想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第118話 光に潜む「想い」

 あれから俺は、和田京吉《わだきょうきち》という男を調べ続けていた。

 

 だが――

 

 何も出てこない。

 

 出てくるのは、善人である証拠ばかりだった。

 

 住民に食事を配る。

 

 想獣から人々を守る。

 

 絶望した者に言葉をかける。

 

 どこを見ても、救う側の人間にしか見えない。

 

「くそ……」

 

 俺は唇を噛む。

 

 姉さんの言葉を信じるなら、あいつはクレッシェを狙う危険な男だ。

 

 だが、今のところ見えるのは善意だけだった。

 

 俺が悩みに悩んでいると、不意に、俺をここへ案内した神父の声が聞こえた。

 

「もうすぐ、皆が救われるんですね」

 

 その先には、和田がいた。

 

「そのためには犠牲もつきものだ」

 

 静かな声だった。

 

「分かっているだろう、今村」

 

 今村と呼ばれた神父は、苦しげに言う。

 

「ですが……和田さん」

 

「これ以上は……」

 

 和田は目を閉じた。

 

「わしも好きでやっているわけではない」

 

「だが、今終わらせなければならない」

 

 一拍。

 

「小さな悪をもって、大きな悪を打ち倒すのだ」

 

 今村はしばらく黙っていたが、やがて小さく頷いた。

 

「……分かりました」

 

「和田さん」

 

 そうして和田は、一人で地下へ進んでいく。

 

 俺は息を殺し、その後をつけた。

 

 地下は、想像以上に深かった。

 

 冷たいコンクリートの壁。

 

 湿った空気。

 

 下へ行くほど、生臭い匂いが強くなる。

 

 嫌な予感がした。

 

 そして、最奥。

 

 そこにあったのは――

 

 巨大な部屋だった。

 

 いや。

 

 部屋というより、檻だ。

 

 その中心で、一体の巨大なドラゴン型想獣が眠っていた。

 

 圧倒的な巨体。

 

 その寝息だけで、空気が震えている。

 

 和田はその前で手を合わせた。

 

「神よ」

 

「ごはんの時間です」

 

 次の瞬間。

 

 部屋の横にある扉が開く。

 

 目を隠された生存者たちが、連れてこられた。

 

「ここはどこだ!?」

 

「なんで俺たちが……!」

 

「やめろ! 離せ!」

 

 恐怖に叫ぶ声。

 

 その光景を見た瞬間、血の気が引いた。

 

 和田は申し訳なさそうに目を伏せる。

 

「……これも、皆を救うためだ」

 

「すまない」

 

 ドラゴンの目が開いた。

 

 赤く濁った瞳。

 

 次の瞬間。

 

「GYAAAAAAA!!」

 

 咆哮。

 

 そして――

 

 悲鳴が上がる間もなく、生存者たちは喰われた。

 

 肉が裂ける音。

 

 血の臭い。

 

 骨の砕ける音。

 

 俺は目を見開いたまま、動けなかった。

 

 和田はその光景を見つめながら、ぽつりと漏らす。

 

「これもすべて」

 

「悪を討つための正義だ」

 

 その言葉で、何かが切れた。

 

「……なんでだよ」

 

 思わず声が漏れそうになる。

 

「なんで、あんたがそっちなんだよ……」

 

 信じたかった。

 

 救う側の人間だと、そう思いたかった。

 

 だが、違った。

 

 俺は歯を食いしばり、その場を離れた。

 

 地下を出たあと、俺は壁を思い切り殴った。

 

「くそっ!!」

 

 拳が痛む。

 

 それでも止まらなかった。

 

「あんなにいい人間が……」

 

「なんで、あんなことをするんだよ……!」

 

 理解できない。

 

 だが、理解しなければならない。

 

 俺はその後も調査を続けた。

 

 何のために、あいつはあんなことをしているのか。

 

 何を救おうとしているのか。

 

 何を捨てる覚悟で、あの道を選んだのか。

 

 だが――

 

 俺は感情で動きすぎた。

 

 ハワードに相談すればよかった。

 

 そうすれば、もっと違うやり方もあったはずだ。

 

 だが俺は、一人で動いてしまった。

 

 その結果。

 

「……君だったとは」

 

 後ろから声がした。

 

「残念だよ」

 

 振り向く。

 

 和田京吉《わだきょうきち》。

 

 そして、大勢の信者たち。

 

 囲まれていた。

 

「私のことを調べていたね」

 

「……くそ」

 

 俺は刀に手をかけようとした。

 

 だが、その瞬間。

 

 背後の信者に気づけなかった。

 

 バットが振り下ろされる。

 

「がっ……!」

 

 頭に衝撃。

 

 視界が暗くなった。

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