想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
俺は戦力を増やすため、能力者の情報を集めていた。
住民や仁さんから話を聞いた結果、この町には“四天王”と呼ばれる連中がいるらしい。
一人目は、ビッグボスこと安室仁。
二人目は、想獣を崇める想世教の教祖――和田京吉《わだきょうきち》。
三人目は、正義の味方ことジャスティスマン。
そして四人目が――
“天災”と呼ばれる少女だ。
他の連中も戦力にしたい。
だが、和田だけは確実に相容れないだろう。
想獣崇拝。
そんなやつと手を組めるとは思えない。
なら、狙うべきは少女の方だ。
話が通じる可能性があるなら、そっちに賭けるしかない。
俺はハワードの背中にしがみついていた。
ハワードは空を飛べる。
実際、それで浮島まで向かったらしい。
そして黒等級の想獣の群れに返り討ちにされたらしい。
情けないのかすごいのか、いまだによく分からない男だ。
力の全容も掴めない。
だが、割となんでもできる。
本人と同じで自由すぎる能力だった。
「着いたぞ、ボーイ!」
ハワードが叫ぶ。
俺は地面に降り立ち、周囲を見回した。
「ここが、四天王の一人がいる場所か……」
崩れた街。
ひび割れた道路。
人の気配は少ない。
だが、妙な圧がある。
そうして二人で歩いていると、前方から怒鳴り声が聞こえた。
「おい、嬢ちゃん」
「ここはガキが来る場所じゃねえぞ」
ごろつきだった。
数人いる。
囲まれているのは、一人の少女。
小柄で、見た目だけなら本当にただの子供に見えた。
ごろつきの一人が、拳を振り上げる。
俺は反射的に止めに入ろうとした。
だが、その瞬間。
少女が笑った。
「アハハ」
「おじさん、遊んでくれるの?」
次の瞬間。
ごろつきの体が壁に叩きつけられた。
「ぐはっ!?」
残った連中が顔を引きつらせる。
「て、てめぇ……まさか、天災か!?」
少女は口を尖らせた。
「ひどいなあ、おじさん」
「女の子にそんな名前で呼んじゃだめだよ」
にこりと笑う。
「私には、クレッシェっていうかわいい名前があるんだから」
その声は無邪気だった。
だが、ごろつきの首が締まっていく。
「や、やめ……て……」
「うーん」
クレッシェは首を傾げる。
「お母さんに、やりすぎたらまた怒られちゃうから」
一拍。
「手足もぐだけで済ませてあげるね」
そう言って、手をかざす。
すると、ごろつきの手足に見えない圧力がかかった。
「ぐぁあああああ!!」
「やめてくれ!!」
悲鳴が響く。
俺が飛び出そうとした、その時だった。
先にハワードが前へ出た。
「やめたまえ、少女!」
びしっと指をさす。
「それ以上やるなら、君に正義を向けることになる!」
クレッシェが不機嫌そうに眉をひそめる。
「なによ、あんた」
「私の邪魔するつもり?」
その瞬間。
周囲の瓦礫や鉄骨が、ふわりと浮いた。
クレッシェ自身の体も宙に浮かび上がる。
「私に勝てるとでも思ってるの?」
ハワードも堂々と胸を張る。
「残念だが」
「正義は執行される!」
戦いが始まる。
――そう思った瞬間。
俺は二人の間に飛び込んだ。
「やめろ!」
ハワードが目をむく。
「ゴー!?」
「戦いに来たんじゃない!」
俺はクレッシェを見る。
「俺たちは、お前を止めに来たわけじゃない」
だがハワードは納得していない。
「どきたまえ!」
「あの少女は危険だ!」
「止める必要がある!」
クレッシェも睨んでくる。
「邪魔よ」
「あんたも邪魔するなら、ボコボコにしてやる」
俺は舌打ちしそうになるのを堪えた。
「待ってくれ、ハワード」
「目的は戦力を増やすことだろ」
「そのために、こいつを説得しに来たんだ」
「どうか収めてくれ」
ハワードはしばらく黙っていたが、やがて大げさに肩をすくめた。
「……いいだろう」
「ゴーに免じて、一度だけチャンスをやる」
「助かる」
俺はすぐクレッシェへ向き直る。
「あんたが四天王なんだな」
クレッシェは浮いたまま、つまらなそうに言った。
「あーあ」
「しらけちゃった」
「つまんないのー」
それでも俺は続ける。
「協力してほしい」
「この世界をめちゃくちゃにしたやつを倒すために」
「東京を守るために」
クレッシェは目をぱちくりさせたあと、あっさり言った。
「やだ」
「なっ……」
「私、この世界嫌いじゃないもん」
俺は眉をひそめる。
「……あんたも記憶を持ってるのか?」
「記憶?」
クレッシェは首を傾げた。
「なにそれ、知らない」
「私は、大好きなお母さんといられればそれでいいの」
一拍。
「世界がどうなろうとね」
俺は食い下がる。
「そのお母さんだって危ないんだぞ」
だがクレッシェは即答した。
「それはないわ」
「お母さんは最強だもん」
その言い方に、妙な確信があった。
「なら、お母さんに会わせてくれ」
俺が言うと、クレッシェは露骨に顔をしかめた。
「はぁぁ?」
「絶対やだ」
「お母さんに、けだものを近づけるわけないでしょ」
そう言うなり、くるりと背を向ける。
「もう帰る」
そして、そのまま飛び去ってしまった。
「待て!」
俺も追おうとしたが、間に合わない。
速い。
「くそ……ダメか」
思わず吐き捨てると、ビリーが笑った。
「はははっ」
「なんだよ、“お母さんに会わせてくれ”って」
「説得下手すぎだろ、号」
「うるさい」
「じゃあお前がやってみろ」
「俺様は想力不足で無理だぜ」
「役に立たねえな……」
どうしたものかと考えていると、ハワードが得意げに言った。
「大体、理解したぞ」
「彼女の居場所がな」
俺は振り向く。
「……は?」
「どういうことだ、ハワード」
ハワードは胸を張った。
「私の秘密兵器――」
一拍。
「ジャスティスサーチで追跡した」
「場所は割れたぞ!」
俺が手元を見る。
そこにあったのは、どう見てもGPSだった。
「……GPSかよ」
ハワードは真顔で首を振る。
「違う」
「ジャスティスサーチだ」
「……そうかよ」
俺は呆れた。
「っていうか、それ付けるために近づいたのかよ!?」
「当然だろう!」
「はははは!」
なんてやつだ。
まったく。
だが、結果的に助かったのも事実だった。
「行くぞ、号!」
ハワードが歩き出す。
俺もため息を吐いて、その後を追った。
「ほんと、自由すぎるだろ……」