想想戦記―想いが力になる世界で、俺は戦う―   作:berunarudo

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第121話 鳴り響く「想い」

 巨大なかぎ爪が、地面を抉る。

 

 壁を裂く。

 

 そのどれもが、一撃で死に至る威力だった。

 

 間違いない。

 

 黒等級の想獣。

 

 それも、上位の化け物だ。

 

 俺は避けるので精一杯だった。

 

 刀を振るう。

 

 だが――

 

 甲高い音。

 

 刃は硬いうろこに弾かれる。

 

「くそっ……!」

 

 浅い。

 

 まるで通らない。

 

 どうすればいい。

 

 そう考えた瞬間、和田の笑い声が響いた。

 

「はっははは!」

 

「どれだけ君たちが強くとも、あくまで人間だ」

 

 一拍。

 

「神は違う」

 

「この世の頂点に存在する」

 

「君では勝つことは不可能だ」

 

「うるせえ!!」

 

 俺は叫ぶ。

 

「俺は諦めない!」

 

 地面を蹴る。

 

 上空へ跳ぶ。

 

 想力を全身に巡らせる。

 

「紫電纏雷――」

 

 雷が走る。

 

 その身に、紫電が纏わりつく。

 

「雷鳴鎚《いかなずち》!!」

 

 神速。

 

 刀を振り下ろす。

 

 稲妻のような一閃が、ドラゴンへ叩き込まれた。

 

 血が噴き出す。

 

 腹に、大きな傷が走る。

 

 ドラゴンが怒りの咆哮を上げた。

 

「Grrrrrrrrrrr!!」

 

 口が開く。

 

 次の瞬間、火炎が噴き出した。

 

「貴様……!」

 

 和田が目を見開く。

 

「神に傷をつけるとは、なんたる不敬……!」

 

 その目が、さらに強く光る。

 

「神よ!」

 

「かの者に、大いなる罰を与えよ!」

 

 その瞬間だった。

 

 ドラゴンの体から、凄まじい想力が湧き上がる。

 

 火炎が膨れ上がる。

 

 業火のブレス。

 

 それが、俺に向かって降り注いだ。

 

「――っ!!」

 

 全身が焼かれる。

 

 皮膚が裂ける。

 

 骨まで焼けそうな熱。

 

 それでも――

 

 俺は退かない。

 

 炎の中を、前へ進む。

 

「兄貴に比べれば……!」

 

 歯を食いしばる。

 

「お前の、想いもない火なんか……!」

 

 一歩。

 

 また一歩。

 

「熱くねえんだよ!!」

 

 刀を鞘に納める。

 

 呼吸を整える。

 

 炎の中で、目を閉じる。

 

 そして。

 

「紫電纏雷――」

 

 静かに構える。

 

「抜刀」

 

 一拍。

 

「月輪」

 

 閃光。

 

 次の瞬間。

 

 ドラゴンの頭が、一刀のもとに断たれていた。

 

 鮮血が舞う。

 

 巨体が揺れる。

 

「GYAAAAAAA!!」

 

 断末魔。

 

 ドラゴンが激しくのたうつ。

 

 和田が絶叫する。

 

「馬鹿な……!」

 

「神がやられるなど、ありえない!」

 

「それも、お前ごときに敗れるなど……!」

 

 炎と煙の向こうから、俺は姿を現す。

 

 焼け焦げた体。

 

 だが、まだ立っている。

 

 刀を和田へ向ける。

 

「次は――」

 

「お前だ、和田」

 

 和田は俺を睨みながら、狂気のように笑った。

 

「いいだろう」

 

「ならば……私が神になるまでだ!」

 

 その目が異様な光を放つ。

 

「私の力は、伝心」

 

「想いを伝える」

 

「ならば――」

 

 両手を広げる。

 

「すべてを、私の想いで埋め尽くしてやる!!」

 

 和田の想いが、死んだはずのドラゴンへ流れ込んでいく。

 

 止まらない。

 

 あまりにも危険な流れ。

 

「やめろ!」

 

 俺は叫ぶ。

 

「それ以上は危険だ!」

 

「悪を滅ぼすためだ!」

 

 和田も叫び返す。

 

「この程度で止まってたまるか!!」

 

 次の瞬間。

 

 和田の両目から、血が吹き出した。

 

 そのまま、前のめりに倒れる。

 

「……っ!」

 

 俺は急いで近づく。

 

「和田!」

 

 だが。

 

 もう遅かった。

 

 和田は、動かない。

 

 息もない。

 

「くそ……!」

 

 まただ。

 

 また、間に合わなかった。

 

 そう思った瞬間だった。

 

「いや――」

 

 声がした。

 

「間に合ったさ」

 

 和田の声。

 

 だが、目の前に倒れているのは死体だ。

 

 俺はゆっくり振り向く。

 

 そこには――

 

 首を落としたはずのドラゴンが、立ち上がっていた。

 

 断たれたはずの肉が、和田の想力で繋がっていく。

 

 目の色は、和田と同じだった。

 

「私が……神になったのだ……!」

 

 ドラゴンの口から、和田の声が響く。

 

 獣の咆哮と、人の声が混ざる。

 

 嫌悪感すら覚える声だった。

 

「神と融合した今!」

 

「私は最強となった!」

 

「俺が止めてやる!」

 

 俺は刀を握る。

 

「紫電――」

 

 言い切る前に。

 

 爪が走った。

 

「がああああっ!!」

 

 胸を裂かれる。

 

 血が噴き出す。

 

 体が吹き飛んだ。

 

 床に叩きつけられる。

 

 視界が揺れる。

 

 意識が遠のく。

 

「ははははは!!」

 

 ドラゴンの口で、和田が笑う。

 

「無駄だ!」

 

「融合した今、誰も勝てはしない!」

 

 痛みで、意識が落ちそうになる。

 

 それでも、俺は立ち上がる。

 

 膝が震える。

 

 血が流れる。

 

 呼吸も荒い。

 

 だが――

 

 まだ終わっていない。

 

「……俺は」

 

 刀を握りしめる。

 

「諦めない」

 

 ゆっくりと顔を上げる。

 

「お前の歪んだ正義が」

 

「間違ってるってことを……!」

 

 刀を地面に突き刺す。

 

 想力が爆ぜる。

 

 雷が空間を満たす。

 

 紫電が天へ昇る。

 

「証明してやる!!」

 

 俺の目が光る。

 

「開眼――」

 

 一拍。

 

「紫電天裁《しでんてんさい》」

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