 そこは、もう試練の空間ではなかった。

 

 目の前に、一人の男が立っている。

 

 見知らぬ男だった。

 

 だが、その存在感は異様だった。

 

 男は、にこりと笑う。

 

「おはよう、大地君」

 

 軽い声。

 

「君は合格だ」

 

 そう言って、男は俺に向かって指を鳴らした。

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