想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
ハワードが向かった先は、地下鉄の入り口だった。
崩れた階段を下りる。
暗い通路を進む。
さらに奥へ。
すると、遠くに明かりが見えた。
人の声もする。
そこには、生存者たちが身を寄せ合って暮らしていた。
「おおっ、ジャスティスマン!」
「無事だったか!」
住民たちが声を上げる。
ハワードは胸を張った。
「私は無敵さ!」
「はっはっは!」
すると、すぐに別の住民が笑いながら言う。
「何言ってんだ」
「ここ来た時、あんたボロ雑巾みたいだったろ」
避難所に笑いが広がる。
ハワードは咳払いした。
「……細かいことは気にしない」
「それより、今日は子供と戦士を拾ってきた」
俺は背中の子供を住民に渡す。
「外で倒れてた子だ」
「頼む」
住民は頷き、少年を受け取った。
「安心しな」
「ここは代表が守ってる」
「代表?」
俺が聞き返した、その時だった。
奥の暗闇から、一人の男が歩いてくる。
「まさか」
「この世界で君と再会できるとはね」
聞き覚えのある声。
「人生、何があるか分からないものだ」
そして、男は明かりの下へ姿を現した。
「久しぶりだね、号君」
「――安室仁《あむろじん》だ」
俺は思わず目を見開いた。
「……あんた」
「正藤会《せいどうかい》のボスか!」
ハワードが目を丸くする。
「なんだ、ビッグボスと知り合いだったのか、ゴー!」
「ああ」
俺は短く答える。
「任務で協力したことがある」
そして安室を見る。
「でも、なんであんたがここに」
安室は静かに答えた。
「地形が変わって分かりづらくなっているが――」
「ここは転神町《てんしんちょう》だ」
俺は周囲を見回した。
言われてみれば、面影はある。
「私は他の連中と違って、もともと式想を保有していたようでね」
「そのおかげで、偽りの記憶を防げたらしい」
一拍。
「だから、この町で怪物やごろつきを相手にしながら、住民を守っていたのさ」
なるほど。
この避難所が機能している理由が分かった。
「あんたがいるなら心強い」
俺が言うと、安室も小さく笑った。
「それは私も同じだよ」
そのまま俺は、安室にも事情を話した。
落葉松のこと。
御沁のこと。
想界石のこと。
今の東京の異常の中心に、あいつがいることを。
話を聞き終えた安室は、少し考え込んだ。
「……なるほどね」
「そんな事態になっていたとは」
一拍。
「いくら私でも、一人で戦い続けるには限界がある」
「早く落葉松《からまつ》という男を倒さなければ、いずれジリ貧になるだろう」
安室は周囲の避難民たちに視線を向けた。
「戦えるほど強い式想を持つ人間は少ない」
「それに、いたとしても鍛え上げられた想界師じゃない」
「素人ばかりだ」
「人数が必要だね」
「それに――」
空を見上げるように言う。
「あの浮島に近づく方法も考えなければならない」
問題は山積みだった。
だが、俺には一つ心当たりがあった。
「近づく方法なら、考えがある」
安室が興味深そうに見る。
「ほう?」
「荒木家には転移の門がある」
「荒木家の屋敷に行ければ、動かせるかもしれない」
ビリーがすぐに反応した。
「なるほど、ワープってわけか!」
俺は頷く。
「東京に入ってすぐ、そこへ向かった」
「だが、黒等級の想獣が多すぎて近づけなかった」
「人手がいる」
安室は腕を組み、少し考えたあとで言った。
「分かった」
「私の方でも、戦える人間を探してみよう」
その言葉に、俺は息を吐いた。
「助かる」
「俺も動けるやつを探す」
安室はふっと笑った。
「不謹慎かもしれないが」
「また君と、ここで協力関係を結ぶことになるとはね」
そう言って、手を差し出してくる。
「運命は恐ろしいよ」
俺もその手を握った。
「……ああ」
「まったくだ」