想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う― 作:berunarudo
正義と悪が、真正面からぶつかり合う。
互いにガードはしない。
拳を受け。
拳を返す。
肉がぶつかる重い音が、崩れたビル街に響き続けていた。
「なぜだ!」
ハワードが拳を叩き込みながら叫ぶ。
「なぜ君たちは、悪へ落ちた!」
今村もまた、拳を振り抜く。
その一撃がハワードの頬を打つ。
「私たちは――」
息を吐く。
「正義に絶望したのだよ!」
さらに一発。
「救った命は、どれも簡単に悪に奪われていく!」
「国も!」
「法も!」
「この世界に潜む大きな悪を裁ききれない!」
今村の拳が、何度もハワードを打つ。
「だから!」
「悪には悪をもって制するほかにないのだ!」
ハワードも殴り返す。
だが、今村は止まらない。
「無限に広がる闇に!」
「小さな明かりなど意味はない!」
「闇すらも飲み込む力が必要なのだ!」
一拍。
「それが――神なのだ!」
今村の瞳は、もう人のものではなかった。
「神の力をもって、悪を消し去る!」
ハワードは歯を食いしばりながら言う。
「だが、その神とやらは!」
「君たちすら関係なく殺すぞ!」
「それがなんだ!」
今村は吠える。
「私たちの犠牲で世界が救われるのだ!」
「何も悲しくはない!」
「大いなる名誉だ!」
その言葉を聞いた瞬間。
ハワードの目が鋭くなる。
「――違う」
低い声だった。
「それは名誉ではない」
一歩踏み込む。
「君たちは、何もしていない」
「誰も救ってはいない!」
「救うべきものまで傷つけている!」
今村の動きが、わずかに止まる。
ハワードは続けた。
「悪は、どの人間の中にもある」
「だから悪を完全に消し去るなら」
一拍。
「人間を全部消す以外に方法はない」
今村が眉をひそめる。
「だが、それは救いじゃない!」
ハワードの声が響く。
「悪に立ち向かったわけではなく!」
「ただ闇に飲まれただけだ!」
風が吹いた。
マントがはためく。
「私たちは違う」
「どれだけ悪が深かろうが関係ない!」
「常に弱き者を照らし!」
「正義を貫く!」
拳を握る。
「ジャスティスパンチ!!」
今村の顔面に直撃。
「ぐぁっ!?」
今村の巨体が吹き飛ぶ。
だが、すぐに立ち上がる。
「どこまでも綺麗事だ……!」
「綺麗事で結構!」
ハワードは胸を張った。
「自分の想いを隠し!」
「力に溺れる方が、よっぽど屈辱だ!」
今村の全身が、さらに膨れ上がっていく。
翼は大きくなり、角は伸び、爪が地面を抉った。
「そうか……」
「そうか!」
「なら正義を証明してみせろ!」
「やめておけ!」
ハワードが叫ぶ。
「それ以上変化すれば、戻れなくなるぞ!」
「構うものか!」
今村は吠える。
「お前を殺して!」
「そのマントを血で汚してやる!」
ハワードの目が細くなる。
「この星のマントは、正義の象徴だ」
一拍。
「私の正義は、誰にも汚させない」
拳を握る。
「皆を照らし続ける星だ!」
「ジャスティスパンチ!」
だが。
今村はその拳をかわした。
「甘い!」
今村が笑う。
「貴様の攻撃はパンチのみ!」
「ここまで浴びれば、馬鹿でも分かるさ!」
次の瞬間。
今村の蹴りが、ハワードを吹き飛ばした。
「がっ――!」
さらに追撃。
今村の口元に光が集まる。
放たれる。
赤黒いビーム。
ハワードへ直撃した。
轟音。
熱風。
ビームは止まらない。
「君の痛々しい想いは!」
ハワードが叫ぶ。
「確かに感じるよ!」
ビームの中を、ハワードが進んでくる。
一歩。
また一歩。
全身を焼かれながらも、止まらない。
「私の正義は――」
ハワードの声が響く。
「悪すら照らす!」
ビームを押し割るように進む。
「君にかかる闇も!」
「私が照らす!!」
拳を握る。
「ジャスティス――」
一拍。
「パンチ!!」
拳が、ビームを裂く。
そのまま一直線に進み――
今村へ直撃した。
「ぐぁああああ!!」
今村の体が吹き飛び、ビルへ激突する。
壁が砕ける。
瓦礫が落ちる。
それでも、今村はまだ立とうとした。
「まだだ……!」
「負ける……わけには……!」
ハワードは腕を引く。
全身の力を、そこに込める。
「ジャスティス――」
呼吸が止まるほどの静寂。
そして。
「パンチ!!」
その拳が、今村の腹に炸裂した。
「がはっ!!」
今村の巨体がくの字に折れる。
その勢いのまま――
天へ打ち上がった。
空高く。
まるで、闇を貫く流星のように。
ハワードは拳を天へ掲げる。
マントが風にはためく。
「正義は必ず勝つ!」
一拍。
「それが世の掟さ!」