想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
「さて――まだやるかい?」
ジャスティスマンが、逃げ腰のチンピラたちに向かって言う。
その瞬間だった。
「ひぃぃぃっ!?」
「兄貴! 逃げますぜ!」
チンピラたちは悲鳴を上げながら、大男を引きずって逃げていった。
ジャスティスマンは胸を張る。
「正義は必ず勝つのだよ!」
「わはははははっ!」
高笑いが、崩壊した街に響く。
俺は思わず引いた。
なんだこいつ。
するとジャスティスマンは、くるりとこちらを向いた。
「まさか、まだジャパンの想界師が残っているとは」
一拍。
「実に驚きだ」
その言葉に、俺は目を細めた。
想界師を知っている。
ただの変人じゃない。
俺は刀に手をかける。
「……あんた、何者だ」
すると男は、わざとらしく肩をすくめた。
「安心したまえ」
「私もジャパン風に言えば、想界師というやつさ」
そのまま、びしっとポーズを決める。
「アメリカでライオン人間と戦った傷を癒しに、愛しのジャパンへ来たのだが――」
一拍。
「いつの間にかジャパンがアニメみたいな世界になっていて、実に驚いたよ」
「さすがジャパンだ!」
「はははは!」
……聞いたことはあった。
海外にも強力な想界師がいると。
だが、まさかこんな変態だとは思わなかった。
「変態とは失礼だな」
男は真顔で言う。
「私はジャスティスマンだ」
「いや、本名は」
俺が聞くと、男は露骨につまらなそうな顔をした。
「まったく」
「ジャパンの想界師は真面目すぎる」
そして、仕方なさそうに手を差し出す。
「ハワードと呼んでくれ、ボーイ」
俺も手を出す。
「鳴海号だ」
握手。
ハワードは、ぱっと表情を明るくした。
「おおっ、ナルミゴー!」
「シテンの一人か!」
俺は少し眉をひそめる。
「知ってるのか」
「もちろんとも」
「私も光栄だよ」
そこまで言われると、少し調子が狂う。
だが今は、それよりも話が先だ。
「実は――」
俺はハワードに、知っている限りの情報を渡した。
落葉松のこと。
空に浮かぶ御沁。
想界石との融合。
黒等級の想獣の群れ。
この際、疑っている余裕はない。
話を聞き終えたハワードは、顎に手を当てた。
「ミスターカラマツが、こんなショーを始めるとはね」
「困ったボーイだ」
一拍。
「実は私も、一度あの浮島に近づこうとしたんだ」
「だが、黒等級の群れにやられてしまってね」
ビリーが吹き出す。
「やっぱ負けてんじゃねえか!」
「だが!」
ハワードは人差し指を立てる。
「次は必ずリベンジを果たす!」
やけに前向きだった。
「……なら協力しようぜ」
俺が言うと、ハワードはすぐに頷いた。
「もちろんだ」
「困っている者は見捨てておけない」
そう言って、俺が抱えている子供を見る。
「まずは、その少年を安全な場所へ連れて行こう」
「どこにだ?」
「私が黒等級の群れにやられた時に、匿ってくれた場所がある」
ハワードはくるりと背を向けた。
「来たまえ」
勢いがすごい。
俺は少し呆れつつも、子供を背負い直してその後を追った。