想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第119話 混じれない「想い」

 目を開ける。

 

 気づけば、俺は椅子に縛りつけられていた。

 

 手足は拘束され、刀もない。

 

 目の前には、和田が立っている。

 

「なんでだ」

 

 俺は睨みながら言った。

 

「なんで、あんたは想獣に従ってるんだ」

 

 和田は静かに首を振った。

 

「従っているわけではないさ」

 

「……神との契約だ」

 

 一歩、近づく。

 

「いいかい、号君」

 

「この世界には、多くの悪が存在している」

 

「君なら分かるはずだ」

 

「戦争」

 

「テロ」

 

「犯罪」

 

 一拍。

 

「悪とは、終わらないものだ」

 

 和田の目が揺れる。

 

「だが、神がいればすべては救われる」

 

「もう誰も、悪である必要はなくなる」

 

 俺は吐き捨てる。

 

「その神に、救うべき人間を食わせたろうが」

 

 和田は目を伏せた。

 

 だが、声は揺るがなかった。

 

「この世界にはびこる大きな悪を」

 

「私の小さな悪をもって滅ぼすのだよ」

 

「綺麗事ばかりでは、何も解決できない」

 

「君には理解してもらえると思ったんだけどね」

 

 俺は縛られたまま、和田を睨み返す。

 

「悪に大きいも小さいもない」

 

「悪は悪だ」

 

「どこまでいってもな」

 

 一拍。

 

「正義が折れたら終わりだろうが」

 

「どれだけ絶望しようが」

 

「同じ悪になっちまったら意味がないだろうが!!」

 

 和田はしばらく黙っていた。

 

 そして、小さく息を吐く。

 

「……そうか」

 

「それが君の答えか」

 

 その目が、静かに光る。

 

「なら、見せてあげよう」

 

「私の力をね」

 

 和田の目が強く輝いた。

 

 その瞬間――

 

 何かが流れ込んでくる。

 

「ぐっ……!」

 

 頭の中に、和田の想いが侵食してくる。

 

 重い。

 

 苦しい。

 

 まるで、自分の心そのものが塗り潰されていくみたいだった。

 

 だが。

 

 ここで折れるわけにはいかない。

 

「……俺は……」

 

「もう……諦めない……!」

 

 みんなのために。

 

 大地のために。

 

 東京のために。

 

 そして――

 

 俺自身のために。

 

 俺は叫んだ。

 

「助けてくれ――!」

 

「ジャスティスマーン!!」

 

 次の瞬間だった。

 

 窓ガラスが砕け散る。

 

 突風。

 

 そして。

 

「何者だ、貴様は!?」

 

 和田が叫ぶ。

 

 そこに立っていたのは――

 

「正義の味方!」

 

 一拍。

 

「ジャスティスマン!!」

 

 ポーズを決めるハワードだった。

 

 まったく、こんな状況でも変わらない。

 

「待っていろ、ゴー!」

 

 拳を握る。

 

「ジャスティスパンチ!!」

 

 ぶん、と拳が振るわれる。

 

 その一撃だけで、信者たちがまとめて吹き飛んだ。

 

「いけいけ!」

 

 和田が信者たちに叫ぶ。

 

 だが、その中で今村が和田へ駆け寄る。

 

「和田さん!」

 

「早く地下へ!」

 

 和田は一瞬だけ迷ったあと、踵を返した。

 

 逃げる。

 

 信者たちが次々とハワードへ殺到する。

 

 だが。

 

 まるで相手にならない。

 

 殴る。

 

 吹き飛ばす。

 

 さらにポーズを決める。

 

 火で焼かれようが。

 

 氷で凍らされようが。

 

 何一つ効いていない。

 

「彼らでは、あなたに勝てないようだ」

 

 今村が前へ出る。

 

「悪いですが」

 

「計画を邪魔されるわけにはいかない」

 

「犠牲になった者たちが救われない」

 

 その体が変化し始めた。

 

 背中から、漆黒の翼。

 

 頭から、大きな角。

 

 全身は赤黒く肥大化していく。

 

 人ではない。

 

 まるで――

 

 悪魔。

 

 ハワードが低く呟く。

 

「まるで悪魔だな」

 

 今村は答える。

 

「私は、正義のためなら悪魔にもなろう」

 

 ハワードは笑った。

 

「そうかい」

 

「君とは馬が合わなそうだ」

 

 次の瞬間。

 

 悪魔と化した今村が、ハワードを掴む。

 

 そのまま窓から飛び出した。

 

「うおおおお!?」

 

 落下しながら、ハワードが叫ぶ。

 

「後は頼むぞ、ゴー!!」

 

「ハワード!」

 

 だが、追っている暇はない。

 

 俺は拘束を解き、走り出した。

 

 和田を追う。

 

「待て、和田!!」

 

 廊下を駆け抜ける。

 

 地下へ。

 

 再び、あのドラゴンの部屋へ辿り着く。

 

 そこには、和田が立っていた。

 

「私の力を教えてやろう」

 

 和田の目が光る。

 

 その瞬間、ドラゴンが目を開いた。

 

「さあ、神よ」

 

「天罰を与えよ」

 

 ドラゴンの目の色が、和田と同じ色に染まる。

 

 咆哮。

 

「GYAAAAAAA!!」

 

 俺は刀を抜く。

 

「悪いが――」

 

 一歩、踏み込む。

 

「ドラゴンだろうが関係ねえ」

 

 刀を構える。

 

「いざ尋常に――!!」

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